(中止)【公募増資・売出(PO)は買いか?】サカイ引越センター(9039)

公募増資・売出(PO)
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こんにちは!

公募増資・売出(以下、PO)の実施を発表した銘柄に関して、POに応募して買った場合、利益を得ることができるのか?直近の経営状況や客観的な指標、株価モメンタム等を踏まえ、総合的に分析しました。

今回は、東証プライムから陸運業種のサカイ引越センターです。

最後までお付き合いいただけるとうれしいです!

  • 公募増資・売出(PO)とは?
既上場企業が新たに発行する株式(公募株式)や既に発行された株式(売出株式)を投資家に取得させることをいいます。
正確には、「PO」は「Public(公開の)Offering(売り物)」の略で、日本語では「公募」と呼ばれます。「公募」とは、「不特定かつ多数の投資家に対し、新たに発行される有価証券の取得の申込を勧誘すること」をいいます。
また、「売出」とは、「既に発行された有価証券の売付けの申込み又はその買付けの申込の勧誘のうち、均一の条件で50人以上の者を相手方として行う」ことをいい、通常は「公募」「売出」を合わせて「PO」と呼ばれます。
「新規公開株(IPO)」は未上場企業が直接金融市場からの資金調達や知名度・信用力の向上を目的として証券取引所に新規上場するために一般投資家に株式を取得してもらう行為であるのに対して、「公募・売出(PO)」は既に上場していて証券取引所での株式取引が行われている企業が追加の資金調達や大株主の保有株売却などを目的として一般投資家に株式を取得してもらう行為であり、「新規公開株(IPO)」と「公募・売出(PO)」の違いを簡単にいえば、実施する企業が「未上場」か「既上場」かの違いといえます。

POの概要

まとめ

今回のPOは、大株主からの株式の売出しです。売出価格等決定日や受渡期日、発行数量等は表1のようになっています。

ディスカウント率は、「売出価格等決定日」に決まり、その日の終値から数%です。

ちなみに、直近の主なPOのディスカウント率は、JR西日本(9021) 3.01%、日本郵政(6178) 2.01%、クリエイト・レストランツ・ホールディングス(3387) 3.09%となってますが、ほぼほぼ2~5%程度です。

ただ、ディスカウント率が大きいPOもあり、直近ではENECHANGE(4169)の8.1%が最大です。

注意点として、どの証券会社でも購入できるわけでなく、主幹事(今回はみずほ証券)はじめ、引受人の証券会社で購入申込可能です。

早ければ、8/29(火)の夕刻に、会社側から売出価格等のお知らせが適時開示であります。

このブログ記事も更新しますので、チェックしてくださいね💖

売出価格等決定日2023 年8月 29 日(火)から 8月 31 日(木)までの間のいずれかの日
受渡期日
(POで買った場合はこの日から売却可能)
売出価格等決定日の5営業日後の日
①株式の売出し
(引受人の買取引受けによる売出し)
数量
普通株式 696,000
発行済み株式総数 21,162,000株 の約3.28%
②株式の売出し
(オーバーアロットメントによる売出し)
数量
普通株式 104,000
(上限の数量であり、全く行われない場合もある。)
みずほ証券が売出す。
売出価格(決定後記載)
ディスカウント率(決定後記載)
申込単位数量100 株
主幹事みずほ証券
表1:サカイ引越センター(9039) PO概要

【株式売出しの目的】

  • 同社普通株式の分布状況の改善より一層の投資家層の拡大及び流動性の向上を目的としたもの

としています。

そして、今回のPO発表と同時に、同社株式の流動性を高めるとともに、投資家層のさらなる拡大を図ることを目的として株式分割を実施を発表してします。

日程は2023年9月末で、普通株式1株につき2株の割合をもって分割される予定です。

また、今回の株式の売出数量は、発行済み株式総数の約3.38%OAを含めた最大の株数で約3.78%)で、

直近の株式の売出のみのPOの売出株数比率(OAを含む)は、ライフドリンクカンパニー 29.8%、日本ホスピスホールディングス 30.2%、プラスアルファ・コンサルティング 26.3%でしたので、それらと比較すると少ない数量ですが、

今回の売出株数(OAを含むと8,000百株)は、1日の平均的な出来高(25日平均:364百株(8/22時点))の約22倍となっており、これからすると多めの数量です。

また、この銘柄の直近の出来高(売買が成立した株の数量)の5日平均は915百株、25日平均は364百株で、流動性は低い水準です。(1日 1,000百株を平均的な水準としています。)

どんな会社?

「まごころこめておつきあい」をモットーに、昭和46年に創業し、引越一筋に50周年を迎えた、引越ビジネスのリーディングカンパニーです。

事業内容は、一般貨物自動車運送事業のうち引越運送事業それに付随する業務(電気工事等)クリーンサービス事業リユース事業を主に行っています。

同社は、「引越事業」「電気工事事業」「クリーンサービス事業」「リユース事業」の4つを報告セグメントとしており、

2023年3月期通期のセグメント別売上高構成比は、

  • 引越事業 86.5%
  • 電気工事事業 3.9%
  • クリーンサービス事業 4.8%
  • リユース事業 4.2%
  • その他(不動産賃貸事業等) 0.6%

となっており、「引越事業」が9割弱を占めています。

直近の経営概況

経営状況

【2024年3月期1Q(2023年4月~6月)の経営成績】

(2023年7月31日発表)

決算期売上高
[億円]
(前年
同期比
[%])
営業
利益
[億円]
(同)
経常
利益
[億円]
(同)
親会社株主
に帰属する
純利益

[億円]
(同)
2023年3月期
1Q累計
302
(8.7)
48.9
(36.0)
49.5
(35.7)
35.3
(62.7)
2024年3月期
1Q累計
317
(5.1)
56.3
(15.1)
56.9
(14.9)
38.4
(8.9)
2024年3月期
通期会社予想
1,137
(3.9)
124
(5.0)
127
(5.2)
88.9
(8.4)
通期予想に対する
1Qの進捗率[%]
27.945.244.743.2
表2:サカイ引越センター 2024年3月期1Q経営成績と通期会社予想

表2の通り、前年同期比 増収増益で、売上高は1割弱増利益面は1割前後の増益でした。

2024年3月期通期の業績予想は、前期比 増収増益で、売上高は微増利益面は微増~1割弱増を見込んでおり、

その通期予想に対する進捗率は1Q終了時点で、売上高は1/4程度でほどほどですが、利益面は4~5割で順調です。

【2024年3月期1Qの状況、経営成績の要因】

当1Q連結累計期間における我が国の経済は、新型コロナウイルスに起因する行動制限の緩和を受け、緩やかに経済活動は回復しているものの、

円安や資源価格の高騰による物価上昇は続いており、景気の先行きは依然として不透明な状況です。

引越業界においても、新設住宅着工戸数や移動者数が微減しており、厳しい状況が続いています。

この様な状況の下、同社グループは着実な経営努力をした結果、作業件数は219,057件(前年同四半期比0.2%増となり、引越単価も同3.9%増と上昇したことにより引越事業は好調に推移しました。

また、当1Q連結会計期間から株式会社新世紀サービス及び株式会社キッズドリームを連結の範囲に含めた結果、表2の数値の増収増益となっています。

【財政面の状況】

自己資本比率>(自己資本(総資本-他人資本)÷総資産)×100

2024年3月期1Q末時点で80.2%と前期末(75.1%)から5.1ポイント増加しています。

これは主に、買掛金が3,077百万円減少前受金が1,670百万円減少し、流動負債が合計で5,950百万円減少

利益剰余金が2,762百万円増加し、株主資本が合計で2,761百万円増加したことによるものです。

自己資本比率の数値としては良好なレベルです。(20%以上を安全圏内としています。)

【今期(2024年3月期通期)業績の見通し】

世界的な金融引締め等が続く中、物価上昇や供給面での制約等の下振れリスクなど依然として先行き不透明なものの、

新型コロナウイルス感染症の5類引き下げにより、人々の活動や経済活動は持ち直していくと想定しています。

このような状況のもと、同社グループは今後も「世界一の新生活応援グループ」として新生活を基軸に顧客の生活に寄り添ったサービスをグループ事業として展開し、収益基盤を強化することで事業の拡大を目指し、表2の経営数値を予想しています。

なお、2024年3月期1Q決算発表時点では、2023年5月8日公表の業績予想から変更はありませんでした。

株価指標と動向

株価指標

【2023/8/22(火)終値時点の数値】

  • 株価:4,675円
  • 時価総額:989億円
  • PER(株価収益率):10.6倍

PERは、同業で時価総額が近い、NIPPONEXPRESS(9147) 11.8倍、ヤマトホールディングス(9064) 16.0倍と比較すると、水準です。

  • PBR(株価純資産倍率):1.15倍
  • 信用倍率(信用買い残÷信用売り残):1.39倍
  • 年間配当金(予想):105円(年2回 9月 30円、3月 75円)、年間利回り:2.24%(配当性向 24.0%)

配当利回りは2.24%で、東証プライムの単純平均 2.28%(8/21時点) と同水準です。

表3のように、直近5年間の配当金は、年間1株当たり55~95円で推移し、連続増配を継続です。

配当性向は、10%台~20%台で低めで安定しています。

決算期1株当たり
年間配当金
[円]
配当性向
[%]
2019年3月期5515.7
2020年3月期6013.8
2021年3月期8021.3
2022年3月期9027.5
2023年3月期9523.5
表3:サカイ引越センター 年間配当金推移

この会社は、

将来の事業展開に必要な設備投資や経営環境の変化に備え、企業体質を強化するための内部留保に留意するとともに、キャッシュ・フローに重点を置いた経営に努めています

また株主への適切な利益還元を図るため、安定した配当を継続的に行うことを基本方針としており、

利益成長の実現を通じて一層、株主の支援に応えていきたいと考えています。

したがって、業績の順調な伸長が見込まれる状況が確認できた場合には特別配当を行うこととしています。

また、中間配当と期末配当の年2回の剰余金の配当を行うこととしています。

【株主優待】

この会社は株主優待があり、毎年3月末に100株以上保有の株主は、

  1. 岩手県産ひとめぼれ5kg、または
  2. 堺市世界遺産保全活用推進基金への寄附

のいずれかを選択できます。

また、9月末に300株以上保有の株主は、上記に加え、「岩手県産ひとめぼれ5kg」が進呈されます。ですので、1年で「岩手県産ひとめぼれ10kg」がいただけることになります。

個人投資家にとってうれしい内容ですね!

【直近の株価動向】

<週足チャート(直近2年間)>

2022年3月に安値(3,875円)をつけた後は、高値切り上げ安値切り上げの上昇基調で推移し、同年8月に高値(5,570円)をつけました。

しかしその後は調整し、一旦安値をつけた後は再び上昇基調で推移しています。

<日足チャート(直近3か月間)>

5月末に安値(4,490円)をつけた後は、上昇トレンドで推移し、8/8に年初来高値(5,380円)をつけました。

しかしその後は、この高値を超えられずに調整し、そして今回のPOと株式分割発表の翌営業日(8/22)は、POによる需給悪化を警戒され、前日比 455円安(-8.87%)と窓を開けて出来高を伴い急落しました。

今後は、5月末につけた直近の安値(4,490円)を下抜けずに上昇に転じていくのか、下抜けて下値模索をするのか、要注目です。

まとめ

【業績】

  • 今期(2024年3月期)1Qの業績は、着実な経営努力をした結果、作業件数は219,057件(前年同四半期比0.2%増)となり、引越単価も同3.9%増と上昇したことにより引越事業は好調に推移し、
    前年同期比 増収増益で、売上高は1割弱増利益面は1割前後の増益
  • 今期通期予想は、顧客の生活に寄り添ったサービスをグループ事業として展開し、収益基盤を強化することで事業の拡大を目指し、
    前期比 増収増益で、売上高は微増利益面は微増~1割弱増を見込む。
  • この通期業績予想に対する進捗率は、1Q終了時点で、売上高は1/4程度でほどほどだが、利益面は4~5割で順調

【株主還元】

  • 配当利回り(予想)は2.24%で、東証プライムの単純平均2.28%(8/21時点) と比較すると同水準
  • 直近5年間の配当金は、年間1株あたり55~95円で推移し、連続増配を継続
    配当性向は、10%台~20%台で低めで安定
  • 株主優待があり、毎年3月末に100株以上保有の株主は、岩手県産ひとめぼれ5kg、または堺市世界遺産保全活用推進基金への寄附のいずれかを選択できる。
    また、これに加え9月末に300株以上保有の株主「岩手県産ひとめぼれ5kg」が進呈される。

【流動性・売出株数】

  • 今回の株式の売出数量は、発行済み株式総数の3.38%OAを含めた最大の株数で約3.78%で、
    直近の株式の売出のみのPO(ライフドリンクカンパニー、日本ホスピスホールディングス、プラスアルファ・コンサルティング)の売出株数比率(OAを含む)と比較すると少ない数量だが、
    売出株数(OAを含む)は、1日の平均的な出来高の約22倍となっており、これからすると多めの数量
  • 直近の出来高の5日平均は915百株25日平均は364百株で、流動性は低い水準

【株価モメンタム】

  • 週足ベースの株価は、2022年3月に安値(3,875円)をつけた後は、高値切り上げ安値切り上げの上昇基調で推移し、同年8月に高値(5,570円)をつけた。
    しかしその後は調整し、一旦安値をつけた後は再び上昇基調で推移。
  • 直近の株価は、5月末に安値(4,490円)をつけた後は、上昇トレンドで推移し、8/8に年初来高値(5,380円)をつけた。
    しかしその後は、この高値を超えられずに調整し、そして今回のPOと株式分割発表の翌営業日(8/22)は、POによる需給悪化を警戒され、前日比 455円安(-8.87%)と窓を開けて出来高を伴い急落
  • 今後の株価は、5月末につけた直近の安値(4,490円)を下抜けずに上昇に転じていくのか、下抜けて下値模索をするのか要注目。

以上のことから、

レベル
(⭐(最低)~
⭐⭐⭐⭐⭐(最高))
業績⭐⭐⭐⭐
株主還元
(配当、株主優待等)
⭐⭐⭐
株価モメンタム⭐⭐⭐
流動性⭐⭐
株式の売出数量⭐⭐
総合判定⭐⭐
(中立)
※「総合判定」=⭐4つ以上「買い」、⭐3つ「中立」、⭐2つ以下「不参加」

と判断しました。

最後までご覧いただき、ありがとうございました。

※株式投資の実際の売買は、自己判断、自己責任でお願いします。

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