【上方修正は買いか?】巴工業(6309)

銘柄分析
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直近で今期業績予想の上方修正を発表した銘柄に関して、この発表のタイミングで株を買った場合、利益を得ることができるのか?

足元の経営状況や客観的な指標、株価モメンタム等を踏まえ、総合的に分析しました。

今回は、東証プライムから機械業種の巴工業です。

最後までお付き合いいただけるとうれしいです!

「上方修正」とは?

企業が決算において以前掲げていた予想利益などの数字を引き上げることを指します。

売り上げ増加や環境改善など、想定していなかった要因によって従来予想以上の達成が見込まれるときに発表されます。

SMBC日興証券HPより

特に利益面が上方修正されると、1株当たり利益(EPS)が上昇する可能性が高くなりますので、

株主還元の方針で、配当性向を定めている会社は、配当性向が一定の場合、EPSが上昇すると1株あたりの配当金も高くなり投資家が直接恩恵を受けることになります。

例えば、配当性向を30%と定めている会社が、当初の配当金予想は年間1株あたり30円(EPS=100円)だったとします。

この会社が、業績が好調なため上方修正をして、EPS予想が50%増額され、150円に修正されたとしましょう。

そうなった場合、配当金は配当性向30%と定めていますので、配当金も30円から45円(=150×0.3)と15円増額となり、配当金も1.5倍に増額されることになります。

また、配当金等のインカムゲインだけではなく、キャピタルゲイン(売買益)も期待できます

なぜかというと、上方修正を発表した会社の株は、業績が予想していた以上に良くなったため、株を買いたい投資家が増えますので、株価上昇の大きな要因になるわけです。

ただ時より、会社発表の上方修正後の経営数値がコンセンサス予想(マーケットにおいて支配的になっている予想(数値等))を下回る場合は、「失望売り」といわれ、大きく売り込まれ株価が下落するケースがありますので注意が必要です。

それでは、見ていきましょう!

上方修正の概要

まとめ

2023年6月7日に、2023年10月期通期連結業績予想の上方修正を発表しています。

2023年10月期通期の業績予想は表1です。

売上高
[億円]
営業
利益
[百万円]
経常
利益
[百万円]
親会社
株主に
帰属する
当期純利益

[百万円]
1株当たり
当期利益

[円]
1株当たり
年間配当金

[円]
前回
(2022/12/14)
発表予想
4732,9402,9702,040204.4456
今回修正予想4843,5903,6002,430243.5380
増減額10.865063039024
増減率[%]2.322.121.219.142.8
表1:巴工業 2023年10月期通期連結業績予想数値の修正(2023年6月7日発表)

前回予想と比べ、売上高は微増利益面は2割前後の増額修正をしています。

修正の理由は、

  • 通期の売上高は、機械製造販売事業で一部案件が繰り延べとなる見込みから当初予想を3.1億円下回る一方、化学工業製品販売事業では機能材関連を中心に好調が見込まれるため当初予想を13.9億円上回ることから、全体で484.6億円となる見込み。
  • 利益面は、化学工業製品販売事業の販売好調による増益を主因として営業利益が650百万円、経常利益が630百万円、親会社株主に帰属する純利益が390百万円と、それぞれ当初予想に対して増益となる見込み。

としています。

配当予想に関しても、今回の業績の上方修正に伴い、

連結営業利益と経常利益予想が過去最高益を更新する見込みを踏まえ、株主への利益還元の更なる充実を図るべく、1株当たりの中間、期末配当それぞれ直近の配当予想の28円から 12 円増配し40円とし、

年間配当金は1株当たり80円年間1株当たり24円増配)にすることにしています。

どんな会社?

遠心分離機

メーカー機能と商社機能を併せ持った、遠心分離機(遠心力を利用して比重差のあるものを分離する装置)等の製造・販売(メーカー機能)および化学工業製品等の仕入・販売(商社機能)に関連する事業を行っている会社です。

デカンタ型遠心分離機(混合物中の液体から固体を分離するために使用される遠心分離機の一種)を主力とした総合遠心分離機メーカーとして、

食品、水産、化学、製薬、造船、鉄鋼、電力などあらゆる産業分野に各種分離機器を納入し、 産業界の発展に大きく貢献しています。

事業セグメントは、「機械製造販売事業」と「化学工業製品販売事業」の2つがあり、それぞれ、

  • 機械製造販売事業
    主として遠心分離機等の製造・販売
  • 化学工業製品販売事業
    主に化学工業製品等の仕入・販売

を行っています。

2022年10月期通期のセグメント別売上高構成比は、

  • 機械製造販売事業 24.9%
  • 化学工業製品販売事業 75.1%

となっており、「化学工業製品販売事業」が3/4を占めています。

直近の経営概況

経営状況

【2023年10月期1Q(2022年11月~2023年1月)の経営成績】

(2023年3月14日発表)

決算期売上高
[億円]
(前年
同期比
[%])
営業
利益
[百万円]
(同)
経常
利益
[百万円]
(同)
親会社株主に
帰属する
当期純利益
[百万円]
(同)
2022年10月期
1Q累計 ※1
99.6
(ー)
528
(△18.6)
559
(△17.1)
689
(38.6)
2023年10月期
1Q累計
111
(11.7)
558
(5.7)
550
(△1.6)
390
(△43.4)
2023年10月期
通期会社予想
(2023年6月7日
修正)
484
(6.2)
3,590
(8.8)
3,600
(5.2)
2,430
(△8.6)
通期予想に対する
1Qの進捗率[%]
22.915.515.216.0
表2:巴工業 2023年10月期1Q連結経営成績と2023年10月期通期連結予想
※1:前第1四半期連結会計期間の期首より「収益認識に関する会計基準」等を適用しており、売上高に大きな影響が生じるため、2022年10月期1Qの売上高の対前年同四半期増減率は記載なし。

表2の通り、前年同期比 増収増益で、売上高は1割強増、利益面は営業利益は1割弱の増益ですが、経常利益と純利益は微減~4割強の減益でした。

2023年10月期通期の業績予想は、今回の上方修正後で、前期比 増収増益で、売上高は1割弱増、利益面は営業利益と経常利益は1割弱の増益ですが、純利益は1割弱の減益を予想しています。

通期予想に対する進捗率は、1Q終了時点で、売上高、利益面ともに1/4程度でそこそこです。

【2023年10月期1Qの状況、経営成績の要因】

当1Q連結累計期間のわが国経済は、設備投資は伸び悩んだものの、個人消費と輸出の伸びを背景にプラス成長となりました。

一方、海外においては、米国経済は堅調に推移しているものの、中国および欧州経済は成長率が鈍化しています。

こうした情勢の下、当1Q連結累計期間における売上高は機械製造販売事業の販売が減少したものの化学工業製品販売事業の販売が増加したため前年同期比11.7%増の111億円となりました。

利益面は、化学工業製品販売事業が増益となったことを背景に営業利益が同5.7%増の558百万円となったものの、

経常利益は営業外費用(為替差損)が増加したことから同1.6%減の550百万円となり、親会社株主に帰属する四半期純利益については固定資産売却益が無かったことから同43.4%減の390百万円となりました。

【セグメント別業績】

セグメント別の業績は、表3の結果になりました。

主力の「化学工業製品販売事業」は前年同期比 増収増益ですが、

「機械製造販売事業」は減収赤字幅拡大でした。

セグメント売上高
[億円]
(前年同期比
増減率
[%])
営業
利益
[百万円]

(同)

機械
製造販売
1,815
(△5.6)
△301
(前年同期
△36.6
百万円)
化学工業
製品販売
9,312
(15.9)
860
(52.1)
表3:2023年10月期1Q セグメント別業績

セグメント別の状況は以下です。

機械製造販売事業

国内民需および海外向け機械の販売が伸長したものの、国内官需向け機械および装置・工事と全分野の部品・修理の販売が伸び悩みました。

利益面は、国内官需向け機械および装置・工事と全分野の部品・修理の販売が伸び悩んだことを主因に営業損益は301百万円の損失となりました。

化学工業製品販売事業

合成樹脂関連の樹脂および製品鉱産関連の建材・自動車用途向けを主とした材料、

化成品関連の塗料・インキ用途向けを主とした材料、機能材関連および電子材料関連の半導体製造用途向け材料等を中心に販売が伸長しました。

利益面は、販売が好調に推移したことから営業利益は前年同期比52.1%増加860百万円となりました。

【財政面の状況】

自己資本比率>(自己資本(総資本-他人資本)÷総資産)×100

2023年10月期1Q末時点で76.7%と前期末(75.2%)から1.5ポイント増加しました。

これは主に、未払法人税等が前期末比で738百万円減少し、流動負債が合計で1,070百万円減少したことによるものです。

自己資本比率の数値としては良好なレベルです。(20%以上を安全圏内としています。)

株価指標と動向

株価指標

【2023/6/8(木)終値時点の数値】

  • 株価:2,967円
  • 時価総額:312億円
  • PER(株価収益率):12.1倍

PERは、同業で時価総額が近い、三菱化工機(6331) 8.4倍、月島ホールディングス(6332) 11.4倍、稲畑産業(8098) 7.9倍と比較すると、高い水準です。

  • PBR(株価純資産倍率):0.86倍
  • 信用倍率(信用買い残÷信用売り残):3.89倍
  • 年間配当金(予想):80円(年2回 4月 40円、10月 40円)、年間利回り:2.69%(配当性向 32.8%)

配当利回りは2.69%で、東証プライムの単純平均 2.30%(6/7時点)と比較するとやや高い水準です。

表4のように、直近5年間の配当金は、1株当たり47~53円で推移しており、前年と同額の年もありますが、基本的には増配傾向です。

配当性向は、10%台~30%台でほぼ安定して推移しています。

決算期1株当たり
年間配当金
[円]
配当性向
[%]
2018年10月期4731.0
2019年10月期4729.9
2020年10月期4831.3
2021年10月期5023.7
2022年10月期5319.9
表4:巴工業 年間配当金推移

この会社は、

財務体質と経営基盤の強化のため内部留保の充実を図りつつ、連結業績および中期的なグループ事業戦略等を総合的に勘案し、

適正かつ安定的な配当を実施することを基本方針としています。

【株主優待】

この会社は、株主優待があり、毎年10月末に100株以上保有の株主は、ワイン(同社関連会社取扱商品)1本が進呈されます。

ワイン好きの方はうれしい内容ですね!

出所:巴工業HPより抜粋

【直近の株価動向】

<週足チャート(直近2年間)>

2021年9月に高値(2,595円)をつけた後は下落し、翌年1月に安値(2,035円)をつけました。

しかしその後は上昇に転じ、高値切り上げ安値切り上げの上昇トレンドで推移しています。

<日足チャート(直近3か月間)>

直近は、2,400円前後のヨコヨコの値動きでしたが、

今回の今期通期業績の上方修正と増配発表の翌営業日(6/8)は、これらを好感され出来高を伴い買われ前日比 500円高(+20.2%)とストップ高比例配分(買い注文が売り注文を大きく上回り、大引に値幅制限の上限で割当が行われること)で終了しました。

今後は、この日の高値近辺をキープしさらなる上値追いをしていくのか、勢いが失速し、急騰前の元の値に戻っていくのか、要注目です。

まとめ

まとめ

【上方修正のインパクト】

  • 化学工業製品販売事業機能材関連を中心に好調が見込まれ
    2023年10月期通期業績予想を、前回予想と比べ、売上高は微増利益面は2割前後の増額修正をし、インパクトはやや大きい
  • 業績の上方修正に伴い、配当金も、連結営業利益と経常利益予想が過去最高益を更新する見込みを踏まえ、
    前回予想から年間1株当たり24円増配し、80円配当に修正した。

【業績】

  • 今期(2023年10月期)1Qの業績は、機械製造販売事業の販売が減少したものの化学工業製品販売事業の販売が増加し、純利益は前期に計上された固定資産売却益が無かったことにより、
    前年同期比 増収増益で、売上高は1割強増、利益面は営業利益は1割弱の増益だが、経常利益と純利益は微減~4割強の減益
  • 今期の通期予想は、今回の上方修正後の数値で、
    前期比 増収増益で、売上高は1割弱増、利益面は営業利益と経常利益は1割弱の増益だが、純利益は1割弱の減益を見込む。
  • その通期予想に対する進捗率は、1Q終了時点で、売上高、利益面ともに1/4程度でそこそこ

【株主還元】

  • 配当利回り(会社予想)は2.69%で、東証プライムの単純平均 2.30%(6/8時点) と比較するとやや高い水準
  • 直近5年間の配当金は、1株当たり47~53円で推移しており、前年と同額の年もあるが、基本的には増配傾向
    配当性向は、10%台~30%台でほぼ安定して推移。
  • 株主優待があり、毎年10月末に100株以上保有の株主は、ワイン(同社関連会社取扱商品)1本が進呈される。

【流動性】

  • 直近の出来高の5日平均は156百株、25日平均は94百株で、流動性は低い水準。(1,000百株を平均水準とした。)

【株価モメンタム】

  • 週足ベースの株価は、2021年9月に高値(2,595円)をつけた後は下落し、翌年1月に安値(2,035円)をつけた。
    しかしその後は上昇に転じ、高値切り上げ安値切り上げの上昇トレンドで推移。
  • 直近の株価は、2,400円前後のヨコヨコの値動きだったが、
    今回の今期通期業績の上方修正と増配発表の翌営業日(6/8)は、これらを好感され出来高を伴い買われ、前日比 500円高(+20.2%)とストップ高比例配分で終了。
  • 今後の株価は、この日の高値近辺をキープしさらなる上値追いをしていくのか、勢いが失速し、急騰前の元の値に戻っていくのか要注目。

以上のことから、

レベル
(⭐(最低)~
⭐⭐⭐⭐⭐(最高))
上方修正の
インパクト
⭐⭐⭐
業績⭐⭐
株主還元
(配当、株主優待等)
⭐⭐⭐
株価モメンタム⭐⭐⭐
流動性⭐⭐
総合判定⭐⭐
(中立)
※「総合判定」=⭐4つ以上「買い」、⭐3つ「中立」、⭐2つ以下「見送り」

と判断しました。

最後までご覧いただき、ありがとうございました。

※株式投資の実際の売買は、自己判断、自己責任でお願いします。

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