【上方修正は買いか?】日本ギア工業(6356)

銘柄分析
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直近で今期業績予想の上方修正を発表した銘柄に関して、この発表のタイミングで株を買った場合、利益を得ることができるのか?

足元の経営状況や客観的な指標、株価モメンタム等を踏まえ、総合的に分析しました。

今回は、東証スタンダードから機械業種の日本ギア工業です。

最後までお付き合いいただけるとうれしいです!

「上方修正」とは?

企業が決算において以前掲げていた予想利益などの数字を引き上げることを指します。

売り上げ増加や環境改善など、想定していなかった要因によって従来予想以上の達成が見込まれるときに発表されます。

SMBC日興証券HPより

特に利益面が上方修正されると、1株当たり利益(EPS)が上昇する可能性が高くなりますので、

株主還元の方針で、配当性向を定めている会社は、配当性向が一定の場合、EPSが上昇すると1株あたりの配当金も高くなり投資家が直接恩恵を受けることになります。

例えば、配当性向を30%と定めている会社が、当初の配当金予想は年間1株あたり30円(EPS=100円)だったとします。

この会社が、業績が好調なため上方修正をして、EPS予想が50%増額され、150円に修正されたとしましょう。

そうなった場合、配当金は配当性向30%と定めていますので、配当金も30円から45円(=150×0.3)と15円増額となり、配当金も1.5倍に増額されることになります。

また、配当金等のインカムゲインだけではなく、キャピタルゲイン(売買益)も期待できます

なぜかというと、上方修正を発表した会社の株は、業績が予想していた以上に良くなったため、株を買いたい投資家が増えますので、株価上昇の大きな要因になるわけです。

ただ時より、会社発表の上方修正後の経営数値がコンセンサス予想(マーケットにおいて支配的になっている予想(数値等))を下回る場合は、「失望売り」といわれ、大きく売り込まれ株価が下落するケースがありますので注意が必要です。

それでは、見ていきましょう!

上方修正の概要

まとめ

2023年1月25日に、2023年3月期通期業績予想の上方修正を発表しています。

2023年3月期通期の業績予想は表1です。

売上高
[百万円]
営業利益
[百万円]
経常利益
[百万円]
親会社株主に
帰属する
当期純利益

[百万円]
1株当たり
当期純利益

[円]
前回(2022/5/13)
発表予想
8,00033036027018.96
今回修正予想8,00074077060042.14
増減額410410330
増減率[%]124113122
表1:日本ギア工業 2023年3月期通期業績予想数値の修正(2023年1月25日発表)

前回予想と比べ、売上高は変わらず利益面は2倍強の増額修正をしています。

修正の理由は、

  • 利益面は、歯車装置事業のうちバルブ・アクチュエータの売上の一部が翌期に繰り越すことにより減少する見込みだが、工事事業及び補修部品の売上・利益は当初の計画を上回る見込み
  • 販売価格の見直し及び原価低減等のコストダウン等を実施したことにより、各利益は前回公表した数値を大きく上回る見込み

としています。

配当予想は、変更ありませんでした。

どんな会社?

物流

1938年に自動車用歯車のメーカーとして創立され、歯車メーカーからバルブアクチュエータ(※1)、ミキサー、ジャッキなどアッセンブリーメーカーへ事業領域を拡げてきました。

日本ギア工業の製品は、発電所や上下水道で使用されるバルブアクチュエータやミキサーをはじめ、

各種産業機械に組み込まれる精密歯車液晶パネルや鉄鋼IT関連などの生産設備で使用されるジャッキ昇降装置などが広く産業基盤に採用され、国内外市場で高い評価を得ています。

※1 バルブアクチュエータ:化学プラントや空調設備等の自動制御の一環として行われるコントロールバルブの開閉を自動で行い、流体の流量を調整するために用いられる装置

事業セグメントは、「歯車及び歯車装置事業」と「工事事業」の2つがあり、それぞれ、

  • 歯車及び歯車装置事業
    バルブ・アクチュエータ、ジャッキ、ミキサー、その他増減速機、自動車用歯車、建設機械用歯車、鉄道・船舶用歯車、その他各種歯車の製造・販売
  • 工事事業
    バルブ・アクチュエータ、ジャッキ、ミキサー、その他増減速機とこれらに付帯するメンテナンス等

を行っています。

2022年3月期通期のセグメント別売上高構成比は、

  • 歯車及び歯車装置事業 79.3%
  • 工事事業 20.7%

となっており、「歯車及び歯車装置事業」が8割弱を占めています。

直近の経営概況

経営状況

【2023年3月期2Q(2022年4月~2022年9月)の経営成績】

(2022年10月28日発表)

決算期売上高
[百万円]
(前年
同期比
[%])
営業利益
[百万円]
(同)
経常利益
[百万円]
(同)
親会社株主に
帰属する
当期純利益
[百万円]
(同)
2022年3月期
2Q累計
3,356
(△10.4)
△174
(赤字
転落)
△169
(赤字
転落)
65
(△62.1)
2023年3月期
2Q累計
3,184
(△5.1)
214
(黒字
転換
)
231
(黒字
転換
)
194
(2.9倍)
2023年3月期
通期会社予想
(2023年1月25日
修正)
8,000
(5.7)
740
(6.2倍)
770
(6.2倍)
600
(2.0倍)
通期予想に対する
2Qの進捗率[%]
39.828.930.032.3
表2:日本ギア工業 2023年3月期2Q経営成績と2023年3月期通期予想

表2の通り、前年同期比 減収増益で、売上高は1割弱減、利益面は営業利益と経常利益は黒字転換純利益は3倍弱の増益の結果でした。

2023年3月期通期の業績予想は、今回の上方修正後の数値で、前期比 増収増益で、売上高は1割弱増利益面は2~6倍の増益を見込んでいます。

通期予想に対する進捗率は、2Q終了時点で、売上高、利益面ともに3割前後と遅れています

【2023年3月期2Qの状況、経営成績の要因】

当2Q累計期間の受注高は46億83百万円(前年同期比33.9%増売上高は31億84百万円(同5.1%減となりました。

一方、当2Q会計期間末の受注残高は42億44百万円(前事業年度末比54.6%
となりました。

損益面は、売上原価が19億42百万円(前年同期比21.0%減販売費及び一般管理費は10億27百万円(同4.2%減となりました。

これにより、営業利益は214百万円(前年同四半期は営業損失174百万円)、経常利益は231百万円(前年同四半期は経常損失169百万円)、

四半期純利益は特別利益に退職給付に係る数理差異償却益65百万円を計上したことにより、194百万円(前年同期比198%増となっています。

【セグメント別の業績】

セグメント別の業績は、表3の結果になりました。

セグメント売上高
[百万円]
(前期比
[%])
セグメント
利益
[百万円]
(同)

歯車及び
歯車装置
2,401
(△12.5)
132
(黒字
転換
)
工事783
(28.0)
82.1
(黒字
転換
)
表3:2023年3月期2Q セグメント別業績

主力の「歯車及び歯車装置事業」は減収黒字転換

「工事事業」は増収で、黒字転換の結果でした。

セグメント別の状況は以下です。

歯車及び歯車装置事業

バルブ・アクチュエータ

受注高は原子力向けが増加したことより前年同期比32.0%増加しました。

売上高は原子力向けが減少したことより同19.5%減少しました。

ジャッキ

受注高は鉄鋼、半導体・液晶向けが増加したことにより、前年同期比52.0%増加しました。

売上高は半導体・液晶向けが増加したことにより、同35.2%増加しました。

その他増減速機

受注高は石油・ガス、化学向けが増加したことにより、同44.5%増加しました。

売上高は石油・ガス、化学向けが減少したことより、同35.6%減少しました。

歯車

受注高は特殊車用、鉄道船舶用が増加したことにより、同73.3%増加しました。

売上高は特殊車用が増加したことにより、同20.9%増加しました。

工事事業

受注高は電力、上下水道向けが増加したことにより、同16.0%増加しました。

売上高は原子力、石油・ガス向けが増加したことにより、同28.0%増加しました。

【財政面の状況】

自己資本比率>(自己資本(総資本-他人資本)÷総資産)×100

2023年3月期2Q末時点で75.8%と前期末(77.4%)から1.6ポイント低下しました。

これは主に、未払法人税等が前期末比で120百万円増加その他流動負債が113百万円増加し、流動負債が合計で179百万円増加したことによるものです。

自己資本比率の数値としては良好なレベルです。(20%以上を安全圏内としています。)

キャッシュ・フロー>2023年3月期2Q累計のキャッシュ・フロー(以下、CF)の状況

  • フリーCF(営業活動によるCFと投資活動によるCFを合計した金額 ※2)552百万円の収入
    • 営業活動によるCF 677百万円の収入(前年同期 380百万円の収入
    • 投資活動によるCF 125百万円の支出(同 64.1百万円の支出

 ※2 フリーCFの説明:

  • プラスの場合:会社が自由に使える資金が増える
  • マイナスの場合:会社が自由に使える資金が減る

前期(2022年3月期2Q累計)のフリーCF(316百万円の収入)から235百万円増加しています。

営業活動によるCFの主な内訳(百万円):

  • 税引前四半期純利益 297
  • 売上債権の増減額(△は増加) 625
  • 棚卸資産の増減額(△は増加)△185

投資活動によるCFの主な内訳(百万円):

  • 有形固定資産の取得による支出 △94.5
  • 無形固定資産の取得による支出 △29.1
  • 投資有価証券の取得による支出 △2.4

株価指標と動向

株価指標

【2023/1/26(木)終値時点の数値】

  • 株価:427円
  • 時価総額:60.9億円
  • PER(株価収益率(今期予想)):10.1倍

PERは、同業で時価総額が近い、西部電機(6144) 12.3倍と比較すると、低い水準です。

  • PBR(株価純資産倍率):0.68倍
  • 信用倍率(信用買い残÷信用売り残):28.8倍
  • 年間配当金(会社予想):4円(年2回 9月 2円、3月 2円)、年間利回り:0.93%(配当性向 9.4%)
決算期1株当たり
年間配当金
[円]
配当性向
[%]
2018年3月期26.1
2019年3月期17.9
2020年3月期
(内 記念配当
1円)
17.9
2021年3月期18.2
2022年3月期19.3
表4:日本ギア工業 年間配当金推移

配当利回りは0.93%で、東証スタンダードの単純平均2.23%(1/25時点) と比較すると低い水準です。

表4のように、直近5年間の配当金は、年間1株あたり4~5円で安定して推移しており、2020年3月期の記念配を除くと4円で一定です。

配当性向は20%前後で低めで安定しています。

この会社は、

収益力向上による企業体質の強化を図りつつ、株主の皆様に利益を還元することを経営の重点政策の一つと位置づけており、

安定的な配当の継続を基本に、業績に応じた利益の配分、内部留保充実の観点からこれらを総合的に判断しつつ配当を決定しています。

また、中間配当と期末配当の年2回の剰余金の配当を行うことを基本方針としています。

【直近の株価動向】

<週足チャート(直近2年間)>

出所:楽天証券サイト

週足ベースの株価は、2022年1月下旬に昨年来安値(251円)をつけた後は、高値切り上げ安値切り上げの上昇トレンドで推移し、同年9月に高値(395円)をつけました。

そして一旦は調整したのですが、再び上昇してきており、現時点では全ての移動平均線の上で推移しています。

<日足チャート(直近3か月間)>

出所:楽天証券サイト

直近の株価は、昨年12月下旬に安値(293円)をつけた後は、上昇基調で推移していましたが、

今回の業績の上方修正発表の翌営業日(1/26)は、窓を開けて出来高を伴い急騰し、ストック高比例配分(買い注文が売り注文を大きく上回り、大引に値幅制限の上限で割当が行われること)で、前日比 80円高(+23.0%)で終了。

昨年来高値を更新しています。

今後は、この日につけた高値をキープし、上値追いをしていくのか、勢いが失速し、元の値に戻っていくのか、要注目です。

まとめ

まとめ

【上方修正のインパクト】

  • 販売価格の見直し及び原価低減等のコストダウン等を実施したことにより、
    2023年3月期通期業績予想を、前回予想と比べ、売上高は変わらず利益面は2倍強の増額修正をし、インパクトは大きい

【業績】

  • 今期(2023年3月期)2Qの業績は、歯車及び歯車装置事業の売上が減少したが、売上原価販売費及び一般管理費が減少したことにより、
    前年同期比 減収増益で、売上高は1割弱減、利益面は営業利益と経常利益は黒字転換純利益は3倍弱の増益の結果。
  • 今期の通期予想は、今回の上方修正後の数値で、
    前期比 増収増益で、売上高は1割弱増利益面は2~6倍の増益を見込む。
  • その通期予想に対する進捗率は2Q終了時点で、売上高、利益面ともに3割前後と遅れている

【株主還元】

  • 配当利回り(会社予想)は0.93%で、東証スタンダードの単純平均 2.23%(1/25時点) と比較すると低い水準
  • 直近5年間の配当金は、年間1株あたり4~5円で安定して推移しており、2020年3月期の記念配を除くと4円で一定
  • 配当性向は20%前後で低めで安定している。

【流動性】

  • 直近の出来高の5日平均は1,943百株、25日平均は1,625百株で、流動性は平均的な水準。(1,000百株を平均水準とした。)

【株価モメンタム】

  • 週足ベースの株価は、2022年1月下旬に昨年来安値(251円)をつけた後は、高値切り上げ安値切り上げの上昇トレンドで推移し、同年9月に高値(395円)をつけた。
    そして一旦は調整したが、再び上昇してきており、現時点では全ての移動平均線の上で推移
  • 直近の株価昨年12月下旬に安値(293円)をつけた後は、上昇基調で推移していたが、
    今回の業績の上方修正発表の翌営業日(1/26)は、窓を開けて出来高を伴い急騰し、ストック高比例配分で、前日比 80円高(+23.0%)で終了。昨年来高値を更新した。
  • 今後の株価は、この日につけた高値をキープし上値追いをしていくのか、勢いが失速し元の値に戻っていくのか要注目。

以上のことから、

レベル
(⭐(最低)~
⭐⭐⭐⭐⭐(最高))
上方修正の
インパクト
⭐⭐⭐⭐⭐
業績⭐⭐⭐⭐
株主還元
(配当、株主優待等)
⭐⭐
株価モメンタム⭐⭐⭐⭐
流動性⭐⭐⭐
総合判定⭐⭐(買い)
※「総合判定」=⭐4つ以上「買い」、⭐3つ「中立」、⭐2つ以下「見送り」

と判断しました。

最後までご覧いただき、ありがとうございました。

※株式投資の実際の売買は、自己判断、自己責任でお願いします。

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