【公募増資・売出(PO)は買いか?】アルトナー(2163)

エンジニア公募増資・売出(PO)
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こんにちは!

公募増資・売出(以下、PO)の実施を発表した銘柄に関して、POに応募して買った場合、利益を得ることができるのか?直近の経営状況や客観的な指標、株価モメンタム等を踏まえ、総合的に分析しました。

今回は、東証プライムからサービス業種のアルトナーです。

最後までお付き合いいただけるとうれしいです!

  • 公募増資・売出(PO)とは?
既上場企業が新たに発行する株式(公募株式)や既に発行された株式(売出株式)を投資家に取得させることをいいます。
正確には、「PO」は「Public(公開の)Offering(売り物)」の略で、日本語では「公募」と呼ばれます。「公募」とは、「不特定かつ多数の投資家に対し、新たに発行される有価証券の取得の申込を勧誘すること」をいいます。
また、「売出」とは、「既に発行された有価証券の売付けの申込み又はその買付けの申込の勧誘のうち、均一の条件で50人以上の者を相手方として行う」ことをいい、通常は「公募」「売出」を合わせて「PO」と呼ばれます。
「新規公開株(IPO)」は未上場企業が直接金融市場からの資金調達や知名度・信用力の向上を目的として証券取引所に新規上場するために一般投資家に株式を取得してもらう行為であるのに対して、「公募・売出(PO)」は既に上場していて証券取引所での株式取引が行われている企業が追加の資金調達や大株主の保有株売却などを目的として一般投資家に株式を取得してもらう行為であり、「新規公開株(IPO)」と「公募・売出(PO)」の違いを簡単にいえば、実施する企業が「未上場」か「既上場」かの違いといえます。

POの概要

まとめ

今回のPOは、大株主からの株式の売出です。売出価格等決定日や受渡期日、発行数量等は表1のようになっています。

ディスカウント率は、「売出価格等決定日」に決まり、その日の終値から数%です。

ちなみに、直近の主なPOのディスカウント率は、JR西日本(9021) 3.01%、日本郵政(6178) 2.01%、クリエイト・レストランツ・ホールディングス(3387) 3.09%となってますが、ほぼほぼ2~4%程度です。

ただ、ディスカウント率が大きいPOもあり、直近ではENECHANGE(4169)の8.1%が最大です。

注意点として、どの証券会社でも購入できるわけでなく、引受人(今回は、大和証券、三菱UFJモルガンスタンレー証券)で購入申込可能です。

早ければ、4/11(月)の夕刻に、会社側から発行価格等のお知らせが適時開示であります。このブログ記事も更新しますので、チェックしてくださいね💖

発行価格等決定日2022 年4月11日(月)
受渡期日
(POで買った場合はこの日から売却可能)
2022 年4月18日(月)
株式の売出し
(引受人の買取引受けによる売出し)数量
普通株式 2,210,200
発行済み株式総数 10,627,920 株 の約20.8%
株式の売出し
(オーバーアロットメントによる売出し)数量
普通株式 330,000 株(実施決定(4/11)
※上記の「売出価格等決定日」に決定大和証券が売出す。
発行価格824 円(4/11決定)
ディスカウント率3.51(4/11決定)
申込単位数量100株
引受人大和証券、三菱UFJモルガン・スタンレー証券
表1:アルトナー PO概要

【株式売出しの目的】

  • 同社は、2021 年7月9日付で株式会社東京証券取引所より、市場区分における上場維持基準への適合状況に関する一次判定の結果、「流通株式時価総額」については、上場維持基準が 100 億円であるところ、移行基準日(2021 年6月 30 日)時点での同社の流通株式時価総額は 41 億円であるため、当該基準を充たしていない旨の通知を受けた。
  • 同社としては中長期的な企業価値向上の観点のためのプライム市場の上場維持基準の適合に向けた取組みとして、流通株式比率の上昇のために、本株式売出しを実施することにした。

としています。

同社が作成した「新市場区分の上場維持基準の適合に向けた計画書」によると、

  • 流通株式比率 70%(移行基準日時点:46.8%
  • PER 15.0倍(2022年1月末:12.7倍
  • 1株当たり利益(EPS) 93.34円(2022年1月末:68.59倍

を達成することにより、流通株式時価総額 100億円(2022年1月末時点:43億円)を充たす目論見で、

このために、新中期経営計画(‘23 年 1 月期~’25 年 1 月期)の最終年度までに各種取組を進めるとしています。

具体的な数値目標が明確になっており、納得性がありますね。

今回の株式の売出数量は、発行済み株式総数の約20.8%(OAを含めた最大の株数で23.9%)で、

直近の株式の売出のみのPOの株式の売出比率(OA含む)は、都築電気 5.3%、特種東海製紙 12.1%、ミルボン 2.8%でしたので、それと比較するとかなり多い数量です。

また、この銘柄の直近の出来高(売買が成立した株の数量)の5日平均は318百株、25日平均は238百株で、流動性は低い水準です。

どんな会社?

建築CAD

主として、設計技術者の人材派遣に特化した派遣事業を、宇都宮・横浜・名古屋・大阪の事業所を拠点として展開・運営を行っている会社です。

顧客の事業分野としては、ソフトウェア電気・電子機械があり、この基礎研究、設計開発、および開発技術等の周辺業務を行っています。

2022年1月末時点のエンジニア構成比は、

  • エンベデッド(機器組込み)・モデルベース 29.6%
  • ITソリューション 13.0%
  • 電気・電子 25.5%
  • 機械 31.8%

となっており、「機械」「エンベデッド・モデルベース」「電気・電子」の順で多くなっています。

2022年1月期の事業別売上高構成比は、

  • 技術者派遣(設計技術者が派遣先(顧客企業)の同道に従事する形態) 92.4%
  • 請負・受託(顧客企業から業務を受託し、顧客企業に成果物を納品する形態) 7.4%
  • その他 0.2%

となっており、「技術者派遣」事業が9割強を占めています。

直近の経営概況

経営状況

2022年1月期(2021年2月~2022年1月)の経営成績】(2022年3月14日発表)

決算期売上高
[百万円]
(前年同期比[%])
営業利益
[百万円]
(同)
経常利益
[百万円]
(同)
親会社株主に
帰属する
当期純利益
[百万円]
(同)
2021年1月期通期実績7,147
(2.5)
887
(0.1)
910
(1.9)
628
(2.5)
2022年1月期通期実績8,102
(12.9)
1,010
(13.9)
1,032
(13.4)
728
(15.9)
2023年1月期通期会社予想8,798
(8.6)
1,147
(13.6)
1,150
(11.4)
797
(9.4)
表2:アルトナー 2022年1月期通期経営成績と2023年1月期通期予想

2022年1月期通期の業績は、前年同期比 増収増益で、売上高、利益面ともに割強増益の結果でした。

2023年1月期通期の業績予想は、前期比で売上高、利益面ともに1割程度の増収増益を見込んでいます。

【2022年1月期通期の状況、経営成績の要因】

技術者派遣事業は、未配属の技術者に関して配属を優先して契約交渉したことにより、技術者単価が前年同期より微減となりました。

技術者数、稼働率は前年同期を上回り2021年入社の新卒技術者の配属が当初の予定より前倒しで進捗したことにより、稼働人員が前年同期を上回りました

また、残業時間が回復したことにより、労働工数が前年同期を上回りました

請負・受託事業においては、積極的な営業展開により、受注プロジェクトへの配属者数が増加しました。

利益面は、IT等のインフラ、技術者の増加に伴うスタッフ増員等の投資を実施しました。一方、同社は技術者の労務費に関して、顧客企業に配属前の未配属者は販売管理費で計上し、配属後は売上原価で計上しており、未配属者の配属が進捗したことにより、販売管理費が減少し、売上原価が増加しました。

また、採用活動、営業活動において、スタッフのテレワークを推進したことにより、旅費交通費、会議費等の費用が減少しました。

これらの結果、表2の経営成績となりました。

【事業別の売上高】

事業別の売上高は、表3の結果になりました。

セグメント売上高[百万円]
(前年同期比
増減率[%])
技術者派遣7,490
(11.5)
請負・受託598
(33.9)
その他13
(12.3)
表3:2022年1月期通期  事業別売上高

全ての部門で増収の結果で、

特に「請負・受託」は前期比3割強の増収となりました。

【財政面の状況】

自己資本比率>(自己資本(総資本-他人資本)÷総資産)×100

2022年1月期末時点で70.5%と前期末(70.4%)から0.1ポイント減少しました。

自己資本比率の数値としては良好なレベルです。(20%以上を安全圏内としています。)

キャッシュ・フロー

2022年1月期通期のキャッシュ・フロー(以下、CF)の状況

  • フリーCF(営業活動によるCFと投資活動によるCFを合計した金額)※ 803百万円のプラス
    • 営業活動によるCF 770百万円の収入(前期 899百万円の収入)
    • 投資活動によるCF 33百万円の収入(前期 30百万円の支出)

フリー・キャッシュ・フロー:プラスの場合、会社が使える資金があることを意味し、マイナスの場合、会社が自由に使うことができる資金が少ないことを意味する。

前期(2021年1月期)通期のフリーCF(プラス869百万円)から66百万円悪化しています。

これは主に、有形固定資産の取得による支出が前期比で33百万円減少有形固定資産の売却による収入25百万増加し、投資活動によるCF収入が増加しましたが、

税引前当期純利益が前期比で145百万円増加売上債権151百万円増加したこと等により、営業活動によるCF収入が減少したことが要因です。

【今期(2023年1月期通期)業績の見通し】

2023年1月期の市場環境に関して、前期同様に年間を通じたコロナ禍の状況を想定しています。

戦略重点マーケットとして、前期に引き続きカーボンニュートラルに関連する電気自動車(EV)燃料電池自動車(FCV)、また、自動運転半導体関連を設定しております。
前提条件として、技術者数は前期を上回り、稼働率、技術者単価、労働工数は前期と同水準と予想しています。

また、2022年4月入社の新卒技術者の配属完了時期は、コロナ禍以前の平時と概ね同じ時期に設定しています。

これらを踏まえ、2023年1月期の通期業績の見通しは、表2の数値の増収増益を見込んでいます。

株価指標と動向

株価指標

【2022/4/4(月)終値時点の数値】

  • 株価:873円
  • 時価総額:92.8億円
  • PER(株価収益率):11.6倍

PERは、同業で時価総額が近い、メイテック(9744) 21.4倍、アルプス技研(4641) 12.2倍、テクノプロ・HD(6028) 27.2倍と比較すると、低い水準です。

  • PBR(株価純資産倍率):2.58倍
  • 信用倍率(信用買い残÷信用売り残):ー(信用売り残無し)
  • 年間配当金(予想):38円(年2回 7月 19円、1月 19円)、年間利回り:4.4%(配当性向 50.7%)
決算期1株当たり
年間配当金(円)
配当性向(%)
2018年1月期1533.1
2019年1月期1835.4
2020年1月期20.535.5
2021年1月期2338.9
2022年1月期34.550.3
表4:アルトナー 年間配当金推移

年利回りは4.4%で、東証1部の単純平均2.17%(4/1時点) と比較すると約2倍の高い水準です。

表4のように、直近5年間の配当金は、連続増配を継続しています。

配当性向は、30~50%程度で推移しています。

この会社は、

利益配分については、今後の事業展開や業績および経営環境、経営基盤の強化を総合的に考慮し、

株主に対する安定的な配当を実施することを経営の最重要課題と位置付けており、配当性向30%をベースに検討するとしています。

そして、中期経営計画(’23年1月期~’25年1月期)では、配当性向は50%に引き上げられています。

また、中間配当と期末配当の年2回の剰余金の配当を行うことを基本方針としています。

【直近の株価動向】

<週足チャート(直近2年間)>

出所:楽天証券サイト

週足ベースの株価は、一昨年のコロナショック時の安値から一気に上昇し、同年9月に2倍程度の高値(1,116円)をつけました。

しかしその後は調整し、770~980円程度のレンジ内での動きになっています。

<日足チャート(直近3か月間)>

出所:楽天証券サイト

直近の株価は、今年の年初に高値(939円)をつけた後は、日経平均の下落とともに下落し、3/8に安値(816円)をつけました。

しかしその後は上昇に転じ、年初の高値を目指していましたが、今回のPO発表の翌営業日(4/4)は出来高を伴い売られ、前日比 31円安(-3.43%)で終了しました。

今後は、直近の安値(816円)を下抜けずに、上昇基調を維持していくのか、抜けて再び下落していくのか、要注目です。

まとめ

まとめ

【業績】

  • 2022年1月期通期の業績は、技術者派遣事業での、技術者数、稼働率が前期を上回ったことにより、前年同期比 増収増益で、売上高、利益面ともに1割強増益の結果
  • 2023年1月期通期の業績予想は、技術者数は前期を上回り、稼働率、技術者単価、労働工数は前期と同水準と予想し、前期比で売上高、利益面ともに1割程度の増収増益を見込んでいる。

【株主還元】

  • 配当金年利回り 4.4%で、東証1部の単純平均2.17%(4/1時点) と比較すると2倍の高い水準
  • 直近5年間の配当金は、連続増配を継続中
  • 配当性向30~50%程度で推移しており、会社の方針は配当性向 30%をベースにしていたが、
    新中期経営計画で2022年1月期からは50%目安に引き上げた

【流動性・売出株数】

  • 直近の出来高5日平均は318百株、25日平均は238百株で、流動性は低い水準
  • 今回の株式の売出数量は、発行済み株式総数の約20.8%(OAを含めた最大の株数で23.9%)で、
    直近の株式の売出のみのPO(都築電気、特種東海製紙、ミルボン)の株式の売出比率(OA含む)と比較するとかなり多い数量

【株価モメンタム】

  • 週足ベースの株価は、一昨年のコロナショック時の安値から一気に上昇し、同年9月に2倍程度の高値(1,116円)をつけた。
    しかしその後は調整し、770~980円程度のレンジ内での動き
  • 直近の株価は、今年の年初に高値(939円)をつけた後は、日経平均の下落とともに下落し、3/8に安値(816円)をつけたが、その後は上昇に転じていた
    しかし、今回のPO発表の翌営業日(4/4)は出来高を伴い売られ、前日比 31円安(-3.43%)で終了。
  • 今後の株価は、直近の安値(816円)を下抜けずに、上昇基調を維持していくのか、下抜けて再び下落していくのか、要注目。

以上のことから、

レベル(最低⭐~最高⭐⭐⭐⭐⭐)
業績⭐⭐⭐⭐
株主還元(配当、株主優待等)⭐⭐⭐⭐
株価モメンタム⭐⭐⭐
流動性⭐⭐
株式の売出数量
総合判定⭐⭐⭐(中立)
※「総合判定」=⭐4つ以上「買い」、⭐3つ「中立」、⭐2つ以下「見送り」

と判断しました。

最後までご覧いただき、ありがとうございました。

※株式投資の実際の売買は、自己判断、自己責任でお願いします。

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