【公募増資・売出(PO)は買いか?】スターアジア不動産投資法人(3468) <2022年8月実施>

スター公募増資・売出(PO)
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こんにちは!

公募増資・売出(以下、PO)の実施を発表した銘柄に関して、POに応募して買った場合、利益を得ることができるのか?直近の経営状況や客観的な指標、株価モメンタム等を踏まえ、総合的に分析しました。

今回は、東証J-REITのスターアジア不動産投資法人です。

最後までお付き合いいただけるとうれしいです!

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  • 公募増資・売出(PO)とは?
既上場企業が新たに発行する株式(公募株式)や既に発行された株式(売出株式)を投資家に取得させることをいいます。
正確には、「PO」は「Public(公開の)Offering(売り物)」の略で、日本語では「公募」と呼ばれます。「公募」とは、「不特定かつ多数の投資家に対し、新たに発行される有価証券の取得の申込を勧誘すること」をいいます。
また、「売出」とは、「既に発行された有価証券の売付けの申込み又はその買付けの申込の勧誘のうち、均一の条件で50人以上の者を相手方として行う」ことをいい、通常は「公募」「売出」を合わせて「PO」と呼ばれます。
「新規公開株(IPO)」は未上場企業が直接金融市場からの資金調達や知名度・信用力の向上を目的として証券取引所に新規上場するために一般投資家に株式を取得してもらう行為であるのに対して、「公募・売出(PO)」は既に上場していて証券取引所での株式取引が行われている企業が追加の資金調達や大株主の保有株売却などを目的として一般投資家に株式を取得してもらう行為であり、「新規公開株(IPO)」と「公募・売出(PO)」の違いを簡単にいえば、実施する企業が「未上場」か「既上場」かの違いといえます。

POの概要

まとめ

今回のPOは、公募による新投資口の発行です。発行価格等決定日や受渡期日、発行数量等は表1のようになっています。

ディスカウント率は、「発行価格等決定日」に決まり、その日の終値から数%(直近のJ-REITは2~2.5%)です。

参考までに、直近のJ-REITのPO銘柄のディスカウント率は、

  • ケネディクス・レジデンシャル・ネクスト、ザイマックス・リート、平和不動産リート、星野リゾート・リート、サムティ・レジデンシャル:2.5%

でした。

注意点として、どの証券会社でも購入できるわけでなく、主幹事(今回は、野村證券、みずほ証券、SMBC日興証券)はじめ、引受人の証券会社で購入申込可能です。

早ければ、8/9(火)の夕刻に、法人側から発行価格等のお知らせが適時開示であります。このブログ記事も更新しますので、チェックしてくださいね💖

発行価格等決定日2022 年 8 月 9 日(火)
受渡期日
(POで買った場合はこの日から売却可能)
2022 年 8 月 17 日(水)
公募による新投資口の発行
(一般募集)数量
132,300 口
発行済み投資口数 1,789,389 口 の約7.39%
③投資口の売出し
(オーバーアロットメントによる売出し)
数量
14,644 口(8/9実施決定
※上記の「発行価格等決定日」に決定野村證券が売出す。
調達資金手取り概算額(上限)約 76.5 億円
発行価格54,795 円(8/9決定)
ディスカウント率2.50 %(8/9決定)
申込単位数量1 口
主幹事野村證券、みずほ証券、SMBC日興証券
表1:スターアジア不動産 PO概要

新投資口発行の目的及び理由

  • 同投資法人は投資主利益の最大化を目指し、ポートフォリオ収益の「安定性」と「成長性」を確保するため、運用資産の規模拡大を図っている。
  • 今般、同投資法人は、資産規模の拡大及びポートフォリオ収益の安定性の強化を目的として、取得予定資産(計3物件(オフィス 1、商業施設 1、ホテル 1))を取得するため、
    市場動向、財務の健全性及び 1 口当たりの分配金水準にも留意しつつ検討を行った結果、新投資口を発行し資金調達を行うこととした。

今回の資金調達によって、オフィス1物件、商業施設1物件、ホテル1物件の計3物件(取得予定価格 約151.5億円)2022年8月に取得予定です。

取得後のポートフォリオの合計は、63物件、取得金額は1,948億円に拡大します。

今回の増資される投資口数は、発行済み口数の約7.93%で、

昨年(2021年)8月に公募増資を実施した時の、公募増資の発行済み総口数に対する割合(OA含む) 約6.9%と比較すると大規模の増資です。

ご参考までに、前回のPOの結果はどうだったかというと、

表2の結果となっており、POで購入した場合、

受渡日の寄付は0.1%損益マイナスでしたが、受渡日の大引と1週間後の大引では1%程度の損益プラスの結果でした。

受渡期日発行価格
[円]
ディス
カウント率
[%]
受渡日
始値[円]
(増減[円])
受渡日
終値[円](同)
1週間後
の終値[円]
(日付)
損益[円]
(増減率[%])
2021/
8/18
(水)
57,3302.5057,300
(-0.1)
58,200
(+1.5)
57,900
(8/25)
+570
(+1.0)
表2:スターアジア不動産 前回のPO銘柄の発行価格とその後の価格

また、この銘柄の直近の出来高(売買が成立した投資口の数量)の5日平均は16,584口25日平均は7,635口で、流動性は高い水準です。

どんな投資法人?

オフィスビル

不動産金融マーケットにおける豊富な経験と実績を持つメンバーを擁するスターアジア投資顧問株式会社にその運用を委託し、

オフィス、商業施設、住宅、物流施設、ホテル及び学生専用レジデンスを投資対象とする総合型REITとして、

収益の「安定性」と「成長性」を同時に取り込むことのできるポートフォリオの構築を通じて投資主の利益の最大化を目指しているJ-REITです。

【J-REITの簡単な説明】

投資信託の仲間であり、我々投資家は、東京証券取引所でJ-REIT(不動産投資法人)商品を購入し、J-REITが、商業施設やホテル、住宅などの不動産を保有・運営してその家賃収入や売却益を得て、その収益の中から分配金として投資家に配分されるもの。

※出所:一般財団法人 投資信託協会HP

J-REITは全体的に、高配当な銘柄が多く存在します。そして、分配月もばらけていますので、複数のJ-REITを保有すると分散投資にもなりますし、ほぼ毎月分配金をいただける嬉しい状況になります。

ーー

保有物件(2022年8月1日現在)は、60物件 1,796億円稼働率 97.7%(2022年6月30日時点)となっています。

このJ-REITの特徴は、

  1. 総合不動産ディベロッパーの開発力とファンド運用会社のソーシング力を活用した着実な外部成長
  2. スポンサー各社の強みを最大限に活かした総合型ポートフォリオの構築
    • スポンサー各社は、オフィス、住宅、ホテル及び商業施設その他の物件それぞれについて、豊富な実績に裏打ちされた専門性とノウハウを保有
    • 四大都市圏(東京、大阪、名古屋、福岡の各経済圏)を中心とした、地域分散の効いた総合型ポートフォリオを構築
  3. スポンサー各社の運用ノウハウ及びオペレーション力に支えられた安定運用及び内部成長

があります。

ポートフォリオ構築方針は、以下の比率を目処としています。

エリア別投資比率(取得価格ベース)>

  • コアエリア(東京、大阪、名古屋、福岡の各経済圏) 70%以上
  • サブエリア 30%以下

<用途別投資比率>

  • オフィス、住居 70%以上
  • ホテル、商業施設・その他 30%以下

ポートフォリオの分散状況は以下のようになっています。

エリア別投資比率

  • 都心5区(千代田区・中央区・港区・新宿区・渋谷区) 31.3%
  • その他東京圏 41.0%
  • その他 27.7%

アセットタイプ別比率

  • オフィス 40.5%
  • 住宅 21.0%
  • 物流施設 16.9%
  • ホテル 11.4%
  • 商業施設 10.2%

となっており、エリア別では「その他東京圏」

アセットタイプ別比率では「オフィス」が一番多く4割を占め、次に「住宅」が2番目に多く2割強を占めています。

直近の運用概況

経営状況

【2022年1月期の運用実績と2022年7月期以降の見通し】

(2022年3月16日発表)

決算期営業収益
[百万円]
(前期比[%])
営業利益
[百万円]
(同)
経常利益
[百万円]
(同)
当期純利益
[百万円]
(同)
1口当たり
分配金
[円]
(同[円])
2022年1月期実績5,960
(7.2)
3,087
(8.8)
2,517
(4.6)
2,516
(4.6)
1,478
(16)
2022年7月期会社予想5,923
(△0.6)
2,992
(△3.1)
2,500
(△0.7
)
2,499
(△0.7)
1,476
(△2)
2023年1月期会社予想
(2022年8月1日修正)
6,387
(7.8)
3,263
(9.0)
2,686
(7.4)
2,686
(7.4)
1,476
(±0)
2023年7月期会社予想
(2022年8月1日発表)
6,523
(2.1)
3,302
(1.1)
2,766
(2.9)
2,766
(2.9)
1,485
()
表3: スターアジア不動産投資法人 2022年1月期の運用実績と2022年7月期以降の見通し

表3のとおり、2022年1月期は、前期比 増収増益で、営業収益、利益面ともに微増の結果でした。

2022年7月期(2022年2月~7月)は、前期比 減収減益で、営業収益、利益面ともに微減の予想となっています。

増資した後の2023年1月期は、前期比増収増益で、営業収益利益面ともに1割弱増の予想で、

1口当たりの分配金の予想は、2023年1月期は前期比 変わらず2023年7月期は9円増額予想となっています。

【2022年1月期の運用状況】

  • ポートフォリオNOI (Net Operating Income:事業によって生み出される単純なキャッシュフロー) 4,261 百万円(予想比 +1.5 %
    • 総合型リートとしての強みを活かし、アセットタイプ毎の賃貸マーケットの強弱を吸収
    • 予想比でNOIの増額を実現し、NOIの上振れ分(一過性要因を除く)を増額して分配
    • 内部留保取り崩し額を減額し、次期以降の1口当たり分配金の安定化に活用
  • 1口当たりNAV(Net Asset Value:純資産価額) 3.0%増(対2021年7月期末比)
    2021年8月の新規取得物件の含み益による寄与、既存ポートフォリオにおいても鑑定評価額の増額(前期比)により、1口当たりNAVの3.0%成長を実現
  • 運用資産における稼働率の維持向上賃料増額管理運営コストの削減に継続的に注力し、当期末現在における運用資産(取得価格の合計1,796億円)の稼働率は96.7%と引き続き高水準

【資金調達の状況】

新投資口の発行

運用資産の規模と価値の成長を目的として、既存投資主の権利の希薄化及びそれに伴う投資口の取引価格の動向等に配慮しつつ、

新たに取得する不動産等の取得時期及びスポンサーのウェアハウジング機能の活用可能性、LTV(総資産に占める有利子負債の割合)水準、金融環境及び経済市況等を総合的に勘案して決定しています。

当期においては、2021年8月に実施した公募増資により63.6億円を資本市場から調達しました。

借入れの状況

当期末日(2022年1月31日)現在の有利子負債残高は、896億円(借入金残高886億円、投資法人債残高10億円)となり、総資産に占める有利子負債の割合(LTV)は46.4%(前期末比 0.4ポイント増(前期末 46.0%) )となりました。

【2022年7月期の見通し】

  • マーケット状況等を受けて、2021年1月期中にリーシング(賃料収入などの収益性確保のためにオフィスビルやテナントビルなど商業用不動産の賃貸支援を行う業務)戦略の深化(賃貸条件の柔軟性・機動性を一層高めること)を実行
    • 退去面積が新規契約面積を上回る状況からの転換を確認、2022年7月期における稼働率上昇に手応え
      2022年1月期 : 新規契約面積 > 退去面積
      2022年7月期 : 契約(予定)面積 > 退去(予定)面積
  • 当該施策が奏功し、2022年1月期末頃よりオフィス、住宅の稼働率は上昇傾向
  • 2022年7月期から2023年1月期にかけて、オフィス、住宅の稼働率の緩やかな上昇を想定

しています。

【2023年1月期の運用状況及び分配金の予想の修正と2023年7月期の予想】

2022年8月に予定している新規資産取得(オフィス1物件、商業施設1物件、ホテル1物件の計3物件)に伴い、

2023年1月期の運用状況と分配金予想の修正、2023年7月期の運用状況と分配金予想をしています。

2023年1月期の運用状況予想は表4です。

営業収益
[百万円]
営業利益
[百万円]
経常利益
[百万円]
当期純利益
[百万円]
1 口当たり
分配金
[円]
前回(2022/3/16)
発表予想
5,9953,0312,5522,5521,476
今回修正予想6,3873,2632,6862,6861,476
増減額392232134134
増減率[%]6.67.75.35.3
表4:2023年1月期の運用状況と分配金の修正予想(2022年8月1日発表)

前回発表予想から、営業収益は7%弱利益面は5~8%弱程度の増額修正をしています。

今回の新規取得資産は取得金額で約8.4%の増加率(1,796億円→1,948億円)からすると、

修正された営業収益や利益面の増額の割合は、今回の資産取得にほどほどに見合った増額といえます。

分配金は前回予想から変わらずの予想です。

2023年7月期の予想は、表3に記載のとおりです。

【格付けの状況】(2021年7月2日現在)

  • 日本格付研究所(JRC):
    長期発行体格付「A」(安定的)(※A:債務履行の確実性は高い。)
  • 株式会社格付投資情報センター(R&I):
    発行体格付「A-」(安定的)(※A:信用力は高く、部分的に優れた要素がある。)

投資口価格の動向

株価指標

2022/8/2(火)終値時点の数値

  • 投資口価格(1口当たり):57,400円
  • 信用倍率(信用買い残÷信用売り残):129倍
  • 年間分配金(法人予想):2,961円(2023年1月 1,476円、2023年7月 1,485円)、年間利回り:5.15%
決算期1口当たり
分配金(円)
2020年7月期3,436
2021年1月期1,676
2021年7月期1,462
2022年1月期1,478
2022年7月期1,476
(予想)
表5:スターアジア不動産投資法人
直近分配金推移

分配金利回りは5.15%で、上場株式の年利回り(東証プライムの単純平均:2.30%(8/1時点))と比較すると、高い水準ですが、

J-REITの平均利回り(5~6%台(2021年10月時点))と同水準です。

直近5期の分配金は、2020年8月1日付で投資口1口につき2口の割合による投資口分割が行われているため、2021年1月期の分配金は 2020年7月期のほぼ半額になっていますが、

それ以降は、1,462円~1,676円で推移(上下200円差)しています。

【直近の投資口価格推移】

<週足チャート(直近2年間)>

出所:楽天証券サイト

週足ベースの投資口価格は、一昨年のコロナショック時の安値から上昇し、昨年7月に高値(67,400円)をつけました。

しかしその後は調整し、現在は、60,000円近辺で三角保合い状態になっています。

<日足チャート(直近3か月間)>

出所:楽天証券サイト

直近の投資口価格は、5月につけた直近の安値(57,500円)から上昇し、6月末に高値(62,400円)をつけました。

しかしその後は調整しており、今回のPO発表の翌営業日(8/2)は一口当たりの希薄化懸念からか、大きめの陰線をつけて、前日比 1,900円安(-3.20%)と売られました。

これで、直近の安値を終値ベースで割り込んでいます。

今後は、2月につけた年初来安値(55,900円)を下抜けずに、上昇に転じていくのか、年初来安値を下抜けてさらに下値模索をするのか要注目です。

まとめ

まとめ

【ファンダメンタルズ】

  • オフィス、商業施設、住宅、物流施設、ホテル及び学生専用レジデンスを投資対象とする総合型REITとして、収益の「安定性」と「成長性」を同時に取り込むことのできるポートフォリオの構築を通じて投資主の利益の最大化を目指している
  • 東京圏を中心としたアセットタイプ(用途)分散型のポートフォリオを構築する総合型REITであり、収益の安定化が見込め、1口当たりNAVは増加傾向であり、稼働率は高水準。
  • 2022年1月期の運用状況は、前期比 増収増益で、営業収益利益面ともに微増で着地。
    2022年7月期(2022年2月~7月)は、前期比 減収減益で、営業収益、利益面ともに微減の予想。
  • 増資した後の2023年1月期は、前期比 増収増益で、営業収益利益面ともに1割弱増の予想となっている。
  • 今回の資金調達による資産取得により、2023年1月期の運用状況予想を前回発表予想から、営業収益は7%弱利益面は5~8%弱程度の増額修正しており、
    今回の新規取得資産は取得金額で約8.4%の増加率(1,796億円→1,948億円)からすると、修正された営業収益や利益面の増額の割合は、今回の資産取得にほぼほぼ見合った増額といえる。

【インカムゲイン】

  • 分配金の年利回り 5.15%は、東証プライム上場会社の単純平均2.30%(8/1時点)と比較して高い水準だが、J-REITの利回り(5~6%台(2021年10月時点))と比較すると同水準
  • 直近5期の分配金は、投資口分割後は、1,462円~1,676円で推移(上下200円差)しており、ほぼ一定。
  • 1口当たりの分配金の予想は、2023年1月期は前期比変わらず2023年7月期は同9円増額予想となっており、順調に分配金を増額する予定。

【流動性】

  • 直近の出来高の5日平均は16,584口25日平均は7,635口で、流動性は高い水準

【投資口価格モメンタム】

  • 週足レベルの投資口価格は、一昨年のコロナショック時の安値から上昇し、昨年7月に高値(67,400円)をつけた。
    しかしその後は少し調整し、現在は、60,000円近辺で三角保合い状態になっている。
  • 直近の投資口価格は、5月につけた直近の安値(57,500円)から上昇し、6月末に高値(62,400円)をつけた。
    しかし、その後は調整しており、今回のPO発表の翌営業日(8/2)は一口当たりの希薄化懸念からか、大きめの陰線をつけて、前日比 1,900円安(-3.20%)と売られた。
  • 今後の投資口価格は、2月につけた年初来安値(55,900円)を下抜けずに、上昇に転じていくのか、年初来安値を下抜けてさらに下値模索をするのか、要注目。

以上をふまえ、

レベル(最低⭐~最高⭐⭐⭐⭐⭐)
ファンダメンタルズ⭐⭐⭐
インカムゲイン⭐⭐⭐⭐
流動性⭐⭐⭐⭐
投資口価格モメンタム⭐⭐
総合判定⭐⭐⭐(中立)
※「総合判定」で⭐4つ以上「買い」、⭐3つ「中立」、⭐2つ以下「見送り」

と判断しました。

参考になればうれしいです!最後までご覧いただき、ありがとうございました。

※株式投資の実際の売買は、自己判断、自己責任でお願いします。

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