【上方修正は買いか?】オンワードホールディングス(8016)

銘柄分析
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直近で今期業績予想の上方修正を発表した銘柄に関して、この発表のタイミングで株を買った場合、利益を得ることができるのか?

足元の経営状況や客観的な指標、株価モメンタム等を踏まえ、総合的に分析しました。

今回は、東証プライムから繊維製品業種のオンワードホールディングスです。

最後までお付き合いいただけるとうれしいです!

「上方修正」とは?

企業が決算において以前掲げていた予想利益などの数字を引き上げることを指します。

売り上げ増加や環境改善など、想定していなかった要因によって従来予想以上の達成が見込まれるときに発表されます。

SMBC日興証券HPより

特に利益面が上方修正されると、1株当たり利益(EPS)が上昇する可能性が高くなりますので、

株主還元の方針で、配当性向を定めている会社は、配当性向が一定の場合、EPSが上昇すると1株あたりの配当金も高くなり投資家が直接恩恵を受けることになります。

例えば、配当性向を30%と定めている会社が、当初の配当金予想は年間1株あたり30円(EPS=100円)だったとします。

この会社が、業績が好調なため上方修正をして、EPS予想が50%増額され、150円に修正されたとしましょう。

そうなった場合、配当金は配当性向30%と定めていますので、配当金も30円から45円(=150×0.3)と15円増額となり、配当金も1.5倍に増額されることになります。

また、配当金等のインカムゲインだけではなく、キャピタルゲイン(売買益)も期待できます

なぜかというと、上方修正を発表した会社の株は、業績が予想していた以上に良くなったため、株を買いたい投資家が増えますので、株価上昇の大きな要因になるわけです。

ただ時より、会社発表の上方修正後の経営数値がコンセンサス予想(マーケットにおいて支配的になっている予想(数値等))を下回る場合は、「失望売り」といわれ、大きく売り込まれ株価が下落するケースがありますので注意が必要です。

それでは、見ていきましょう!

上方修正の概要

まとめ

2023年7月6日に、2024年2月期通期連結業績予想の上方修正を発表しています。

2024年2月期通期の業績予想は表1です。

売上高
[億円]
営業
利益
[百万円]
経常
利益
[百万円]
親会社
株主に
帰属する
当期純利益

[百万円]
1株当たり
当期利益

[円]
1株当たり
年間配当金

[円]
前回
(2023/4/6)
発表予想
1,8507,0006,3004,00029.4914
今回修正予想1,88810,0009,0005,00036.8416
増減額383,0002,7001,000
増減率[%]2.142.942.925.014.2
表1:オンワードホールディングス 2024年2月期通期連結業績予想数値の修正(2023年7月6日発表)

前回予想と比べ、売上高は微増利益面は2割強~4割強の増額修正をしています。

修正の理由は、

  • 当1Q累計期間においては、顧客本位の商品開発と販売サービスの強化に注力した結果、23 区、五大陸、チャコット、ペットパラダイスなどの主力ブランドが、引き続き好調に推移した。
    また、KASHIYAMA(カシヤマ)、 UNFILO(アンフィーロ)などの新規ブランドが成長を加速した。
  • OMO(オンラインとオフラインの融合)サービス「クリック&トライ」の認知度が高まったことや、SNSを活用したマーケティング施策の精度が上がったことなどから、リアル店舗およびオンラインストアへの来客数が着実に増加した。
    その結果、売上高が当初の計画を上回って伸長した。
  • ここ数年にわたって取り組んできた、グローバル事業構造改革の成果が顕著に現れたことや、商品サプライチェーンの効率化が進んだことなどにより、売上総利益率が引き続き上昇した。
    一方で、ブランド複合店舗の展開による販売効率の改善などにより、販管費率が大幅に低下した。

としています。

配当予想に関しても、同社は、

株主への利益還元を経営の最重要課題の一つと位置付け、配当性向の目安を35%以上とし、安定的で業績に連動した適正な利益配分を実施することを配当方針としており、

今回の業績の上方修正に伴い、年間1株当たりの直近の配当予想の14円から2円増配し16円(期末一括配当)にすることにしています。

どんな会社?

ファッションを基軸とした事業から、新しい価値の創造と、人々の豊かな生活づくりへの貢献を目指し、

紳士服、婦人服等の繊維製品の企画、製造および販売(アパレル関連事業)を主な事業内容とし、さらにライフスタイル関連事業を行っている持株会社です。

事業セグメントは3つあり、アパレル関連事業 (国内)は日本において、アパレル関連事業 (海外)は海外においてのアパレル関連事業、

ライフスタイル関連事業コスメティック事業バレエ・ダンス、リゾートといったウェルネス事業ペット関連用品等の事業ギフト関連の事業および不動産賃貸事業を行っています。

2023年2月期通期のセグメント別売上高構成比は、

  • アパレル関連事業(国内) 68.9%
  • アパレル関連事業(海外) 7.6%
  • ライフスタイル関連事業 23.5%

となっており、アパレル事業の国内と海外を合わせて8割弱を占めています。

直近の経営概況

経営状況

【2024年2月期1Q(2023年3月~5月)の経営成績】

(2023年7月6日発表)

決算期売上高
[億円]
(前年
同期比
[%])
営業
利益
[百万円]
(同)
経常
利益
[百万円]
(同)
親会社株主に
帰属する
当期純利益
[百万円]
(同)
2023年2月期
1Q累計
445
(△3.2)
2,005
(74.8)
2,638
(33.4)
1,823
(△11.5)
2024年2月期
1Q累計
499
(12.0)
5,380
(168)
4,861
(84.3)
3,348
(83.6)
2024年2月期
通期会社予想
(2023年7月6日
修正)
1,888
(7.2)
10,000
(91.8)
9,000
(69.2)
5,000
(63.3)
通期予想に対する
1Qの進捗率[%]
26.453.854.066.9
表2:オンワードホールディングス 2024年2月期1Q連結経営成績と2024年2月期通期連結予想

表2の通り、前年同期比 増収増益で、売上高は1割強増利益面は8割強~2.6倍の増益でした。

2024年2月期通期の業績予想は、今回の上方修正後では、前期比 増収増益で、売上高は1割弱増利益面は6~9割強の増益を予想しています。

通期予想に対する進捗率は、1Q終了時点で、売上高は1/4程度でそこそこですが、利益面は5割を超えており順調です。

【2024年2月期1Qの状況、経営成績の要因】

中核事業会社である株式会社オンワード樫山がOMO(Online Merges with Offline)型店舗で展開しているサービス「クリック&トライ」の認知度が向上したことや、

SNSを活用したマーケティング施策の精度が上がったことなどから、リアル店舗およびオンラインストアへの来客数が着実に増加し、売上高が大きく伸長しました。

また、2019年度から取り組んできたグローバル事業構造改革の成果が顕著に現れ、また、商品サプライチェーンの効率化を進めた結果、売上総利益率が向上しました。

一方で、ブランド複合店舗の展開による販売効率の改善などにより、販管費率は大幅に低下しました。

また、新たな顧客層の開拓を目指し、ファッションカンパニーである株式会社ウィゴーとの資本業務提携をスタートしました。

以上の結果、当1Q連結累計期間の経営成績は、表2の前年同期比 増収増益となっています。

また、同社グループでは、新規事業の創出やM&A等を活用した事業基盤の強化・拡大による成長を加速していく中で、会計基準の差異にとらわれることなく企業比較を容易にすることを目的とし、EBITDA (営業利益+減価償却費およびのれん償却費)を重要な経営指標としています。

当1Q連結累計期間のEBITDAは65億45百万円(前年同期比94.5%増となりました。

【セグメント別業績】

セグメント別の業績は、表3の結果になりました。

主力の「アパレル関連(国内)」と「ライフスタイル関連」は前年同期比 増収増益

「アパレル関連(海外)」増収赤字幅縮小でした。

セグメント売上高
[億円]
(前年同期比
増減率
[%])
セグメント
利益
[百万円]

(同)
アパレル関連国内354
(12.5)
4,389
(2.3倍)
海外32.4
(18.2)
△300
(前年同期
△560百万円)
ライフスタイル
関連
111
(8.6)
1,609
(93.1)
表3:2023年6月期3Q セグメント別業績

セグメント別の状況は以下です。

アパレル関連事業

国内

顧客本位の商品開発と販売サービスに注力した結果、株式会社オンワード樫山の
主力ブランド『23区』『五大陸』等が好調を維持しました。

また、D2Cブランド(※1)『UNFILO(アンフィーロ)』から単独ブランド化した『steppi(ステッピ)』の売上が好調に推移しました。

『KASHIYAMA』を展開する株式会社オンワードパーソナルスタイルでは、高単価商品が好調であったとともに、店舗リニューアル等により売上が大幅に増加しました。

※1:D2Cブランド

「Direct to Consumer」の略で、企業が製造した商品を生活者にダイレクトに販売するビジネスモデルを指す。自社サイトやSNSなどを通じて、生活者に直接商品を販売している。

海外事業

ヨーロッパ、アメリカ、アジアそれぞれ増収を達成するとともに、大連工場の稼働率の上昇が寄与し、損益が改善しました。

ライフスタイル関連事業

ウェルネス事業を展開するチャコット株式会社は、主力のバレエ用品および『チャコット・コスメティクス』の売上が好調に推移しました。

ペット・ホームライフ事業を展開する株式会社クリエイティブヨーコは、新規出店施策が奏功したことに加え、ペット事業における新商品等の開発が売上の拡大に寄与しました。

ギフトカタログ事業を展開する株式会社大和も継続して好調に推移しました。

【財政面の状況】

自己資本比率>(自己資本(総資本-他人資本)÷総資産)×100

2024年2月期1Q末時点で46.1%と前期末(47.0%)から0.9ポイント低下しました。

これは主に、短期借入金が前期末比で90.4億円増加し、流動負債が合計で104億円増加したことによるものです。

自己資本比率の数値としては問題ないレベルです。(20%以上を安全圏内としています。)

株価指標と動向

株価指標

【2023/7/7(金)終値時点の数値】

  • 株価:502円
  • 時価総額:792億円
  • PER(株価収益率):13.6倍

PERは、同業で時価総額が近い、TSIホールディングス(3608) 19.0倍、三陽商会(8011) 9.3倍と比較すると、中間的な水準です。

  • PBR(株価純資産倍率):0.91倍
  • 信用倍率(信用買い残÷信用売り残):7.30倍
  • 年間配当金(予想):16円(年1回 2月)、年間利回り:3.18%(配当性向 43.4%)

配当利回りは3.18%で、東証プライムの単純平均 2.24%(7/6時点)と比較すると高い水準です。

表4のように、直近5年間の配当金は、1株当たり12~24円で推移しており、

配当性向は、最終赤字の年を除き、10%台~60%台でばらつきがあります。

決算期1株当たり
年間配当金
[円]
配当性向
[%]
2019年2月期2466.9
2020年2月期24
(最終赤字)
2021年2月期12
(最終赤字)
2022年2月期1219.0
2023年2月期1253.2
表4:オンワードホールディングス 年間配当金推移

この会社は、

株主への利益還元を経営の最重要施策の一つと位置づけ、配当性向の目安を35%以上とし、安定的で業績に連動した適正な利益配分を実施することを基本方針としています。

内部留保資金は、強固な事業構造の構築のための戦略投資や財務体質の強化などに資金需要のバランスを考慮しつつ柔軟に活用していく予定です。

【株主優待】

この会社は、株主優待があり、毎年2月末に100株以上保有の株主は、自社ECサイト取扱商品の買物割引券(公式通販サイト「オンワード・クローゼット」の取扱商品を20%割引利用回数は期間中6回)が進呈されます。

また、1,000株以上保有の場合は、自社製品 3,000円相当(ギフトカタログ)

5,000株以上保有の場合は、自社製品 10,000円相当(ギフトカタログ)が追加で進呈されます。

100株保有で、1万円の自社商品を買物割引券で購入した場合、2,000円割引されますので、その場合、配当金+株主優待(2,000円相当)で利回りは7.17%になります。

個人投資家にとってうれしい内容ですね!

【直近の株価動向】

<週足チャート(直近2年間)>

2022年3月に安値(223円)をつけた後は、右肩上がりの上昇トレンドで推移し、

現時点では全ての移動平均線の上で推移しています。

<日足チャート(直近3か月間)>

しばらく390円前後でヨコヨコで推移していましたが、6月下旬から上昇を開始し、

今回の2024年2月期1Qの決算と通期業績上方修正そして増配を発表した翌営業日(7/7)は、窓を開けて急騰し、ストップ高で張り付きそのまま前日比 80円高(+18.9%)で終了しました。

今後は、今回の急騰した株価近辺を保ち、さらなる上値追いをしていくのか、急騰前の元の値に戻っていくのか、要注目です。

まとめ

【上方修正のインパクト】

  • 2024年2月期1Qにおいて、主力ブランドが好調新規ブランドも成長を加速し、リアル店舗およびオンラインストアへの来客数が着実に増加して、売上高が当初の計画を上回って伸長し、
    利益面は、グローバル事業構造改革の成果が顕著に現れたことや、商品サプライチェーンの効率化が進んだことなどにより、売上総利益率が引き続き上昇したことにより、
    2024年2月期通期業績予想を、前回予想と比べ、売上高は微増利益面は2割強~4割強増額修正し、インパクトはやや大きい
  • 業績の上方修正に伴い、配当金も、配当性向の目安を35%以上としていることから、
    前回予想から年間1株当たり2円増配し、16円配当に修正した。

【業績】

  • 今期(2024年2月期)1Qの業績は、リアル店舗およびオンラインストアへの来客数が着実に増加し、売上高が大きく伸長
    利益面は、グローバル事業構造改革の成果が顕著に現れ、また、商品サプライチェーンの効率化を進めた結果、売上総利益率が向上し、
    前年同期比 増収増益で、売上高は1割強増利益面は8割強~2.6倍の増益
  • 今期の通期予想は、今回の上方修正後の数値では、
    前期比 増収増益で、売上高は1割弱増利益面は6~9割強の増益を見込む。
  • その通期予想に対する進捗率は、1Q終了時点で、売上高は1/4程度でそこそこだが、利益面は5割を超えており順調

【株主還元】

  • 配当利回り(会社予想)は3.18%で、東証プライムの単純平均 2.24%(7/6時点) と比較すると高い水準
  • 直近5年間の配当金は、1株当たり12~24円で推移しており、
    配当性向は、最終赤字の年を除き、10%台~60%台でばらつきがある。
  • 会社の方針は、株主への利益還元を経営の最重要施策の一つと位置づけ、配当性向の目安を35%以上とし、安定的で業績に連動した適正な利益配分を実施するとしている。
  • 株主優待があり、毎年2月末に100株以上保有の株主は、自社ECサイト取扱商品の買物割引券(公式通販サイト「オンワード・クローゼット」の取扱商品を20%割引)が進呈され、
    100株保有で、1万円の自社商品を買物割引券で購入した場合、配当金+株主優待(2,000円相当)で利回りは7.17%になる。

【流動性】

  • 直近の出来高の5日平均は22,995百株、25日平均は10,428百株で、流動性は高い水準。(1,000百株を平均水準とした。)

【株価モメンタム】

  • 週足ベースの株価は、2022年3月に安値(223円)をつけた後は、右肩上がりの上昇トレンドで推移し、現時点では全ての移動平均線の上で推移。
  • 直近の株価は、しばらく390円前後でヨコヨコで推移していたが、6月下旬から上昇を開始し、
    今回の2024年2月期1Qの決算と通期業績上方修正増配を発表した翌営業日(7/7)は、窓を開けて急騰し、ストップ高で張り付きそのまま前日比 80円高(+18.9%)で終了。
  • 今後の株価は、今回の急騰した株価近辺を保ち、さらなる上値追いをしていくのか、急騰前の元の値に戻っていくのか要注目。

以上のことから、

レベル
(⭐(最低)~
⭐⭐⭐⭐⭐(最高))
上方修正の
インパクト
⭐⭐⭐
業績⭐⭐
株主還元
(配当、株主優待等)
⭐⭐⭐
株価モメンタム⭐⭐⭐
流動性⭐⭐⭐
総合判定⭐⭐
(買い)
※「総合判定」=⭐4つ以上「買い」、⭐3つ「中立」、⭐2つ以下「見送り」

と判断しました。

最後までご覧いただき、ありがとうございました。

※株式投資の実際の売買は、自己判断、自己責任でお願いします。

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