こんにちは!
会社四季報2021年2集(2021年3月発売)の営業利益予想が、会社予想に比べ大幅に乖離(乖離率30%以上)している銘柄の中で、直近の四半期決算発表以降、上方修正を発表していない企業に絞り、今後上方修正はあるのか分析してみました。
第9回目は、医薬品業種から、日経225採用銘柄の武田薬品工業です。
事業内容
オンコロジー(がん)、希少疾患、ニューロサイエンス(神経精神疾患)および消化器系疾患の4つの疾患領域に注力し、グローバルな研究開発型バイオ医薬品のリーディングカンパニーにふさわしい規模と専門性を有している企業です。
血漿分画製剤やワクチンへの投資にも注力しています。米国モデルナ社の新型コロナウイルス感染症ワクチンの製造販売承認取得後、2021 年前半から 5,000 万回接種分を日本国内で順次供給予定となっています。
2019年1月には、希少疾患に関する医薬品の開発・製造を行うシャイアー社を460億ポンド(日本円で当時6兆8,000億円)で巨額の買収をしました。この巨額買収は市場でもかなり話題になりましたね!
主要なカテゴリ別の売上高の構成は、消化器系疾患 24%、希少疾患 19%、血漿分画製剤(PDT) 13%、オンコロジー 13%、ニューロサイエンス 13%となっています。(2020年10月29日会社発表:2021年3月期上期決算資料より)
地域別の売上高構成(2021年3月期3Q累計)は、日本 17.9%、米国 49.0%、欧州及びカナダ 20.6%です。米国が半分を占めています。
直近の経営状況
2021年3月期3Q累計の経営状況は、売上高は2兆4,275億円(前年同四半期比3.6%減)、損益面では、営業利益3,587億円(同120.7%増)、税引前利益2,353億円(同320.2%増)、親会社の所有者に帰属する四半期純利益1,789億円(同320.8%増)となっています。
主要な疾患領域のうち、消化器系疾患、血漿由来の免疫疾患治療およびオンコロジー(がん)は増収となりましたが、これら疾患領域の増収は、希少疾患における競争の激化や後発品の浸透による影響、および製品ポートフォリオ全般に亘った為替変動による減収影響を受けて相殺されています。
疾患領域以外の売上収益は、主に前年度に完了した複数の事業売却による減収影響、および高尿酸血症治療剤「ユーロリック」や痛風治療剤「コルクリス」等の特許満了製品の減収影響を受け、1,104億円の減収(19.9%減)となっています。
3Q決算発表と同時に、親会社の所有者に帰属する当期利益のみ上方修正されています。前回公表予想から565億円増益(45.6%増)の1,805億円に修正しました。これは主に、現在進行している組織体制における統合や最適化に関連する税金費用が減少することを反映し、前提税率を見直したことによるものです。
営業利益が前期と比べ大幅に伸びているのは、主としてシャイアー社買収の企業結合会計に係る費用と統合費用が大幅に減少していることが要因です。
株価指標
4/27(火)終値時点の数値
株価:3,643円
時価総額:5兆7,481億円
PER:17.44倍
PERは、同業で時価総額が近い、アステラス(4503) 17.51倍、第一三共(4568) 104.87倍、大塚HLD(4578) 15.76倍、中間的な水準です。
PBR:1.22倍
信用倍率(信用買い残÷信用売り残):35.54倍
年間配当金(予想):180円(年2回 9月、3月)、年間利回り:4.9%
※直近5年間では、2016年3月期 180円,2017年 180円,2018年 180円,2019年 180円,2020年 180円でした。5年間配当金額は一定です。
東証一部銘柄の平均(4/27時点)1.67%に比べ、かなり高い水準となっています。
直近の株価は、日足で下落傾向です。週足では、3,600円付近の下値抵抗線に支えられ、その下値付近にあります。
週足チャート(2年間):
まとめ
2021年3月期3Q累計の営業利益は、前期で計上していたシャイアー社の買収費用がなくなったため、高水準な数字になっています。
実質的なCore営業利益率は、32.1%と高い収益性を誇っています。
※実質的なCore営業利益:シャイアー社の統合費用や企業統合会計に伴う非資金性の費用など、当社の本業に起因しない(ノン・コア)事象による影響を控除した営業利益
米国モデルナ社の新型コロナウイルス感染症ワクチンが、日本で承認されれば、さらに業績が加速しそうです。
株価も直近では安くなっており、配当利回りが年4.9%と高水準ですので、今が絶好の買い場かもしれません。
次回決算発表予定日:5/11(火)
※株式投資は、自己判断、自己責任でお願いします。