【公募増資・売出(PO)は買いか?】やまみ(2820)

公募増資・売出(PO)
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こんにちは!

公募増資・売出(以下、PO)の実施を発表した銘柄に関して、POに応募して買った場合、利益を得ることができるのか?直近の経営状況や客観的な指標、株価モメンタム等を踏まえ、総合的に分析しました。

今回は、東証スタンダードから食料品業種のやまみです。

最後までお付き合いいただけるとうれしいです!

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  • 公募増資・売出(PO)とは?
既上場企業が新たに発行する株式(公募株式)や既に発行された株式(売出株式)を投資家に取得させることをいいます。
正確には、「PO」は「Public(公開の)Offering(売り物)」の略で、日本語では「公募」と呼ばれます。「公募」とは、「不特定かつ多数の投資家に対し、新たに発行される有価証券の取得の申込を勧誘すること」をいいます。
また、「売出」とは、「既に発行された有価証券の売付けの申込み又はその買付けの申込の勧誘のうち、均一の条件で50人以上の者を相手方として行う」ことをいい、通常は「公募」「売出」を合わせて「PO」と呼ばれます。
「新規公開株(IPO)」は未上場企業が直接金融市場からの資金調達や知名度・信用力の向上を目的として証券取引所に新規上場するために一般投資家に株式を取得してもらう行為であるのに対して、「公募・売出(PO)」は既に上場していて証券取引所での株式取引が行われている企業が追加の資金調達や大株主の保有株売却などを目的として一般投資家に株式を取得してもらう行為であり、「新規公開株(IPO)」と「公募・売出(PO)」の違いを簡単にいえば、実施する企業が「未上場」か「既上場」かの違いといえます。

POの概要

まとめ

今回のPOは、大株主(同社現会長、社長等)からの株式の売出しです。売出価格等決定日や受渡期日、売出数量等は表1のようになっています。

ディスカウント率は、「売出価格等決定日」に決まり、その日の終値から数%です。

ちなみに、直近の主なPOのディスカウント率は、JR西日本(9021) 3.01%、日本郵政(6178) 2.01%、クリエイト・レストランツ・ホールディングス(3387) 3.09%となってますが、ほぼほぼ2~5%程度です。

ただ、ディスカウント率が大きいPOもあり、直近ではENECHANGE(4169)の8.1%が最大です。

注意点として、どの証券会社でも購入できるわけでなく、主幹事(今回はみずほ証券)はじめ、引受人の証券会社で購入申込可能です。

早ければ、3/4(月)の夕刻に、会社側から売出価格等のお知らせが適時開示であります。

このブログ記事も更新しますので、チェックしてくださいね💖

売出価格等決定日2024 年3月 4 日(月)
受渡期日
(POで買った場合はこの日から売却可能)
2024 年3月 11 日(月)
①株式の売出し
(引受人の買取引受けによる売出し)
数量
普通株式 650,000
発行済み株式総数 6,967,500 の約9.32%
②株式の売出し
(オーバーアロットメントによる売出し)
数量
普通株式 97,500 実施決定(3/4)
みずほ証券が売出す。
売出価格3,521 円
(3/4決定:終値 3,630 円)
ディスカウント率3.00 %
(3/4決定)
申込単位数量100 株
主幹事みずほ証券
表1:やまみ(2820) PO概要

【株式売出しの目的】

  • 同社は、原材料価格の高騰や光熱費の高止まり、人件費の上昇などの影響を受けたが、
    価格改定の浸透国内産大豆を使用した製品のセールス強化等で売上を伸長、利益増を実現。株式上場以来、毎期増収を継続している。
  • 2024 年2月 14 日には中期経営計画を上方修正し、引続き業績拡大を目指すとともに、2023 年 7 月には株主還元の目標についてもより明確化すべく、①配当性向 30%以上②DOE(純資産配当率)2.5%以上、の目標を設定しており、今期もこの方針に従った配当を実施すべく、配当予想も上方修正した。
  • 同社は、現在東証スタンダード市場の上場維持基準を全て満たしているが、今般更なる企業価値極大化ガバナンス強化に繋がる資本政策の一環として、以下の3点を目的として同社株式の売出しを実施することとした。
    1. プライム市場の上場基準である流通株式時価総額の基準達成に向けた流通株式比率の向上
    2. 同社普通株式の分布状況の改善及び投資家層の拡大
    3. 同社が特定同族会社であるため留保金課税(内部留保の利益金に対して追加課税される税金)の対象法人となっていることの解消

としています。

今回の株式の売出数量は、発行済み株式総数の約9.32%OAを含めた最大の株数で約10.7%)で、

直近の株式の売出のみのPOの売出株数比率(OAを含む)は、山善 7.04%、ダイダン 5.48%、稲畑産業 17.2%でしたので、それらと比較すると中間的な数量です。

また、今回の売出株数(OAを含むと最大7,475百株)は、1日の平均的な出来高(25日平均:828百株(2/26時点))の約9倍となっており、これからするとほどほどの数量です。

そして、この銘柄の流動性は、直近の出来高(売買が成立した株の数量)の5日平均は1,172百株、25日平均は828百株で、流動性は平均的な水準です。(1日 1,000百株を平均的な水準としています。)

どんな会社?

大豆食品の提供を通じて、顧客に信頼される価値ある企業を目指し、

豆腐及びその関連製品である厚揚げ、油揚げ等の製造、販売を行う豆腐等製造販売事業を行っている会社です。

製品の販売地域は、九州地方から関東地方までの広域に渡りますが、広島県三原市に本社工場があることから中国地方での販売量が多く

近年では2019年に静岡県駿東郡に富士山麓工場を新設し、関東地方での販売に注力しています。

同社は、「豆腐等製造販売事業」の単一セグメントです。

直近の経営概況

経営状況

【2024年6月期2Q(2023年7月~12月)の経営成績】

(2024年2月14日発表)

決算期売上高
[億円]
(前年
同期比
[%])
営業利益
[百万円]
(同)
経常利益
[百万円]
(同)
親会社株主
に帰属する
純利益

[百万円]
(同)
2023年6月期
2Q累計
78.3
(13.0)
504
(△10.2)
521
(△8.4)
352
(△6.2)
2024年6月期
2Q累計
95.7
(22.1)
1,274
(152)
1,274
(144)
893
(153)
2023年6月期
通期会社予想
(2024年2月14日
修正)
190
(17.4)
2,000
(92.5)
2,002
(88.7)
1,337
(66.7)
通期予想に対する
2Qの進捗率[%]
50.363.763.666.7
表2:やまみ 2024年6月期2Q経営成績と通期会社予想

表2の通り、前年同期比 増収増益で、売上高は2割強増利益面は2.5倍前後の増益でした。

2024年6月期通期の業績予想は、今2Q決算発表と同時に上方修正(表3参照)し、前期比 増収増益で、売上高は2割弱増利益面は7割弱~9割強の増益を見込んでおり、

その通期予想に対する進捗率は、2Q終了時点で、売上高5割程度でそこそこですが、利益面は6割を超えており順調です。

【2024年6月期2Qの状況、経営成績の要因】

同社が属している食品製造業は、主原料の大豆や油脂、包材などの原材料価格の高騰に加え、都市ガス、電気などのエネルギーコストの上昇もあり厳しい経営環境が続いています。

このような状況のもと、同社は価格改定するとともに、国内産大豆による高付加価値商品への切り替えを進め、価格改定した後も美味しさに拘った商品が受け入れられ販売数量は増加しました。

また、省エネ効果の高い設備への更新に積極的に取組み経費削減に努めています。

各段階の経営指標の状況は以下です。

売上高

同社全ての工場で前年同期比増加主力商圏(中四国・関西地方等)での価格改定が進んだ事、関東エリアでの販売も好調に推移しました。

また、すべての営業地域で国内産大豆を使用した製品のセールスを強化したことにより、売上高は前年同期比では 1,733 百万円の増加となる 9,571 百万円となりました。

売上総利益

売上高が大きく伸びた影響により、原材料、資材の高騰及びエネルギー価格の高止まり等で製造原価が前年同期と比べ 519 百万円増加しましたが、

売上総利益率は 20.1%から 25.9%に良化され、前年同期比では 904 百万円増加となる 2,481 百万円となりました。

営業利益

運賃コスト上昇に伴う荷造運賃が前年同期と比べ 91 百万円増加しましたが、売上高増加と経費削減を図ることにより、営業利益率は 6.4%から 13.3%に良化され、前年同期比では770百万円増加しました。

計画対比でも 674 百万円増となる 1,274 百万円となりました。

経常利益

営業外収益、営業外費用ともに前期と大きな差異はありませんでしたが、営業利益と同様、売上高の増加から経常利益率が改善され、前年同期比では 752 百万円増加となり、計画対比でも 673 百万円増となる 1,274百万円となりました。

四半期純利益

農林水産省補助事業である「輸入小麦等食品原材料価格高騰緊急対策事業」の補助金収入 54 百万円があり、前年同期比で 540 百万円増となり、計画対比でも 485 百万円増となる 893 百万円となりました。

【財政面の状況】

自己資本比率>(自己資本(総資本-他人資本)÷総資産)×100

2024年6月期2Q末時点で59.8%と前期末(60.0%)から0.2ポイント低下しています。

これは主に、それぞれ前期末比で、

  • 負債
    • 買掛金322百万円増加未払金256百万円増加し、流動負債が合計で816百万円増加
    • 長期借入金227百万円減少し、固定負債が合計で241百万円減少
  • 純資産
    • 利益剰余金768百万円増加し、株主資本が合計で767百万円増加
    • その他有価証券評価差額金417百万円増加し、評価・換算差額等が合計で417百万円増加

したことによるものです。

自己資本比率の数値としては問題ないレベルです。(20%以上を安全圏内としています。)

キャッシュ・フロー>2024年6月期2Q累計のキャッシュ・フロー(以下、CF)の状況

  • フリーCF(営業活動によるCFと投資活動によるCFを合計した金額 ※1)539百万円の収入
    • 営業活動によるCF 1,229百万円の収入(前年同期 525百万円の収入
    • 投資活動によるCF 689百万円の支出(同 264百万円の支出

 ※1 フリーCFの説明:

  • プラスの場合:会社が自由に使える資金が増える
  • マイナスの場合:会社が自由に使える資金が減る

前期(2023年6月期2Q累計)のフリーCF(260百万円の収入)から278百万円増加しています。

営業活動によるCFの主な内訳(百万円):

  • 税引前四半期純利益 1,328
  • 減価償却費 724
  • 売上債権の増減額(△は増加) △956

投資活動によるCFの主な内訳(百万円):

  • 有形固定資産の取得による支出 △744
  • 投資有価証券の取得による支出 △0.3
  • 補助金の受取額 54.7

【今期(2024年6月期通期)業績の見通し】

今2Qの決算発表と同時に、2024年6月期通期連結業績予想の上方修正増配を発表しています。

2024年6月期通期の業績予想は表3です。

売上
[億円]
営業
利益
[百万円]
経常
利益
[百万円]
親会社
株主に
帰属する
当期純利益

[百万円]
1株当たり
当期利益

[円]
1株当たり
年間配当金
[円]
前回
(2023/8/9)
発表予想
1781,2001,202815116.9838
今回修正予想1902,0002,0021,337191.8960
増減額1280080052274.9122
増減率[%]6.766.766.664.064.057.8
表3:やまみ 2024年6月期通期連結業績予想数値の修正(2024年2月14日発表)

前回予想と比べ、売上高は1割弱増利益面は6~7割の増額修正をしています。

修正の理由は、

  • 前回予想を公表した 2023 年8月9日時点においては、材料費はさらに高騰し、光熱費も高止まりするとの前提で、通期業績予想を策定した。
  • 価格改定が浸透してきたことに加え、国内産大豆を使用した製品のセールスを強化し価格改定を行った後でも販売数量が伸びたことで、富士山麓工場が黒字化し、収益性が大幅に改善したことから、売上高、営業利益、経常利益、当期純利益の通期業績予想を見直しすることとした。

としています。

配当予想に関しても、同社は、

株主への利益還元を経営上の最重要課題と位置付け、設備投資等将来にわたって企業価値を高める資金を勘案しながら、

配当性向 30%以上または下限として DOE(株主資本配当率)2.5%を目途に、継続的かつ安定的な配当を行うことを基本方針としており、

この方針に基づき、通期の当期純利益予想を上方修正することに伴い、当期の期末配当予想を従来予想 19 円から22円増配した 41 円とし、

年間配当予想を 38 円から 60円(うち記念配当 2 円(中間・期末各 1 円))に修正しています。

株価指標と動向

株価指標

【2024/2/26(月)終値時点の数値】

  • 株価:3,775円
  • 時価総額:263億円
  • PER(株価収益率(予想)):19.6倍

PERは、同業で時価総額が近い、フジッコ(2908) 38.8倍、旭松食品(2911) 21.0倍と比較すると、低い水準です。

  • PBR(株価純資産倍率):2.90倍
  • 信用倍率(信用買い残÷信用売り残):ー(信用売り残無し)
  • 年間配当金(予想):60円(12月 19円、6月 41円)、利回り:1.58%(配当性向 31.2%)

配当利回りは1.58%で、東証スタンダードの単純平均 2.16%(2/26時点) と比較すると低い水準です。

表4のように、直近5年間の配当金は、1株当たり24~32円で推移しており、

2019年6月期から2021年6月期まで3年間は同額でしたが、それ以降は連続増配しています。

配当性向は、20%台~30%台で安定しています。

決算期1株当たり
年間配当金
[円]
配当性向
[%]
2019年6月期2423.9
2020年6月期2420.4
2021年6月期2432.7
2022年6月期2629.9
2023年6月期3227.8
表4:やまみ 年間配当金推移

この会社は、

現在成長過程にあり、事業上獲得した資金については事業拡大のための成長投資に充当することを最優先としつつ、同時に株主への利益還元を経営上の最重要課題と位置付けています。

配当は、設備投資等将来にわたって企業価値を高める資金を勘案しながら、配当性向30%以上または下限としてDOE(株主資本配当率)2.5%を目途に、継続的かつ安定的な配当を行うことを基本方針としています。

また、剰余金の配当は、中間配当及び期末配当の年2回を基本的な方針としています。

【直近の株価動向】

<週足チャート(直近2年間)>

2023年3月に上場来安値(1,292円)をつけた後は、しばらくヨコヨコの推移でしたが、

同年8月の2023年6月期決算発表以降は、右肩上がりの上昇トレンドで推移しています。

<日足チャート(直近3か月間)>

高値切り上げ安値切り上げの上昇トレンドで推移しており、今年2月15日に昨年3月につけた上場来安値の3倍超の上場来高値(4,450円)をつけました。

そして、今回のPO発表の翌営業日(2/26)は、POによる短期的な需給悪化懸念により、出来高を伴い売られ、前日比 240円安(-5.97%)と急落しました。

この下落で25日移動平均線(赤線)を下抜けています。

今後は、75日移動平均線(青線)の上をキープし、上昇に転じていくのか、下抜けて下値模索を続けるのか、要注目です。

まとめ

【業績】

  • 今期(2024年6月期)2Qの業績は、主力商圏(中四国・関西地方等)での価格改定が進み関東エリアでの販売も好調経費削減を図り、
    前年同期比 増収増益で、売上高は2割強増利益面は2.5倍前後の増益
  • 今期通期予想は、価格改定が浸透してきたことに加え、国内産大豆を使用した製品のセールスを強化し価格改定を行った後でも販売数量が伸びたことで、今2Q決算発表と同時に上方修正し、
    前期比 増収増益で、売上高は2割弱増利益面は7割弱~9割強の増益を見込む。
  • この通期業績予想に対する進捗率は、2Q終了時点で、売上高は5割程度でそこそこ利益面は6割を超えており順調

【株主還元】

  • 配当利回り(予想)は1.58%で、東証スタンダードの単純平均 2.16%(2/26現在) と比較すると低い水準
  • 直近5年間の配当金は、年間1株当たり24~32で推移しており、2019年6月期から2021年6月期まで3年間は同額だったが、それ以降は連続増配している。
    配当性向は、20%台~30%台で安定している。
  • 会社の方針は、配当性向 30%以上または下限として DOE(株主資本配当率)2.5%を目途に、継続的かつ安定的な配当を行うことを基本方針としており、
    この方針に基づき、通期の当期純利益予想を上方修正することに伴い、当期の期末配当予想を従来予想 19 円から22円増配した 41 円とし、年間配当予想を 38 円から 60円(うち記念配当 2 円(中間・期末各 1 円))に修正した。

【流動性・売出株数】

  • 今回の株式の売出数量は、発行済み株式総数の9.32%OAを含めた最大の株数で10.7%で、
    直近の株式の売出のみのPO(山善、ダイダン、稲畑産業)の売出株数比率(OAを含む)と比較すると中間的な数量
    また、売出株数(OAを含む)は、1日の平均的な出来高の約9倍となっており、これからするとほどほどの数量
  • 直近の出来高の5日平均は1,172百株、25日平均は828百株で、流動性は平均的な水準

【株価モメンタム】

  • 週足ベースの株価は、2023年3月に上場来安値(1,292円)をつけた後は、しばらくヨコヨコの推移だったが、
    同年8月の2023年6月期決算発表以降は、右肩上がりの上昇トレンドで推移している。
  • 直近の株価は、高値切り上げ安値切り上げの上昇トレンドで推移しており、今年2月15日に昨年3月につけた上場来安値の3倍超の上場来高値(4,450円)をつけた。
    そして、今回のPO発表の翌営業日(2/26)は、POによる短期的な需給悪化懸念により、出来高を伴い売られ前日比 240円安(-5.97%)と急落。この下落で25日移動平均線を下抜け
  • 今後の株価は、75日移動平均線の上をキープし、上昇に転じていくのか、下抜けて下値模索を続けるのか要注目。

以上のことから、

レベル
(⭐(最低)~
⭐⭐⭐⭐⭐(最高))
業績⭐⭐⭐
株主還元
(配当、株主優待等)
⭐⭐
株価モメンタム⭐⭐
流動性⭐⭐
株式の売出数量⭐⭐
総合判定⭐⭐
(買い)
※「総合判定」=⭐4つ以上「買い」、⭐3つ「中立」、⭐2つ以下「不参加」

と判断しました。

最後までご覧いただき、ありがとうございました。

※株式投資の実際の売買は、自己判断、自己責任でお願いします。

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