こんにちは!
今期黒字転換を見込んでいる会社は、一般的に株価が上がりやすいと言われています。そこで、前期赤字から今期黒字転換を見込んでいて、かつ高配当(予想利回り3%以上)銘柄をピックアップし、今買うべき銘柄なのか?事業内容や直近の経営状況、客観的な株価指標、株価モメンタム等を総合的に勘案して判断しました。
今回は、東証1部からパルプ・紙業種の中越パルプ工業です。
最後までお付き合いいただけるとうれしいです!
事業内容
印刷用紙から産業用紙、新聞用紙までを手掛ける総合紙パルプメーカーです。
富山県高岡市に本社を置く業界中堅です。
1998年から、「竹紙」にも取り組みはじめており、現在では日本の竹を大量に活用する唯一で最大の企業となっています。そのため、多くの地域が抱える放置竹林問題の解決、隣接する森林の保全、里山における生物多様性保全や地域経済活性化のモデルにもなっています。
事業内容は以下です。
- パルプ類、紙類およびその副産物の製造、加工、ならびに売買
- 林業、製材業および木材の加工、売買ならびに緑化事業の施工
- 化学薬品の製造、加工ならびに売買
- 不動産の売買、賃貸、管理および仲介ならびにスポーツ施設の経営
- 鉱業、電気供給および運送業ならびに倉庫業他
報告事業セグメントは、「紙・パルプ製造事業」と「発電事業」に分かれており、2021年3月期通期の売上高構成比は、
- 紙・パルプ事業 82.2%
- 発電事業 8.7%
- その他(ナノフォレスト事業、紙加工品製造事業、運送事業、設備設計施工・修理事業、原材料事業、紙断裁選別包装事業、中越エコプロダクツ事業等) 9.1%
と「紙・パルプ事業」が8割以上を占めています。
直近の経営状況
前期(2021年3月期)の経営成績は、
- 売上高 819.4億円(前年同期比 13.9%減)
- 営業損失 3.5億円
- 経常損失 3.2億円
- 親会社株主に帰属する当期純損失 10.5億円
でした。減収減益で、利益面は赤字を計上しました。
会社側コメントは、
当社グループは中期3ヶ年計画「フォワード 304」の達成年度として、需要減退に対応したグループ事業領域の再構築の推進や、ナノフォレスト事業など新規事業分野の展開、既存事業の発展強化に注力してきた。
下期後半は景気回復に期待が高まる状況のなか、需要の裾野が広い非塗工紙を中心とした消費の持ち直しを適宜に捉え、販売数量の確保に注力したものの、期初からの新型コロナウイルス感染症拡大による経済活動の落ち込みが激しかったことにより、前期に比べ大幅な減収になった。
収益面では、徹底したコスト削減対策の推進など損失の削減に努めたが、販売減少による収益悪化の影響を吸収するに至らなかった。
また、休止中の高岡工場5号抄紙機の減損損失を特別損失として計上したことなどで、純損失10.5億円となった。
としています。
個別の事業では、
<紙・パルプ事業>
新型コロナウィルス感染症によるイベント自粛等の影響で販売減となり大幅な減収減益。
売上高 705.8億円(前年同期比 15.4%減)、営業損失 21.5億円(前年同期は 5.2億円の営業利益)
<発電事業>
安定操業に努めたことや、隔年で行っているボイラーの定期検査がなかったこともあり、増収増益。
売上高 71.3億円(前年同期比 2.1%増)、営業利益 15.6億円(同 20.7%増)
<その他事業>
紙・パルプ製品の減産減販の影響で生産設備の稼働率が低下したこと、高岡工場の設備更新による定期点検停止が前年と比較して長期間となったことなどで紙断裁選別包装・運送事業等の紙・パルプ製造事業を補助する「その他の事業」において減収減益。
売上高 171.6億円(前年同期比 12.7%減)、営業利益 1.4億円(同 12.9%減)
となりました。発電事業を除き、減収減益の結果となりました。
財務面は、
自己資本比率(自己資本(総資本-他人資本)÷総資産) ×100)は、2021年3月期末時点で38.4%と前期末(40.1%)から1.7ポイント下がっていますが、まだ問題ないレベルです。
キャッシュ・フロー対有利子負債比率(有利子負債/営業キャッシュ・フロー)は、2021年3月期末時点で8.8%と前期末(5.5%)から3.3ポイント上がっています。借金の割合が多くなっており、若干気になる所でしょうか。
今期(2022年3月期)通期の会社予想は、
- 売上高 850億円(前年比 3.7%増)
- 営業利益 16.5億円(黒字転換)
- 経常利益 17.5億円(黒字転換)
- 親会社株主に帰属する当期純利益 7.0億円(黒字転換)
としています。増収増益で黒字転換の見通しです。
会社側コメントは、
2021年度は、大きく落ち込んだ 2020年度と比較し販売数量の回復を見込むとともに、新規需要を含めた拡販、パルプ販売拡大の取組みに加え、新たなコストダウンを推進する。
さらに今後は、不採算事業の見直しなどによる事業収益の改善、成長事業・新規事業への取組みを強化
し、安定した収益を確保できる事業基盤を確立して、将来に亘り持続発展していく会社を目指す。
としています。
配当に関しては、前期(2021年3月期)無配でしたが、今期(2022年3月期)は復配し、年間40円を予定しています。
株価指標
6/25(金)終値時点の数値
- 株価:1,290円
- 時価総額:172.3億円
- PER:24.6倍
PERは、同業で時価総額が近い、王子ホールディングス(3861) 9.2倍、北越コーポレーション(3865) 5.9倍、三菱製紙(3864) 6.4倍と比較すると、高い水準となっています。
- PBR:0.36倍
- 信用倍率(信用買い残÷信用売り残):28.2倍
- 年間配当金(会社予想):40円(年2回 9月 20円、3月 20円)、年間利回り:3.1%(配当性向 76.3%)
※直近5年間の配当金は、以下のようになっています。
決算期 | 年間配当金(円) | 配当性向(%) |
2017年3月期 | 50 | 53.2 |
2018年3月期 | 50 | ―(赤字) |
2019年3月期 | 50 | 92.6 |
2020年3月期 | 50 | 72.6 |
2021年3月期 | 0 | ―(赤字) |
直近では年間50円配当でしたが、前期は無配でした。配当金性向は、前期を除き直近5年は50%と高い数値となっています。
会社の方針としては、
株主価値と企業価値の持続的向上を目指し、業績の状況や企業体質の強化ならびに今後の事業展開等を勘案しながら充分な株主資本の水準を維持するとともに、株主各位に対する利益還元のための安定配当を実施するとしています。
週足チャート(2年間):
株価は、昨年のコロナショック前の水準(1,450円)を一旦は回復しました。しかし、昨年(2020年)10月から再び下落基調で推移しており、現在はその水準より9%ほど低くなっています。
直近では、1,200円~1,300円のレンジ内で推移しています。これを上抜けると、一段高の可能性もあります。
まとめ
前期(2021年3月期)は、減収減益の赤字でしたが、今期(2022年3月期)は増収増益で黒字転換を見込んでいます。
今期は、2年前の2020年3月期の営業利益(20.6億円)には届かない見通しですが、新たなコストダウンや不採算事業の見直しなどの事業収益の改善を図り、前期の赤字から大幅に利益を回復しようとしています。
前期で前中期経営計画は終了していますので、今後発表される中期経営計画はどのようになるのか、中期的に大きく業績を伸ばす意欲的な計画が出されれば、今後の期待感で株価は伸長する可能性はあります。
株主還元は、今期は復配しさらに配当利回りは3%を超えています。
直近の株価は、レンジ内で推移しており、これを上抜けると一段高となる可能性はあります。
以上より、
レベル(最低⭐~最高⭐⭐⭐⭐⭐) | |
業績 | ⭐⭐⭐ |
配当、株主優待を含む株主還元 | ⭐⭐⭐⭐ |
株価モメンタム | ⭐⭐ |
総合判定 | ⭐⭐⭐(中立) |
と判断しました。
参考になればうれしいです!最後までご覧いただき、ありがとうございました。
※株式投資の実際の売買は、自己判断、自己責任でお願いします。