【立会外分売は買いか？】大村紙業(3953) ＜2025年３月実施＞

こんにちは！

直近で立会外分売の実施を発表した銘柄に関して、分売で買った場合、利益を得ることができるのか？直近の経営状況や客観的な指標、株価モメンタム等を踏まえ、総合的に分析しました。

今回は、東証スタンダードからパルプ・紙業種の大村紙業です。

最後までお付き合いいただけるとうれしいです！

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• 立会外分売とは？

新規株主を増やすことを目的として、上場会社が大株主である銀行やオーナー経営者などの保有株を小口に分けて、証券取引所の立会外で不特定多数に売り出すこと。
取引開始前など取引時間外（＝立会外）に売り出されることからこのように呼ばれる。

• 立会外分売の魅力
  • 前日終値より安く購入可能
    • 立会外分配における買付側の購入価格は確定値段（1本値）で、分売実施日の前日終値よりディスカウントされるのが一般的。過去の例では、約3～5％のディスカウントで実施されています。
      （ディスカウント率は取引所の規定により最大10％）
  • 買付手数料はかからない
    • 立会外分売による買付は、通常の立会時間内の取引と種類が異なるため一般的に手数料はかからない。（売却時には通常の手数料が発生）
  • 即日売却OK
    • 立会外分売で取得した株式は、実施日（買付当日）から売却することが可能
• デメリット：抽選で外れることもある
  • 買い申し込みが多いと、抽選ではずれて購入できないこともある。

立会外分売の概要

実施日や株数は以下です。販売価格は、会社側から実施日前日に発表があります。

分売数量は決まっていて、100株単位で最大5,000株まで購入できます。

早ければ、３/17(月)の夕刻に、会社側からの適時開示で分売値段のお知らせがあります。このブログでも追記しますので、チェックしてくださいね💖

【立会外分売実施の目的】

• スタンダード市場における流通株式時価総額の項目に関する基準を充たしていないため、当該基準の達成に資するべく、同社株式の分布状況の改善や流動性の向上を図る。

としています。

2024年６月に開示された、IR資料「上場維持基準の適合に向けた計画に基づく進捗状況について」によると、

同社は、2024 年３月末時点において、東証スタンダードの上場維持基準の指標の内、「流通株式時価総額」の基準が10億円以上のところ9.9億円でこの基準を満たしておらず、

各種取組みを行い、2025年３月末までに上場維持基準の適合を目指すとしています。

今回の立会外分売で、流通株式時価増額が約1.5億円増加（885円(3/11の終値)×17.7万株）しますので、「流通株式時価総額」の基準を充たす見込みです。

今回の分売数量は、発行済み株式総数の約4.96%と多い数量（※１）です。

※１：一概に言えませんが、目安として、５%以上：かなり多い、３%以上５％未満：多い、１％以上３％未満：ほどほど、１％未満：少ないとしています。

また、この銘柄の流動性は、直近の出来高（売買が成立した株式の数量）の５日平均は134百株、25日平均は111百株(３/11時点)で、流動性は低い水準です。

そして、今回の分売数量(1,770百株)は、１日の出来高(25日平均：134百株)の約13倍で、この銘柄の平均的な出来高からすると分売数量は多めといえます。

【過去の立会外分売の結果】

ご参考までに、この会社は、2024年３月にも立会外分売を実施しており、その時の分売値段と分売日以降の株価の動きは、表２のようになっています。（※売買手数料は考慮していません）

分売値段で購入し、分売日の寄付又は大引、分売日１週間後の寄付で売却した場合、全ての段階で損益プラスの結果でした。

その時の地合いの良し悪しも影響してくるとは思いますが、ご参考まで。

【ご参考】

前回(2024年３月)の記事：【立会外分売は買いか？】大村紙業(3953)

前回の振り返り：【結果検証：立会外分売は買いか？】ＲＩＺＡＰグループ(2928)、大村紙業(3953)、川崎設備工業(1777)

どんな会社？

段ボール製品（シート・ケース・段ボールパレット）、ラベル製品等の紙製の容器・パッケージ、梱包資材等の製造販売を行っている会社です。

顧客の求めるイメージに近い商品を提供するため、マーケティング・デザイン・包装設計段階から企画・提案し、ノウハウを活かしたサービスで顧客のニーズに応えています。

同社は、紙器梱包資材等の製造販売の単一セグメントで、

2024年３月期通期の製品・サービス毎の売上高構成比は、

• 段ボールシート 18.1%
• 段ボールケース 64.4%
• ラベル 3.3%
• その他（主に包装資材） 14.2%

となっており、「段ボールケース」が６割強を占めています。

直近の経営概況

【2025年３月期３Q（2024年４月～12月）の経営成績】

（2025年２月13日発表：日本基準（非連結））

表３の通り、前年同期比 増収減益で、売上高は微増、利益面は２割強～３割弱減でした。

今期（2025年３月期）通期の業績は、前期比 増収増益で、売上高は微増、利益面は微増～１割弱増を予想しています。

その通期予想に対する進捗率は３Q終了時点で、売上高は８割弱でそこそこですが、利益面は５割強で遅れ気味です。

【2025年３月期３Qの状況、経営成績の要因】

当３Q累計期間におけるわが国経済は、雇用・所得環境により個人消費の改善やインバウンド需要の拡大により緩やかな回復基調が持続しているものの、

原材料価格の高止まり、資源価格及び人件費や運送費をはじめとするさまざまな価格の上昇により依然として厳しい状況が続いています。

このような状況下において、同社の生産量は、段ボールシート38百万㎡(前年同四半期比3.3％増)、段ボールケース27百万㎡(同8.1％増)となりました。

【販売品目別の売上高】

販売品目別の売上高は、表４です。

主力の「段ボールケース」と「ラベル」「その他」は前年同期比増収、

「段ボールシート」は減収、

となっています。

【財政面の状況】

＜自己資本比率＞（自己資本（総資本－他人資本）÷総資産）×100）

2025年３月期３Q末時点で71.7%と前期末(65.7%)から6.0ポイント増加しました。

主な負債と純資産の、前期末比の増減は以下となっています。（単位：百万円）

• 負債 △635
  • 流動負債 △601
    （内訳）支払手形及び買掛金 △549、未払法人税等 △74.6
  • 固定負債 △34.1
    （内訳）役員退職慰労引当金 +13.0、リース債務 △38.6
• 純資産 +33.3
  • 株主資本 +24.0
    （内訳）利益剰余金 +24.0
  • 評価・換算差額等 +9.2
    （内訳）その他有価証券評価差額金 +9.2

自己資本比率の数値としては問題ないレベルです。（20%以上を安全圏内としています。）

【今期（2025年３月期通期）業績の見通し】

経済活動の正常化が進み、緩やかに景気の回復が継続していますが、

一方で、原材料費の高止まり、長引くロシア・ウクライナ情勢や中東地域をめぐる情勢や円安の進行等の影響により先行きが不透明な状況が続いています。

この様な状況のもと、同社は、小ロット・多品種・短納期を武器に、個性化・多様化している顧客の段ボールニーズに対していち早く・的確に対応し、より充実したサービスを提供していくことを第一に考えています。

この様な見通しのもと、2025年３月期の通期業績予想は、表３の前期比増収増益を見込んでいます。

なお、今３Q決算発表時には、2024年５月14日の「2024年３月期決算短信［日本基準］（非連結）」で公表された通期業績予想から変更はありませんでした。

株価指標と動向

【2025／３／11(火)終値時点の数値】

• 株価：885円
• 時価総額：31.5億円
• PER（株価収益率（今期予想））：15.0倍

PERは、同業で時価総額が近い、ダイナパック(3947) 9.7倍、中央紙器工業(3952) 59.3倍と比較すると、中間的な水準です。

• PBR（株価純資産倍率）：0.62倍
• 信用倍率（信用買い残÷信用売り残）：ー（信用売り残無し）
• 年間配当金（会社予想）：50円（年１回 ３月、(内)記念配当20円）、利回り：5.64%（配当性向 68.2%）

配当利回りは5.64%で、東証スタンダードの単純平均2.57%(３/10時点) と比較すると２倍以上の高い水準です。

表５のように、直近５年間の配当金は、2023年３月期までは年間１株あたり10円で一定でしたが、配当方針を変更し、前期（2024年３月期）は久々に増配しました。

配当性向は、30～140%で幅があります。

この会社は、

安定的な経営基盤の確立に努めるとともに内部留保を充実させ、配当については１株当たり年間配当金の下限を30円とした安定配当の維持を基本方針としています。

また、期末配当の年１回の剰余金の配当を行うことを基本方針としています。

配当金の下限が設定されていますので、株主にとって安心材料ですね！

【直近の株価動向】

＜週足チャート（直近２年間）＞

2023年５月に安値(540円)をつけた後はしばらくヨコヨコの展開でしたが、同年12月に急上昇しはじめ、翌年１月にちょうど安値の２倍の高値(1,080円)をつけました。

しかしその後はすぐに急落し、700～900円程度のレンジ内で推移しています。

＜日足チャート（直近３か月間）＞

昨年12月中旬までは700円近辺のヨコヨコで推移していましたが、

12/12に今期の配当金を創業60周年記念配当を１株当たり20円実施するとして、普通配当を合わせて50円に修正すると発表があり、その翌営業日に寄らずのストップ高で急騰しました。

そして直近では、850～900円程度のレンジ内での推移しており、

今回の立会外分売発表の翌営業日(3/11)は、前日比 ５円安(-0.56%)と小幅に下落しました。

今後の株価は、75日移動平均線（青線）や節目の800円程度で下げ止まり、ヨコヨコから上昇に転じていくのか、割り込んで下値模索を継続するのか、要注目です。

まとめ

【業績】

• 今期（2025年３月期）３Qの業績は、売上高は主力の「段ボールケース」を中心に伸びたが、原材料価格の高止まりや資源価格、人件費等の上昇があり、
  前期比 増収減益で、売上高は微増、利益面は２割強～３割弱減。
• 今期業績予想は、個性化・多様化している顧客の段ボールニーズに対していち早く・的確に対応し、より充実したサービスを提供し、
  前期比 増収増益で、売上高は微増、利益面は微増～１割弱増を見込む。
• この通期業績予想に対する進捗率は、３Q終了時点で、売上高は８割弱でそこそこですが、利益面は５割強で遅れ気味。

【株主還元】

• 配当利回り（予想）は5.64%(３/11時点)で、東証スタンダードの単純平均 2.57%(３/10時点) と比較すると２倍以上の高い水準。
• 昨年12月に、今期の配当金を創業60周年記念配当を１株当たり20円実施するとして、普通配当を合わせて50円（20円増配）に修正している。
• 直近５年間の配当金は、2023年３月期までは年間１株あたり10円で一定だったが、配当方針を変更し、前期（2024年３月期）は久々に増配した。
  配当性向は、30～140%で幅がある。

【流動性・分売数量】

• 直近の出来高の５日平均は134百株、25日平均は111百株（３/11時点）で、流動性は低い水準。
• 分売数量は、発行済み株式総数の約4.96%と多い数量で、
  この銘柄の１日の平均的な出来高の約13倍であり、それからすると多めの数量。

【株価モメンタム】

• 週足ベースの株価は、2023年５月に安値(540円)をつけた後はしばらくヨコヨコの展開だったが、同年12月に急上昇しはじめ、翌年１月にちょうど安値の２倍の高値(1,080円)をつけた。
  しかしその後はすぐに急落し、700～900円程度のレンジ内で推移。
• 直近の株価は、昨年12月中旬までは700円近辺のヨコヨコで推移したが、12/12に今期の配当金を創業60周年記念配当を１株当たり20円実施するとして、普通配当を合わせて50円に修正すると発表があり、その翌営業日に寄らずのストップ高で急騰。
  そして直近では、850～900円程度のレンジ内での推移しており、今回の立会外分売発表の翌営業日(3/11)は、前日比 ５円安(-0.56%)と小幅な下落。
• 今後の株価は、75日移動平均線や節目の800円程度で下げ止まり、ヨコヨコから上昇に転じていくのか、割り込んで下値模索を継続するのか要注目。

以上のことから、

と判断しました。

最後までご覧いただき、ありがとうございました。

※株式投資の実際の売買は、自己判断、自己責任でお願いします。