【自社株買いは買いか?】コーナン商事(7516)

DIY株式投資
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こんにちは!

直近で自己株式の取得を発表した銘柄に関して、この発表のタイミングで株を買った場合、利益を得ることができるのか?足元の経営状況や客観的な指標、株価モメンタム等を踏まえ、総合的に分析しました。

今回は、東証プライムから小売業種のコーナン商事です。

最後までお付き合いいただけるとうれしいです!

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  • 「自社株買い」とは?

上場企業が自らの資金を使って、株式市場から自社の株式を買い戻すことをいう。

日本証券業協会HP 金融・証券用語集

自社の株を買った後は、

  1. 買い戻した株式を消却する。(無効とする。)
  2. 金庫株としてそのままにしておき、いずれ資金調達などの目的で売却する。

の2通りあります。

自社株買いのメリットとデメリット

<メリット>

  1. 発行済み株式数が減るため、会社の利益総額が変わらなければ、1株当たり利益(EPS)が増えるので、企業価値が上がる=株価が上がる可能性がある。(配当とともに株主還元の一つ)
  2. 配当金の支払いが少なくて済む。(企業側のメリット)
  3. 敵対的買収の防衛策(株価が上がって敵対企業が株を買いにくくなることと、市場に出回る株数の割合が少なくなるため)
  4. ROE(株主資本利益率:ROE = 当期純利益 ÷ 自己資本×100(%))が上がる。
    • 自社株買いを行った場合、自己資金が減りますので、分母の「自己資本」が小さくなりROEが上がります。
  5. 自社の株価は「割安」というメッセージを送ることができる。
    • 自社の株が安い時に買った方が、購入資金が少なくて済みます。(企業側のメリット)

<デメリット>

  1. 自己資金が減り、設備投資などの自社の成長に回せる資金が少なくなる。
  2. 自己資本比率(自己資本(総資本-他人資本)÷総資産) ×100)が下がる。

などがあります。

それでは、見ていきましょう!

自社株買いの概要

まとめ

会社から発表された自己株式取得の概要は、表1のようになっています。

株数と金額の上限が設定されていますが、株価が上がれば、取得に必要な金額も大きくなりますので、予定の取得株数よりも少なくなることが多いです。

自社株買い発表日2022年4月11日(月)
自己株式取得を行う理由・株主還元の充実及び資本効率の向上
・経営環境の変化に応じた機動的な資本政策の遂行を図るため
取得期間2022年4月12日~ 2022年9月30日
取得株式の総数普通株式 120万株(上限)
発行済株式総数(自己株式を除く)に対する割合:3.69%
取得金額の総額40億円(上限)
取得方法東京証券取引所における市場買付
表1:コーナン商事 自社株買い概要

今回の自己株式の取得数量は、発行済み株式総数の3.69%と自社株買いの数量としては多い数量(※1)です。

※1 一概に言えませんが、目安として、5%以上:かなり多い、3%以上5%未満:多い、1%以上3%未満:ほどほど、1%未満:少ないとしています。

直近の出来高(売買が成立した株式の数量)の5日平均は1,953百株、25日平均は1,123百株で、流動性は平均的な水準です(1,000百株を平均水準としています)。

どんな会社?

ホームセンター

大阪発祥の、DIY用品、家庭用品、カー&レジャーなど「住まいと暮らし」にかかわる商品エリアを幅広くカバーするとともに、

各店にDIY専門スタッフを配置し、「モノ+情報」の提供をめざす地域密着型のホームセンターを運営している会社です。

ホームセンター事業の他に、建築職人向け小売業会員制建築資材卸売り業不動産賃貸業なども行っています。

2022年2月期通期の商品別売上高構成比は、

  • ホームインプルーブメント(DIY用品) 47.2%
  • ハウスキーピング(家庭用品) 33.7%
  • ペット・レジャー(ペット・レジャー用品) 16.1%
  • その他(100円ショップ、灯油、自販機) 3.0%

となっており、「ホームインプルーブメント」と「ハウスキーピング」それぞれ4割前後と多くなっています。

直近の経営概況

経営状況

2022年2月期(2021年3月~2022年2月)の経営成績】(2022年4月11日発表)

決算期営業収益
[億円]
(前期比[%])
営業利益
[億円]
(同)
経常利益
[億円]
(同)
親会社株主に
帰属する
当期純利益
[億円]
(同)
2021年2月期通期実績4,420
(18.0)
309
(54.1)
297
(57.4)
186
(57.6)
2022年2月期通期実績4,412
(△0.2)
257
(△16.6)
242
(18.7)
155
(16.4)
2023年2月期通期会社予想 ※4,477
(3.9)
260
(0.6)
244
(0.6)
158
(1.0)
表2:コーナン商事 2022年2月期通期経営成績と2023年2月期通期予想
※2023年2月期の期首より「収益認識に関する会計基準」等を適用するため、上記の連結予想は当該会計基準等を適用した後の金額となっており、対前期及び対前年同四半期増減率については、2022年2月期に当該会計基準等を適用したと仮定して算定した増減率を記載

2022年2月期通期の業績は、前年同期比 減収減益で、売上高は微減ですが、利益面は1~2割程度の減益の結果でした。

2023年2月期通期の業績は、前期比 増収増益売上高、利益面ともに微増を見込んでいます。

【2022年2月期通期の状況、経営成績の要因】

同社グループは、2021年4月に、「第3次中期経営計画~ずっと大好きや!!コーナン~これからもあなたにぴったり」を公表しました。

今次中期経営計画では、全ての経営活動を「お客様視点」へ転換させるべく、「変革」をスローガンに5つの重点戦略を打ち出し、現在、計画達成に向け各種施策に取り組んでいます。

店舗拡充の分野では、ホームセンターコーナン13店舗コーナンプロ5店舗CAMP DEPOT5店舗KOHNAN VIETNAM2店舗建デポ3店舗を出店した他、

ホームセンターコーナン3店舗コーナンプロ1店舗建デポ1店舗を閉店したため、

当連結会計年度末現在の店舗数は502店舗(ホームセンターコーナン308店舗、コーナンプロ102店舗、CAMP DEPOT6店舗、ホームセンタービーバートザン6店舗、ビーバープロ4店舗、KOHNAN VIETNAM8店舗、建デポ直営店66店舗・FC店2店舗)となりました。

なお、KOHNAN VIETNAM CO.,LTD.の当連結会計年度は、2021年1月1日から2021年12月31日であるため、当連結会計年度末現在の店舗数は、2021年12月31日現在の店舗数です。

これらの結果、当連結会計期間の業績については、表2の通りとなっています。

【商品別の売上高】

商品別の業績は、表3の結果になりました。

セグメント売上高[億円]
(前年比
増減率[%])
ホームインプルーブメント
(DIY用品)
2,011
(4.4)
ハウスキーピング
(家庭用品)
1,433
(△6.5)
ペット・レジャー
(ペット・レジャー用品)
68.3
(0.6)
その他12.8
(△2.5)
表3:2022年2月期通期  商品別売上高

ホームインプルーブメント」と「ペットレジャー」は増収

ハウスキーピング」と「その他」は減収の結果でした。

前期の新型コロナウイルス関連需要急拡大の反動により日用品、薬品等を中心としたハウスキーピング部門が伸び悩みました。

一方で、消費者の購買行動の変化等により木材・建材、工具等を中心としたホームインプルーブメント部門が好調に推移しました。

【財政面の状況】

自己資本比率>(自己資本(総資本-他人資本)÷総資産)×100

2022年2月期末時点で35.8%と前期末(33.7%)から2.1ポイント増加しました。

自己資本比率の数値としてはまだ問題ないレベルです。(20%以上を安全圏内としています。)

キャッシュ・フロー>2022年2月期通期のキャッシュ・フロー(以下、CF)の状況

  • フリーCF(営業活動によるCFと投資活動によるCFを合計した金額)※ 47.5億円のプラス
    • 営業活動によるCF 174億円の収入(前期 351億円の収入)
    • 投資活動によるCF 126億円の支出(前期 152億円の支出)

 ※フリー・キャッシュ・フロー

  • プラスの場合:会社が自由に使える資金が増える
  • マイナスの場合:会社が自由に使える資金が減る

前期(2021年2月期)通期のフリーCF(プラス199億円)から151億円悪化しています。

営業活動によるCFの主な内訳(億円):

  • 税金等調整前当期純利益 231
  • 利息の支払い △21.9
  • 法人税等の支払い △114

投資活動によるCFの主な内訳(億円):

  • 有形固定資産の取得による支出 △93.4
  • 無形固定資産の取得による支出 △17.4

【今期(2023年2月期通期)業績の見通し】

我が国経済は、新型コロナウイルス感染症の影響が長期化する中、

ワクチン接種の普及拡大等によって経済活動が正常化に向かう動きが期待されるものの、エネルギー・原材料価格の更なる高騰などが懸念され、先行き不透明な経営環境が継続することを想定しています。

その結果、表2の増収増益の業績を見込んでいます。

なお、2023年2月期の期首より「収益認識に関する会計基準」(企業会計基準第29号)等を適用するため、連結業績見込みは当該会計基準等を適用した後の金額となっており、

対前期比については、2022年2月期に当該会計基準等を適用したと仮定して算定した増減率を記載しています。

株価指標と動向

株価指標

【2022/4/13(水)終値時点の数値】

  • 株価:3,680円
  • 時価総額:1,276億円
  • PER(株価収益率):7.32倍

PERは、同業で時価総額が近い、ナフコ(2790) 6.8倍、DCMホールディングス(3050) 8.0倍、アークランドサカモト(9842) 4.5倍と比較すると、中間的な水準です。

  • PBR(株価純資産倍率):0.81倍
  • 信用倍率(信用買い残÷信用売り残):11.6倍
  • 年間配当金(予想):90円(年2回 8月 45円、2月 45円)、年間利回り:2.4%(配当性向 18.1%)
決算期1株当たり
年間配当金(円)
配当性向(%)
2018年2月期5017.2
2019年2月期5216.5
2020年2月期5415.7
2021年2月期6110.9
2022年2月期7014.3
表4:コーナン商事 年間配当金推移

年利回りは2.4%で、東証プライムの単純平均2.27%(4/12時点) と比較すると少し高い水準です。

表4のように、直近5年間の配当金は、連続増配を継続中です。

配当性向は、10~20%と低めで推移しています。

この会社は、

  • 株主に対する利益の還元を経営上の重要施策の⼀つとして位置づけ、業績の⾒通し、事業活動への投資、財務健全性などを総合的に判断しながら、⻑期にわたって安定した配当を実施
  • ⾃⼰株式の取得についても業績ならびに株価⽔準等に応じ、適宜検討

を基本方針としています。

また、2023 年2月期は、自己株式取得を行うとしており、今回の自社株買いを実施しています。

そして、同社の第3次中期経営計画期間中(2021-2025)において、

  • 総還元性向 30%以上
  • 株主資本配当率(DOE)2%

をめざすとしています。こちらは、投資家にとって期待できる内容ですね!

【株主優待】

この会社は株主優待があり、毎年2月末に100株以上保有の株主に、コーナン商事で使用できる商品券を100株につき1,000円分✕1枚(10枚上限)贈呈されます。

また、3年以上継続保有の株主には、300株以上で1枚加算1,000株以上で3枚加算されます。

100株保有の場合、配当金+株主優待(1,000円相当)で、年利回り 2.7%になります。

【直近の株価動向】

<週足チャート(直近2年間)>

出所:楽天証券サイト

週足ベースの株価は、一昨年のコロナショック時の安値から、高値切り上げ安値切り上げの上昇トレンドで推移し、昨年7月に上場来高値(4,680円)をつけました。

しかしその後は、高値を更新できずに調整しています。

<日足チャート(直近3か月間)>

出所:楽天証券サイト

直近の株価は、今年1月につけた安値(3,285円)から、上昇トレンドで推移し、

今回の2022年2月期決算発表と自社株買い発表の翌営業日(4/12)に、これを好感されて、大きめの陽線をつけて上昇しました。

そして翌営業日(4/13)は年初来高値(3,795円)を更新しています。

今後は、この年初来高値を再更新していくのか、上昇が失速するのか、要注目です。

まとめ

まとめ

【業績】

  • 2022年2月期通期の業績は、主力のホームインプルーブメント(DIY用品)が好調だったが、前期の新型コロナウイルス関連需要急拡大の反動により日用品、薬品等を中心としたハウスキーピング部門が伸び悩み前年同期比 減収減益で、売上高は微減利益面は1~2割程度の減益の結果。
  • 2023年2月期通期の業績予想は、前期比 増収増益で売上高、利益面ともに微増を見込んでいる。

【株主還元】

  • 配当金年利回りは2.4%で、東証プライムの単純平均2.27%(4/12時点) と比較すると少し高い水準
  • 直近5年の配当金は、連続増配を継続中配当性向は、10~20%で低めで推移
  • 第3次中期経営計画(2021-2025)において、期間中は、総還元性向 30%以上株主資本配当率(DOE)2%を掲げており、株主にとって期待できる内容

【流動性・自社株買い数量】

  • 直近の出来高5日平均は1,953百株、25日平均は1,123百株で、流動性は平均的な水準
  • 今回の自社株買い数量は、発行済み株数(自己株式を除く)の3.69%と多い数量

【株価モメンタム】

  • 週足ベースの株価は、一昨年のコロナショック時の安値から、高値切り上げ安値切り上げの上昇トレンドで推移し、昨年7月に上場来高値(4,680円)をつけたが、その後は高値を更新できずに調整
  • 直近の株価は、今年1月につけた安値(3,285円)から、上昇トレンドで推移し、今回の2022年2月期決算発表と自社株買い発表の翌営業日(4/12)に、これを好感されて、大きめの陽線をつけて上昇
    そして、翌営業日(4/13)は年初来高値(3,795円)を更新
  • 今後の株価は、この年初来高値を再更新していくのか、上昇が失速するのか要注目。

以上のことから、

レベル(最低⭐~最高⭐⭐⭐⭐⭐)
業績⭐⭐⭐
配当を含む株主還元⭐⭐⭐⭐
株価モメンタム⭐⭐⭐⭐
流動性⭐⭐⭐
自社株買い数量⭐⭐⭐⭐
総合判定⭐⭐⭐⭐(買い)
※「総合判定」=⭐4つ以上「買い」、⭐3つ「中立」、⭐2つ以下「見送り」

と判断しました。

最後までご覧いただき、ありがとうございました。

※株式投資の実際の売買は、自己判断、自己責任でお願いします。

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