【自社株買いは買いか?】富士ソフトサービスビューロ(6188)

銘柄分析
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こんにちは!

直近で自己株式の取得を発表した銘柄に関して、この発表のタイミングで株を買った場合、利益を得ることができるのか?足元の経営状況や客観的な指標、株価モメンタム等を踏まえ、総合的に分析しました。

今回は、東証2部からサービス業種の富士ソフトサービスビューロです。

最後までお付き合いいただけるとうれしいです!

  • 「自社株買い」とは?

上場企業が自らの資金を使って、株式市場から自社の株式を買い戻すことをいう。

日本証券業協会HP 金融・証券用語集

自社の株を買った後は、

  1. 買い戻した株式を消却する。(無効とする。)
  2. 金庫株としてそのままにしておき、いずれ資金調達などの目的で売却する。

の2通りあります。

自社株買いのメリットとデメリット

<メリット>

  1. 発行済み株式数が減るため、会社の利益総額が変わらなければ、1株当たり利益(EPS)が増えるので、企業価値が上がる=株価が上がる可能性がある。(配当とともに株主還元の一つ)
  2. 配当金の支払いが少なくて済む。(企業側のメリット)
  3. 敵対的買収の防衛策(株価が上がって敵対企業が株を買いにくくなることと、市場に出回る株数の割合が少なくなるため)
  4. ROE(株主資本利益率:ROE = 当期純利益 ÷ 自己資本×100(%))が上がる。
    • 自社株買いを行った場合、自己資金が減りますので、分母の「自己資本」が小さくなりROEが上がります。
  5. 自社の株価は「割安」というメッセージを送ることができる。
    • 自社の株が安い時に買った方が、購入資金が少なくて済みます。(企業側のメリット)

<デメリット>

  1. 自己資金が減り、設備投資などの自社の成長に回せる資金が少なくなる。
  2. 自己資本比率(自己資本(総資本-他人資本)÷総資産) ×100)が下がる。

などがあります。

それでは、見ていきましょう!

自社株買いの概要

まとめ

会社から発表された自己株式取得の概要は、表1のようになっています。

株数と金額の上限が設定されていますが、株価が上がれば、取得に必要な金額も大きくなりますので、予定の取得株数よりも少なくなることが多いです。

自社株買い発表日2022年3月16日(水)
自己株式取得を行う理由株主還元と資本効率の向上
経営環境の変化に対応した機動的な資本政策の遂行を可能にするため
取得期間2022年3月17日~ 2022年12月23日
取得株式の総数普通株式 400,000 株(上限)
発行済株式総数(自己株式を除く)に対する割合:2.96%
取得金額の総額1.6億円(上限)
取得方法東京証券取引所における市場買付け
表1:富士ソフトサービスビューロ 自社株買い概要

今回の自己株式の取得数量は、発行済み株式総数の2.96%と自社株買いの数量としてはほどほどの数量(※1)です。

※1 一概に言えませんが、目安として、5%以上:かなり多い、3%以上5%未満:多い、1%以上3%未満:ほどほど、1%未満:少ないとしています。

直近の出来高(売買が成立した株式の数量)の5日平均は457百株、25日平均は250百株で、流動性は低い水準です(1,000百株を平均水準としています)。

どんな会社?

ヘルプデスク

1984年創業し、データエントリーを中心としたサービスを提供する会社として始まり、現在では、コンタクトサービスセンターBPOサービス(ビジネス・プロセス・アウトソーシング・サービス)を2本柱に、

ITを生かしたサービスを展開する『トータル・アウトサーシング企業』として、官公庁系ビジネス、ITヘルプデスク、金融系オフィスサービスに特化したサービスを展開しています。

サービスの主な内容は以下です。

  • コールセンターサービス
    • コールセンターの構築・運営
      年金相談窓口、ITヘルプデスク(テクニカルサポート)、受注センター、緊急対応コールセンター、その他各種ご案内業務等
  • BPOサービス
    • BPOサービス
      事務代行(業務受付、書類開封、入力、整理等の事務処理)、文書電子化(スキャニング)、原本管理業務、データエントリー処理業務、その他各種業務等
    • オフィス・サポートサービス
      顧客事務センター内での事務業務受託、人材派遣、チーム派遣、人材紹介、紹介予定派遣※
      紹介予定派遣:一定期間「派遣社員」として働き、派遣期間(最長6ケ月)終了後、本人と派遣先企業双方合意のもと直接雇用契約を締結し、社員となる働き方
    • ウェブコンテンツ/システム・サポートサービス
      Webサイト構築サービス、運用保守サービス、システム開発サービス

2021年12月期通期のサービス別売上高構成比は、

  • コールセンターサービス 49.2%
  • BPOサービス 50.8%

となっており、2つのそれぞれのサービスの売上は半々となっています。

直近の経営概況

経営状況

2021年12月期(2021年1月~2021年12月)の経営成績】(2022年2月7日発表)

決算期売上高
[億円]
(前年同期比[%])
営業利益
[百万円]
(同)
経常利益
[百万円]
(同)
親会社株主に
帰属する
当期純利益
[百万円]
(同)
2020年12月期通期実績※91.3
(ー)
570
(ー)
571
(ー)
352
(ー)
2021年12月期通期実績93.5
(2.3)
573
(0.5)
572
(0.2)
380
(8.0)
2022年12月期通期会社予想102
(9.1)
580
(1.2)
580
(1.3)
401
(5.4)
表2:富士ソフトサービスビューロ 2021年12月期通期経営成績と2022年12月期通期予想
※2020年12月期から決算日を3月31日から12月31日に変更。これに伴い2020年12月期通期実績は2020年1月~12月の実績を記載しこれと比較

2021年12月期通期の業績は、前年同期比 増収増益で、売上高、利益面ともに微増の結果でした。

2022年12月期通期の業績は、前期比で売上高、利益面ともに1割弱増の微増を見込んでいます。

【2021年12月期通期の状況、経営成績の要因】

同社が事業を展開するコールセンターサービス業界およびBPOサービス業界は、新型コロナウイルス感染症の影響により経済活動が抑制されていることは少なからずマイナス影響を及ぼしていますが、

人材不足や働き方改革への取組拡大DX推進による自社内リソースの再構築などを背景にアウトソーシング需要は継続的に高まってきており、市場規模は拡大傾向に推移しています。

また、コミュニケーション手段の多様化をはじめ、ITを介した新技術を用いてサービスの高度化が進んでおり、専門業者への外部委託需要が高まっています

一方で、コロナ禍において売上高確保の動きによる異業種からの新規参入や、価格競争の激化などが進んでおり、これらは同社にも影響を及ぼしています。

このような状況下、同社では、「特化型コールセンターを中心としたBPO業務の積極展開」を課題として掲げ「官公庁系ビジネス」「ITヘルプデスク」「金融オフィスサービス」を成長の3本柱としてサービスの拡大を図ってきました

売上高は、コールセンターサービス、BPOサービスともに地方自治体向けの案件が堅調に推移し、増収となりました。

利益面は、異業種からの市場参入を背景とする価格競争の影響により、前年同一期間並みとなりました。

以上の結果、表2の数値の経営成績となっています。

【サービス別の業績】

サービス別の売上高は、表3の結果になりました。

コールセンター」は前期比 減収、「BPO」は増収の結果でした。

サービス売上高[百万円]
(前期比
増減率[%])
コールセンター4,600
(4.2)
BPO4,745
(9.6)
表3:2021年12月期通期  サービス別売上高

サービス別の状況は以下です。

コールセンターサービス

地方自治体のスポット案件積み上げが堅調に推移したものの、

民間向けの案件新型コロナウイルス感染症の影響による案件規模の縮小などがあり減収

BPOサービス

地方自治体マイナンバー関連業務の新規受注官公庁データ入力業務、事務処理業務が急伸し増収

【財政面の状況】

自己資本比率>(自己資本(総資本-他人資本)÷総資産)×100

2021年12月期末時点で56.8%と前期末(58.1%)から1.3ポイント減少しました。

自己資本比率の数値としては問題ないレベルです。(20%以上を安全圏内としています。)

キャッシュ・フロー

2021年12月期通期のキャッシュ・フロー(以下、CF)の状況

  • フリーCF(営業活動によるCFと投資活動によるCFを合計した金額)※ 230百万円のマイナス
    • 営業活動によるCF 79百万円の支出(前期 355百万円の収入
    • 投資活動によるCF 151百万円の支出(前期 417百万円の支出

フリー・キャッシュ・フロー:プラスの場合、会社が使える資金があることを意味し、マイナスの場合、会社が自由に使うことができる資金が少ないことを意味する。

前期(2021年12月期)通期のフリーCF(マイナス62百万円)から168百万円悪化しています。

これは主に、有形固定資産の取得による支出が前期比で238百万円減少し、投資活動によるCF支出が減少しましたが、

税引前当期純利益133百万円増加売上債権991百万円増加などがあり、営業活動によるCF支出が増加したことが要因です。

【今期(2022年12月期通期)業績の見通し】

今後の日本経済は、依然として新型コロナウイルス感染症の影響により先行き不透明な状況が続くものと同社は考えています。

このような事業環境の中、同社が事業を展開するコールセンターサービス業界およびBPOサービス業界は、アウトソーシングの需要は継続的に拡大しています。

同社は、官公庁・自治体の業務を支える社会インフラとしての責任ある立場として、社会から求められる社会的使命を果たし、持続的かつ安定的な成長へ向けてアウトソーシング需要に対応していく予定です。

また、引き続き「官公庁系ビジネス」「ITヘルプデスク」「金融系オフィスサービス」の分野に経営資源を集中させ、大型案件で培ってきたノウハウを生かし「価格」だけでなく「専門性」「品質」に重点を置き、競合先との差別化を図りながら、「特化型コールセンターを中心としたBPO業務の積極展開」を推進していく予定です。

そして、新規顧客獲得、既存業務拡大とサービス提案領域の拡大を図り、多様な実績を活かし官公庁系の特化型案件の受注に取り組むとともに、

適宜業務プロセスや社内システムを見直し生産性の向上や業務効率の最大化に努め、中長期的に改善と向上を図っていく計画です。

以上の取組を踏まえ、表2の業績見通しとしています。

株価指標と動向

株価指標

【2022/3/17(木)終値時点の数値】

  • 株価:312円
  • 時価総額:42.1億円
  • PER(株価収益率):10.5倍

PERは、同業で時価総額が近い、プレステージ・インターナショナル(4290) 22.8倍、エコミック(3802) 13.5倍、富士ソフト(9749) 18.4倍と比較すると、低い水準です。

  • PBR(株価純資産倍率):1.36倍
  • 信用倍率(信用買い残÷信用売り残):ー(信用売り残無し)
  • 1株当たり年間配当金(予想):6円(年2回 6月 3円、12月 3円)、年間利回り:1.9%(配当性向 20.2%)
決算期1株当たり
年間配当金(円)
配当性向(%)
2018年3月期3.521.1
2019年3月期15.4
2020年3月期23.7
2020年12月期
(変則:9カ月間)
4.519.7
2021年12月期21.3
表4:富士ソフトサービスビューロ 年間配当金推移

年利回りは1.9%で、東証2部の単純平均2.25%(3/16時点) と比較すると少し低い水準です。

表4のように、直近5年間の配当金は、2020年3月期までは連続増配をしていましたが、

2020年12月期からは1株当たり年間6円(2020年12月期は9カ月間で4.5円なので、1年(12カ月)に換算すると実質6円)で同額です。

配当性向は、20%前後で安定しています。

この会社は、

株主に対する利益還元が経営上の重要課題の一つであると考え、企業体質強化のために必要な内部留保・投資を総合的に勘案した上で、継続的かつ安定的な配当を行うことを基本方針としています。

【直近の株価動向】

<週足チャート(直近2年間)>

出所:楽天証券サイト

週足ベースの株価は、一昨年のコロナショック時の安値(215円)から上昇し、同年10月にその安値の3倍の高値(650円)をつけました。

しかしその後は、右肩下がりの下落トレンドで推移しています。

<日足チャート(直近3か月間)>

出所:楽天証券サイト

直近の株価は、280~315円のレンジ内で推移しており、

今回の自社株買い発表の翌営業日(3/17)は、これを好感されて、窓を開けて出来高を伴い上昇し、前日比 18円高(+6.1%)でした。

ただ、大きな陰線をつけており、これが気になる所ですが、75日移動平均線(青線)を上抜けてきています

今後は、この75日移動平均線の上をキープし、上昇を継続していくのか、再び元の値に戻っていくのか要注目です。

まとめ

まとめ

【業績】

  • 2021年12月期通期の業績は、コールセンターサービス、BPOサービスともに地方自治体向けの案件が堅調に推移し、前年同期比 増収増益で、売上高、利益面ともに微増の結果で着地。
  • 2022年12月期通期の業績予想は、前期比で売上高、利益面ともに1割弱増の微増を見込んでいる。

【株主還元】

  • 配当金年利回りは1.9%で、東証2部の単純平均2.25%(3/16時点) と比較すると少し低い水準
  • 直近5年の配当金は、2020年3月期までは連続増配をしていたが、2020年12月からは1株当たり年間6円で一定
  • 配当性向は、過去5年間は20%前後で安定

【流動性・自社株買い数量】

  • 直近の出来高5日平均は457百株、25日平均は250百株で、流動性は低い水準
  • 今回の自社株買い数量は、発行済み株数(自己株式を除く)の2.96%とほどほどの数量

【株価モメンタム】

  • 週足ベースの株価は、一昨年のコロナショック時の安値(215円)から上昇し、同年10月にその安値の3倍の高値(650円)をつけたが、その後は、右肩下がりの下落トレンドで推移
  • 直近の株価は、280~315円のレンジ内で推移しており、
    今回の自社株買い発表の翌営業日(3/17)は、これを好感されて、窓を開けて出来高を伴い上昇し、前日比 18円高(+6.1%)
    75日移動平均線を上抜けてきているが、大きな陰線をつけており、これが気になる
  • 今後の株価は、75日移動平均線の上をキープし、上昇を継続していくのか、再び元の値に戻っていくのか要注目

以上のことから、

レベル(最低⭐~最高⭐⭐⭐⭐⭐)
業績⭐⭐⭐
配当を含む株主還元⭐⭐⭐
株価モメンタム⭐⭐⭐⭐
流動性⭐⭐
自社株買い数量⭐⭐⭐
総合判定⭐⭐⭐(中立)
※「総合判定」=⭐4つ以上「買い」、⭐3つ「中立」、⭐2つ以下「見送り」

と判断しました。

最後までご覧いただき、ありがとうございました。

※株式投資の実際の売買は、自己判断、自己責任でお願いします。

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