【公募増資・売出(PO)は買いか?】泉州電業(9824)

公募増資・売出(PO)
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こんにちは!

公募増資・売出(以下、PO)の実施を発表した銘柄に関して、POに応募して買った場合、利益を得ることができるのか?直近の経営状況や客観的な指標、株価モメンタム等を踏まえ、総合的に分析しました。

今回は、東証プライムから卸売業種の泉州電業です。

最後までお付き合いいただけるとうれしいです!

  • 公募増資・売出(PO)とは?
既上場企業が新たに発行する株式(公募株式)や既に発行された株式(売出株式)を投資家に取得させることをいいます。
正確には、「PO」は「Public(公開の)Offering(売り物)」の略で、日本語では「公募」と呼ばれます。「公募」とは、「不特定かつ多数の投資家に対し、新たに発行される有価証券の取得の申込を勧誘すること」をいいます。
また、「売出」とは、「既に発行された有価証券の売付けの申込み又はその買付けの申込の勧誘のうち、均一の条件で50人以上の者を相手方として行う」ことをいい、通常は「公募」「売出」を合わせて「PO」と呼ばれます。
「新規公開株(IPO)」は未上場企業が直接金融市場からの資金調達や知名度・信用力の向上を目的として証券取引所に新規上場するために一般投資家に株式を取得してもらう行為であるのに対して、「公募・売出(PO)」は既に上場していて証券取引所での株式取引が行われている企業が追加の資金調達や大株主の保有株売却などを目的として一般投資家に株式を取得してもらう行為であり、「新規公開株(IPO)」と「公募・売出(PO)」の違いを簡単にいえば、実施する企業が「未上場」か「既上場」かの違いといえます。

POの概要

まとめ

今回のPOは、大株主(SWCC株式会社(旧昭和電線ホールディングス))からの株式の売出しです。売出価格等決定日や受渡期日、売出数量等は表1のようになっています。

ディスカウント率は、「売出価格等決定日」に決まり、その日の終値から数%です。

ちなみに、直近の主なPOのディスカウント率は、JR西日本(9021) 3.01%、日本郵政(6178) 2.01%、クリエイト・レストランツ・ホールディングス(3387) 3.09%となってますが、ほぼほぼ2~5%程度です。

ただ、ディスカウント率が大きいPOもあり、直近ではENECHANGE(4169)の8.1%が最大です。

注意点として、どの証券会社でも購入できるわけでなく、主幹事(今回は岡三証券)はじめ、引受人の証券会社で購入申込可能です。

早ければ、9/20(水)の夕刻に、会社側から売出価格等のお知らせが適時開示であります。

このブログ記事も更新しますので、チェックしてくださいね💖

売出価格等決定日2023 年9月 20 日(水)
受渡期日
(POで買った場合はこの日から売却可能)
2023 年9月 27 日(水)
①株式の売出し
(引受人の買取引受けによる売出し)
数量
普通株式 1,000,000 株
発行済み株式総数 21,000,000株 の約4.76%
②株式の売出し
(オーバーアロットメントによる売出し)
数量
普通株式 150,000
実施決定(9/20)
岡三証券が売出す。
売出価格3,079 円
(9/20決定:終値 3,175円)
ディスカウント率3.02 %
(9/20決定)
申込単位数量100 株
主幹事岡三証券
表1:泉州電業(9824) PO概要

【株式売出しの目的】

  • 本邦企業においてはコーポレートガバナンス・コードへの取り組みなどから、政策保有株式を見直す動きが進む中、
    今般、同社は、引受人の買取引受けによる売出しの売出人である同社株主による株式の売却意向を確認したため、株式の円滑な売却の機会を提供することで不規則な市場売却による株式の市場価格への影響を回避することを目的として、株式の売出しを実施することとした。
  • 当該株式売出しを実施することにより、投資家に同社への理解をより一層深めてもらうとともに、幅広い投資家の方々に同社株式を保有してもらうことで、
    株主層の拡大及び多様化並びに更なる株式流動性の向上を目指す
  • 当該株式売出し実施後においても、同社は、売出人であるSWCC株式会社とは、引き続き良好な関係を継続していく。

としています。

SWCC株式会社は、電線・ケーブル、電力機器部品、巻線、光ファイバケーブル、情報機器用ローラ、免震・制振材、防振ゴム等の製造販売を行っている会社で、同社の主要取引先でかつ筆頭株主でしたが、

今回の株式の売出しにより、筆頭株主ではなくなることになります。

また、今回の株式の売出数量は、発行済み株式総数の約4.76%OAを含めた最大の株数で約5.47%)で、

直近の株式の売出のみのPOの売出株数比率(OAを含む)は、jig.jp 38.7%、FPパートナー 7.0%、ナガセ 11.3%でしたので、それらと比較すると少ない数量です。

また、今回の売出株数(OAを含むと11,500百株)は、1日の平均的な出来高(25日平均:512百株(9/13時点))の約22倍となっており、これからすると多めの数量です。

そして、この銘柄の流動性は、直近の出来高(売買が成立した株の数量)の5日平均は1,411百株、25日平均は512百株で、流動性はやや低い水準です。(1日 1,000百株を平均的な水準としています。)

【自己株式取得】

今回の株式の売出しと同時に表2の内容で自己株式の取得を発表しています。

取得期間2023 年10月10日(火)から 2024年4月 30 日(火)まで
取得株式の総数普通株式 270,000株(上限)
発行済株式総数(自己株式を除く)に対する割合:1.52%
取得金額の総額10億円(上限)
※取得株数の上限で割ると1株あたり3,703円換算
取得方法東京証券取引所における市場買付
表2:泉州電業 自社株買い概要

【自己株式の取得を行う理由】

  • 今回の同社株式の売出しに伴う株式需給への影響を緩和する。
  • 株主還元の強化資本効率の向上を図る。

としています。

今回の株式の売出数量(発行済み株式総数の最大(OA含む)約5.47%)に対し、

自社株買いの最大の数量(約1.28%(自己株式を含む))分(約1/4)が、今回の市場に売り出される株式による、一時的な需給悪化の緩和を図っているといえます。

どんな会社?

2019年に設立70周年を迎え、設立以来、電線総合商社として、

  • 電線・ケーブル(機器用電線、通信用電線、電力用ケーブル、汎用被覆線等の電線類及び電線に附帯する各種電設資材)等の販売
  • 情報関連機器等の販売

を主な内容とした事業活動を展開している会社です。

同社グループは、電線・ケーブル事業の単一セグメントで、

2022年10月期通期の商品別売上高構成比は、

  • 機器用・通信用電線 34.2%
  • 電力用ケーブル 35.3%
  • 汎用被覆線 9.7%
  • その他電線 5.1%
  • 非電線 15.7%

となっており、「機器用・通信用電線」と「電力用ケーブル」がそれぞれ3割強を占めています。

直近の経営概況

経営状況

【2023年10月期3Q(2022年11月~2023年7月)の経営成績】

(2023年9月5日発表)

決算期売上高
[億円]
(前年
同期比
[%])
営業
利益
[百万円]
(同)
経常
利益
[百万円]
(同)
親会社株主
帰属する
純利益
[百万円]
(同)
2022年10月期
3Q累計
825
(25.5)
5,266
(62.3)
5,598
(59.7)
3,764
(50.4)
2023年10月期
3Q累計
928
(11.1)
6,342
(20.4)
6,640
(18.6)
4,461
(18.5)
2023年10月期
通期会社予想
1,230
(8.2)
8,100
(8.5)
8,500
(7.7)
5,700
(7.3)
通期予想に対する
3Qの進捗率[%]
75.478.278.178.2
表3:泉州電業 2023年10月期3Q経営成績と通期会社予想

表3の通り、前年同期比 増収増益で、売上高は1割強増利益面は2割前後の増益で好調でした。

2023年10月期通期の業績予想は、前期比 増収増益で、売上高、利益面ともに1割弱増を見込んでおり、

その通期予想に対する進捗率は3Q終了時点で、売上高、利益面ともには3/4程度でそこそこです。

【2023年10月期3Qの状況、経営成績の要因】

同社グループの係わる電線業界には、電線の主材料である銅の価格が、1トン当たり期中平均1,223千円と前年同期平均1,208千円に比べ1.2%上昇しました。

(銅価格の推移、1トン当たり期初1,170千円、高値1,290千円(2023年2月)、安値1,140千円(2023年1月)、3Q末1,260千円)

また、建設・電販向けの出荷量は、前年同期に比べおおむね横ばいで推移しました。

このような情勢のもとで同社グループは、提案型営業の推進、配送体制の強化、新規得意先の開拓及び既存得意先の深耕、新商品の拡販など積極的な営業展開を図りました。

また、北陸地区の営業・配送体制を強化するため、2023年5月に北陸支店(石川県金沢市)を開設しました。

その結果、当3Q連結累計期間の経営成績は、半導体製造装置向け及び工作機械向けで一部に需要の停滞がありましたが、自動車向け及び建設・電販向けの売上が増加したことにより、

売上高は928億円(前年同期比11.1%増営業利益は6,342百万円(同20.4%増経常利益は6,640百万円(同18.6%増親会社株主に帰属する四半期純利益は4,461百万円(同18.5%増となりました。

【財政面の状況】

自己資本比率>(自己資本(総資本-他人資本)÷総資産)×100

2023年10月期3Q末時点で49.4%と前期末(48.4%)から1.0ポイント増加しています。

これは主に、支払手形及び買掛金が前期末比で1,745百万円増加し、流動負債が合計で573百万円増加しましたが、

利益剰余金が前期末比で2,860百万円増加し、株主資本が合計で2,374百万円増加したことによるものです。

自己資本比率の数値としては問題ないレベルです。(20%以上を安全圏内としています。)

【今期(2023年10月期通期)業績の見通し】

今2Qの決算発表と同時に、2023年10月期通期連結業績予想の上方修正を発表しています。

2024年3月期通期の業績予想は表4です。

売上高
[億円]
営業
利益
[百万円]
経常
利益
[百万円]
親会社
株主に
帰属する
当期純利益

[百万円]
1株当たり
当期利益

[円]
1株当たり
年間配当金

[円]
前回
(2022/12/8)
発表予想
1,1827,8008,1005,500310.9280
今回修正予想1,2308,1008,5005,700321.41100
増減額48.030040020020
増減率[%]4.13.84.93.625.0
表4:泉州電業 2023年10月期通期連結業績と配当予想数値の修正(2023年6月5日発表)

前回予想と比べ、売上高、利益面ともに微増の増額修正をしています。

修正の理由は、

  • 2Q連結累計期間の業績が予想を上回ったことに加え、
    引き続き自動車・工作機械向け需要が好調に推移することが予想されることから、連結・個別共に売上高及び利益の見直しを行い、それぞれ前回予想から表4のとおり修正した。

としています。

また、配当金に関しても、安定的な配当を維持することを基本方針として、連結業績、内部留保の水準等を考慮し、総合的に利益配分を判断しており、

2Q連結累計期間の業績が堅調に推移したことに伴い、中間配当金を直近の配当予想の1株当たり40円から10円増配1株当たり50円とし、

期末配当予想も、3Q以降も業績の好調が予想されることから、直近の配当予想の1株当たり40円から10円増配1株当たり50円となり、当初予想から年間1株当たり20円増配し100円となっています。

株価指標と動向

株価指標

【2023/9/13(水)終値時点の数値】

  • 株価:3,350円
  • 時価総額:703億円
  • PER(株価収益率):10.4倍

PERは、同業で時価総額が近い、フジクラ(5803) 8.2倍、SWCC(5805) 8.6倍と比較すると高い水準です。

  • PBR(株価純資産倍率):1.23倍
  • 信用倍率(信用買い残÷信用売り残):2.29倍
  • 年間配当金(予想):100円(年2回 4月 50円、10月 50円)、年間利回り:2.98%(配当性向 31.1%)

配当利回りは2.98%で、東証プライムの単純平均 2.18%(9/12)と比較すると高い水準です。

表5のように、直近5年間の配当金は、1株当たり55~140円で推移しており、2019年10月期の記念配当分を除くと、連続増配を継続中です。

配当性向は、20%台で安定しています。

決算期1株当たり
年間配当金
[円]
配当性向
[%]
2018年10月期5523.3
2019年10月期70
(内
記念配当
10円含む)
25.3
2020年10月期7028.3
2021年10月期9023.2
2022年10月期14023.8
表5:泉州電業 年間配当金推移

この会社は、

利益配分は、安定的な配当を維持することを基本方針として、連結業績、内部留保の水準等を考慮し、総合的に判断するとしています。

内部留保資金は、経営基盤の強化や事業展開の拡大に必要な資金として有効活用する方針です。

【株主優待】

この会社は株主優待があり、10月末に100株以上保有の株主は、1,000円相当の自社オリジナルクオカードが進呈されます。

(1年以上継続保有の場合は2,000円相当)

1年未満100株保有の場合、配当金+株主優待(1,000円相当)で、利回りは3.28%(1年以上継続保有の場合は3.58%)となります。

こちらは個人投資家にとって、うれしい内容ですね!

【直近の株価動向】

<週足チャート(直近2年間)>

2021年10月に安値(2,217.5円)をつけた後は、順調に上昇し続け、長い間高値切り上げ安値切り上げの上昇トレンドで推移しています。

そして、2023年9月に上場来高値(4,155円)をつけています。

<日足チャート(直近3か月間)>

9/5のザラバ(取引時間)中に今3Qの決算発表があり、その日に上場来高値(4,155円)をつけるまでは上昇トレンドで推移していましたが、その後は調整し、

今回のPO発表の翌営業日(9/12)に、POによる需給悪化懸念と今まで上昇し続けていたことで、窓を開けて出来高を伴い、前日比 285円安(-7.5%)と急落しました。

今後は、節目の3,600円近辺まで株価が戻り、ヨコヨコから上昇に転じていくのか、1月につけた年初来安値(2,970円)をめがけ下落を継続するのか、要注目です。

まとめ

まとめ

【業績】

  • 今期(2023年10月期)3Qの業績は、半導体製造装置向け及び工作機械向けで一部に需要の停滞があったが、自動車向け及び建設・電販向けの売上が増加したことにより、
    前年同期比 増収増益で、売上高は1割強増利益面は2割前後の増益で好調。
  • 今期通期予想は、2Q決算発表と同時に上方修正しており、
    前期比 増収増益で、売上高利益面ともに1割弱増を見込む。
  • この通期業績予想に対する進捗率は、3Q終了時点で、売上高、利益面ともに3/4程度でそこそこ

【株主還元】

  • 配当利回り(予想)は2.98%で、東証プライムの単純平均 2.18%(9/12時点) と比較すると高い水準
  • 直近5年間の配当金は、1株当たり55~140円で推移しており、2019年10月期の記念配当分を除くと、連続増配を継続中
    配当性向は、20%台で安定して推移。
  • 株主優待があり、10月末に100株以上保有の株主は、1,000円相当の自社オリジナルクオカードが進呈され(1年以上継続保有の場合は2,000円相当)、
    1年未満100株保有の場合、配当金+株主優待(1,000円相当)利回りは3.28%となる。
  • 今回の株式の売出しと同時に、今回の同社株式の売出しに伴う株式需給への影響を緩和するため、自己株式の取得の発表を行っており、
    今回の株式の売出数量(発行済み株式総数の最大(OA含む)約5.47%)に対し約1/4程度を市場で取得し、需給悪化の緩和を図っている。

【流動性・売出株数】

  • 今回の株式の売出数量は、発行済み株式総数の4.76%OAを含めた最大の株数で約5.47%で、
    直近の株式の売出のみのPO(jig.jp、FPパートナー、ナガセ)の売出株数比率(OAを含む)と比較すると少ない数量だが、
    売出株数(OAを含む)は、1日の平均的な出来高の約22倍となっており、これからすると多めの数量
  • 直近の出来高の5日平均は1,411百株、25日平均は512百株で、流動性はやや低い水準

【株価モメンタム】

  • 週足ベースの株価は、2021年10月に安値(2,217.5円)をつけた後は、順調に上昇し続け、長い間高値切り上げ安値切り上げの上昇トレンドで推移し、
    2023年9月に上場来高値(4,155円)をつけている。
  • 直近の株価は、9/5のザラバ中に今3Qの決算発表があり、その日に上場来高値(4,155円)をつけるまでは上昇トレンドで推移していたが、その後は調整し、
    今回のPO発表の翌営業日(9/12)に、POによる需給悪化懸念と今まで上昇し続けていたことで、窓を開けて出来高を伴い、前日比 285円安(-7.5%)と急落
  • 今後の株価は、節目の3,600円近辺まで株価が戻り、ヨコヨコから上昇に転じていくのか、1月につけた年初来安値(2,970円)をめがけ下落を継続するのか要注目。

以上のことから、

レベル
(⭐(最低)~
⭐⭐⭐⭐⭐(最高))
業績⭐⭐⭐
株主還元
(配当、株主優待等)
株価モメンタム⭐⭐
流動性⭐⭐
株式の売出数量⭐⭐
総合判定⭐⭐
(中立)
※「総合判定」=⭐4つ以上「買い」、⭐3つ「中立」、⭐2つ以下「不参加」

と判断しました。

最後までご覧いただき、ありがとうございました。

※株式投資の実際の売買は、自己判断、自己責任でお願いします。

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