直近で立会外分売の実施を発表した銘柄に関して、買った場合、利益を得ることができるのか?直近の経営状況や客観的な指標、株価モメンタム等を踏まえ、総合的に分析しました。
今回は、東証1部からその他金融業種の九州リースサービスです。
最後までお付き合いいただけるとうれしいです!
- 立会外分売とは?
新規株主を増やすことを目的として、上場会社が大株主である銀行やオーナー経営者などの保有株を小口に分けて、証券取引所の立会外で不特定多数に売り出すこと。
取引開始前など取引時間外(=立会外)に売り出されることからこのように呼ばれる。
- 立会外分売の魅力
- 前日終値より安く購入可能
- 立会外分配における買付側の購入価格は確定値段(1本値)で、分売実施日の前日終値よりディスカウントされるのが一般的。過去の例では、約3~5%のディスカウントで実施されています。(ディスカウント率は取引所の規定により最大10%)
- 買付手数料はかからない
- 立会外分売による買付は、通常の立会時間内の取引と種類が異なるため一般的に手数料はかからない。(売却時には通常の手数料が発生)
- 即日売却OK
- 立会外分売で取得した株式は、実施日(買付当日)から売却することが可能
- 前日終値より安く購入可能
- デメリット:抽選で外れることもある
- 買い申し込みが多いと、抽選ではずれて購入できないこともある。
分売の概要
実施日や株数は以下です。実施予定日は幅があり、実際の実施日と販売価格は、会社側から実施日前日に発表があります。分売数量は決まっていて、100株単位で最大10,000株まで購入できます。
早ければ、8/18(水)の夕刻に、会社側からの適時開示で実施日と分売値段のお知らせがありますので、チェックしてくださいね💖
分売実施予定期間 | 2021年8月19日(木) (8/18発表) |
分売数量 | 1,124,000株 (発行済み株数(自己株式を除く)22,713,970株の約4.9%) |
分売値段 | 532円 (8/18発表) |
ディスカウント率 | 3.97 %(8/18発表) |
申込単位数量 | 100株 |
申込上限数量 | 10,000株 |
実施の目的 | 分売人より一定数量の売却意向があり、発行会社として検討した結果、立会外分売による発行会社株式の分布状況改善及び流動性の向上を図るため |
分売株数が、発行済み株数の4.9%とかなり多い数量です。
また、この銘柄の直近の出来高(売買が成立した株式の数量)の5日平均は1,332百株、25日平均は306百株です。直近は立会外分売を発表して少し出来高が多くなっていますが、通常時の取引の流動性は低いレベルです。
どんな会社?
九州地盤の総合リース会社です。
グループ会社は、連結子会社9社と関連会社1社により構成され、機械設備等のリース及び割賦販売(リース・割賦)、金銭の貸付、債権の買取及び信用保証等(ファイナンス)、不動産の賃貸及び販売(不動産)、生命保険の募集、自動車リースの紹介、損害保険代理業等(フィービジネス)、売電事業及びLEDレンタル事業(環境ソリューション)、物品販売等(その他)の事業を展開しています。
2021年3月期通期のセグメント別売上高構成比は、
- リース・割賦 58.5%
- ファイナンス 5.1%
- 不動産 31.6%
- フィービジネス 1.4%
- 環境ソリューション 3.3%
- その他 0.1%
となっており、リース・割賦が約6割、不動産が約3割を占めています。
直近の経営状況
【2022年3月期1Q(2021年4月~2021年6月)の経営成績】
決算期 | 売上高 [百万円] (前年同期比) | 営業利益 [百万円] (同) | 経常利益 [百万円] (同) | 親会社の所有者に 帰属する純利益 [百万円] (同) |
2021年3月期1Q累計 | 8,553 | 1,190 | 1,248 | 849 |
2022年3月期1Q累計 | 5,685 (33.5%減) | 889 (25.2%減) | 878 (29.7%減) | 695 (18.1%減) |
2022年3月期通期会社予想 | 28,700 (1.6%増) | 2,900 (19.3%減) | 2,950 (21.0%減) | 1,900 (2.1%増) |
通期予想に対する1Qの進捗率 | 19.8% | 30.7% | 29.8% | 36.6% |
2022年3月期1Qの業績は前年同期比 減収減益で、売上は3割増、利益面は20~30%ほど減益の結果です。
通期計画に対する進捗率は、売上高は少し低いですが、利益面は30%程度でほどほどの進捗です。
【2022年3月期1Qの状況、経営成績の要因】
当社グループは、2021年4月から2024年3月を計画期間とする中期経営計画「共創 2024 ~Challenge for the Future~」をスタートしました。当社グループの企業理念である「共存共栄」・「地域貢献」の実現に向け、「事業基盤の拡充」と「企業態勢の高度化」を基本方針に掲げ、再生エネルギーをはじめとする環境関連ビジネスへの取組強化、新たな収益基盤の確立に繋げるための広範な新ビジネスへの展開に努めると共に、
コア事業であるリース・割賦、ファイナンス、不動産事業については、地域創造への貢献や新たなエリアマーケット進出を意識しながら持続的成長に向けた営業資産拡大を図っています。
また、このような事業規模、領域の拡大に合わせ、リスクリターンのバランスをふまえたリスク管理、ガバナンス態勢の強化にも取り組んでいます。
当1Q期間における経営成績は、主に不動産売却収入の減少により減収減益の結果になっています。
セグメント別では、
セグメント | 売上高[百万円] (前年同期比) | セグメント利益 [百万円] (前年同期比) |
リース・割賦 | 4,130 (1.1%増) | 345 (3.4%減) |
ファイナンス | 377 (14.0%増) | 211 (0.8%増) |
不動産 | 770 (79.4%減) | 343 (45.8%減) |
フィービジネス | 126 (12.6%増) | 56 (13.5%増) |
環境ソリューション | 273 (6.4%増) | 58 (変わらず) |
の結果でした。特に「不動産」の大幅な減収減益の結果が目立ちます。
各セグメントの状況は、
<リース・割賦>
商業用設備などを中心に新規契約高が堅調に推移しました。
営業資産残高は686.3億円(前期末比0.7%減)です。
<ファイナンス>
営業資産の積み上げに伴い利息収入が増収となりました。
営業資産残高は293.9億円(前期末比7.4%増)です。
<不動産>
前年同期の主な増収要因となった保有資産の入れ替えに伴う大口の販売用不動産売却の反動により、減収減益となりました。
販売用不動産の取得により営業資産残高は395.7億円(前期末比12.9%増)となりました。
<フィービジネス>
外部環境の変化に積極的に対応したことにより、自動車関連の手数料収入と保険代理店収入が増収となりました。
<環境ソリューション>
LED照明などの環境関連機器に加えて、コロナ禍関連対策機器などの販売が増収となりました。
営業資産残高は45.4億円(前期末比2.3%減)です。
【財政面の状況】
自己資本比率(自己資本(総資本-他人資本)÷総資産) ×100)は、2022年3月期1Q末時点で20.9%と前期末(21.5%)から0.6ポイント下がっています。数値はぎりぎり問題ないレベルでしょうか。(20%以上を問題なしとしています。)
【今期の見通し】
当1Q期間の業績は、不動産セグメントの売上高の反動減を主因に前年同期と比較して減収減益となりましたが、おおむね当初の計画通りに推移しているとして、通期の業績予想は、2021年5月14日に公表された数値から変更はありません。
株価指標
【8/12(木)終値時点の数値】
- 株価:578円
- 時価総額:150.0億円
- PER:6.9倍
PERは、同業で時価総額が近い、中道リース(8594) 7.4倍と比較すると、少し低い水準になっています。
- PBR:0.41倍
- 信用倍率(信用買い残÷信用売り残):47.9倍
- 年間配当金(予想):16.5円(年1回 9月 8円、3月 8.5円)、年間利回り:2.9%(配当性向 19.7%)
※直近5年間の配当金と配当性向は、以下のようになっています。
決算期 | 年間配当金(円) | 配当性向(%) |
2017年3月期 | 12 | 11.8 |
2018年3月期 | 14 | 11.0 |
2019年3月期 | 14 | 15.6 |
2020年3月期 | 15 | 14.9 |
2021年3月期 | 16.5 | 21.7 |
配当は、直近5年間は金額が同じ年もありましたが、ほとんど増配されています。
配当性向は、直近では10~20%程度で安定しています。
この会社の配当方針は、
各事業年度の業績、財務状況、今後の事業展開等を総合的に判断し実施すべきと考えており、内部保留の充実による財務体質の強化を図りつつ、安定的に配当を実施することを基本方針としています。
【直近の株価動向】
<週足チャート(直近2年間)>
株価は、昨年のコロナショック時の安値(392円)を付けた後は、右肩上がりの上昇トレンドで推移していましたが、今年3/22の高値(776円)を付けた後は、高値切り下げの下落トレンドになっています。
<日足チャート(直近3か月間)>
直近3カ月の株価は、高値(5/26:706円)から下落トレンドが継続しています。
今1Qの決算発表と立会外分売実施の発表後の翌営業日(8/11)、分売による需給悪化懸念からか、出来高を伴い急激に値を崩しました。
今後は、この下落がいつ止まるのかが焦点です。
まとめ
【業績】
- 2022年3月期1Qの経営成績は、前年同期比減収減益で、特に利益面は20~30%ほど減益の結果となっており、あまり元気がない。
- 一方、今期の通期業績予想に対する進捗率は、 利益面は30%程度到達しており、それほど悪くはない。
- 1Qが終わった時点では、当初のおおむね計画通りに推移しているため、通期業績予想は据え置いている。
【株主還元】
- 直近5年間では、ほぼ毎年配当金の増配を重ねており、配当性向は10~20%と安定している。
- 配当年利回りは2.9%と、東証1部の単純平均(1.84%(8/11時点))よりは高いが、際立って高いわけではない。
【流動性】
- 直近の出来高(売買が成立した株式の数量)の5日平均は1,332百株、25日平均は306百株。直近は立会外分売を発表して少し出来高が多くなっているが、通常の取引の流動性は低いレベル。
- 分売数量は、発行済み株数(自己株式を除く)の約4.9%と多い数量。
【株価モメンタム】
- 昨年のコロナショック時の安値(392円)から上昇していたが、今年の3/26に高値(776円)を付けた後は、高値切り下げの下落トレンドに転換している。
- 今後は、この下落トレンドがいつ止まって上昇に転じてくるのかがポイント。
以上のことから、
レベル(最低⭐~最高⭐⭐⭐⭐⭐) | |
業績 | ⭐⭐⭐ |
配当を含む株主還元 | ⭐⭐⭐ |
株価モメンタム | ⭐⭐ |
流動性 | ⭐⭐ |
分売数量 | ⭐⭐ |
総合判定 | ⭐⭐(不参加) |
と判断しました。
ただ、立会外分売で安く購入できるということから、分売値段を底値にして上昇基調に転じることは大いにありうると考えます。
最後までご覧いただき、ありがとうございました。
※株式投資の実際の売買は、自己判断、自己責任でお願いします。