【立会外分売は買いか?】フォーバルテレコム(9445)

立会外分売
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こんにちは!

直近で立会外分売の実施を発表した銘柄に関して、分売で買った場合、利益を得ることができるのか?直近の経営状況や客観的な指標、株価モメンタム等を踏まえ、総合的に分析しました。

今回は、東証スタンダードから情報・通信業種のフォーバルテレコムです。

最後までお付き合いいただけるとうれしいです!

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  • 立会外分売とは?
新規株主を増やすことを目的として、上場会社が大株主である銀行やオーナー経営者などの保有株を小口に分けて、証券取引所の立会外で不特定多数に売り出すこと。
取引開始前など取引時間外(=立会外)に売り出されることからこのように呼ばれる。
  • 立会外分売の魅力
    • 前日終値より安く購入可能
      • 立会外分配における買付側の購入価格は確定値段(1本値)で、分売実施日の前日終値よりディスカウントされるのが一般的。過去の例では、約3~5%のディスカウントで実施されています。
        (ディスカウント率は取引所の規定により最大10%)
    • 買付手数料はかからない
      • 立会外分売による買付は、通常の立会時間内の取引と種類が異なるため一般的に手数料はかからない。(売却時には通常の手数料が発生)
    • 即日売却OK
      • 立会外分売で取得した株式は、実施日(買付当日)から売却することが可能
  • デメリット:抽選で外れることもある
    • 買い申し込みが多いと、抽選ではずれて購入できないこともある。

立会外分売の概要

まとめ

実施日や株数は以下です。実施予定日は幅があり、実際の実施日と分売値段は、会社側から実施日前日に発表があります。

分売数量は決まっていて、100株単位で最大10,000株まで購入できます。

前日の9/10(火)の夕刻に、会社側からの適時開示で分売値段のお知らせがあります。このブログでも追記しますので、チェックしてくださいね💖

分売予定日2024 年9月 11 日(水)
分売数量830,000
(発行済み株式総数 16,757,700株の約4.95%
分売値段409 円
(9/10決定:終値 422 円)
ディスカウント率3.08 %
(9/10決定)
申込単位数量100 株
申込上限数量10,000 株
表1:フォーバルテレコム(9445) 立会外分売概要

【立会外分売実施の目的】

  • 東証スタンダード市場の上場維持基準適合のため、流通株式比率の向上を図るため。

としています。

今回の分売数量は、発行済み株式総数の約4.95%多い数量(※1)です。

※1:一概に言えませんが、目安として、5%以上:かなり多い、3%以上5%未満:多い、1%以上3%未満:ほどほど、1%未満:少ないとしています。

同社は、2024年5月31日に開示されたIR資料「上場維持基準の適合に向けた計画に基づく進捗状況について」によると、

東証スタンダード市場の上場維持基準の内、「流通株式比率」(基準:25%以上)2024 年3 月末時点で21.2%で、基準を充たしていませんが、

今回の立会外分売の実施により、基準を充たし上場維持基準に適合する見込みです。

また、この銘柄の直近の出来高(売買が成立した株式の数量)の5日平均は1,119百株、25日平均は277百株(9/5時点)で、流動性は低い水準です。(1,000百株を平均水準としています)

そして、今回の分売数量(8,300百株)は、1日の出来高(25日平均:277百株)の約30倍で、この銘柄の通常の出来高からすると分売数量は多めといえます。

どんな会社?

「“fitコール”(フィットコール)」という自社ブランドにより、顧客と直接割引電話サービス契約を締結し、ワンストップショッピング・ワンビリングで通信サービスを提供している会社です。

事業セグメントは、「IP & Mobileソリューション・ビジネス」「ユーティリティ・ビジネス」「ドキュメントソリューション・ビジネス」及び「コンサルティング・ビジネス」の4つがあり、それぞれ、

  • IP & Mobileソリューション・ビジネス
    VoIP(インターネット上での音声通信)サービス、モバイルサービス等の情報通信サービス全般を提供
  • ユーティリティ・ビジネス
    電力の小売
  • ドキュメントソリューション・ビジネス
    普通印刷・商業印刷物の企画・編集・制作
  • コンサルティング・ビジネス
    経営支援コンサルティング、保険サービス及びセキュリティサービス等

を行っています。

2024年3月期通期のセグメント別売上高構成比は、

  • IP & Mobileソリューション・ビジネス 47.0%
  • ユーティリティ・ビジネス 34.2%
  • ドキュメントソリューション・ビジネス 5.2%
  • コンサルティング・ビジネス 13.5%

となっており、「IP & Mobileソリューション・ビジネス」が5割弱「ユーティリティ・ビジネス」が3割強を占めています。

直近の経営概況

経営状況

【2025年3月期1Q(2024年4月~6月)の経営成績】

(日本基準(連結):2024年8月9日発表)

決算期売上高
[億円]
(前年
同期比
[%])
営業
利益
[百万円]
(同)
経常
利益
[百万円]
(同)
親会社株主に
帰属する
当期純利益

[百万円]
(同)
2024年3月期
1Q累計
52.3
(△5.4)
183
(89.9)
168
(50.1)
100
(61.3)
2025年3月期
1Q累計
55.9
(7.0)
130
(△28.9)
135
(△19.3)
73
(△26.6)
2025年3月期
通期会社予想
248
(7.3)
1,100
(7.4)
1,100
(9.1)
700
(△6.7)
通期予想に対する
1Qの進捗率[%]
22.511.812.210.4
表2:フォーバルテレコム 2025年3月期1Q経営成績と2025年3月期通期予想

表2の通り、前年同期比 増収減益で、売上高は1割弱増利益面は2~3割弱減でした。

2025年3月期通期の業績予想は、前期比 増収増益で、売上高は1割弱増、利益面は営業利益と経常利益は1割弱増ですが、純利益は1割弱減を見込んでいます。

そして、その通期予想に対する進捗率は1Q終了時点で、売上高は2割強でそこそこ利益面は1割強で遅れ気味です。

【2025年3月期1Qの状況、経営成績の要因】

同社グループが中核的な事業領域とする情報通信分野では、移動系超高速ブロードバンド接続サービスの契約数が急拡大し、ビジネスにおける効果的な活用や急増したデータ量への対応・セキュリティ対策が課題となっています。

このような環境の下で、同社グループは、法人向けVoIPサービス、法人向けFMC(Fixed Mobile Convergence)サービス、個人向けインターネットサービス等

「IP & Mobileソリューション・ビジネス」と位置付ける利便性の高いサービスの拡販を中心に、中小法人及びコンシューマ向けの各種サービスを提供しています。

具体的には、同社及び同社連結子会社である㈱FISソリューションズにおいては、光回線サービス「iSmartひかり」、法人を対象とした光ファイバー対応IP電話「スマートひかり」及びスマートフォンを利用したFMCサービス「どこでもホン」

並びに個人を対象としたISPサービス「iSmart接続-Fひかり」を中心に、合わせて情報通信機器等を提供しています。

また、同社では登録小売電気事業者として法人顧客に電力サービス「Elenova」を提供しており、このサービスを「ユーティリティ・ビジネス」と位置付けています。

同社連結子会社である㈱トライ・エックス及びタクトシステム㈱においては、法人顧客からのニーズが強い「ドキュメントソリューション・ビジネス」を提供しており、上流工程から最終工程まで一貫したサービスの提供が可能となっています。

また、同社及び同社連結子会社である㈱保険ステーションは、主に法人顧客に対し「コンサルティング・ビジネス」を提供しています。

これらにより、当1Q連結累計期間の経営成績は、売上高が55.9億円(前年同四半期比7.0%増となりました。

これは主に「ユーティリティ・ビジネス」において、契約件数が堅調に伸びた事によるものです。

一方利益面では、「ドキュメントソリューション・ビジネス」及び「コンサルティング・ビジネス」の販売計画の遅れにより、営業利益が130百万円(同28.9%減経常利益が135百万円(同19.3%減親会社株主に帰属する四半期純利益が73百万円(同26.6%減となりました。

【セグメント別の業績】

セグメント別の業績は、表3の結果になりました。

主力の「IP & Mobileソリューション」前年同期比 減収減益

「ユーティリティ」増収増益

「ドキュメント」減収赤字幅拡大

「コンサルティング」増収減益でした。

セグメント売上高
[百万円]
(前年
同期比
増減率
[%])
セグメント
利益
[百万円]
(同)
IP & Mobile
ソリューション
2,611
(△4.9)
316
(△0.6)
ユーティリティ1,915
(34.5)
127
(40.0)
ドキュメント295
(△2.3)
△16
(赤字幅
拡大)
コンサルティング777
(2.5)

(△78.2)
表3:2025年3月期1Q セグメント別業績

セグメント別の状況は以下です。

IP & Mobileソリューション・ビジネス

VoIPサービス、モバイルサービス等の情報通信サービス全般を提供しており、

情報通信機器の販売計画の遅れにより、前年同期比 減収減益となりました。

ユーティリティ・ビジネス

電力を提供しており、

契約件数の堅調な伸びにより、前年同期比 増収増益となりました。

ドキュメント・ビジネス

普通印刷、印刷物のプランニング・デザイン等を行っており、

大口顧客並びに新規商材の販売計画の遅れにより、減収赤字幅拡大となりました。

コンサルティング・ビジネス

経営支援コンサルティング、保険サービス及びセキュリティサービス等を行っており、

クラウドサービスの伸長により、前年同期比 増収となったものの、

保険サービスとセキュリティサービスの販売計画の遅れにより、減益となりました。

【財政面の状況】

自己資本比率>(自己資本(総資本-他人資本)÷総資産)×100

2025年3月期1Q末時点で28.1%と前期末(28.2%)から0.1ポイント低下しました。

これは主に、それぞれ前期末比で、

  • 負債
    • 短期借入金150百万円減少未払金67.6百万円減少し、流動負債が合計で243百万円減少
    • 退職給付に係る負債4.9百万円増加し、固定負債が合計で4.8百万円増加
  • 純資産
    • 利益剰余金110百万円減少(剰余金の配当により)し、株主資本が合計で110百万円減少

したことによるものです。

自己資本比率の数値としては危険水域に近いレベルです。(20%以上を安全圏内としています。)

【今期(2025年3月期)通期業績の見通し】

前期(自 2023年4月1日 至 2024年3月31日)連結業績は、「ユーティリティ・ビジネス」の電力小売事業における仕入契約と需給約款の改定及び契約数の増進等により、経常利益は過去最高値となりました。

2025年3月期の連結業績は、これに加え「ドキュメントソリューション・ビジネス」と「コンサルティング・ビジネス」の底上げを見通し、

通期の売上高248億円営業利益11億円経常利益11億円親会社株主に帰属する当期純利益7億円前期比 増収増益を見込んでいます。

なお、今1Q決算発表時には、2024年5月13日の決算短信で公表された通期連結業績予想に変更はありません

株価指標と動向

株価指標

【2024/9/5(木)終値時点の数値】

  • 株価:435円
  • 時価総額:72.8億円
  • PER(株価収益率(予想)):10.4倍

PERは、同業で時価総額が近い、日本通信(9424) 34.5倍、フォーバル(8275) 17.5倍と比較すると、低い水準です。

  • PBR(株価純資産倍率):2.50倍
  • 信用倍率(信用買い残÷信用売り残):28.9倍
  • 年間配当金(会社予想):20円(年2回 9月 8円、3月 12円)、利回り:4.59%(配当性向 47.9%)

配当利回り4.59%で、東証スタンダードの単純平均2.45%(9/4時点) と比較すると高い水準です。

表4のように、直近5年間の配当金は、年間1株あたり17~18円で推移しており、ほぼ一定です。

配当性向は、最終赤字の年を除き、30%台~60%台で推移しています。

決算期1株当たり
年間配当金
[円]
配当性向
[%]
2020年3月期17
(最終赤字)
2021年3月期1762.2
2022年3月期1732.7
2023年3月期1775.2
2024年3月期1840.2
表4:フォーバルテレコム 年間配当金推移

この会社は、

業績に連動した利益還元として連結配当性向50%程度を目安に、

事業の安定と伸長に要するシステム投資や販売促進に充てる内部留保、財務の健全性の担保、特別損益に拠らない事業の実力値を配慮の上、配当を決定する方針です。

【直近の株価動向】

<週足チャート(直近2年間)>

2022年11月に安値(314円)をつけた後は、右肩上がりの上昇トレンドで推移し、

2024年7月に高値(486円)をつけています。

<日足チャート(直近3か月間)>

7/18に年初来高値(486円)をつけるまでは上昇基調で推移しましたが、

その後は下落に転じ8/6に安値(410円)をつけました。

そして反転上昇していき、年初来高値に迫りましたが及ばず、今回の立会外分売発表の翌営業日(9/5)は、分売による短期的な需給悪化を懸念され、窓を開けて出来高を伴い前日比 38円安(-8.03%)と急落しました。

今後は、直近の安値(410円)を割りこまずヨコヨコから上昇に転じていくのか、割り込んで下値模索をするのか、要注目です。

まとめ

【業績】

  • 今期(2025年3月期)1Qの業績は、主に「ユーティリティ・ビジネス」において、契約件数が堅調に伸び
    一方利益面では、「ドキュメントソリューション・ビジネス」及び「コンサルティング・ビジネス」の販売計画の遅れにより、
    前年同期比 増収減益で、売上高は1割弱増利益面は2~3割弱減
  • 今期業績予想は、「ドキュメントソリューション・ビジネス」と「コンサルティング・ビジネス」の底上げを見通し、
    前期比 増収増益で、売上高は1割弱増、利益面は営業利益と経常利益は1割弱増ですが、純利益は1割弱減を見込む。
  • その通期予想に対する進捗率は1Q終了時点で、売上高は2割強でそこそこ利益面は1割強で遅れ気味

【株主還元】

  • 配当利回り(会社予想)4.59%で、東証スタンダードの単純平均 2.45%(9/4時点) と比較すると高い水準
  • 直近5年間の配当金は、年間1株あたり17~18円で推移しておりほぼ一定
    配当性向は、最終赤字の年を除き、30%台~60%台で推移。
  • 会社の方針は、業績に連動した利益還元として連結配当性向50%程度を目安に、
    事業の安定と伸長に要するシステム投資や販売促進に充てる内部留保、財務の健全性の担保、特別損益に拠らない事業の実力値を配慮の上、配当を決定するとしている。

【流動性・分売数量】

  • 直近の出来高の日平均は1,119百株、25日平均は277百株(9/5時点)で、流動性は低い水準
  • 分売数量は、発行済み株式総数の4.95%多い数量で、
    この銘柄の1日の平均的な出来高の約30倍であり、それからすると多めの数量

【株価モメンタム】

  • 週足ベースの株価は、2022年11月に安値(314円)をつけた後は、右肩上がりの上昇トレンドで推移し、
    2024年7月に高値(486円)をつけている。
  • 直近の株価は、7/18に年初来高値(486円)をつけるまでは上昇基調で推移したが、その後は下落に転じ8/6に安値(410円)をつけた。
    そして反転上昇していき、年初来高値に迫ったが及ばず、今回の立会外分売発表の翌営業日(9/5)は、分売による短期的な需給悪化を懸念され、窓を開けて出来高を伴い前日比38円安(-8.03%)と急落した。
  • 今後の株価は、直近の安値(410円)を割りこまずヨコヨコから上昇に転じていくのか、割り込んで下値模索をするのか要注目。

以上のことから、

レベル
(⭐(最低)~
⭐⭐⭐⭐⭐(最高))
業績⭐⭐⭐
株主還元
(配当、株主優待等)
⭐⭐⭐⭐
株価モメンタム⭐⭐⭐
流動性⭐⭐
分売数量⭐⭐
総合判定⭐⭐⭐
(中立)
※「総合判定」=⭐4つ以上「買い」、⭐3つ「中立」、⭐2つ以下「見送り」

と判断しました。

最後までご覧いただき、ありがとうございました。

※株式投資の実際の売買は、自己判断、自己責任でお願いします。

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