こんにちは!
公募増資・売出(以下、PO)の実施を発表した銘柄に関して、POに応募して買った場合、利益を得ることができるのか?直近の経営状況や客観的な指標、株価モメンタム等を踏まえ、総合的に分析しました。
今回は、東証プライムから情報・通信業種のコーエーテクモホールディングスです。
最後までお付き合いいただけるとうれしいです!
- 公募増資・売出(PO)とは?
既上場企業が新たに発行する株式(公募株式)や既に発行された株式(売出株式)を投資家に取得させることをいいます。 正確には、「PO」は「Public(公開の)Offering(売り物)」の略で、日本語では「公募」と呼ばれます。「公募」とは、「不特定かつ多数の投資家に対し、新たに発行される有価証券の取得の申込を勧誘すること」をいいます。 また、「売出」とは、「既に発行された有価証券の売付けの申込み又はその買付けの申込の勧誘のうち、均一の条件で50人以上の者を相手方として行う」ことをいい、通常は「公募」と「売出」を合わせて「PO」と呼ばれます。 「新規公開株(IPO)」は未上場企業が直接金融市場からの資金調達や知名度・信用力の向上を目的として証券取引所に新規上場するために一般投資家に株式を取得してもらう行為であるのに対して、「公募・売出(PO)」は既に上場していて証券取引所での株式取引が行われている企業が追加の資金調達や大株主の保有株売却などを目的として一般投資家に株式を取得してもらう行為であり、「新規公開株(IPO)」と「公募・売出(PO)」の違いを簡単にいえば、実施する企業が「未上場」か「既上場」かの違いといえます。
POの概要

今回のPOは、自己株式の処分と大株主(光優ホールディングス、環境科学)からの株式の売出しです。処分価格等決定日や受渡期日、処分数量等は表1のようになっています。
ディスカウント率は、「処分価格等決定日」に決まり、その日の終値から数%です。
ちなみに、直近の主なPOのディスカウント率は、JR西日本(9021) 3.01%、ゆうちょ銀行(6178) 2.08%、デンソー(3387) 3.02%となっており、ほぼほぼ2~5%程度です。
ただ、ディスカウント率が大きいPOもあり、直近ではENECHANGE(4169)の8.1%が最大です。
注意点として、どの証券会社でも購入できるわけでなく、主幹事(今回は大和証券)はじめ、引受人の証券会社で購入申込可能です。
早ければ、9/10(水)の夕刻に、会社側から売出価格等のお知らせが適時開示であります。
このブログ記事も更新しますので、チェックしてくださいね💖
処分価格等決定日 | 2025年9月10日(水)から16日(火)までの間のいずれかの日 |
受渡期日 (POで買った場合はこの日から売却可能) | 2025年9月18日(木)から24日(水)までの間のいずれかの日。 ただし、処分価格等決定日の5営業日後の日 |
①公募による自己株式の処分(一般募集) 数量 | 普通株式 14,740,000株 ※発行済み株式総数 336,096,924 株 の約4.38% |
②株式売出し(引受人の買取引受による売出し) 数量 | 普通株式 7,000,000 株 ※発行済み株式総数 336,096,924 株 の約2.08% |
③株式売出し(オーバーアロットメントによる売出し) 数量 | 普通株式 3,260,000 株(上限の数量) ※大和証券が売出す。 |
④第三者割当による自己株式の処分 数量 | 普通株式 3,260,000 株(申込のなかった株数は発行されない。) ※大和証券に割当。 |
調達資金手取り概算額(上限) | 344 億円 |
処分価格 | (決定後記載) |
ディスカウント率 | (決定後記載) |
申込単位数量 | 100 株 |
主幹事 | 大和証券 |
【資金調達及び株式売出しの目的】
- 同社は、令和3年7月9日付で東京証券取引所より、新市場区分における上場維持基準への適合状況に関する一次判定の結果、「流通株式数」「流通株式時価総額」「売買代金」の各項目についてはプライム市場の上場維持基準を充たしているが、「流通株式比率」については基準を充たしていない旨の通知を受けた。
かかる通知を受け同社は、流通株式比率に関する上場維持基準の適合に向けた課題を流通株式数の増加と認識しており、取組内容として令和3年12月2日開催の取締役会において、2024年満期ユーロ円建転換社債型新株予約権付社債(以下「転換社債型新株予約権付社債(※1)」)(社債額面金額合計額460億円)の発行を決議し、発行した。 - しかしながら、同社株価が転換社債型新株予約権付社債の転換価額を下回って推移したことから、行使期間である令和4年1月4日から令和6年12月6日までに転換社債型新株予約権付社債の転換権は行使されなかった。
そのため、転換社債型新株予約権付社債は令和6年12月20日に満期償還となり、本スキームによる流通株式比率の向上は達成できなかった。 - そこで、同社は、不適合となっている流通株式比率を充たすために、同社が自己株式として保有している同社普通株式の処分による流通株式数の増加及び成長資金の調達を検討した。
- 自己株式の処分については、1株当たり当期純利益(EPS)の希薄化を伴うため、本公開買付けにより取得した自己株式数を上限とすることが、既存株主から本スキームとの整合性の観点で納得してもらえる株式数として検討を進めており、
当該株式数の処分により、流通株式比率が35%を上回ることにより、上場維持基準の充足が見込めると想定していたが、他方で、多くの投資家と対話する中で、流動性の低さが課題であり、これは同社普通株式の流通株式数の少なさが一因であると認識していた。 - そこで、「役員以外の特別利害関係者」の所有する株式としてみなされる同社の筆頭株主(令和7年3月31日現在)である光優ホールディングス及び第3位株主(令和7年3月31日現在)である環境科学に対して、両社が所有する同社普通株式を売却することにより、流通株式数の増加による流動性の向上を図るために、本自己株式の処分と併せて、両社が所有する同社普通株式の売却の打診をしたところ、保有する一部株式について売却に応じる意向を確認した。
本自己株式の処分に併せて本売出しを実施することにより、流動性の向上、個人投資家を中心とした株主層の拡大及び多様化並びに適正な株価形成につながるものと考えている。 - また、同社は、令和7年6月に第4次中期経営計画を策定している。
その達成のための施策の一つとして、「経営基盤の強化(人的資本とガバナンスの強化)」に取り組んでいく。
人的資本は同社グループの持続的な成長を支える土台であると考え、人材育成方針である、「新しい面白さを実現するクリエイター&成長性と収益性を実現するビジネスパーソン」に基づいた、3つの人材戦略「新卒を中心とした多様な人材の確保」、「成長を実現する人材育成制度」、「安心して長く働ける環境の構築」を策定し、計画的に推進することで、社員一人ひとりの成長を促し、組織全体の競争力を高めていく。 - 上記人材戦略を踏まえ、今回の自己株式の処分による調達資金は、同社グループのエンタテインメント事業における人的資本への投資として、持続的な新規タイトル等の開発体制の維持及び拡充のための人件費に充当する予定。
- 以上から、同社は、本自己株式の処分及び本売出しの実施により、東証プライム市場の上場維持基準の充足と成長資金の調達を同時に行うことで、第4次中期経営計画の目標達成及び持続的な企業価値の向上に資すると考えている。
としています。
※1 転換社債型新株予約権付社債(CB:Convertible Bond)
一定の条件を満たすことで株式に転換できる社債であり、投資家にとっては債券の安全性と株式の収益性を兼ね備えた金融商品。
あらかじめ利率(クーポン)や償還期限が決められている他、株式に転換できる価格(転換価格)が設定されており、期間内(転換請求期間)であれば、その発行企業の株式に転換する事もできる。
【資金調達の使途】
今回の一般募集及び本件第三者割当増資による手取概算額約344億円については、
全額を令和10年3月末までに、同社グループのエンタテインメント事業における人的資本への投資として、
同社子会社である株式会社コーエーテクモゲームスへの投融資を通じて持続的な新規タイトル等の開発体制の維持及び拡充のための人件費に充当する予定です。
【自己株式の処分・株式の売出し数量/流動性】
今回の自己株式の処分数量は、発行済み株式総数の最大約5.35%(第三者割当を含む)、
株式の売出数量は、発行済み株式総数の約2.08%で、それぞれ、
- 直近の自己株式の処分をしたPOの処分株数比率(最大)は、関西電力 4.86%、アズーム 1.96%、フージャースHD 1.35%で、それらと比較すると多い数量
- 直近の株式の売出のみのPOの売出株数比率(OAを含む)は、日本ビジネスシステムズ 5.47%、TOKAIホールディングス 6.22%、福田組 8.90%で、それらと比較すると少ない数量
です。
自己株式の処分は1株利益の希薄化、株式の売出しは短期的な需給悪化につながりますので、これらの要因が短期的に株価を押し下げる可能性があります。
また、この銘柄の直近の出来高(売買が成立した株の数量)の5日平均は11,865百株、25日平均は6,521百株(9/3時点)で、流動性は高い水準です。(1日 1,000百株を平均的な水準としています。)
どんな会社?

「創造と貢献」という精神のもと、 人々の心を豊かにする「世界No.1のデジタルエンタテインメントカンパニー」を目指している会社です。
事業内容は、「エンタテインメント事業」「アミューズメント事業」及び「不動産事業」の3つがあり、それぞれ、
- エンタテインメント事業
エンタテインメントコンテンツの開発、販売 - アミューズメント事業
スロット・パチンコの液晶受託開発、関連ロイヤリティ収入、アミューズメント施設の企画開発・運営・管理 - 不動産事業
賃貸用不動産の運用・管理 - その他
ベンチャーキャピタル事業、有価証券の運用等
を行っています。
2025年3月期通期のセグメント別売上高構成比は、
- エンタテインメント事業 93.5%
- アミューズメント事業 5.0%
- 不動産事業 1.5%
- その他 0.0%
となっており、「エンタテインメント事業」が9割強を占めています。
直近の経営概況

【2026年3月期1Q(2025年4月~6月)の経営成績】
(2025年7月28日発表:日本基準(連結))
決算期 | 売上高 [億円] (前年 同期比 増減率 [%]) | 営業 利益 [億円] (同) | 経常 利益 [億円] (同) | 親会社株主 に帰属する 当期純利益 [億円] (同) |
2025年3月期 1Q累計 | 176 (△3.8) | 57.2 (△23.8) | 187 (27.3) | 136 (29.2) |
2026年3月期 1Q累計 | 148 (△15.9) | 35.7 (△37.5) | 87.6 (△53.1) | 60.7 (△55.5) |
2026年3月期 通期会社予想 | 920 (10.6) | 310 (△3.5) | 370 (△26.0) | 270 (△28.2) |
通期予想に対する 1Qの進捗率[%] | 16.0 | 11.5 | 23.7 | 22.4 |
表2のように、前年同期比 減収減益で、売上高は2割弱減、利益面は4割弱~6割弱減でした。
今期(2026年3月期)通期の業績は、前期比 増収減益で、売上高は1割増、利益面は微減~3割弱減を予想しています。
その通期予想に対する進捗率は、1Q終了時点で、売上高は2割弱でそこそこ、利益面は営業利益は1割強で遅れ気味、経常利益と純利益は2割強でそこそこです。
【2026年3月期1Qの状況、経営成績の要因】
第4次中期経営計画の初年度となる当期は、中長期での飛躍に向けた「成長のための基盤づくり」をテーマとして各種施策に取り組んでいます。
その施策の一環である人的資本への投資として、開発体制のさらなる拡充と魅力的な職場環境の実現のため、5月に横浜‧みなとみらい21地区に新オフィス用の不動産を取得しました。
当1Qはパッケージゲームでは1タイトルを発売し、スマートフォンでは同社がIP(Intellectual Property:知的財産)を許諾した2タイトルが運営を開始しました。
一方で、リピート販売と既存の運営タイトルが中心であり新規タイトルの寄与が限定的であったことや、
積極的な採用、ベースアップなど成長投資の拡大に伴い人件費が増加したこと等により、売上高、営業利益は前年同期を下回りました。
また、営業外収支は金融市場の動向を注視しながら運用を行い、受取利息等を計上しました。
これらの結果、表2の数値の前年同期比 減収減益となりました。
【セグメント別の業績】
セグメント別の業績は表3です。
主力の「エンタテインメント事業」は前年同期比 減収減益、
「アミューズメント事業」と「不動産事業」は増収増益、
「その他」は、売上高は変わらずで赤字幅拡大となっています。
セグメント | 売上高 [百万円] (前年 同期比 増減率 [%]) | セグメント 利益 [百万円] (同) |
エンタテインメント | 13,431 (△18.9) | 3,706 (△34.9) |
アミューズメント | 1,054 (39.2) | 103 (6.8倍) |
不動産 | 312 (11.4) | 75 (15.3) |
その他 | 2 (変わらず) | △310 (赤字幅 拡大) |
セグメント別の状況は以下です。
<エンタテインメント事業>
「シブサワ・コウ」ブランドでは、6月に『信長の野望・新生 with パワーアップキット Complete Edition』(Nintendo Switch 2、PS5用)を発売しました。
スマートフォンタイトルでは、『三國志 覇道』『信長の野望 覇道』が引き続き収益に貢献しました。
「ω-Force」ブランドでは、ハンティングアクション『WILD HEARTS S』(Nintendo Switch 2 用)を発表し、7月に発売しました。
「Team NINJA」ブランドでは、『NINJA GAIDEN 4』(発売元:Xbox Game Studios)(Xbox Game Pass、Xbox Series X|S、Windows(MS Store、Steam)、PS5用)の発売を10月に予定しています。
また、全世界累計出荷本数800万本を突破したダーク戦国アクションRPG「仁王」シリーズの最新作、『仁王3』(PS5、Windows(Steam)用)が2026年初頭の発売予定です。
「ガスト」ブランドでは、『紅の錬金術士と白の守護者 ~レスレリアーナのアトリエ~』(PS5、PS4、Nintendo Switch、Windows(Steam)用)が9月に発売予定です。
「ルビーパーティー」ブランドでは、『遙かなる時空の中で』25周年記念キャンペーンとしてグッズ販売等を行いました。
「midas」ブランドでは、位置情報ゲーム『信長の野望 出陣』でコラボご当地イベント、ゲーム内キャンペーン等を実施しました。
「AAAスタジオ」では、『ゼルダ無双 封印戦記』(発売元:任天堂)を今冬発売に向けて開発中です。
IP事業においては、同社がIPを許諾した2タイトルがサービスを開始し、『三国志・戦略版』(国内では『三國志 真戦』)は引き続き収益に寄与しました。
<アミューズメント事業>
アミューズメント施設では新店1店舗を出店するとともに、既存店売上高が好調に推移しました。
スロット・パチンコでは液晶ソフト受託開発に取り組み、開発受託2タイトルが稼働を開始しました。
<不動産事業>
ライブハウス型ホールKT Zepp Yokohamaは、引き続き高い稼働率となりました。
<その他事業>
ベンチャーキャピタル事業において、ファンドの管理費用が発生しました。
【財政面の状況】
<自己資本比率>(自己資本(総資本-他人資本)÷総資産)×100)
2026年3月期1Q末時点で76.5%と前期末(89.9%)から13.4ポイント低下しています。
主な負債と純資産の、前期末比の増減は以下となっています。(単位:億円)
- 負債 +358
- 流動負債 +329
(内訳)短期借入金 +350、未払金 +37.5、未払法人税等 △48.7
- 固定負債 +29.4
(内訳)繰延税金負債 +29.8
- 流動負債 +329
- 純資産 △23.0
- 株主資本 △127
(内訳)利益剰余金 △128 - その他の包括利益累計額 +104
(内訳)その他有価証券評価差額金 +101
- 株主資本 △127
自己資本比率の数値としては問題ないレベルです。(20%以上を安全圏内としています。)
【今期(2026年3月期)業績の見通し】
同社グループは、コーエーテクモの精神「創造と貢献 新しい価値を創造して、社会に貢献する」のもと、ビジョン「世界No.1のデジタルエンタテインメントカンパニー」の実現に向けて、挑戦を続けていく方針です。
中長期では世界のデジタルエンタテインメント企業の中で、営業利益額世界トップ10となることを目指しています。
また、コーエーテクモグループの存在意義、ビジョン、価値観、経営基本方針、経営戦略を改めて体系化し、持続的な成長及び企業価値向上のために特に重点的に取り組むべき課題を特定しました。
2025年度より開始する3カ年の第4次中期経営計画は、中長期での飛躍に向けた「成長のための基盤づくり」をテーマとして、新たな経営体制で臨んでいます。
パイプラインの数と質、販売力、コスト効率のそれぞれの成長を4つの目標として掲げ、
各目標に向け「経営基盤強化(人的資本・ガバナンス)」「事業戦略」「キャッシュアロケーション(成長投資・利益還元)」を3つの柱として重点的に取り組む方針です。
「経営基盤強化(人的資本・ガバナンス)」においては、人材育成方針として「クリエイティブ&ビジネス」を掲げ、人材戦略を実行しています。
ガバナンスでは、2025年6月に、同社グループの業務執行の最高責任者として新たに社長執行役員CEOを設けるとともに、取締役会の構成を見直すことで経営の監督と執行の分離を進めています。
「事業戦略」においては、新規IP・ジャンルへのチャレンジによる成長と既存IPと協業による安定的な成長を実現し、成長性と収益性を両立した確度の高い事業ポートフォリオを構築しています。
各セグメントの方針は以下となっています。
<エンタテインメント事業>
- コンソール・PC分野、オンライン・モバイル分野、ゲームIPの多方面展開への積極的な投資を行う。
- コーエーテクモのIPを作る力・売る力・生かす力・支える力を強化することで、世界中のユーザーにとって魅力ある高い品質のIPを創造し、その価値を最大化する。
<アミューズメント事業>
- スロット・パチンコ、アミューズメント施設それぞれの分野において、既存事業の改善と新規施策を進め、持続的な成長を目指す。
<不動産事業>
- 物件管理の向上に取り組み、ライブハウス型ホールKT Zepp Yokohama等の高稼動率維持によって安定収益を実現する。
営業外収支では、金融環境の変化に対応しながら安定した運用を行っていく方針です。
2025年度からは、新しく設立した株式会社コーエーテクモコーポレートファイナンスにグループファイナンス機能を集約し、資金の効率性を高めていく計画です。
「キャッシュアロケーション(成長投資・利益還元)」においては、人的資本を中心とする成長投資を拡大することで営業利益目標を達成し、
その成果によってさらなる成長投資と株主還元による企業価値向上の好循環を実現することを目指しています。
利益還元の基本方針は、「配当金に自社株買付けを加えた連結年間総配分性向50%、あるいは1株当たり年間配当50円」とし、営業利益成長による配当総額の伸長を目指しています。
これらにより、第4次中期経営計画では、3カ年累計の営業利益1,000億円以上を計画するとともに、第3次中期経営計画の目標であった単年度の営業利益400億円の期間中の達成に再チャレンジしています。
2026年3月期の業績は、複数の新作タイトルの発売を予定しているものの、中長期に向けた開発投資が先行することや昨今の金融資本市場の状況を踏まえ、表2の数値の前期比 減収減益を見込んでいます。
なお、2025年年4月30日に公表された2026年3月期通期の業績予想に変更はありませんでした。
株価指標と動向

【2025/9/3(水)終値時点の数値】
- 株価:1,930円
- 時価総額:6,486億円
- PER(株価収益率(予想)):23.2倍
PERは、同業で時価総額が近い、バンダイナムコHD(7832) 31.1倍、コナミグループ(9766) 36.5倍、カプコン(9697) 32.4倍と比較すると、低い水準です。
- PBR(株価純資産倍率):3.23倍
- 信用倍率(信用買い残÷信用売り残):5.91倍
- 年間配当金(予想):43円(年1回 3月)、利回り:2.22%(配当性向 50.3%)
配当利回りは2.22%で、東証プライムの単純平均2.49%(9/3時点) と比較するとやや低い水準です。
表4のように、直近5年間の配当金は、1株当たり45~60円で推移しており、
配当性向は、50%程度で一定です。
決算期 | 1株当たり 年間配当金 [円] | 配当性向 [%] |
2021年3月期 | 45 | 50.3 |
2022年3月期 | 54 | 50.3 |
2023年3月期 | 50 | 50.9 |
2024年3月期 | 54 | 50.4 |
2025年3月期 | 60 | 50.4 |
この会社は、
株主に対する利益還元を経営上の最重要政策の一つとして位置づけています。
利益還元の基本方針としては、「配当金に自社株買付けを加えた連結年間総配分性向50%、あるいは1株当たり年間配当50円」としています。
【株主優待】
この会社は株主優待があり、毎年3月末に、100株以上保有の株主は保有株数に応じて、自社選定の新作商品と発売済み商品(図1(イメージ)参照)を40%引きで購入可能です。
- 100株以上:新作1本、発売済み3本
- 500株以上:新作2本、発売済み4本
- 1,000株以上:新作3本、発売済み5本
- 5,000株以上:新作4本、発売済み10本
100株保有の場合、配当金+株主優待(新作10,000円の4割引き×1本(4,000円相当)、発売済み8,000円4割引き×3本(3,200円×3=9,600円相当)で合わせて13,600円相当)で利回りは9.27%となります。
ゲーム好きの個人投資家にとってうれしい内容ですね!
【直近の株価動向】
<週足チャート(直近2年間)>
2024年5月に安値(1,220.5円)をつけた後は、高値切り上げ安値切り上げの上昇トレンドで推移し、翌年5月に高値(2544.5円)をつけました。
しかし、その後は下落基調で推移し、直近では全ての移動平均線の下で推移しています。
<日足チャート(直近3か月間)>
6月に高値(2,409.5円)をつけた後は、高値切り下げ安値切り下げの下落基調で推移しています。
そして、今回のPO発表の翌営業日(9/3)は、POによる1株利益の希薄化と短期的な需給悪化懸念により売られると思いきや、一旦安値をつけた後は上昇し、前日比 40.5円高(+2.14%)で終了しました。
今後の株価は、この日つけた安値(1,848.5円)を割り込まず、下げ止まって上昇に転じていくのか、割り込んで下値模索を継続するのか、要注目です。
まとめ

【業績】
- 今期(2026年3月期)1Qの業績は、パッケージゲームでは1タイトルを発売し、スマートフォンでは同社がIPを許諾した2タイトルが運営を開始したが、
リピート販売と既存の運営タイトルが中心であり新規タイトルの寄与が限定的であったことや、積極的な採用、ベースアップなど成長投資の拡大に伴い人件費が増加したこと等により、
前年同期比 減収減益で、売上高は2割弱減、利益面は4割弱~6割弱減。 - 今期通期予想は、複数の新作タイトルの発売を予定しているものの、中長期に向けた開発投資が先行することや昨今の金融資本市場の状況を踏まえ、
前期比 増収減益で、売上高は1割増、利益面は微減~3割弱減を見込む。 - その通期予想に対する進捗率は1Q終了時点で、売上高は2割弱でそこそこ、利益面は営業利益は1割強で遅れ気味、経常利益と純利益は2割強でそこそこ。
【株主還元】
- 配当利回りは2.22%(9/3時点)で、東証プライムの単純平均 2.49%(9/3時点)と比較するとやや低い水準。
- 直近5年間の配当金は、年間1株あたり45~60円で推移しており、
配当性向は、50%程度で一定。 - 会社の還元方針は、「配当金に自社株買付けを加えた連結年間総配分性向50%、あるいは1株当たり年間配当50円」としている。
- 株主優待があり、毎年3月末に、100株以上保有の株主は保有株数に応じて、自社選定の新作商品と発売済み商品を40%引きで購入可能。
100株保有の場合、配当金+株主優待(新作商品、発売済み商品合わせて約13,600円相当の値引き)で利回りは9.27%となる。
【流動性・新株式の発行株数】
- 今回の自己株式の処分数量は発行済み株式総数の最大約5.35%、株式の売出し数量は約2.08%(OAを含む)で、それぞれ、
- 直近の自己株式の処分をしたPOの処分株数比率(最大)(関西電力、アズーム、フージャースHD)と比較すると多い数量
- 直近の株式の売出のみのPOの売出株数比率(OAを含む)(日本ビジネスシステムズ、TOKAIホールディングス、福田組)と比較すると少ない数量
自己株式の処分による1株利益の希薄化と株式の売出しによる短期的な需給悪化懸念が、株価を押し下げる要因。
- 直近の出来高の5日平均は11,865百株、25日平均は6,521百株(9/3時点)で、流動性は高い水準。
【株価モメンタム】
- 週足ベースの株価は、2024年5月に安値(1,220.5円)をつけた後は、高値切り上げ安値切り上げの上昇トレンドで推移し、翌年5月に高値(2544.5円)をつけた。
しかし、その後は下落基調で推移し、直近では全ての移動平均線の下で推移している。 - 直近の株価は、6月に高値(2,409.5円)をつけた後は、高値切り下げ安値切り下げの下落基調で推移している。
そして、今回のPO発表の翌営業日(9/3)は、POによる1株利益の希薄化と短期的な需給悪化懸念により売られると思いきや、一旦安値をつけた後は上昇し、前日比 40.5円高(+2.14%)で終了。 - 今後の株価は、この日つけた安値(1,848.5円)を割り込まず、下げ止まって上昇に転じていくのか、割り込んで下値模索を継続するのか要注目。
以上のことから、
レベル (⭐(最低)~ ⭐⭐⭐⭐⭐(最高)) | |
業績 | ⭐⭐⭐ |
株主還元 (配当、株主優待等) | ⭐⭐⭐ |
株価モメンタム | ⭐⭐ |
流動性 | ⭐⭐⭐⭐ |
自己株式の処分数量 株式の売出し数量 | ⭐⭐⭐ |
総合判定 | ⭐⭐⭐ (中立) |
と判断しました。
最後までご覧いただき、ありがとうございました。
※株式投資の実際の売買は、自己判断、自己責任でお願いします。