【立会外分売は買いか?】チノー(6850)

温度管理立会外分売
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こんにちは!

直近で立会外分売の実施を発表した銘柄に関して、分売で買った場合、利益を得ることができるのか?直近の経営状況や客観的な指標、株価モメンタム等を踏まえ、総合的に分析しました。

今回は、東証1部から電気機器業種のチノーです。

最後までお付き合いいただけるとうれしいです!

  • 立会外分売とは?
新規株主を増やすことを目的として、上場会社が大株主である銀行やオーナー経営者などの保有株を小口に分けて、証券取引所の立会外で不特定多数に売り出すこと。
取引開始前など取引時間外(=立会外)に売り出されることからこのように呼ばれる。
  • 立会外分売の魅力
    • 前日終値より安く購入可能
      • 立会外分配における買付側の購入価格は確定値段(1本値)で、分売実施日の前日終値よりディスカウントされるのが一般的。過去の例では、約3~5%のディスカウントで実施されています。(ディスカウント率は取引所の規定により最大10%)
    • 買付手数料はかからない
      • 立会外分売による買付は、通常の立会時間内の取引と種類が異なるため一般的に手数料はかからない。(売却時には通常の手数料が発生)
    • 即日売却OK
      • 立会外分売で取得した株式は、実施日(買付当日)から売却することが可能
  • デメリット:抽選で外れることもある
    • 買い申し込みが多いと、抽選ではずれて購入できないこともある。

立会外分売の概要

まとめ

実施日や株数は以下です。実施予定日は幅があり、実際の実施日と販売価格は、会社側から実施日前日に発表があります。

分売数量は決まっていて、100株単位で最大10,000株まで購入できます。

早ければ2/17(木)の夕刻に、会社側からの適時開示で分売値段のお知らせがあります。このブログでも追記しますので、チェックしてくださいね💖

分売予定期間2022 年 2 月 18 日(金)
分売数量450,000 
発行済み株式総数 9,260,116 株の約4.9%
分売値段1,472 円(2/17発表)
ディスカウント率3.48 %(2/17発表)
申込単位数量100株
申込上限数量10,000株
実施の目的東京証券取引所の市場区分見直しに関して、プライム市場における流通株式時価総額の基準を達成する
・同社株式の分布状況の改善および流動性向上を図る
表1:チノー 立会外分売概要

今回の分売数量は、発行済み株式総数の約4.9%と多めの数量※です。

※一概に言えませんが、目安として、5%以上:かなり多い、3%以上5%未満:多い、1%以上3%未満:ほどほど、1%未満:少ないとしています。

同社は、今年4月に予定されている東証の新市場区分の「プライム市場」の上場維持基準に対して、移行基準日(2021年6月末)時点で「流通株式時価総額」及び「1日平均売買代金」の基準を満たしておらず、

昨年12月に「新市場区分の上場維持基準の適合に向けた計画書」を作成し、プライム市場の上場維持基準の適合に向けて、取り組みを開始しています。

また、この銘柄の直近の出来高(売買が成立した株式の数量)の5日平均は708百株、25日平均は312百株で、流動性は低い水準です。

どんな会社?

1936年の設立以来「計測・制御・監視」の領域において事業を展開し、あらゆる産業分野にかかわり、その発展に貢献している会社です。

特に「温度のチノー」として高い技術力を誇り、赤外線計測分野および燃料電池評価試験分野では高い評価を得ています。

事業セグメントは、「計測制御機器」「計装システム」「センサ」「その他」があり、主な製品は以下です。

  • 計測制御機器
    記録計、調節計、民生機器
  • 計装システム
    性能・評価試験装置、制御・監視用パッケージシステム、デバイス・半導体試験装置、クリーンルーム、温度校正機器、各種計装システム
  • センサ
    赤外線放射機器、熱画像計測装置、温度センサ、応用センサ
  • その他
    上記セグメントに含まれない、修理・サービス等

2021年3月期のセグメント別売上高構成比は、

  • 計測制御機器 32.9%
  • 計装システム 32.0%
  • センサ 31.1%
  • その他 4.0%

となっており、「計測制御機器」「計装システム」「センサ」がそれぞれ1/3程度の売上です。

直近の経営概況

温度管理

2022年3月期3Q(2021年4月~2021年12月)の経営成績】(2022年2月9日発表)

決算期売上高
[億円]
(前年同期比[%])
営業利益
[百万円]
(同)
経常利益
[百万円]
(同)
親会社株主に
帰属する
当期純利益
[百万円]
(同)
2021年3月期3Q累計142
(3.0)
240
(△21.1)
322
(△64.4)
645
(△2.3)
2022年3月期3Q累計147
(3.4)
749
(212)
922
(186)
476
(△26.2)
2022年3月期通期会社予想223
(5.8)
1,300
(14.4)
1,400
(9.0)
850
(△34.1)
通期予想に対する3Qの進捗率[%]65.757.665.956.0
表2:チノー 2022年3月期3Q経営成績

2022年3月期3Q累計の業績は、前年同期比 増収増益で、売上高は微増、営業利益と経常利益は約3倍の利益を上げており好調です。

純利益は、前期に明陽電機株式会社の連結子会社化に伴う特別利益として、負ののれん発生益(M&A価格よりも純資産が高額だった場合に発生)557百万円を計上した影響により、前年同期比で減少しています。

2022年3月期通期の業績は、前期比で売上高は微増利益面は1割の増益(純利益は除く)を予想していて、

通期予想に対する進捗率は、3Q終了時点で売上高はほぼ順調で、利益面は少し遅れています。

これは、同社グループの売上高および利益は、例年、4Qに集中し、3Qまでの各期の売上高および利益は4Qの業績水準と比べ乖離が大きくなる傾向であるためです。

【2022年3月期3Qの状況、経営成績の要因】

同社グループ事業全般に関係する製造業では、半導体部品の供給不足による影響はあるものの、主要顧客である自動車関連分野や電子部品関連分野における生産活動の回復が進み、設備投資の回復基調は維持されました。
このような状況のなか、同社グループは、生産現場で不可欠な温度計測・監視を実現するセンサや製品はもとより、需要回復の見られた産業分野における課題を解決するソリューションの提供に注力しました。
また、脱炭素社会の実現に向けて、国内外でエネルギー分野における投資に向けた動きが活発化する中、水素関連分野の需要の高まりを積極的に取り込むべく、水素の生成、輸送・保管およびエネルギー利用における温度管理等に関係する受注活動を強化してきました。

この結果、当3Q連結累計期間の受注高は186億円(前年同期比 24.3%増)となり、売上高は147億円(同3.4%増)となりました。

利益は、増収効果および原価低減の取り組みにより、表2に結果になっています。

【セグメント別の業績】

セグメント別の業績は、表3の結果になりました。

セグメント売上高[百万円]
(前年同期比
増減率[%])
セグメント利益
[百万円]

(同)
計測制御機器5,644
(16.2)
655
(12.8)
計装システム3,617
(△10.6)
219
(102)
センサ4,819
(3.3)
937
(63.3)
その他577
(△5.0)
102
(△33.9)
表3:2022年3月期3Q  セグメント別業績

計測制御機器」と「センサ」は前年同期比 増収増益

計装システム」は減収増益で、セグメント利益は2倍の結果となりました。

計測制御機器

前年度は、新型コロナウイルス感染症の広がりにより顧客の生産活動の停滞、設備投資の先送りの影響を大きく受けましたが、当3Q連結累計期間は、記録計を中心に海外向け、特に中国を中心としたアジア地域において需要が伸長し、

また、調節計とサイリスタレギュレータ(”操作部”の1つで交流電源をオンオフする電気的スイッチ)は、大口顧客の売上が順調に推移しています。

計装システム

電子部品関連の製造装置向けは、前年度後半から需要が回復し、売上が引き続き順調に推移していますが、コンプレッサー評価試験装置は、前年度から主要顧客の設備投資低迷による厳しい状況が継続しており、前年同期比では減収となりました。

また脱炭素関連として、自動車関連向けの燃料電池評価試験装置や、水素のエネルギー利用の研究・開発用途の水電解評価装置受注が拡大しています。

センサ

放射温度計温度センサともに半導体関連の製造装置向けに海外の需要が好調であり、国内においても輸出向けの需要が堅調

また、放射温度計鉄鋼関連の設備更新温度センサバイオマス関連の需要も堅調に推移しました。

【財政面の状況】

自己資本比率>(自己資本(総資本-他人資本)÷総資産)×100

2022年3月期3Q末時点で55.3%と前期末(54.7%)から0.6ポイント増加しました。

自己資本比率の数値としては良好なレベルです。(20%以上を安全圏内としています。)

これは主に、
流動負債が、前期末に比べ124百万円増加し7,399百万円となりましたが、
固定負債は、363百万円減少し3,258百万円となり、負債合計が239百万円減少したためです。

【今期(2022年3月期通期)の見通し】

2021年11月10日に公表された予想値から変更はありません。

株価指標と動向

株価指標

【2022/2/10(木)終値時点の数値】

  • 株価:1,540円
  • 時価総額:143億円
  • PER(株価収益率):13.0倍

PERは、同業で時価総額が近い、東亜DKK(6848) 12.7倍、小野測器(6858) 21.0倍、エスペック(6859) 19.0倍と比較すると、水準です。

  • PBR(株価純資産倍率):0.78倍
  • 信用倍率(信用買い残÷信用売り残):0.21倍
  • 年間配当金(予想):45円(年1回 3月)、年間利回り:2.9%(配当性向 44.8%)
決算期1株当たり
年間配当金(円)
配当性向(%)
2017年3月期3580.2
2018年3月期4040.7
2019年3月期4534.2
2020年3月期4531.3
2021年3月期4529.6
表4:チノー 年間配当金推移

年利回りは2.9%で、東証1部の単純平均2.12%(2/10時点) と比較すると高い水準です。

表4のように、直近5年間の配当金は2017年3月期から2019年3月期は連続増配していましたが、2020年3月期と2021年3月期は前期比同額でした。

配当性向は、2017年3月期以外は30~40%程度で推移しています。

この会社は、

株主への利益還元を経営の最重要課題として位置付けています。

配当は、1事業年度の配当回数は中間配当と期末配当の年2回を基本としていますが、実施に当たっては収益状況や配当性向の向上を勘案して都度決定する方針を探っています。

また、配当性向30%以上を目安とする安定配当を継続することを、「チノーグループ中期経営計画 2026」の財務戦略としています。

【株主優待】

この会社は株主優待があり、3月末に300株以上保有の株主に、株主優待ポイントが付与され、ポイントに応じて食品・電化製品・寄付等と交換できます。

  • 300株以上 4,000ポイント
  • 400株以上 8,000ポイント
  • 500株以上 15,000ポイント
  • 600株以上 20,000ポイント
  • 700株以上 25,000ポイント
  • 1,000株以上 30,000ポイント
  • 2,000株以上 35,000ポイント
  • 5,000株以上 40,000ポイント

300株以上でハードルは高いですが、うれしい内容ですね!

【直近の株価動向】

<週足チャート(直近2年間)>

出所:楽天証券サイト

週足ベースの株価は、一昨年のコロナショック時の安値(986円)をつけた後は、高値切り上げ安値切り上げの右肩上がりの上昇を続けています。

<日足チャート(直近3か月間)>

出所:楽天証券サイト

直近の株価は、今年の大発会までは上昇基調で高値(1,750円)をつけましたが、その後一旦調整し、再び上昇していました。

しかし、今回の立会外分売発表の翌営業日(2/10)に短期的な需給悪化懸念からか、出来高を伴い窓を開けて売られ、前日比 149円安(-8.8%)し、75日移動平均線(青線)を下抜けてきました。

今後は、節目である1,500円程度で下げ止まり上昇に転じていくのか、さらに下抜けるのか要注目です。

まとめ

まとめ

【業績】

  • 2022年3月期3Q累計の業績は、前年同期比 増収増益で、「計測制御機器」と「センサ」が好調で、売上高は微増、営業利益と経常利益は約3倍の利益を上げている。
  • 2022年3月期通期予想は、前期比で売上高は微増、利益面は純利益を除いて1割の増益を予想
  • 2022年3月期通期予想に対する進捗率は、3Q終了時点で売上高はほぼ順調で、利益面は数値的には少し遅れているが、同社グループの売上高および利益は、例年、4Qに集中し、3Qまでの各期の売上高および利益は4Qの業績水準と比べ乖離が大きくなる傾向であるため特段の遅れはない。

【株主還元】

  • 配当金の年利回り2.9%で、東証1部の単純平均2.12%(2/10時点) と比較すると高い水準
  • 配当性向は、ほぼ30~40%で安定しており、会社の方針も配当性向30%以上を目安とする安定配当を継続するとしている。
  • 株主優待があり、3月末に300株以上保有の条件でハードルは少し高いが、株主優待ポイントが付与され、ポイントに応じて食品・電化製品・寄付等と交換可能。

【流動性・分売数量】

  • 直近の出来高5日平均は708百株、25日平均は312百株で、流動性は低い水準。
  • 分売数量は、発行済み株式総数の約4.9%と多めの数量。
  • 今回の立会外分売は、プライム市場における流通株式時価総額の基準を達成するために行い、目的が明確

【株価モメンタム】

  • 週足ベースの株価は、一昨年のコロナショック時の安値(986円)をつけた後は、高値切り上げ安値切り上げの右肩上がりの上昇を続けている
  • 直近の株価は、今年の大発会までは上昇基調で高値(1,750円)をつけ、その後調整し戻りかけてはいたが、
    今回の立会外分売発表の翌営業日(2/10)に短期的な需給悪化懸念からか、出来高を伴い窓を開けて売られ、前日比 149円安(-8.8%)し、75日移動平均線を下抜けてきた
  • 今後の株価は、節目である1,500円程度で下げ止まり上昇に転じていくのか、さらに下抜けるのか要注目

以上のことから、

レベル(最低⭐~最高⭐⭐⭐⭐⭐)
業績⭐⭐⭐
株主還元(配当、株主優待等)⭐⭐⭐⭐
株価モメンタム⭐⭐⭐
流動性⭐⭐
分売数量⭐⭐
総合判定⭐⭐⭐(中立)
※「総合判定」=⭐4つ以上「買い」、⭐3つ「中立」、⭐2つ以下「不参加」

と判断しました。

最後までご覧いただき、ありがとうございました。

※株式投資の実際の売買は、自己判断、自己責任でお願いします。

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