こんにちは!
公募増資・売出(以下、PO)の実施を発表した銘柄に関して、POに応募して買った場合、利益を得ることができるのか?直近の経営状況や客観的な指標、株価モメンタム等を踏まえ、総合的に分析しました。
今回は、東証1部から卸売業種のタカショーです。
最後までお付き合いいただけるとうれしいです!
- 公募増資・売出(PO)とは?
既上場企業が新たに発行する株式(公募株式)や既に発行された株式(売出株式)を投資家に取得させることをいいます。 正確には、「PO」は「Public(公開の)Offering(売り物)」の略で、日本語では「公募」と呼ばれます。「公募」とは、「不特定かつ多数の投資家に対し、新たに発行される有価証券の取得の申込を勧誘すること」をいいます。 また、「売出」とは、「既に発行された有価証券の売付けの申込み又はその買付けの申込の勧誘のうち、均一の条件で50人以上の者を相手方として行う」ことをいい、通常は「公募」と「売出し」を合わせて「PO」と呼ばれます。 「新規公開株(IPO)」は未上場企業が直接金融市場からの資金調達や知名度・信用力の向上を目的として証券取引所に新規上場するために一般投資家に株式を取得してもらう行為であるのに対して、「公募・売出(PO)」は既に上場していて証券取引所での株式取引が行われている企業が追加の資金調達や大株主の保有株売却などを目的として一般投資家に株式を取得してもらう行為であり、「新規公開株(IPO)」と「公募・売出(PO)」の違いを簡単にいえば、実施する企業が「未上場」か「既上場」かの違いといえます。
POの概要
今回のPOは、公募による増資と株式の売出の両方です。発行価格決定期間や受渡期日、発行数量は以下です。
ディスカウント率は、「発行価格等決定日」に決まり、その日の終値から数%です。
注意点として、どの証券会社でも購入できるわけでなく、主幹事会社(今回は、大和証券)をはじめ、引受人の証券会社で購入申込可能です。
早ければ、9/27(月)の夕刻に、会社側から売出価格等のお知らせが適時開示でありますので、チェックしてくださいね💖
発行価格等決定日 | 2021年9月27日(月) |
受渡期日 (POで買った場合はこの日から売却可能) | 2021年10月4日(月) |
公募による新株式発行(一般募集)数量 | 2,522,000 株 (発行済み株式数(自己株式を除く)14,578,236 株の約17.3%) |
株式の売出し(引受人の買取引受けによる売出し)数量 | 293,500 株 (発行済み株式数(自己株式を除く)14,578,236 株の約2.0%) |
株式売出し(オーバーアロットメント(以下、OA)による売出し)の数量 | 422,300 株(公募による新株発行と株式の売出しの合計株数の約15.0%。(実施決定 9/27)) ※上記の「発行価格等決定日」に決定。大和証券が売出す。 |
発行価格 | 886 円 |
ディスカウント率 | 3.06 % |
申込単位数量 | 100株 |
新株式発行の目的 | ・当社販売支援システムの導入や建材関連及び園芸資材の生産設備導入のための当社連結子会社への投融資に充当し、当社グループの中長期的な成長及び収益力の強化。 ・有利子負債ではなく増資による資本増強を行うことで、知名度の向上、優秀な人材の確保に努め、強固な経営基盤を確立する。 ・本資金調達と同時に当社株主を売出人とする株式売出しを実施し、当社株式の流動性の向上及び株主分布状況の改善。 |
主幹事会社 | 大和証券 |
公募による新株発行の株数は、 発行済み株式数(自己株式を除く)の約17.3% (OAを含めた最大の株数を含めると約20.2%)と、既存株数の1/5程度とかなり多い数量です。
また、この銘柄の直近の出来高(売買が成立した株の数量)の5日平均は2,971百株、25日平均は2,221百株と流動性は少し高い水準です。
今回の公募増資による調達資金(手取概算額:27.6億円)の使途は、
①設備投資資金に300百万円、②投融資資金に1,900百万円、③販促・広告費用に100百万円、④借入金返済資金に残額を充当する予定です。
また、今回の公募増資・株式の売出の発表と同時に、
来年4月からの東証の新市場区分の「プライム市場」を目指すという宣言しており、現時点では「流通株式時価総額」のみ基準を満たしていませんが、今回の公募増資・売出によりプライム市場の基準を満たす可能性がありますので、こちらは既存株主にとっても良い材料だと思います。
どんな会社?
環境エクステリア(インドアおよびアウトドア庭園、緑化)に関する製品の企画開発、ガーデン用品の輸出入販売、エクステリア商品のソフトウェア開発販売、CAD,C.G.ソフトウェアの提供をしている会社です。
2021年1月期通期のセグメント(国)別売上高構成比は、
- 日本 85.8%
- 欧州 4.1%
- 中国 5.7%
- 韓国 0.8%
- 米国 2.2%
- その他 1.4%
となっており、日本の販売が8割以上を占めています。
直近の経営概況
【2022年1月期2Q(2021年1月21日~2021年7月20日)の経営成績】(2021年8月25日発表)
決算期 | 売上高 [億円] (前年同期比[%]) | 営業利益 [百万円] (同) | 経常利益 [百万円] (同) | 親会社の所有者に 帰属する純利益 [百万円] (同) |
2021年1月期2Q累計 | 97.1 (3.2) | 816 (111) | 754 (133) | 535 (238) |
2022年1月期2Q累計 | 113 (16.1) | 1,163 (42.5) | 1,227 (62.7) | 865 (61.5) |
2022年1月期通期会社予想 | 204 (10.1) | 1,506 (30.2) | 1,452 (26.0) | 1,100 (15.4) |
通期予想に対する 1Qの進捗率[%] | 55.4 | 77.2 | 84.5 | 78.6 |
2022年1月期2Q累計の業績は、前年同期比増収増益で、特に利益面は40~60%増と好調です。
通期予想に対する進捗率も、売上高はそこそこですが、利益面は上期終了時点で8割近くまで到達しており順調です。
このままの業績でいけば、通期予想の上方修正も見えてきます。
【2022年1月期2Qの状況、経営成績の要因】
当社グループを取り巻くガーデン・エクステリア業界は、2021年4月~6月期における実質GDP成長率は前期比年率1.3%と2四半期ぶりにプラス成長となり新設住宅着工戸数も2021年3月度より増加傾向となっているものの、依然として先行きは不透明な状況となっています。
また、昨年に引き続き、例年開催される展示会やイベント等も中止を余儀なくされました。このような環境下において、新しい生活様式が浸透している中、花や植物など自然を取り入れることでストレスのない庭での暮らしが求められており、DX(デジタルトランスフォーメーション)による提案とお客様のカスタマイズに対応する製造の強化を図りました。さらに、2021年6月23日~25日にWEB展示会「TAKASHO WEB G&EX フェア2021」を開催し、営業活動の強化を図りました。
また、海外の販売においては、ホームデポやコストコを始めとする世界の有力店との取引も本格化され、e-コマースにおいてはアマゾンや自社サイトにおいてドロップシップ方式(在庫を持たずに商品を販売するEコマースの一種)による販売活動の強化を図りました。
国内の売上高は、プロユース部門では家と庭をつなぐ中間領域である「5th Room」(五番目の部屋)のコンセプトに基づく基軸商品の「ホームヤードルーフ」とその周辺アイテムの売上拡大と新築外構工事におけるファサードエクステリアのデザイン性向上のための様々な顧客サポートを行ったことにより、売上高は前年同四半期と比べ9.4%増加しました。
ホームユース部門においては、ライフスタイルの変化に伴い、ガーデニングの需要が高まり、また定着しつつあることから、販売先である量販店での売上拡大やe-コマースにおけるガーデニング用品の売上拡大により前年同四半期と比べ8.3%増加と大幅に伸長しました。
海外の売上高は、健康的で持続可能なライフスタイルが望まれるなか、ガーデニングの需要が持続し、特にe-コマースにおけるガーデニング用品の売上高が前年同四半期と比べ81.9%増加しました。
さらに、当社子会社が運営するガーデン・エクステリア業界の情報に特化したWebプラットフォーム『GARDENSTORY(ガーデンストーリー)』は、2020年5月に過去最高PV・UU達成以降も、家庭菜園や季節の植物に関わる記事へのアクセスが勢いを持ったまま推移していることから、多くの方が植物に興味を持ち、“ガーデニングや家庭菜園とともにある暮らし”の定着が表れる結果でした。
このような状況を好機と捉え、当社グループにおいて、DX(デジタルトランスフォーメーション)の取り組みとして、AR・VR・MRなどの最新デジタル技術を活用したガーデンシミュレーションアプリや庭空間動画ソフトパッケージなどの研究開発を目的に、鳥取市にタカショーGLD–LAB.Soft-Factory鳥取(タカショー ジーエルディーラボ.ソフト-ファクトリー トットリ)を2021年4月1日に開設し、引き続きフィリピン共和国にTAKASHO GARDEN LIFE DESIGN LAB PHIL. Corp(タカショー ガーデン ライフ デザイン ラボ フィリピン 株式会社)を2021年5月に設立し、DX化の強化を図っていく予定です。
販売費及び一般管理費においては、DX化による販売促進活動の強化、ICT研究開発拠点(タカショーGLD-LAB.Soft-Factory鳥取)の開設や名古屋ハイブリッド型ショールームの新設を行ったことにより減価償却費と一時的な設備費用が発生したことや、売上増加に伴う運賃が増加するなか、営業活動において昨年に引き続き”リアルとネット”を融合させ効率化を図ることで営業経費が前年並みで推移したことにより、増加を抑えることができました。
今後も更に業務効率の改善を進め、Web受注やRPA、またIoTやICTなどの最先端のIT化を急速に進めることで経費削減を進めていくとのこと。
営業利益においては、販売費及び一般管理費が前年同四半期を上回ったものの、売上高が増加し、原材料および海上運賃が高騰するなか自社生産品の販売構成比の増加やe-コマース分野の売上構成比増加等により、粗利率が前年並みで推移したことから、前年同四半期と比べ42.5%増加しました。
【財政面の状況】
自己資本比率(自己資本(総資本-他人資本)÷総資産) ×100)は、2022年1月期2Q末時点で48.7%と前期末(47.9%)から0.8ポイント増加しました。
数値としても問題ない水準(20%以上を安全圏としています。)です。
また、2022年1月期2Q累計のキャッシュ・フロー(以下、CF)の状況は、営業活動によるCF 1,293百万円の収入、投資活動によるCF 280百万円の支出の結果、営業活動によるCFと投資活動によるCFを合計したフリーCF※は1,013百万円のプラスとなりました。
※フリー・キャッシュ・フロー:プラスの場合、会社が使える資金があることを意味し、マイナスの場合、会社が自由に使うことができる資金が少ないことを意味する。
前期(2021年1月期)2QのフリーCF(プラス808百万円)から205百万円増加しており、良好な状態です。
【今期(2022年1月期)の見通し】
今2Qの決算発表に先んじて、8月23日に2Q累計と通期予想を修正しています。通期予想は表3になっています。
売上高 [億円] | 営業利益 [百万円] | 経常利益 [百万円] | 当期純利益 [百万円] | 1 株当たり 当期純利益 [円] | |
前回発表予想 | 197 | 1,195 | 1,190 | 900 | 61.74 |
今回修正予想 | 204 | 1,506 | 1,452 | 1,100 | 75.45 |
増減額 | 6.7 | 311 | 262 | 200 | ー |
増減率[%] | 3.4 | 26.0 | 22.0 | 22.2 | ー |
売上高は微増ですが、利益面は2割以上増額しています。
修正の理由は、
今まで投資してきた、プロユース事業部におけるDX化による販促活動の強化ならびに生産工場およびショールームの拡充、また空間パッケージ型新商品の市場投入の効果が出てきていることや、ホームユース事業部における中国生産工場の本格稼働からのグローバル展開の促進、ガーデニング需要の持続に伴い売上高が前回発表予想を上回る見込みです。
営業利益においては、原材料および海上運賃が高騰するなか、自社製品の販売比率増加、e-コマース分野の売上増加に伴い粗利率が前年並みで推移し、販管費においては計画通りに推移すると見込んでいることから前回発表予想を上回る見込みとしています。経常利益および親会社株式に帰属する当期純利益においては、外貨建て取引における為替評価差額が見込みより増加することから前回発表予想を上回る見込みです。
また、この上方修正に伴い、配当性向30%を目標としていることから、今期の配当金を20円から3円増配され、23円予想としています。こちらは株主にとってうれしい内容ですね!
株価指標
【9/15(水)終値時点の数値】
- 株価:974円
- 時価総額:143億円
- PER:15.5倍
PERは、同業で時価総額が近い、キムラ(7461) 7.3倍、北恵(9872) 21.6倍と比較すると、中間的な水準です。
- PBR:1.37倍
- 信用倍率(信用買い残÷信用売り残):1.61倍
- 年間配当金(予想):23円(年1回 1月)、年間利回り:2.4%(配当性向 30.5%)
配当は年利回り2.4%と、東証1部の単純平均1.69%(9/14時点) と比較し、少し高い水準です。
直近の配当金は、表4のようになっており、年々増配傾向です。
決算期 | 1株当たり 年間配当金(円) | 配当性向(%) |
2017年1月期 | 6 | 48.4 |
2018年1月期 | 10 | 53.8 |
2019年1月期 | 10 | 40.0 |
2020年1月期 | 10 | 71.9 |
2021年1月期 | 20 | 30.6 |
配当性向は、2020年1月期のみは70%台となっていましたが、他の年は30~50%程度となっています。
この会社は、
株主の皆様への利益還元を経営の重要課題のひとつと位置付けています。剰余金の配当は、経営体質の強化と将来のグループ全体としての事業展開を考慮しつつ、株主へ安定的かつ継続的な配当を行うことを基本方針としています。
当社の財政状態および当社では配当性向30%を目標としています。
【株主優待制度】
この会社には、株主優待制度があり、100株以上または500株以上の株主に、以下が贈呈されます。
- タカショー・プレミアム優待倶楽部(対象:1月20日時点に500株以上保有の株主)
- 株主様特別販売(主にガーデニング用品を割引価格で購入可能)カタログの送付(対象:1月20日および7月20日時点に100株以上保有の株主)
- タカショーオリジナルカレンダーの送付(対象:7月20日時点に100株以上の株主)
500株以上は少しハードルは高いですが、100株以上でもいただけますので、ガーデニングを趣味にされている方はうれしいですね!
【直近の株価動向】
<週足チャート(直近2年間)>
株価は、昨年のコロナショック時の安値(350円)以降、右肩上がりの上昇トレンドを継続しており、現在はその2倍以上の値をつけています。
<日足チャート(直近3か月間)>
直近の株価は、8/23の2022年1月期通期の上方修正発表後大きく上げて、高値(8/25:1,180円)をつけた以降はもみ合っていましたが、
今回の公募増資の発表を受け、翌営業日(9/15)は、1株利益の希薄化懸念からか、出来高を伴い大きく下げ(-142円(-12.7%))、5日移動平均と25日移動平均を下回ってきました。
今後は、今までずっと続いていた上昇トレンドが崩れるのか、それとも再び高値を更新していくのか注目です。
まとめ
【業績】
- 今期2Q(2021年2月~2021年7月)の業績は、前年同期比 増収増益で、特に利益面は40~60%増と好調。
- 通期予想予想に対する進捗率も、売上高はそこそこだが、利益面は上期終了時点で8割近くまで到達しており順調。
- 今期2Qの決算発表に先立ち、グローバル展開の促進、ガーデニング需要の持続に伴い売上高が予想より伸長するということで、2Q累計と通期予想を上方修正している。
【株主還元】
- 配当は年利回り2.4%と、東証1部の単純平均1.69%(9/14時点) と比較し、少し高い水準。
- 株主優待制度があり、ガーデニングを趣味にされている方はうれしい内容。
【流動性・売出数量】
- 直近の出来高(売買が成立した株式の数量)の5日平均は2,971百株、25日平均は2,221百株と流動性は十分。
- 今回の公募増資の合計数量は、発行済み株式数(自己株式を除く)の約17.3% (OAを含めた最大の株数を含めると約20.2%)と、既存株数の1/5もありかなり多い数量。
- 今回の公募増資の発表と同時に、来年4月からの新市場区分の「プライム市場」を目指すという宣言をした。現時点では「流通株式時価総額」のみ基準を満たしていないことから、この公募増資・売出によりプライム市場の基準を満たす可能性あり。
【株価モメンタム】
- 昨年のコロナショック時の安値(350円)から、ずっと右肩上がりの上昇トレンドを継続中。株価はその安値の2.8倍にも達している。
- 今回の公募増資を発表後、一株利益の希薄化懸念からか、出来高を伴い大きく下げた(-142円(-12.7%))。今後、8/25につけた直近の高値(1,180円)を上回ってくるのか、それとも下落トレンド入りするのか要注目。
以上のことから、
レベル(最低⭐~最高⭐⭐⭐⭐⭐) | |
業績 | ⭐⭐⭐⭐ |
配当、株主優待を含む株主還元 | ⭐⭐⭐ |
株価モメンタム | ⭐⭐⭐⭐ |
流動性 | ⭐⭐⭐⭐ |
公募増資数量 | ⭐⭐ |
総合判定 | ⭐⭐⭐⭐(買い) |
と判断しました。
来年4月からの新市場区分「プライム市場」を目指すということで、もし今回の増資・売出後に流通株式時価総額が上がってこない場合は、何らかの株価対策を打ってくると予想しています。
最後までご覧いただき、ありがとうございました。
※株式投資の実際の売買は、自己判断、自己責任でお願いします。