【上方修正は買いか?】加藤産業(9869)

食品銘柄分析
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直近で今期業績予想の上方修正を発表した銘柄に関して、この発表のタイミングで株を買った場合、利益を得ることができるのか?

足元の経営状況や客観的な指標、株価モメンタム等を踏まえ、総合的に分析しました。

今回は、東証プライムから卸売業種の加藤産業です。

最後までお付き合いいただけるとうれしいです!

「上方修正」とは?

企業が決算において以前掲げていた予想利益などの数字を引き上げることを指します。

売り上げ増加や環境改善など、想定していなかった要因によって従来予想以上の達成が見込まれるときに発表されます。

SMBC日興証券HPより

特に利益面が上方修正されると、1株当たり利益(EPS)が上昇する可能性が高くなりますので、

株主還元の方針で、配当性向を定めている会社は、配当性向が一定の場合、EPSが上昇すると1株あたりの配当金も高くなり投資家が直接恩恵を受けることになります。

例えば、配当性向を30%と定めている会社が、当初の配当金予想は年間1株あたり30円(EPS=100円)だったとします。

この会社が、業績が好調なため上方修正をして、EPS予想が50%増額され、150円に修正されたとしましょう。

そうなった場合、配当金は配当性向30%と定めていますので、配当金も30円から45円(=150×0.3)と15円増額となり、配当金も1.5倍に増額されることになります。

また、配当金等のインカムゲインだけではなく、キャピタルゲイン(売買益)も期待できます

なぜかというと、上方修正を発表した会社の株は、業績が予想していた以上に良くなったため、株を買いたい投資家が増えますので、株価上昇の大きな要因になるわけです。

ただ時より、会社発表の上方修正後の経営数値がコンセンサス予想(マーケットにおいて支配的になっている予想(数値等))を下回る場合は、「失望売り」といわれ、大きく売り込まれ株価が下落するケースがありますので注意が必要です。

それでは、見ていきましょう!

上方修正の概要

まとめ

2023年5月2日に、2023年9月期通期連結業績予想の上方修正を発表しています。

2023年9月期通期の業績予想は表1です。

営業
収益
[億円]
営業
利益
[億円]
経常
利益
[億円]
親会社
株主に
帰属する
当期純利益

[億円]
1株当たり
当期利益

[円]
1株当たり
年間配当金

[円]
前回
(2022/11/14)
発表予想
10,67013715499.0294.4289
今回修正予想10,800153170113336.0697
増減額13016.016.014.0
増減率[%]1.211.710.414.18.9
表1:加藤産業 2023年9月期通期連結業績予想数値の修正(2023年5月2日発表)

前回予想と比べ、売上高は微増利益面は1割強の増額修正をしています。

修正の理由は、

  • 2023 年 9 月期の2Q期間は、コロナ禍での活動制限が解除されたことによって同社グループの主力である家庭内消費に関連する需要に一服感が見られ、加えて、食品をはじめとした幅広い商品やサービスの値上げによって生活者の節約志向が強まっている
    一方で、売上単価の上昇酒類流通事業での外食需要の回復及び海外事業でのコロナ禍からの経済活動や市場の回復もあり、営業収益は堅調に推移している。
  • 利益面は、営業収益の増加による営業総利益の確保と共に、想定以上のコストコントロールが寄与して営業利益及び経常利益は予想を上回る見通し
  • さらに、当2Q連結会計期間において、特別利益として投資有価証券売却益を計上予定で、親会社株主に帰属する四半期純利益は前回予想を大幅に上回る見込み
  • 2023年9月期通期は、今後の経済や消費の動向、コストの状況が不透明であるため、3Q以降の想定は前回予想を踏まえて修正した。

としています。

配当予想に関しても、同社は株主への利益還元を経営の重要政策と認識し、収益力の向上と財務体質の強化を図りながら、安定的かつ業績に見合う適正な配当を維持することを基本方針としており、

2023 年 9 月期の業績は、2Q累計期間及び通期の利益が前回予想を大幅に上回る見込みであることに加えて、直近の財務状況等を総合的に勘案した結果、

2023年9 月期の配当予想を前回予想から、年間1株当たり8円増配し、97円配当(内 特別配当 3 円)に修正しています。

どんな会社?

食品

1945年(昭和20年)に飲料水卸売業として創業し、1947年(昭和22年)に株式会社として設立され、

以来、さまざまな困難に立ち向かいながら、常に挑戦を続けて成長し、「豊かな食生活」を提供して、人々の幸せを実現すること。

をミッションとして、食品卸売業を主な事業内容とし、さらに物流及びその他サービス等の事業活動を展開している会社です。

事業内容は、「常温流通事業」「低温流通事業」「酒類流通事業」の3つに、重要性の増した在外子会社を集約した「海外事業」を加えた4つがあり、それぞれ、

  • 常温流通事業
    インスタント(缶詰・レトルト含む)、乾物・穀類、飲料、嗜好品、調味料他の販売
  • 低温流通事業
    要冷品の販売
  • 酒類流通事業
    酒類の販売

を行っています。

2022年9月期通期のセグメント別売上高構成比は、

  • 常温流通事業 63.3%
  • 低温流通事業 10.5%
  • 酒類流通事業 20.0%
  • 海外事業 5.8%
  • その他(主に物流事業) 0.4%

となっており、「常温流通事業」が6割強を占めています。

直近の経営概況

経営状況

【2023年9月期1Q(2022年10月~12月)の経営成績】

(2023年2月8日発表)

決算期営業
収益
[億円]
(前年
同期比
[%])
営業
利益
[億円]
(同)
経常
利益
[億円]
(同)
親会社株主に
帰属する
当期純利益
[億円]
(同)
2022年9月期
1Q累計 ※1
2,636
(ー)
33.5
(ー)
40.1
(ー)
28.1
(ー)
2023年9月期
1Q累計
2,846
(8.0)
45.3
(35.0)
51.6
(28.8)
33.7
(20.2)
2023年9月期
通期会社予想
(2023年5月2日
修正)
10,800
(4.2)
153
(14.0)
170
(10.4)
113
(0.2)
通期予想に対する
1Qの進捗率[%]
26.329.630.329.8
表2:加藤産業 2023年9月期1Q連結経営成績と2023年9月期通期連結予想
※1:「収益認識に関する会計基準」等を前1Q連結会計期間の期首から適用しており、2022年9月期1Qに係る各数値については、当該会計基準等を適用した後の数値となっており、対前年同四半期増減率は記載なし。

表2の通り、前年同期比 増収増益で、売上高は1割弱増利益面は2~3割強の増益でした。

2023年9月期通期の業績予想は、今回の上方修正後で、前期比 増収増益で、売上高は利益面は微増~1割強の増益を予想しています。

通期予想に対する進捗率は、1Q終了時点で、売上高、利益面ともに/4程度でそこそこです。

【2023年9月期1Qの状況、経営成績の要因】

食品流通業界は、消費者の食生活や購買行動の多様化が進むとともに、小売業の業種・業態を超えた競争が激しくなっています。

さらに、コロナ禍からの経済活動の正常化の中で、高水準な円安も加わり、原材料価格も含めた仕入価格やエネルギー価格等の大幅なコストアップの影響が顕在化しています。

また、商品の値上げ等により家計への負担感がさらに増すことで、日常の生活関連消費については生活防衛意識が一層強くなると予想しています。

そして、新型コロナウイルスの影響によって消費者の生活スタイルが大きく変化する中で、コロナ禍からの行動制限解除により外食関連需要に回復傾向が見られる一方、

家庭内消費に関連する需要は堅調ではあるものの、物価上昇に伴う節約志向の進行によって消費マインドの冷え込みの兆しが出てきました。

このような状況に対して同社グループは、グループミッションである『豊かな食生活を提供して人々の幸せを実現すること』を目指して、デジタル技術の活用も含めた取引先との取組み強化業務の見える化・見直し及び生産性向上に取り組み付加価値を高める営業活動・業務活動を進めてました。

海外事業は、今後の同社グループの成長戦略の一つとして位置づけ、マレーシア・ベトナム・シンガポール・中国国内での食品卸売事業の展開を図っており、

日本を含めたアジア地域における食品流通事業の強化を進めました。

そして、2023年4月にはベトナムの食品卸売会社であるNam Khai Phu Service Trading Production Joint Stock Companyの株式を取得して連結子会社を予定しており、

同国において確固たる卸売業グループとなることを目指すとともに、今後も東南アジアを中心に海外事業全体のさらなる拡大を図っていく計画です。

以上の結果、当1Q連結累計期間における営業収益は、既存得意先を中心とした取引の増大に加えて、外食関連需要の回復による取引の増加もあり、

前年同四半期に比べて8.0%増加して2,846億円となり、営業利益は45.3億円(同35.0%増経常利益は51.6億円(同28.8%増親会社株主に帰属する四半期純利益は33.7億円同20.2%となりました。

【セグメント別業績】

セグメント別の売上高は、表3の結果になりました。

主力の「常温流通事業」「低温流通事業」「その他」前年同期比 増収増益

「酒類事業」「海外事業」は増収黒字転換でした。

セグメント売上高
[億円]
(前年同期比
増減率
[%])
営業
利益
[百万円]

(同)

常温流通
1,783
(4.2)
3,649
(14.2)
低温流通296
(2.7)
310
(61.0)
酒類流通569
(15.3)
262
(前年同期
△56百万円)
海外188
(41.9)
107
(前年同期
△122百万円)
その他27.9
(4.9)
176
(30.7)
表3:2023年9月期1Q セグメント別業績

セグメント別の状況は以下です。

常温流通事業

家庭内消費に関連する需要は堅調であるものの、原材料価格等の高騰高水準な円安などによる仕入価格も含めた大幅なコストアップの影響が顕在化しています。

また、商品の値上げ等により家計への負担感がさらに増すことで、日常の生活関連消費については生活防衛意識が一層強くなることが予想され、厳しい経営環境で推移しました。

このような状況に対して、価格だけに頼らない価値の提供に向けて、提案型営業の一層の推進や卸売業としての役割・機能の進化を通して、仕入先との取組み強化及び得意先との関係強化を図るとともに、

自社ブランド商品の開発・販売においてもブランド価値・商品価値の訴求を進めました

加えて、業務の見える化と見直し及び生産性向上に努めました。

低温流通事業

コロナ禍からの行動制限解除により社会経済活動の正常化に向けた動きの中で、外食及び内食関連需要はともに堅調に推移するものの、

原材料価格やエネルギーコストの高騰に円安の影響も加わって物価が上昇するなど、厳しい経営環境で推移しました。

このような状況に対して、得意先のニーズに応じた付加価値商品や、消費者のライフスタイルの変化に応じた売場の提案を積極的に行うとともに、さらなるローコストオペレーションに取り組みました。

酒類流通事業

飲酒人口の減少や若年層のアルコール離れ等により消費の規模は縮小傾向が続いている中、家庭内需要は2022年10月から値上げとなったビールの駆け込み需要の反動により減少しましたが、

外食関連需要はコロナ禍からの行動制限解除による回復が見られました。

市場の傾向としては、健康志向に対応した機能性商品の需要拡大や価格と価値が伴った商品への消費移行が見られ、

低価格志向との消費の二極化がより一層鮮明になっており、消費者による買い場など購買行動の変化やコストアップの懸念もあり、厳しい経営環境で推移しました。

このような状況に対して、主要取引先との取組み強化及び自販力・提案型営業の強化を進めるとともに、

商品毎の利益管理を徹底し、さらに業務の効率化や生産性の向上を図ることでローコストオペレーションに取り組みました。

以上の結果、営業収益は、既存得意先との取引増大に加えて外食需要の回復も寄与しています。

海外事業

マレーシア・ベトナム・シンガポール・中国国内での食品卸売事業の展開を図っており、

既存の海外卸売業としてのベースに加え、日本国内で培ってきた営業力の浸透及び経営管理の定着と、現地企業間でのシナジーの創出を図りました。

以上の結果、営業収益は、コロナ禍からの経済活動及び市場の回復や為替変動の影響もあり、増収となっています。

その他

物流関連事業がその主な内容であり、営業収益は物量の増加等で増収

営業利益は諸経費等の減少で増益でした。

【財政面の状況】

自己資本比率>(自己資本(総資本-他人資本)÷総資産)×100

2023年9月期1Q末時点で30.5%と前期末(33.7%)から3.2ポイント低下しました。

これは主に、支払手形及び買掛金が前期末比で514億円増加し、流動負債が合計で493億円増加したことによるものです。

自己資本比率の数値としてはまだ問題ないレベルです。(20%以上を安全圏内としています。)

株価指標と動向

株価指標

【2023/5/2(火)終値時点の数値】

  • 株価:3,660円
  • 時価総額:1,281億円
  • PER(株価収益率):10.8倍

PERは、同業で時価総額が近い、伊藤忠食品(2692) 13.5倍、ヤマエグループHD(7130) 7.4倍、三菱食品(7451) 9.1倍と比較すると、中間的な水準です。

  • PBR(株価純資産倍率):0.91倍
  • 信用倍率(信用買い残÷信用売り残):6.77倍
  • 年間配当金(予想):97円(年2回 3月 47円、9月 50円)、年間利回り:2.65%(配当性向 28.8%)

配当利回りは2.65%で、東証プライムの単純平均 2.32%(5/2)と比較すると高い水準です。

表4のように、直近5年間の配当金は、1株当たり56~83円で推移しており、連続増配を継続しています。

配当性向は、25~30%程度で安定しています。

決算期1株当たり
年間配当金
[円]
配当性向
[%]
2018年9月期5629.1
2019年9月期6030.0
2020年9月期6626.0
2021年9月期7230.2
2022年9月期8325.1
表4:加藤産業 年間配当金推移

この会社は、

株主への利益還元を経営の重要政策と認識し、収益力の向上と財務体質の強化を図りながら、安定的かつ業績に見合う適正な配当を維持することを基本方針としています。

また、中間配当と期末配当の年2回の剰余金の配当を行うこととしています。

内部留保は、経営基盤のさらなる強化に向けて、物流機能の充実情報システムの高度化及び新規事業投資等に積極的に活用していくとしています。

【株主優待】

この会社は、株主優待があり、毎年3月末に100株以上保有の株主は、株数に応じて以下の同社オリジナル製品セットが進呈されます。

  • 100株以上保有
    2,700円相当(手造りジャム いちご、ブルーベリー、オレンジマーマレード 各320g)
  • 1,000株以上
    5,000円相当(手造りジャム いちご、ブルーベリー、オレンジマーマレード、株主優待特別限定品(各320g)、ピーナッツバター(種子島産粗糖使用)150g)

100株保有の場合、配当金+株主優待(2,700円)で利回りは3.38%となります。

個人投資家にとってうれしい内容ですね!

【直近の株価動向】

<週足チャート(直近2年間)>

週足ベースの株価は、2022年6月に安値(3,000円)をつけるまでは下落基調で推移していましたが、

それ以降は上昇に転じ2023年2月に高値(3,730円)をつけています。

<日足チャート(直近3か月間)>

直近の株価は、2023年2月に年初来高値(3,730円)をつけた後は、下落基調で推移していましたが、

4月中旬に年初来安値(3,300円)をつけた後は上昇に転じ、現時点(5/2)ではすべての移動平均線の上で推移しています。

今後は、今回の今期業績の上方修正と増配を好感されて、年初来高値(3,730円)をあっさり上抜けていくのか、好感されず下落に転じていくのか、要注目です。

まとめ

まとめ

【上方修正のインパクト】

  • 売上単価の上昇酒類流通事業での外食需要の回復及び海外事業でのコロナ禍からの経済活動や市場の回復もあり、営業収益は堅調に推移し、
    利益面は、営業収益の増加による営業総利益の確保と共に、想定以上のコストコントロールが寄与して、
    2023年9月期通期業績予想を、前回予想と比べ、売上高は微増利益面は1割強の増額修正をし、インパクトはぞれほど大きくない
  • 業績の上方修正に伴い、配当金も、直近の財務状況等を総合的に勘案し、前回予想から年間1株当たり8円増配し、97円配当(内 特別配当 3 円)に修正した。

【業績】

  • 今期(2023年9月期)1Qの業績は、既存得意先を中心とした取引の増大に加えて、外食関連需要の回復による取引の増加もあり、
    前年同期比  増収増益で、売上高は1割弱増利益面は2~3割強の増益
  • 今期の通期予想は、今回の上方修正後の数値で、
    前期比 増収増益で、売上高は利益面は微増~1割強の増益を見込む。
  • その通期予想に対する進捗率は、1Q終了時点で、売上高、利益面ともに1/4程度でそこそこ

【株主還元】

  • 配当利回り(会社予想)は2.65%で、東証プライムの単純平均 2.32%(5/2時点) と比較すると高い水準
  • 直近5年間は、1株当たり56~83円で推移しており、連続増配を継続中
    配当性向は、25~30%程度安定して推移。
  • 株主優待があり、毎年3月末に100株以上保有の株主は、同社オリジナル製品セット(2,700円相当、1,000株以上は5,000円相当)が進呈され、
    100株保有の場合、配当金+株主優待(2,700円)で利回りは3.38%となる。

【流動性】

  • 直近の出来高の5日平均は522百株、25日平均は617百株で、流動性はやや低い水準。(1,000百株を平均水準とした。)

【株価モメンタム】

  • 週足ベースの株価は、2022年6月に安値(3,000円)をつけるまでは下落基調で推移していたが、
    それ以降は上昇に転じ、2023年2月に高値(3,730円)をつけた。
  • 直近の株価2023年2月に年初来高値(3,730円)をつけた後は、下落基調で推移していたが、
    4月中旬に年初来安値(3,300円)をつけた後は上昇に転じ、現時点(5/2)ではすべての移動平均線の上で推移
  • 今後の株価は、今回の今期業績の上方修正と増配を好感されて、年初来高値(3,730円)をあっさり上抜けていくのか、好感されず下落に転じていくのか要注目。

以上のことから、

レベル
(⭐(最低)~
⭐⭐⭐⭐⭐(最高))
上方修正の
インパクト
⭐⭐⭐
業績⭐⭐
株主還元
(配当、株主優待等)
⭐⭐⭐
株価モメンタム⭐⭐⭐
流動性⭐⭐
総合判定⭐⭐(中立)
※「総合判定」=⭐4つ以上「買い」、⭐3つ「中立」、⭐2つ以下「見送り」

と判断しました。

最後までご覧いただき、ありがとうございました。

※株式投資の実際の売買は、自己判断、自己責任でお願いします。

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