【自社株買いは買いか?】フィル・カンパニー (3267) 

駐車場銘柄分析
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こんにちは!

直近で自己株式の取得を発表した銘柄に関して、この発表のタイミングで株を買った場合、利益を得ることができるのか?直近の経営状況や客観的な指標、株価モメンタム等を踏まえ、総合的に分析しました。

今回は、東証1部から建設業種のフィル・カンパニーです。

最後までお付き合いいただけるとうれしいです!

  • 「自社株買い」とは?

上場企業が自らの資金を使って、株式市場から自社の株式を買い戻すことをいう。

日本証券業協会HP 金融・証券用語集

自社の株を買った後は、

  1. 買い戻した株式を消却する。(無効とする。)
  2. 金庫株としてそのままにしておき、いずれ資金調達などの目的で売却する。

の2通りあります。

自社株買いのメリットとデメリット

<メリット>

  1. 発行済み株式数が減るため、会社の利益総額が変わらなければ、1株当たり利益(EPS)が増えるので、企業価値が上がる=株価が上がる可能性がある。(配当とともに株主還元の一つ)
  2. 配当金の支払いが少なくて済む。(企業側のメリット)
  3. 敵対的買収の防衛策(株価が上がって敵対企業が株を買いにくくなることと、市場に出回る株数の割合が少なくなるため)
  4. ROE(株主資本利益率:ROE = 当期純利益 ÷ 自己資本×100(%))が上がる。
    • 自社株買いを行った場合、自己資金が減りますので、分母の「自己資本」が小さくなりROEが上がります。
  5. 自社の株価は「割安」というメッセージを送ることができる。
    • 自社の株が安い時に買った方が、購入資金が少なくて済みます。(企業側のメリット)

<デメリット>

  1. 自己資金が減り、設備投資などの自社の成長に回せる資金が少なくなる。
  2. 自己資本比率(自己資本(総資本-他人資本)÷総資産) ×100)が下がる。

などがあります。

それでは、見ていきましょう!

自社株買いの概要

まとめ

会社から発表された自己株式取得の概要は、表1のようになっています。

株数と金額の上限が設定されていますが、株価が上がれば、取得に必要な金額も大きくなりますので、予定の取得株数よりも少なくなることが多いです。

自社株買い発表日2022年1月28日(金)
自己株式取得を行う理由株価及び経営環境の急激な変動と変化に対応した機動的な資本政策を遂行することにより、
株主価値及び企業価値向上に資する経営施策を実行可能とするため
財務状況等も総合的に勘案
取得期間2022年1月31日~ 2022年2月28日
取得株式の総数普通株式 50万株(上限)
発行済株式総数(自己株式を除く)に対する割合:8.91%
取得金額の総額5億円(上限)
取得方法東京証券取引所における市場買付け
(証券会社による取引一任方式)
表1:フィル・カンパニー 自社株買い概要

今回の自己株式の取得数量は、発行済み株式総数の8.91%と自社株買いの数量としてはかなり多い数量(※1)です。

※1 一概に言えませんが、目安として、5%以上:かなり多い、3%以上5%未満:多い、1%以上3%未満:ほどほど、1%未満:少ないとしています。

取得期間は約1カ月と短期間でこれだけの数量ですので、地合いが悪い中ですが、株価の下支えや上昇の要因になることは間違いですね。

直近の出来高(売買が成立した株式の数量)の5日平均は1,761百株、25日平均は1,127百株で、流動性は標準的な水準です(1,000百株を平均水準としています)。

どんな会社?

駐車場

2005年に設立した、駐車場の上部”未利用”空間の活用を実現した空中店舗フィル・パーク事業を展開している、ユニークな会社です。

「駐車場+商業施設」という新たな”常識と価値”を創り出すことで、土地オーナーやテナントを始め、関わる多くの人たちが幸せを分かち合える継続的な街づくりを推進しています。

事業セグメントは、空中店舗フィル・パーク事業の単一セグメントです。

直近の経営概況

経営状況

2021年11月期通期(2020年12月~2021年11月)の経営成績と2022年11月期予想】(2022年1月14日発表)

決算期売上高
[百万円]
(前年同期比[%])
営業利益
[百万円]
(同)
経常利益
[百万円]
(同)
親会社株主
帰属する
当期純利益
[百万円]
(同)
2020年11月期通期実績3,970
(△43.5)
130
(△88.1)
98
(△90.9)
19
(△96.7)
2021年11月期通期実績5,432
(36.8)
724
(457)
713
(626)
407
(21.4倍)
2022年11月期通期
会社予想
5,500
(1.2)
140
(△80.7)
130
(△81.8)
90
(△77.9)
表2:フィル・カンパニー 2021年11月期通期経営成績と2022年11月期予想


2021年11月期通期の業績は、前年比 増収増益で、売上高は4割弱増、利益面は5倍以上の増益で好調な結果でした。

今期(2022年11月期)の業績予想は、増収減益で売上高は微増、利益面は8割減益を見込んでいます。

【2021年11月期通期の概況、経営成績の要因】

同社グループはPhil=共存共栄を企業理念として、土地オーナー・入居者・地域にとって三方良しとなる企画である「空中店舗フィル・パーク」及びガレージ付賃貸住宅「プレミアムガレージハウス」を事業展開してきました。

土地オーナーに土地活用商品の企画提案をする「請負受注スキーム(既存土地オーナー向けサービス)」と、

不動産投資家に同社が土地を購入し土地活用商品の開発から販売までを行う「開発販売スキーム(不動産投資家向けサービス)」の両スキームでソリューションサービスを提供しています。

① 当期の売上総利益率(31.4%)が上場来最高値を更新

当連結会計年度における「請負受注スキーム」の竣工引渡件数は16件、「開発販売スキーム」の販売引渡件数は3件となりました。

開発販売スキーム」は、大型案件3件の販売用不動産の販売引渡が完了し、販売額も当初計画を上回る金額で売却しました。

この結果、当連結会計年度の経営成績は、売上高5,432百万円(前年同期比36.8%増)、売上総利益1,706百万円(前年同期比96.1%増)、利益面は表2の数値で、売上総利益率が31.4%となり、上場来最高値を更新しました。

② 金融機関からの問い合わせ件数(440件)が過去最高値を更新

前連結会計年度において、コロナ禍後を見据え金融機関とのビジネスマッチング契約を強化した結果、当連結会計年度の金融機関からの問い合わせ件数は440件と過去最高値を更新しました(従来の最高問い合わせ件数は2019年11月期の345件)。

特にプレミアムガレージハウスに関する問い合わせ件数が239件と、全問い合わせ件数の50%を超えています。プレミアムガレージハウスは、車庫としてだけでなく趣味や仕事の場所として多様なニーズを満たす「新しい生活様式を実現できる空間」として認知され、同社独自の入居待ち登録システムへの登録件数は増加し続け、需要に対し供給が追い付いていない状況が続いています。

③ プレミアムガレージハウスの受注高(13億6,000万円)が前期比4.6倍

当連結会計年度における「請負受注スキーム」の請負受注件数は31件、受注高は3,054百万円となりました。

内訳は、空中店舗フィル・パーク請負受注件数が5件、受注高が1,694百円(前年同期は981百万円)、

プレミアムガレージハウス請負受注件数が26件、受注高が1,360百万円(前年同期は294百万円)と前期比4.6倍となりました。

空中店舗フィル・パークは、新型コロナウイルス感染症に対する緊急事態宣言の発出の影響を受けて、土地オーナーを紹介する金融機関側の様子見姿勢が強まり問い合わせ数は横ばいとなっており、受注件数の本格的な回復には依然として時間がかかっています。

一方で、ワクチン接種が促進される中で持ち直しの動きが続くことが期待され、前期の受注高と比べ回復基調となっています。

プレミアムガレージハウスは、2019年1月の連結子会社化した当時は建築機能を有しておりませんでしたが、前連結会計年度のコロナ禍において、同社グループの設計・建築業務を担う株式会社フィル・コンストラクションにて設計・建築工程の見直しを行い、空中店舗フィル・パークと同水準の収益を生み出せる仕組みに改善しました。

このことによりプレミアムガレージハウスが金融機関経由で土地オーナーに対して提案できる水準の土地活用商品となり、

またコロナ禍におけるガレージ付賃貸住宅に対する需要の拡大も追い風となって、当連結会計年度の金融機関経由でのプレミアムガレージハウスに関する問い合わせが増加し、受注高も増加傾向となっています。

スキーム別の引渡件数の前期比較は、表3のとおりです。

スキーム2020年
11月期
2021年
11月期
増減
請負受注
(竣工引渡件数)
2816△12
開発販売
(販売引渡件数)
表3:2021年11月期通期  スキーム別引渡件数

「請負受注スキーム」は12件減少「開発販売スキーム」は件増加となっています。

【財政面の状況】

自己資本比率>(自己資本(総資本-他人資本)÷総資産)×100

2021年11月期末時点で50.8%と前期末(55.4%)から4.6ポイント減少しました。

自己資本比率の数値としては良好なレベルです。(20%以上を安全圏内としています。)

キャッシュ・フロー

2021年11月期通期のキャッシュ・フロー(以下、CF)の状況

  • フリーCF(営業活動によるCFと投資活動によるCFを合計した金額)※ 3,285百万円のプラス
    • 営業活動によるCF 3,291百万円の収入(前期 2,438百万円の支出)
    • 投資活動によるCF 6百万円の支出(前期 43百万円の支出)

フリー・キャッシュ・フロー:プラスの場合、会社が使える資金があることを意味し、マイナスの場合、会社が自由に使うことができる資金が少ないことを意味する。

前期(2020年11月期)通期のフリーCF(マイナス2,481百万円)から5,772百万円良化しています。

これは主に、たな卸資産の減少1,543百万円、税金等調整前当期純利益が前期比 574百万円増加、前受金の増加542百万円などがあり、営業活動によるCFの収入が増加したことが要因です。

【今期(2022年11月期)の見通し】

同社グループは、3年後の2024年11月期を最終年度とする中期経営計画を策定し、

計画期間を更なる飛躍のための成長投資フェーズと位置付け、人材基盤及びデジタル基盤を中心に集中投資を行っていく計画です。

人材投下による既存事業の安定的成長に加え、プレミアムガレージハウスを全国展開するための新たなオンラインプラットフォームを基軸とした FC モデルの構築や、開発販売スキームにおける自社ブランドのファンド組成に注力する予定です。

まとめると、

  • 無形資産の蓄積による企業価値の増加
  • 3年後はトップライン(売上高)を重視し、売上高 150億円、営業利益率 10%以上

を目指しています。2022年11月期通期会社予想は、売上高 55億円、営業利益 1.4億円(営業利益率 2.5%)ですので、

3年後には、売上高は3倍、営業利益率は4倍を目指すということとなり、かなり意欲的な数値目標です。

株価指標と動向

株価指標

【2022/1/28(金)終値時点の数値】

  • 株価:880円
  • 時価総額:50.8億円
  • PER(株価収益率):54.3倍

PERは、同業で時価総額が近い、パーク24(4666) 106倍、日本駐車場開発(2353) 14.9倍、パラカ(4809) 12.3倍と比較すると、中間的な水準です。

  • PBR(株価純資産倍率):1.76倍
  • 信用倍率(信用買い残÷信用売り残):47.2倍
  • 年間配当金(予想):0円(無配)、年間利回り:ー

配当は前期は年間10円と復配したのですが、今期(2022年11月期)は残念ながら無配予想です。

決算期1株当たり
年間配当金(円)
配当性向(%)
2017年11月期
2018年11月期
2019年11月期
(記念配当)
4.7
2020年11月期
2021年11月期10
(特別配当)
13.8
表4:フィル・カンパニー 年間配当金推移

表5のように、直近5年間の配当金は、2019年11月期と2021年11月期のみ配当されています。

2019年11月期は「東証1部上場記念配当」、2021年11月期は「コロナ禍におけるご支援に対する感謝配当」といずれも普通配当ではないですので、基本は無配ということのようです。

この会社は、

株主に対する利益還元を経営上の課題と認識しています。

一方で、新型コロナウイルス感染症の収束が不透明である中、財務体質の強化も経営上の課題であると認識しています。

現在成長過程であることから、内部留保を図りながら、事業拡大を目指すことが株主に対する最大の利益還元につながると考えています。

今後は、経営体質の強化、将来の事業展開のために必要な内部留保を確保しつつ、業績に応じて配当を検討していく方針です。

【直近の株価動向】

<週足チャート(直近2年間)>

フィル・カンパニー 週足チャート
出所:楽天証券サイト

株価は、一昨年の8月に安値(1,484円)をつけた後、右肩上がりの上昇トレンドで、この安値の2倍以上の年初来高値(3,835円)を昨年10月につけました。

しかしながら、この後は下落トレンドで、一昨年8月の安値を割り込んで推移しています。

<日足チャート(直近3か月間)>

出所:楽天証券サイト

直近の株価は、昨年10月の年初来高値から一貫して下げ続け

2021年11月期の決算発表の翌営業日(1/17)に、今期の減益見通しが嫌気されたのか、ストップ安比例配分で終了しました。

その後も、現時点(1/28)まで下げ続けており、上場来安値をつけていますので、どこで下げ止まるか見えない状況です。

まとめ

まとめ

【業績】

  • 2021年11月期通期の業績は、前年比 増収増益で、売上高は4割弱増、利益面は5倍上の増益で好調な結果で着地。
  • 2021年11月期の売上総利益率31.4%となり上場来最高値を更新し、プレミアムガレージハウスの受注高は、前期比4.6倍にもなった。
  • 今期(2022年11月期)の業績予想は、増収減益売上高は微増、利益面は8割減益を見込んでいる。
    中期経営計画において、今後の業績拡大のための成長投資フェーズということは理解できるが少し寂しい予想。
  • 今月(2022年1月)に発表した中期経営計画で、3年後には、今期予想数値比で売上高は3倍、営業利益率は4倍を目指すということで、かなり意欲的な数値目標となっており、将来的な業績拡大が期待できる。

【株主還元】

  • 配当金は前期(2021年11月)は特別配当がでたが、基本は無配となっており、今期も無配予想。
  • 前期(2021年11月)にも、今回と金額では同規模(16.5万株、4.9億円)の自社株買いを行っており、株主還元には積極的なイメージがある。

【流動性・自社株買い数量】

  • 直近の出来高5日平均は1,761百株、25日平均は1,127百株で、流動性は標準的な水準。
  • 今回の自社株買い数量は、発行済み株数(自己株式を除く)の8.91%とかなり多い数量。

【株価モメンタム】

  • 週足ベースの株価は、一昨年の8月に安値(1,484円)をつけた後、右肩上がりの上昇トレンドで、この安値の2倍以上の年初来高値(3,835円)を昨年10月につけその後は下落トレンドでこの安値を割り込んで推移。
  • 直近の株価は、昨年10月の年初来高値から一貫して下げ続け、2021年11月期の決算発表の翌営業日(1/17)に、今期の減益見通しが嫌気されたのか、ストップ安比例配分で終了。
  • その後も、現時点(1/28)まで下げ続けて上場来安値をつけ、どこで下げ止まるか見えない状況。

以上のことから、

レベル(最低⭐~最高⭐⭐⭐⭐⭐)
業績⭐⭐⭐
配当を含む株主還元⭐⭐
株価モメンタム
流動性⭐⭐⭐
自社株買い数量⭐⭐⭐⭐⭐
総合判定⭐⭐⭐(中立)
※「総合判定」=⭐4つ以上「買い」、⭐3つ「中立」、⭐2つ以下「見送り」

と判断しました。

最後までご覧いただき、ありがとうございました。

※株式投資の実際の売買は、自己判断、自己責任でお願いします。

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