【上方修正・増配は買いか?】ティラド(7236)

銘柄分析
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こんにちは!

直近で今期業績予想の上方修正と増配を発表した銘柄に関して、このタイミングで株を買った場合、利益を得ることができるのか?

足元の経営状況や客観的な指標、株価モメンタム等を踏まえ、総合的に分析しました。

今回は、東証プライムから輸送用機器業種のティラドです。

最後までお付き合いいただけるとうれしいです!

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「上方修正」とは?

企業が決算において以前掲げていた予想利益などの数字を引き上げることを指します。

売り上げ増加や環境改善など、想定していなかった要因によって従来予想以上の達成が見込まれるときに発表されます。

SMBC日興証券HPより

特に利益面が上方修正されると、1株当たり利益(EPS)が上昇する可能性が高くなりますので、

株主還元の方針で、配当性向を定めている会社は、配当性向が一定の場合、EPSが上昇すると1株あたりの配当金も高くなり投資家が直接恩恵を受けることになります。

例えば、配当性向を30%と定めている会社が、当初の配当金予想は年間1株あたり30円(EPS=100円)だったとします。

この会社が、業績が好調なため上方修正をして、EPS予想が50%増額され、150円に修正されたとしましょう。

そうなった場合、配当金は配当性向30%と定めていますので、配当金も30円から45円(=150×0.3)と15円増額となり、配当金も1.5倍に増額されることになります。

また、配当金等のインカムゲインだけではなく、キャピタルゲイン(売買益)も期待できます

なぜかというと、上方修正を発表した会社の株は、業績が予想していた以上に良くなったため、株を買いたい投資家が増えますので、株価上昇の大きな要因になるわけです。

ただ時より、会社発表の上方修正後の経営数値がコンセンサス予想(マーケットにおいて支配的になっている予想(数値等))を下回る場合は、「失望売り」といわれ、大きく売り込まれ株価が下落するケースがありますので注意が必要です。

それでは、見ていきましょう!

上方修正の概要

まとめ

2023年11月6日に、2024年3月期通期連結業績予想の上方修正増配を発表しています。

2024年3月期通期の業績と配当金予想は表1です。

売上高
[億円]
営業
利益
[百万円]
経常
利益
[百万円]
親会社
株主に
帰属する
当期純利益

[百万円]
1株当たり
当期純利益

[円]
1株当たり
年間
配当金
[円]
前回
(2023/8/7)
発表予想
1,5302,4002,70050076.6520
今回修正予想1,6003,0003,8001,200183.38160
増減額706001,100700140
増減率[%]4.625.040.7140800
表1:ティラド 2024年3月期通期連結業績予想数値の修正(2023年11月6日発表)

前回予想と比べ、売上高は微増利益面は3割弱~2.4倍の増額修正をしています。

修正の理由は、

  • 当2Q連結累計期間は、材料価格の上昇にともなうコスト増加が、予想を下回ったことに加え、材料費・エネルギー費等のコスト上昇分の販売価格への転嫁がすすんだことから、営業利益は前回発表予想を上回った。
  • 2Q累計期間の実績が、前回予想を大幅に上回ったことから、通期予想についても修正する。
    また、個別の修正に加え、アジア子会社の業績の売上増加等により、前回予想を上回る見込み。

としています。

配当予想に関しても、同社は、

財務の健全性維持及び成長投資を実施しながら、配当性向30%以上総還元性向90%以上を目指して、株主還元を行う方針としており、

この方針に基づき、通期業績予想が当初予想を上回ったため、年間配当予想は、 1 株あたり 20 円から 160 円に修正当初予想から年間140円の増配中間 80円、期末 80円))しています。

どんな会社?

自動車産業から世界経済を支える「熱交換技術」のパイオニアとして、電動化時代を見据え、地球環境に配慮した世界No.1熱交換器メーカーを目指している会社です。

また、熱エネルギー変換技術を応用した様々なソリューションとサービスで、地球環境と持続可能な社会に貢献しています。

事業内容は、各種熱交換器の製造・販売を主たる業務としているほか、これらに付帯するサービス業務等を行っています。

事業セグメントは、生産・販売体制を基礎とした同社・独立した現地法人から構成されており、「日本」、「米国」、「欧州」、「アジア」及び「中国」の5つがあります。

2023年3月期通期のセグメント別売上高構成比は、

  • 日本 44.1%
  • 米国 25.1%
  • 欧州 3.7%
  • アジア 12.9%
  • 中国 14.1%
  • その他 0.2%

となっており、「日本」が最も多く4割強、次に「米国」が多く3割弱を占めています。

直近の経営概況

経営状況

【2024年3月期2Q(2023年4月~9月)の経営成績】

(2023年11月6日発表)

決算期売上高
[億円]
(前年
同期比
増減率
[%])
営業
利益
[百万円]
(同)
経常
利益
[百万円]
(同)
親会社株主に
帰属する
当期純利益
[百万円]
(同)
2023年3月期
2Q累計
740
(12.9)
822
(△75.9)
1,929
(△44.6)
306
(△83.6)
2024年3月期
2Q累計
802
(8.4)
2,125
(158)
2,617
(35.7)
1,151
(276)
2024年3月期
通期会社予想
(2023年11月6日
修正)
1,600
(7.1)
3,000
(185)
3,800
(82.4)
1,200
(黒字転換)
通期予想に対する
2Qの進捗率[%]
50.170.868.895.9
表2:ティラド 2024年3月期2Q連結経営成績と2024年3月期通期連結予想

表2の通り、前年同期比 増収増益で、売上高は1割弱増利益面は4割弱~3.7倍の増益でした。

2024年3月期通期の業績予想は、今回の上方修正後で、前期比 増収増益で、売上高は1割弱増、利益面は営業利益と経常利益は8割強~2.8倍の増益純利益は黒字転換を予想しています。

通期予想に対する進捗率は、2Q終了時点で、売上高は1/2程度でそこそこ利益面は6割を超えており順調です。

【2024年3月期2Qの状況、経営成績の要因】

当2Q連結累計期間の経済環境は、ウクライナ情勢は好転の兆しは見えず、中国経済の改善も遅々とした進捗で、グローバル市場の不確実性は継続、

円安基調の中で、物価高やエネルギー価格高も沈静化が遅れている状況下、依然先行き不透明な環境が継続しています。

このような状況の中、同社グループの売上高(外貨ベース)は、中国地域を除き、前年同期比で増加しました。

営業利益は、売上増加等により、前年同期比増益となりました。親会社株主に帰属する四半期純利益は、前年同期比増益となりました。

この結果、当2Qの経営成績は、表2のように増収増益となっています。

【セグメント別の業績】

セグメント別の業績は、表3の結果になりました。

主力の「日本」と「アジア」「その他」は前年同期比 増収増益

「米国」は増収赤字幅縮小「欧州」は増収字転換

「中国」は減収増益となっています。

セグメント売上高
[百万円]
(前年同期比
増減率
[%])
セグメント
利益
[百万円]
(同)
日本345
(8.9)
917
(69.2)
米国213
(3.3)
△1,526
(赤字幅
縮小)
欧州31.4
(3.5)
29
(黒字
転換
)
アジア109
(15.8)
1,756
(35.1)
中国101
(△4.4)
872
(2.4)
その他1.5
(51.9)
75
(199)
表3:2024年3月期2Q累計 セグメント別業績

各セグメントの状況は以下です。

日本

自動車用及び建設産業機械用売上高は、受注の増加等により、前年同期比増加となりました。

営業利益は、材料・部品費、エネルギー費の売上価格転嫁も進み、前年同期比 増益となりました。

米国

自動車用売上高は、新規受注機種の量産開始、及び受注の増加等により、前年同期比増加しました。

この結果、当該セグメントの売上高は、前年同期比増加し、外貨ベースでは、3.3%の増加となりました。

営業利益は、減価償却費の減少等により、前年同期比99百万円増加しています。

欧州

チェコの自動車用売上高は、新規受注機種の量産開始等により、前年同期比増加しました。

当該セグメントの売上高は、前年同期比175百万円増加しました。外貨ベースでは、3.5%の増加となりました。

営業利益は、現地政府による電力費補助政策も寄与し、前年同期比259百万円増加し、29百万円となりました。

アジア

自動車用売上高は、ベトナムにおいて景気悪化の影響等により減少しましたが、タイ、インドネシアにおいて受注の増加等により、前年同期比増加しました。

この結果、当該セグメントの売上高は、前年同期比1,851百万円増加し、109億円となりました。外貨ベースでは、15.8%の増加となりました。

営業利益は、売上増加等により、前年同期比518百万円増加し、1,756百万円となりました。外貨ベースでは、35.1%の増益となりました。

中国

建設産業機械用売上高は、受注の増加等により増加しましたが、自動車用売上高は、市場低迷による受注の減少等により、前年同期比減少しました。

この結果、当該セグメントの売上高は、前年同期比577百万円減少し、101億円となりました。外貨ベースでは、4.4%の減少となりました。

営業利益は、為替の影響等もあり、前年同期比1百万円増加し、872百万円となりました。外貨ベースでは、2.4%の増益となりました。

【財政面の状況】

自己資本比率>(自己資本(総資本-他人資本)÷総資産)×100

2024年3月期2Q末時点で44.4%と前期末(44.9%)から0.5ポイント低下しました。

これは主に、長期借入金が前期末比で2,653百万円増加し、固定負債が合計で2,746百万円増加したことによるものです。

自己資本比率の数値としては問題ないレベルです。(20%以上を安全圏内としています。)

キャッシュ・フロー>2024年3月期2Q累計のキャッシュ・フロー(以下、CF)の状況

  • フリーCF(営業活動によるCFと投資活動によるCFを合計した金額 ※1)4,376百万円の収入
    • 営業活動によるCF 8,198百万円の収入(前年同期 4,274百万円の収入
    • 投資活動によるCF 3,822百万円の支出(前年同期 3,759百万円の支出

 ※1 フリーCFの説明:

  • プラスの場合:会社が自由に使える資金が増える
  • マイナスの場合:会社が自由に使える資金が減る

前期(2023年3月期)2Q累計のフリーCF(515百万円の収入)から、3,861百万円増加しています。

営業活動によるCFの主な内訳(百万円):

  • 税金等調整前四半期純利益 2,676
  • 減価償却費 2,968
  • 棚卸資産の増減額(△は増加) 3,033

投資活動によるCFの主な内訳(百万円):

  • 有形固定資産の取得による支出 △3,116
  • 定期預金の預入による支出 △1,211
  • 定期預金の払戻による収入 854

株価指標と動向

株価指標

【2023/11/7(火)終値時点の数値】

  • 株価:2,722円
  • 時価総額:182億円
  • PER(株価収益率(予想)):14.8倍

PERは、同業で時価総額が近い、東京ラヂエーター(7235) 10.7倍、サンデン(6444) 0倍、デンソー(6902) 14.9倍と比較すると、高めの水準です。

  • PBR(株価純資産倍率):0.42倍
  • 信用倍率(信用買い残÷信用売り残):14.6倍
  • 年間配当金(予想):160円(年2回 9月 80円、3月 80円)、年間利回り:5.87%(配当性向 87.2%)

配当利回りは5.87%で、東証プライムの単純平均 2.24%(11/6時点)と比較すると高い水準です。

表4のように、直近5年間の配当金は、1株当たり0~160円で推移しており、ばらつきがあります。

配当性向は、無配や最終赤字の年を除き、30%台~40%台で推移しています。

決算期1株当たり
年間配当金
[円]
配当性向
[%]
2019年3月期9041.3
2020年3月期9045.2
2021年3月期
2022年3月期16031.0
2023年3月期80
(最終赤字)
表4:ティラド 年間配当金推移

この会社は、

財務の健全性維持及び成長投資を実施しながら、自社株式購入を四半期毎の業績を勘案の上、機動的に実施し、配当性向30%以上総還元性向90%以上を目指して、株主還元を強化しています。

また、中間配当と期末配当の年2回の剰余金の配当を行うこととしています。

【直近の株価動向】

<週足チャート(直近2年間)>

2021年11月に高値(3,290円)をつけた後は、長い間下落トレンドで推移しており、2023年6月に安値(1,720円)をつけました。

しかしその後はこの安値を割り込んでおらず安値を切り上げつつ推移しています。

<日足チャート(直近3か月間)>

8月初旬の安値(1,810円)から、高値切り上げ安値切り上げの上昇基調で推移しており、

今回の今2Q決算発表と通期業績上方修正、増配発表の翌営業日(11/7)は、これらを好感され、寄らずのストップ高比例配分(買い注文が売り注文を大きく上回り、大引に値幅制限の上限で割当が行われること)で、前日比 500円高(+22.5%)と急騰しました。

今後は、1月末につけた年初来高値(2,766円)を上抜け、さらなる上値追いをしていくのか、急騰前の元の値に戻り勢いが失速するのか、要注目です。

まとめ

【上方修正・増配のインパクト】

  • 今2Q連結累計期間は、材料価格の上昇にともなうコスト増加が、予想を下回ったことに加え、材料費・エネルギー費等のコスト上昇分の販売価格への転嫁が、すすんだことから、営業利益は前回発表予想を上回り、そしてアジア子会社の業績の売上増加等により、
    2024年3月期通期業績予想を前回予想と比べ、売上高は微増利益面は3割弱~2.4倍の増額修正し、利益面の増額のインパクトは大きい
  • 業績の上方修正に伴い、配当性向30%以上総還元性向90%以上を目指して、株主還元を行う方針としているため、
    前回予想から年間1株当たり140円増配し、160円配当中間 80円、期末 80円)に修正し、インパクトは大きい

【業績】

  • 今期(2024年3月期)2Qの業績は、売上高(外貨ベース)は、中国地域を除き、前年同期比で増加し、
    前年同期比 増収増益で、売上高は1割弱増利益面は4割弱~3.7倍の増益
  • 今期の通期予想は、今回の上方修正後の数値では、
    前期比 増収増益で、売上高は1割弱増、利益面は営業利益と経常利益は8割強~2.8倍の増益純利益は黒字転換を見込む。
  • その通期予想に対する進捗率は、2Q終了時点で、売上高は1/2程度でそこそこ利益面は6割を超えており順調

【株主還元】

  • 配当利回り(会社予想)は5.87%で、東証プライムの単純平均 2.24%(11/6時点)と比較すると高い水準
  • 直近5年間の配当金は、1株当たり0~160円で推移しており、ばらつきがある。
    配当性向は、無配や最終赤字の年を除き、30%台~40%台で推移。
  • 会社の方針は、財務の健全性維持及び成長投資を実施しながら、自社株式購入を四半期毎の業績を勘案の上、機動的に実施し、配当性向30%以上総還元性向90%以上を目指して、株主還元を強化している。

【流動性】

  • 直近の出来高の5日平均は257百株、25日平均は197百株で、流動性は低い水準。(1,000百株を平均水準とした。)

【株価モメンタム】

  • 週足ベースの株価は、2021年11月に高値(3,290円)をつけた後は、長い間下落トレンドで推移しており、2023年6月に安値(1,720円)をつけた。
    しかしその後はこの安値を割り込んでおらず安値を切り上げつつ推移。
  • 直近の株価は、8月初旬の安値(1,810円)から、高値切り上げ安値切り上げの上昇基調で推移しており、
    今回の今2Q決算発表と通期業績上方修正、増配発表の翌営業日(11/7)は、これらを好感され、寄らずのストップ高比例配分で、前日比 500円高(+22.5%)と急騰した。
  • 今後の株価は、1月末につけた年初来高値(2,766円)を上抜け、さらなる上値追いをしていくのか、急騰前の元の値に戻り勢いが失速するのか要注目。

以上のことから、

レベル
(⭐(最低)~
⭐⭐⭐⭐⭐(最高))
上方修正・増配
のインパクト
⭐⭐⭐
業績⭐⭐
株主還元
(配当、株主優待等)
⭐⭐⭐
株価モメンタム⭐⭐⭐
流動性⭐⭐
総合判定⭐⭐⭐⭐
(買い)
※「総合判定」=⭐4つ以上「買い」、⭐3つ「中立」、⭐2つ以下「見送り」

と判断しました。

最後までご覧いただき、ありがとうございました。

※株式投資の実際の売買は、自己判断、自己責任でお願いします。

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