【自社株買いは買いか?】西松屋チェーン(7545)

まとめ銘柄分析
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直近で自己株式の取得を発表した銘柄に関して、この発表のタイミングで株を買った場合、利益を得ることができるのか?

足元の経営状況や客観的な指標、株価モメンタム等を踏まえ、総合的に分析しました。

今回は、東証プライムから小売業種の西松屋チェーンです。

最後までお付き合いいただけるとうれしいです!

「自社株買い」とは?

上場企業が自らの資金を使って、株式市場から自社の株式を買い戻すことをいう。

日本証券業協会HP 金融・証券用語集

自社の株を買った後は、

  1. 買い戻した株式を消却する。(無効とする。)
  2. 金庫株としてそのままにしておき、いずれ資金調達などの目的で売却する。

の2通りあります。

【自社株買いのメリットデメリット

<メリット>

  1. 発行済み株式数が減るため、会社の利益総額が変わらなければ、1株当たり利益(EPS)が増えるので、企業価値が上がる=株価が上がる可能性がある。
    (配当とともに株主還元の一つ)
  2. 配当金の支払いが少なくて済む。(企業側のメリット)
  3. 敵対的買収の防衛策(株価が上がって敵対企業が株を買いにくくなることと、市場に出回る株数の割合が少なくなるため)
  4. ROE(株主資本利益率:ROE = 当期純利益 ÷ 自己資本×100(%))が上がる。
    自社株買いを行った場合、自己資金が減りますので、分母の「自己資本」が小さくなりROEが上がります。
  5. 株価は「割安」というメッセージを送ることができる。
    自社の株が安い時に買った方が、購入資金が少なくて済みます。(企業側のメリット)

<デメリット>

  1. 自己資金が減り、設備投資などの自社の成長に回せる資金が少なくなる。
  2. 自己資本比率(自己資本(総資本-他人資本)÷総資産) ×100)が下がる。

などがあります。

それでは、見ていきましょう!

自社株買いの概要

まとめ

会社から発表された自己株式取得の概要は、表1のようになっています。

株数と金額の上限が設定されていますが、株価が上がれば、取得に必要な金額も大きくなりますので、予定の取得株数よりも少なくなることが多いです。

自社株買い発表日2022年9月28日(水)
取得期間2022年9月30日~ 2022年10月21日
取得株式の総数普通株式 41.2 万株(上限)
発行済株式総数(自己株式を除く)に対する割合:0.68%
取得金額の総額5 億円(上限)
※取得株数の上限で割ると1株あたり1,213円換算
取得方法東京証券取引所における市場買付
表1:西松屋チェーン 自社株買い概要

【自社株買いを行う理由】

  • 経営環境の変化に対応した機動的な資本政策の実行
  • 株主への利益還元

としています。

自己株式の取得数量は、発行済み株式総数(自己株式を除く)の0.68%と自社株買いの数量としては少ない数量(※1)です。

※1 一概に言えませんが、目安として、5%以上:かなり多い、3%以上5%未満:多い、1%以上3%未満:ほどほど、1%未満:少ないとしています。

直近の出来高(売買が成立した株式の数量)の5日平均は9,801百株、25日平均は3,709百株で、流動性は高い水準です(1,000百株を平均水準としています)。

どんな会社?

子供服

お子さまを持つ家庭の毎日の子育てが楽しくなる「豊かな暮らし」実現のために、ベビー・子供の生活関連商品の販売をチェーンストア展開により行い、

ドミナントエリアづくりにより、ナショナル(全国展開)チェーンとして店舗網の拡充を進めている会社です。

事業内容は、ベビー・子供の生活関連用品販売事業の単一セグメントで、以下の商品を販売しています。

  • 子供衣料
    • ベビーアウトウエア・肌着・パジャマ等
    • ボーイズアウトウエア・肌着・パジャマ等
    • ガールズアウトウエア・肌着・パジャマ等
  • 育児・服飾雑貨
    • 調乳・離乳用品、衛生・雑貨用品、寝装・寝具
    • ベビーカー・カーシート等のおでかけ用品
    • 室内用マット・チェア・ラック・歩行器等の室内用品
    • 帽子・シューズ・レイングッズ等の服飾雑貨
    • 玩具、ギフトセット
  • ベビー・マタニティー衣料
    • 新生児衣料
    • マタニティー用品
    • 和装用品
  • その他
    • 自動販売機商品等

2022年2月期通期の商品別売上高構成比は、

  • 子供衣料 34.4%
  • 育児・服飾雑貨 55.7%
  • ベビー・マタニティー衣料 9.8%
  • その他 0.1%

となっており、「子供衣料」と「育児・服飾雑貨」を合わせて約9割を占めています。

直近の経営概況

経営状況

【2023年2月期2Q(2022年2月21日~8月20日)の経営成績】

(2022年9月28日発表)

決算期売上高
[億円]
(前年
同期比[%])
営業利益
[億円]
(同)
経常利益
[億円]
(同)
親会社株主
に帰属する
純利益
[億円]
(同)
2022年2月期
2Q累計
806
(0.3)
64.4
(0.0)
68.0
(3.4)
45.1
(0.6)
2023年2月期
2Q累計
844
(4.7)
66.9
(3.9)
72.0
(5.8)
46.5
(3.0)
2023年2月期
通期会社予想
(2022年9月28日修正)
1,700
(4.3)
113
(△7.4)
120
(△6.6)
77.7
(△8.6)
通期予想に対する
2Qの進捗率[%]
49.658.960.059.8
表2:西松屋チェーン 2023年2月期2Q経営成績と通期会社予想

表2の通り、前年同期比 増収増益で、売上高、利益面ともには微増でした。

2023年2月期通期の業績予想は、2Q決算発表と同時に利益面のみ下方修正しており(表3参照)、前期比 増収減益で、売上高は微増利益面は1割弱の減益を見込んでおり、

その通期予想に対する進捗率は2Q終了時点で、売上高、利益面ともに1/2程度で順調です。

【2023年2月期2Qの状況、経営成績の要因】

当2Q連結累計期間におけるわが国経済は、新型コロナウイルス感染症が再拡大しているものの、活動制限の緩和により過去の感染拡大局面のような落ち込みは回避される一方、

急激な円安による為替相場の変動やロシア・ウクライナ情勢に起因する資源価格の高騰など、景気の先行きは不透明感を増している状況にあります。

このような環境の中、同社は、北海道から沖縄までの全国47都道府県に、顧客にとって便利で標準化された店舗網の拡充を進めるため、15店舗の新規出店を行いました。また、一方で5店舗を閉鎖しました。

以上の結果、2Q会計期間末の店舗数は1,046店舗となりました。

商品別の売上高の動向は、衣料部門は気温の高い日が多く、春物衣料や夏物衣料が好調に推移しました。

また、小学校高学年向け衣料も前年と比べ、大きく売上を伸ばしています

雑貨部門は粉ミルクなどの食料品、マスクなどの衛生用品、シューズや服飾雑貨などが好調でした。

売上総利益は、売上高が増加したことにより、304億円(前年同期比2.9%増となりました。

販売費及び一般管理費は、積極的な出店で店舗数が増加したことなどにより、238億円(同2.7%増となりました。

これらの結果、当2Q連結累計期間の売上高は前年同期比4.7%増営業利益は同3.9%増経常利益は同5.8%増親会社株主に帰属する四半期純利益は同3.0%増となりました。

【財政面の状況】

自己資本比率>(自己資本(総資本-他人資本)÷総資産)×100

2023年2月期2Q末時点で58.0%と前期末(59.0%)から1.0ポイント低下しています。

自己資本比率の数値としては問題ないレベルです。(20%以上を安全圏内としています。)

キャッシュ・フロー>2023年2月期2Q累計のキャッシュ・フロー(以下、CF)の状況

  • フリーCF(営業活動によるCFと投資活動によるCFを合計した金額 ※2)4,096百万円の収入
    • 営業活動によるCF 4,996百万円の収入(前年同期 3,622百万円の収入
    • 投資活動によるCF 900百万円の支出(同 641百万円の支出

 ※2 フリーCFの説明:

  • プラスの場合:会社が自由に使える資金が増える
  • マイナスの場合:会社が自由に使える資金が減る

前期(2022年2月期)2Q累計のフリーCF(2,981百万円の収入)から1,115百万円増加しています。

営業活動によるCFの主な内訳(百万円):

  • 税引前四半期純利益 6,899
  • 棚卸資産の増減額(△は増加) △3,904
  • 仕入債務の増減額(△は減少) 4,033

投資活動によるCFの主な内訳(百万円):

  • 固定資産の取得による支出 △1,020
  • 投資有価証券の取得による支出 △653
  • 投資有価証券の売却及び償還による収入 437

【今期(2023年2月期通期)業績の見通し】

今2Q決算と自社株買い発表と同時に、通期業績予想の利益面のみ下方修正をしています。

2023年2月期通期の業績予想は表3です。

売上高
[億円]
営業利益
[億円]
経常利益
[億円]
当期
純利益
[億円]
1株当たり
当期純利益
[円]
前回(2022/3/30)
発表予想
1,70013614090.9149.61
今回修正予想1,70011312077.7128.37
増減額△22.5△20.0△13.2
増減率[%]△16.5△14.3△14.6
表3:2023年2月期通期業績予想数値の修正(2022年9月28日発表)

前回予想と比べ、利益面は1~2割程度の減額をしています。

会社は、

3Q以降は、売上高は2Q累計期間に引き続き、堅調に推移すると見込んでいることから通期業績を据え置いています。

一方、急速な円安の進行や仕入原価などの高騰による影響から、売上総利益が低下することで、営業利益、経常利益、当期純利益は前回予想を下回る見込みとしています。

株価指標と動向

株価指標

【2022/9/29(木)終値時点の数値】

  • 株価:1,334円
  • 時価総額:928億円
  • PER(株価収益率):8.86倍

PERは、同業で時価総額が近い、しまむら(8227) 12.2倍、7&iホールディングス(3382) 20.9倍、ファーストリテイリング(9983) 32.5倍と比較すると、低い水準です。

  • PBR(株価純資産倍率):1.12倍
  • 信用倍率(信用買い残÷信用売り残):2.12倍
  • 年間配当金(予想):26円(年2回 8月 13円、2月 13円)、年間利回り:1.94%(配当性向 20.2%)
決算期1株当たり
年間配当金(円)
配当性向(%)
2018年2月期2128.4
2019年2月期2161.4
2020年2月期21121.3
2021年2月期2317.3
2022年2月期2518.0
表4:西松屋チェーン 年間配当金推移

年利回りは1.94%で、東証プライムの単純平均 2.44%(9/28時点) と比較すると低い水準です。

表4のように、直近5年間の配当金は、21~25円の間で推移しており、

2018年2月期~2020年2月期までは同額ですが、その後は連続増配を継続中です。

配当性向は、10%台~100%超とばらつきがあります。

この会社は、

株主に対する利益還元を経営の最重要課題の一つとして認識しており、業績や今後の出店計画等を考慮した上で、安定した配当を行うことを基本方針としています。

また、剰余金の配当は、中間配当および期末配当の年2回を基本的な方針としています。

【株主優待】

この会社は株主優待があり、2/20と8/20を基準日とした年2回、100株以上保有の株主は、同社の全店舗及び「西松屋公式オンラインストア」でのお買い物に利用可能なお買物カード「株主ご優待カード」1,000円相当が進呈されます。

(500株以上:3,000円、1,000株以上:5,000円相当)

また加えて、3年以上継続保有で100株以上保有の場合は、年1回(2/20) 500円相当が加算されます。

(500株以上:1,000円、1,000株以上:3,000円、3,000株以上:4,000円、5,000株以上:5,000相当加算)

100株保有(3年未満継続保有)の場合、配当金+株主優待(1,000円相当×年2回=2,000円相当)で利回りは3.44%になります。

こちらは、お子さまがいらっしゃる個人投資家にとってはうれしい内容ですね!

【直近の株価動向】

<週足チャート(直近2年間)>

出所:楽天証券サイト

週足ベースの株価は、2020年のコロナショックから上昇し、2020年11月と2021年4月に高値(1,864円)をつけています。

しかしその後は、1,300~1,750円程度のレンジ内で推移しています。

<日足チャート(直近3か月間)>

出所:楽天証券サイト

直近の株価は、8月中旬の年初来高値(1,739円)をつけるまでは、順調に上昇しましたが、その後は調整し下落トレンドで推移しています。

そして今回の今2Q決算発表と通期業績の下方修正、自社株買い発表の翌営業日(9/29)は、

利益面の下方修正を嫌気され、窓を開けて出来高を伴い売られ、前日比 116円安(-8.0%)で終了しました。この日に2月につけた年初来安値も一時更新しています。

今後は、この日つけた年初来安値(1,302円)を割り込まずに上昇に転じるのか、割り込んで下値模索をするのか要注目です。

まとめ

農産物

【業績】

  • 今期(2023年2月期)2Qの業績は、春物衣料や夏物衣料が好調に推移し、
    前年同期比 増収増益で、売上高利益面ともに微増
  • 今期の通期予想は、今2Q決算発表同時に、急速な円安の進行や仕入原価などの高騰による影響から売上総利益が低下することで、利益面のみ当初予想から1~2割程度下方修正し、
    前期比 増収減益で、売上高は微増利益面は1割弱の減益を見込んでいる。
  • その通期業績予想に対する進捗率は、2Q終了時点で売上高、利益面ともに1/2程度で順調

【株主還元】

  • 配当利回り(会社予想)は1.94%で、東証プライムの単純平均 2.44%(9/28時点) と比較すると低い水準
  • 直近5年間の配当金は、21~25円の間で推移しており、
    2018年2月期~2020年2月期までは同額だが、その後は連続増配を継続中
    配当性向は、10%台~100%超とばらつきがある。
  • 株主優待があり、2/20と8/20の年2回、100株以上保有の株主は、同社の全店舗及び「西松屋公式オンラインストア」でのお買い物に利用可能なお買物カード「株主ご優待カード」1,000円相当が進呈される。
    加えて、3年以上継続保有で100株以上保有の場合は、年1回(2/20) 500円相当が加算
    100株保有の場合、配当金+株主優待(2,000円相当)で利回りは3.44%になる。

【流動性・自社株買い数量】

  • 直近の出来高の5日平均は9,801百株、25日平均は3,709百株で、流動性は高い水準
  • 自社株買い数量は、発行済み株式総数(自己株式を除く)の0.68%と少ない数量

【株価モメンタム】

  • 週足ベースの株価は、2020年のコロナショック時の安値から上昇し、2020年11月と2021年4月に高値(1,864円)をつけた。
    しかしその後は1,300~1,750円程度のレンジ内で推移
  • 直近の株価は、8月中旬の年初来高値(1,739円)をつけるまでは順調に上昇したが、その後は調整し下落トレンドで推移している。
    今回の今2Q決算発表と通期業績の下方修正、自社株買い発表の翌営業日(9/29)は、利益面の下方修正を嫌気され、窓を開けて出来高を伴い売られ、前日比 116円安(-8.0%)で終了しました。この日に2月につけた年初来安値も一時更新
  • 今後の株価は、この日つけた年初来安値(1,302円)を割り込まずに上昇に転じるのか、割り込んで下値模索をするのか要注目。

以上のことから、

レベル
(⭐(最低)~
⭐⭐⭐⭐⭐(最高))
業績⭐⭐⭐
株主還元
(配当、株主優待等)
⭐⭐⭐⭐
株価モメンタム⭐⭐
流動性⭐⭐⭐⭐
自社株買い数量⭐⭐
総合判定⭐⭐⭐(中立)
※「総合判定」=⭐4つ以上「買い」、⭐3つ「中立」、⭐2つ以下「見送り」

と判断しました。

最後までご覧いただき、ありがとうございました。

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