【自社株買い銘柄は買いか?】三井物産(8031)

まとめ株式投資
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こんにちは!

直近で自社株式の取得を発表した銘柄に関して、この発表のタイミングで株を買った場合、利益を得ることができるのか?直近の経営状況や客観的な指標、株価モメンタム等を踏まえ、総合的に分析しました。

今回は、東証1部から卸売業種の三井物産です。

最後までお付き合いいただけるとうれしいです!

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  • 「自社株買い」とは?

上場企業が自らの資金を使って、株式市場から自社の株式を買い戻すことをいう。

日本証券業協会HP 金融・証券用語集

自社の株を買った後は、

  1. 買い戻した株式を消却する。(無効とする。)
  2. 金庫株としてそのままにしておき、いずれ資金調達などの目的で売却する。

の2通りあります。

自社株買いのメリットとデメリット

<メリット>

  1. 発行済み株式数が減るため、会社の利益総額が変わらなければ、1株当たり利益(EPS)が増えるので、企業価値が上がる=株価が上がる可能性がある。(配当とともに株主還元の一つ)
  2. 配当金の支払いが少なくて済む。(企業側のメリット)
  3. 敵対的買収の防衛策(株価が上がって敵対企業が株を買いにくくなることと、市場に出回る株数の割合が少なくなるため)
  4. ROE(株主資本利益率:ROE = 当期純利益 ÷ 自己資本×100(%))が上がる。
    • 自社株買いを行った場合、自己資金が減りますので、分母の「自己資本」が少なくなりROEが上がります。
  5. 自社の株価は割安だとメッセージを送ることができる。
    • 自社の株が安い時に買った方が、購入資金が少なくて済みます。(企業側のメリット)

<デメリット>

  1. 自己資金が減り、設備投資などの自社の成長に回せる資金が少なくなる。
  2. 自己資本比率(自己資本(総資本-他人資本)÷総資産) ×100)が下がる。

などがあります。

それでは、見ていきましょう!

自己株式取得の概要

LNG

会社から発表された自社株買いの概要は以下です。

株数と金額の上限が設定されていますが、株価が上がれば、取得に必要な金額も大きくなりますので、予定の取得株数よりも少なくなることが多いです。

自社株買いの理由株主還元の拡充および資本効率の向上のため
自社株買い発表日2021年8月3日(火)
取得期間2021年8月4日~ 2021年10月29日
取得株式の総数普通株式 3,000万株(上限)
発行済株式総数(自己株式を除く)に対する割合:1.8%
取得金額の総額500億円(上限)
取得方法東京証券取引所における市場買付

取得数量は、発行済み株数(自己株式除く)の1.8%とほどほどの数量ですが、金額が500億円と、時価総額が大きい分、かなりの金額になっています。

また、この銘柄の直近の出来高(売買が成立した株式の数量)の 5日平均は60,321百株、25日平均は37,245百株ですので、流動性は高いレベルです。

どんな会社?

金属鉱山

皆さんご存知の、世界を股にかけビジネスを展開している、大手総合商社の一角を占める会社です。

主な事業内容としては、

金属資源、エネルギー、プロジェクト、モビリティ、化学品、鉄鋼製品、食料、流通事業、ウェルネス事業、ICT事業、コーポレートディベロップメントの各分野において、全世界に広がる営業拠点とネットワーク、情報力などを活かし、多種多様な商品販売とそれを支えるロジスティクス、ファイナンス、さらには国際的なプロジェクト案件の構築など、各種事業を多角的に展開しています。

2022年3月期1Q(2021年4月~6月)のセグメント別売上高構成比は、

  • 金属資源 17.7%
  • エネルギー 21.0%
  • 機械・インフラ(プロジェクト、モビリティ) 6.5%
  • 化学品 25.0%
  • 鉄鋼製品 5.3%
  • 生活産業(食料、流通、ウェルネス) 22.6%
  • 次世代・機能推進(ICT事業、コーポレートディベロップメント) 1.9%

となっており、エネルギー、化学品、生活産業がそれぞれ20数%で、大きなウェイトを占めています。

直近の経営状況

経営状況

2022年3月期1Q(2021年4月~2021年6月)の経営成績

決算期収益[百万円]
(前年同期比)
税引前利益[百万円]
(同)
四半期利益[百万円]
(同)
親会社の所有者に帰属する
純利益[百万円]
(同)
2021年3月期1Q累計1,845,373101,99066,66362,557
2022年3月期1Q累計2,658,034
(44.0%増)
256,191
(151%増)
200,005
(200%増)
191,264
(206%増)
2022年3月期通期会社予想ー ※ー ※ー ※640,000
(90.8%増)
通期予想に対する1Qの進捗率ー ※ー ※ー ※29.9%

2022年3月期1Qの業績は前年同期比 増収増益で、収益は40%増、利益面は倍以上の利益を上げており、好調です。

通期計画に対する進捗率は、会社予想が純利益しか開示していませんが、約30%と順調な進捗です。

【2022年3月期1Qの状況、経営成績の要因】

収益は、前年同期比8,126億円の増加となりました。

売上総利益は、主に金属資源セグメント、化学品セグメント、次世代・機能推進セグメントで増益となりましたが、エネルギーセグメントは減益となりました。

販売費及び一般管理費は負担増となりましたが、金属資源セグメントのみは負担減となっています。

セグメント別では、

セグメント売上総利益[億円]
(前年同期比)
親会社支配者に所属する
四半期利益[億円]

(前年同期比(額))
金属資源1,068(2.1倍1,190(3.7倍
エネルギー180(29.7%減△12(+35億円)
機械・インフラ320(19.9%増292(57.8%増
化学品449(50.2%増159(2.5倍
鉄鋼製品79(46.3%増67(△13億円)
生活産業346(24.5%増139(△56億円)
次世代・機能推進 238(2.6%増 104(1.0%減

の結果でした。「エネルギー」のみは減益となっていますが、他のセグメントは総じて売上総利益は増益となっており好調です。特に、「金属資源」は倍以上の伸びとなっています。

<金属資源>

売上総利益の増益の主因は、

  • 豪州鉄鉱石事業は、販売価格の上昇を主因に512億円の増益
  • 豪州石炭事業は、販売価格の上昇と操業費の削減を主因に34億円の増益

<エネルギー>

売上総利益の減益の主因は、

  • 本店事業部にてLNG(液化天然ガス)トレーディング関連の収益減少を主因に減益
  • Mitsui & Co. Energy Trading Singaporeは、前期トレーディング好調反動を主因に68億円の減益
  • Mitsui E&P Middle Eastは、生産量減少を主因に41億円の減益
  • Mitsui E&P USAは、ガス価格の上昇を主因に38億円の増益

<機械・インフラ>

持分法による投資損益の増益がありましたが、その主因は以下のとおりです。

  • MBK USA Commercial Vehiclesはトラックリース・レンタル事業好調で47億円の増益
  • 当期において、カナダ自動車関連会社は販売堅調等で増益

<化学品>

売上総利益の増益の主因は以下のとおりです。

  • 当期より欧州農薬販社Belchim Crop Protectionの連結化に伴い増益

<鉄鋼製品>(コメントなし)

<生活産業>

持分法による投資損益の増益があり、主因は以下のとおりです。

  • WILSEY FOODSは、出資先である米国加工油脂食品製造Ventura Foodsの大豆油相場上昇及び外食向け需要回復による好業績を受け、53億円の増益
  • IHH Healthcareは、前年同期におけるインド子会社の暖簾減損及び新型コロナウイルス感染症の影響の反動と、当期においてオペレーションの改善並びに新型コロナウイルス関連収益が増加したことにより、51億円の増益
  • 当期において、PHCホールディングスは保有する転換社債の評価益及び新型コロナウイルス関連商品の販売好調を主因に増益

<次世代・機能推進 >

売上総利益の増益は、当期において、米国Proterraの株式上場に伴う公正価値評価益35億円を計上したことが主因です。

【財政面の状況】

自己資本比率(自己資本(総資本-他人資本)÷総資産) ×100)は、2022年3月期1Q末時点で36.7%と前期末(36.5%)から0.2ポイント上がっています。数値も問題ないレベルです。(20%以上を問題なしとしています。)

また、2022年3月期1Q累計のキャッシュ・フロー(以下、CF)の状況は、営業活動によるCF 1,793億円の収入、投資活動によるCF 925億円の支出の結果、営業活動によるCFと投資活動によるCFを合計したフリーCF※は868億円のプラスとなりました。

フリー・キャッシュ・フロー:プラスの場合、会社が使える資金があることを意味し、マイナスの場合、会社が自由に使うことができる資金が少ないことを意味する。

前期(2021年3月期)1QのフリーCF(プラス555億円)から313億円改善されており、良好な状態です。

【今期の見通し】

今1Qの決算発表と同時に上方修正しており、純利益を当初予想から約40%(前回予想 4,600億円)増加しています。

修正の理由は、好調な商品市況を受け、金属資源セグメント、エネルギーセグメントにおいてそれぞれ 1,600億円、200億円(計 1,800億円の増額)の上方修正です。

株価指標

株価指標

【8/5(木)終値時点の数値】

  • 株価:2,650.5円
  • 時価総額:4兆4,723億円
  • PER:6.78倍

PERは、同業で時価総額が近い、伊藤忠商事(8001) 9.1倍、住友商事(8053) 8.5倍、三菱商事(8058) 12.4倍と比較すると、低い水準になっています。

  • PBR:0.96倍
  • 信用倍率(信用買い残÷信用売り残):4.55倍
  • 年間配当金(予想):90円(年2回 9月 45円、3月 45円)、年間利回り:3.4%(配当性向 23.1%) 

※直近5年間の配当金と配当性向は、以下のようになっています。

決算期年間配当金(円)配当性向(%)
2017年3月期5564.2
2018年3月期7034.2
2019年3月期8063.2
2020年3月期8036.1
2021年3月期85102
※三井物産 年間配当金推移

配当は、直近5年ではほぼ毎年増配されています。

また、基本的には、年間の配当金額は減らさない方針のようです。

会社の方針は、

  • 企業価値向上・株主価値極大化を図るべく、内部留保を通じて重点分野・成長分野での資金需要に対応する一方で、業績の一部について配当を通じて株主に直接還元していくことを基本方針とする
  • 上記に加え、資本効率向上等を目的とする自己株式取得につき、引続き投資需要の将来動向、フリー・キャッシュ・フロー水準、有利子負債及び株主資本利益率等、経営を取り巻く諸環境を勘案し、その金額、時期も含め都度機動的に決定する

としています。

また、2020年5月1日に公表した中期経営計画では、配当については安定性・継続性を重視し、安定的に創出可能と判断した基礎営業キャッシュ・フローの水準に基づき、80円を一株当たり年間配当額の下限と設定していましたが、今般のキャッシュ創出力の向上を踏まえ、その下限を一株当たり10円引き上げ、90円と再設定する。としています。

配当金額の最低ラインが設定されると、株主は安心ですね!

【直近の株価動向】

<週足チャート(直近2年間)>

出所:楽天証券サイト

株価は、昨年のコロナショック時の安値(1,378円)を付けた後は、時折押し目はあるものの、ずっと上昇トレンドが続いており、現在はその安値のほぼ2倍になっています。

<日足チャート(直近3か月間)>

出所:楽天証券サイト

直近では、1~2か月ほどもみ合いが続いていたのですが、8/3のザラバ(取引時間)中に、今回の自社株買いと通期の上方修正が発表されて、出来高を伴い買われ、大きな陽線を付けました。

その後は、まだ2営業日しかたっていませんが、少し下げています。

今後、8/3の高値(2,746.5円)を上抜けてくれば、さらなる上昇が期待できそうですね。

まとめ

まとめ

【業績】

2022年3月期1Qの業績は前年同期比で、収益は40%増、利益面は倍以上の利益を上げており好調。

今期は、資源高を受け、特に金属資源セグメントとエネルギーセグメントが好調で、今回の1Qの決算発表と同時に、今期(2022年3月期)通期の業績予想を、純利益で1,800億円上方修正している。

【株主還元】

配当の年利回りは3.4%と、東証1部平均(8/4時点)の1.84%と比較するとかなり高い。

配当方針は、金額の最低ライン(1株当たり90円)を設定しており、この点は金額がこれ以上下がらないという安心感がある。

また、今回の自社株買い(3,000万株(上限)、500億円(上限))と合わせ、今年(2021年)に入って2回の自社株買いを実施済み(金額 500億円×2回)であり、これと合わせると計1,500億円もの金額の自社株買いを実施することになる。

【流動性・自社株買い数量】

直近の出来高(売買が成立した株式の数量)の 5日平均は60,321百株、25日平均は37,245百株と流動性は高いレベル。

自社株買いの株数は、発行済株式総数(自己株式を除く) の 1.8%とほどほどの数量だが、今回だけでなく今年に入って3回目の自社株買いであり、この株主還元の規模は好感が持てる。

【株価モメンタム】

昨年のコロナショック後の安値から、ずっと上昇トレンドを継続している。

直近の高値(8/3:2,746.5円)を上抜けてくれば、さらなる上昇もありそう。

以上のことから、

レベル(最低⭐~最高⭐⭐⭐⭐⭐)
業績⭐⭐⭐⭐
配当を含む株主還元⭐⭐⭐⭐
株価モメンタム⭐⭐⭐⭐⭐
流動性⭐⭐⭐⭐⭐
自社株買い数量⭐⭐⭐⭐
総合判定⭐⭐⭐⭐ (買い)
※「総合判定」=⭐4つ以上「買い」、⭐3つ「中立」、⭐2つ以下「見送り」

と判断しました。

最後までご覧いただき、ありがとうございました。

※株式投資の実際の売買は、自己判断、自己責任でお願いします。

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