こんにちは!
公募増資・売出(以下、PO)の実施を発表した銘柄に関して、POに応募して買った場合、利益を得ることができるのか?直近の経営状況や客観的な指標、株価モメンタム等を踏まえ、総合的に分析しました。
今回は、東証プライムからその他製品業種の大日本印刷です。
最後までお付き合いいただけるとうれしいです!
- 公募増資・売出(PO)とは?
既上場企業が新たに発行する株式(公募株式)や既に発行された株式(売出株式)を投資家に取得させることをいいます。 正確には、「PO」は「Public(公開の)Offering(売り物)」の略で、日本語では「公募」と呼ばれます。「公募」とは、「不特定かつ多数の投資家に対し、新たに発行される有価証券の取得の申込を勧誘すること」をいいます。 また、「売出」とは、「既に発行された有価証券の売付けの申込み又はその買付けの申込の勧誘のうち、均一の条件で50人以上の者を相手方として行う」ことをいい、通常は「公募」と「売出」を合わせて「PO」と呼ばれます。 「新規公開株(IPO)」は未上場企業が直接金融市場からの資金調達や知名度・信用力の向上を目的として証券取引所に新規上場するために一般投資家に株式を取得してもらう行為であるのに対して、「公募・売出(PO)」は既に上場していて証券取引所での株式取引が行われている企業が追加の資金調達や大株主の保有株売却などを目的として一般投資家に株式を取得してもらう行為であり、「新規公開株(IPO)」と「公募・売出(PO)」の違いを簡単にいえば、実施する企業が「未上場」か「既上場」かの違いといえます。
POの概要
今回のPOは、大株主(リクルートホールディングス、他15社)からの株式の売出しです。売出価格等決定日や受渡期日、売出数量等は表1のようになっています。
ディスカウント率は、「売出価格等決定日」に決まり、その日の終値から数%です。
ちなみに、直近の主なPOのディスカウント率は、JR西日本(9021) 3.01%、ゆうちょ銀行(6178) 2.08%、デンソー(3387) 3.02%となっており、ほぼほぼ2~5%程度です。
ただ、ディスカウント率が大きいPOもあり、直近ではENECHANGE(4169)の8.1%が最大です。
注意点として、どの証券会社でも購入できるわけでなく、主幹事(今回は大和証券)はじめ、引受人の証券会社で購入申込可能です。
早ければ、12/9(月)の夕刻に、会社側から売出価格等のお知らせが適時開示であります。
このブログ記事も更新しますので、チェックしてくださいね💖
売出価格等決定日 | 2024年12月9日(月)から12日(木)までの間のいずれかの日 |
受渡期日 (POで買った場合はこの日から売却可能) | 売出価格等決定日の5営業日後の日 |
①株式の売出し (引受人の買取引受による売出し) 数量 | 普通株式 14,613,800 株 ※発行済み株式総数 554,480,692 株 の約2.63% |
②株式の売出し (オーバーアロットメントによる売出し) 数量 | 普通株式 2,192,000株(上限の数量) ※大和証券が売出す。 |
売出価格 | (決定後記載) |
ディスカウント率 | (決定後記載) |
申込単位数量 | 100 株 |
主幹事 | 大和証券 |
【株式売出しの目的】
- 同社は、2026年3月期を最終年度とする3か年の中期経営計画において、「事業戦略」を軸に据えながら、それを支える経営基盤の強化に向けた「財務戦略」と「非財務戦略」を統合した企業価値向上の取り組んでいる。
- その取り組みの一環として、投資家にとってより投資しやすい環境を整えるとともに、投資家層の拡大と同社株式の流動性の向上を図ることを目的として、2024年10月には普通株式1株につき2株の割合で株式分割を実施した。
- また、本中期経営計画における「財務戦略」の重点施策の1つとして、同社の保有する政策保有株式の縮減にも積極的に取り組んできたが、その対話の過程において、一部の株主より同社株式を売却したい旨の意向を確認した。
- これを受け、同社として最適な当該株式売却の手法を検討した上で、株主様と協議した結果、同社株式の円滑な売却機会を提供し、更なる株主層の裾野の拡大及び流動性の向上を実現するために、株式の売出しの実施を決定した。
としています。
また、今回の株式の売出数量は、発行済み株式総数の最大約3.03%(OAを含む)で、
直近の株式の売出を含むPOの売出株数比率(OAを含む)は、ユー・エス・エス 3.26%、ウェザーニューズ 7.93%、ダブルエー 14.9%でしたので、それらと比較すると少ない数量です。
また、この銘柄の直近の出来高(売買が成立した株数)の5日平均は14,219百株、25日平均は12,137百株(12/2時点)で、流動性は高い水準です。(1日 1,000百株を平均的な水準としています。)
【自己株式取得】
今回のPOと同時に、自己株式の取得を合わせて発表しています。
内容は表2となっています。
取得期間 | 今回の株式売り出しの 受渡期日の翌営業日(売出価格等決定日の6営業日後の日)から 2025 年4月 30 日(水)まで |
取得株式の総数 | 普通株式 1,000 万株(上限) (発行済株式総数(自己株式を除く)に対する割合:2.17%) |
取得金額の総額 | 200 億円(上限) ※取得株数の上限で割ると1株あたり2,000 円換算 |
取得方法 | 東京証券取引所における市場買付 |
(自己株式の取得の変更を行う理由)
- 今回の株式売出しに伴う同社株式需給への影響を緩和するとともに、資本効率の向上及び株主への利益還元を図りつつ、
経営環境の変化に対応した機動的な資本政策の遂行を可能にする。
としています。
この自社株買いにより、今回の株式の売出数量(最大約1,680万株)に対し、そのうちの最大約6割を市場で買い入れて、一時的な需給悪化の緩和を図っているといえます。
どんな会社?
前身の秀英舎と日清印刷はそれぞれ1876年と1907年に創業し、1935年に合併して大日本印刷株式会社となりました。
戦後は一時、経営的にも厳しい状況にありましたが、1951年に「再建5か年計画」を掲げ、印刷技術を応用・発展させて事業領域を拡大する「拡印刷」を推進しました。
その結果、現在の3つの事業セグメントにつながるビジネスモデルを生み出した、世界最大規模の総合印刷会社です。
その3つは、「スマートコミュニケーション部門」「ライフ&ヘルスケア部門」「エレクトロニクス部門」で、それぞれ、
- スマートコミュニケーション部門
単行本・辞書・年史等の書籍、週刊誌・月刊誌・季刊誌等の雑誌、企業PR誌、教科書、電子書籍、販促から顧客分析に関わるデジタルマーケティング支援、企業の業務プロセス・販売プロセスに関わるBPR(Business Process Re-engineering:業務改善)コンサルとBPO(Business Process Outsourcing)サービス、コンタクトセンター事業、IPS(Information Processing Services)、ICカード、決済関連サービス、カード関連機器、認証・セキュリティサービスと関連製品、ICタグ、ホログラム、ビジネスフォーム、カタログ、チラシ、パンフレット、カレンダー、POP、デジタルサイネージ(電子看板)、イベント・店舗・商品・コンテンツ等の企画・開発・制作・施工・運営、生成AIを活用したサービス、昇華型熱転写製品(カラーインクリボン、受像紙、昇華型フォトプリンター)、溶融型熱転写製品(モノクロインクリボン)、証明写真機事業、顔写真・IDソリューション、エンタメ・アミューズフォトソリューション、電子書籍流通・販売、図書販売、図書館運営、その他 - ライフ&ヘルスケア部門
リチウムイオン電池用部材、太陽電池用部材、電子部品搬送用資材、多機能断熱ボックス、その他産業用高機能材、食品・飲料・菓子・日用品・医療品用等の各種包装材料、カップ類、プラスチックボトル、ラミネートチューブ、プラスチック成型容器、無菌充填システム、住宅・店舗・オフィス・車両・家電製品・家具等の内外装材、自動車等のプラスチック成型部品、金属化粧板、医薬原薬中間体受託製造、医薬品受託製剤、飲料事業(炭酸飲料、コーヒー飲料、ティー飲料、果汁飲料、機能性飲料、ミネラルウォーター、アルコール飲料)、その他 - エレクトロニクス部門
ディスプレイ用光学フィルム、有機ELディスプレイ用メタルマスク(※1)、液晶ディスプレイ用大型フォトマスク(※2)、半導体製品用フォトマスク、リードフレーム、LSI設計、ハードディスク用サスペンション部品、スマホ用カメラモジュール部品、その他
※1:メタルマスク
孔版印刷に用いられる原版の一つで、金属板に開口部を設けて印刷を行う治具
※2:フォトマスク
半導体や電子回路を作る際に使われる重要な部材。基本的にはガラスやPET素材でできた透明なプレートの上に、特定の回路パターンを薄い金属膜(一般的にはクロム)で描く。
を製造販売しています。
2024年3月期通期のセグメント別売上高構成比は、
- スマートコミュニケーション部門 50.3%
- ライフ&ヘルスケア部門 33.1%
- エレクトロニクス部門 16.5%
となっており、「スマートコミュニケーション部門」が5割を占めています。
直近の経営概況
【2025年3月期2Q(2024年4月~9月)の経営成績】
(2024年11月11日発表:日本基準(連結))
決算期 | 売上高 [億円] (前年 同期比 増減率 [%]) | 営業 利益 [億円] (同) | 経常 利益 [億円] (同) | 親会社株主 に帰属する 当期純利益 [億円] (同) |
2024年3月期 2Q累計 | 6,937 (3.8) | 275 (△0.2) | 374 (2.1) | 762 (172) |
2025年3月期 2Q累計 | 7,083 (2.1) | 381 (38.6) | 500 (33.5) | 897 (17.7) |
2025年3月期 通期会社予想 | 14,550 (2.1) | 800 (6.0) | 1,000 (1.3) | 900 (△18.9) |
通期予想に対する 2Qの進捗率[%] | 48.6 | 47.7 | 50.0 | 99.6 |
表3の通り、前年同期比 増収増益で、売上高は微増、利益面は2割弱~4割弱増でした。
今期(2025年3月期)通期の業績予想は、前期比 増収増益で、売上高は微増、利益面は営業利益と経常利益は微増~1割弱増ですが、純利益は2割弱減を見込んでおり、
その通期予想に対する進捗率は2Q終了時点で、売上高は5割弱でそこそこ、利益面は営業利益と経常利益は5割弱でそこそこですが、純利益は通期予想にほぼ達しており順調です。
【2025年3月期2Qの状況、経営成績の要因】
DNPグループは、環境・社会・経済が急激に変わるなかでも、変化やリスクに対応するだけでなく、自らが長期を見据えて変革を起こし、「より良い未来」をつくり出す事業活動を展開しています。
DNPグループ独自の「P&I」(印刷と情報)の強みを掛け合わせ、多様なパートナーとの連携を深めて、事業領域の拡張と業績の拡大に努めています。
当年度は2023-2025年度の3か年の「中期経営計画」の2年目として、「事業戦略」「財務戦略」「非財務戦略」に基づく具体的な取り組みを通じて、持続的な事業価値・株主価値の創出に注力しています。
事業戦略では、中長期にわたって強みを発揮できる事業ポートフォリオの構築を進めるとともに、注力事業領域を中心に新しい価値の創出を加速させています。
財務戦略では、創出したキャッシュを事業のさらなる成長のための投資と株主還元に適切に配分していく方針です。
非財務戦略としては、「人への投資の拡大」「知的資本の強化」「環境への取り組み」を中心に推進し、サステナブルな成長を支える経営基盤の強化を図っています。
また、自然災害等の不測の事態に対しても、グループを挙げて事業継続マネジメント(BCM)の徹底を図ることで、多様な企業活動を持続的に推進しています。
以上の結果、当2Q会計期間の経営成績は、表2の数値の前年同期比 増収増益となっています。
【セグメント別の業績】
セグメント別の業績は、表4の結果になりました。
主力の「スマートコミュニケーション部門」は前年同期比減収増益、
「ライフ&ヘルスケア部門」と「エレクトロニクス部門」は増収増益となっています。
セグメント | 売上高 [億円] (前年 同期比 増減率 [%]) | 営業 利益 [億円] (同) |
スマート コミュニケーション | 3,466 (△1.1) | 126 (48.0) |
ライフ& ヘルスケア | 2,429 (4.8) | 90 (76.8) |
エレクトロニクス | 1,197 (6.3) | 278 (11.0) |
各セグメントの状況は以下です。
<スマートコミュニケーション部門>
イメージングコミュニケーション関連は、写真プリント用部材が欧米・アジア市場で好調に推移したほか、バーコード等の印字に使用する溶融型熱転写記録材が主に東南アジア市場で堅調に推移しました。
また、国内の証明写真サービスや撮影サービスの増加も寄与し、前年を上回りました。
情報セキュア関連は、1つのICチップで接触型と非接触型の規格に対応可能なデュアルインターフェイスカードが売上に貢献しましたが、BPOの大型案件の減少もあり、前年を下回りました。
マーケティング関連は、長年培ったマーケティング施策の実績・知見とデジタルの強みを掛け合わせた価値の提供に努めましたが、紙媒体の市場の縮小の影響もあり、前年を下回りました。
出版関連は、図書館運営業務が堅調に推移したものの、雑誌等の市場縮小の影響などにより、前年を下回りました。
その結果、部門全体の売上高は前年同期比 微減の減収となりました。
営業利益は、紙媒体を中心とした市場縮小による減収の影響を受けたものの、為替のプラス効果、人的資本や固定資産の適正化などの事業構造改革により、同5割弱増となりました。
<ライフ&ヘルスケア部門>
モビリティ・産業用高機能材関連は、リチウムイオン電池用バッテリーパウチが、IT向けはスマートフォンやタブレット端末などの新機種向けの需要が伸長したものの、
車載向けは電気自動車(EV)市場の需要停滞の影響を受けました。
太陽電池関連は、世界的な需要の高まりによって、封止材を中心に好調に推移しました。
自動車用の加飾フィルムは、内装用に加えて、塗装工程の短縮と環境負荷の低減を実現しながらデザイン性にも優れた外装用の製品の販売に注力しました。
また、2024年8月に株式会社ミックウェアと資本業務提携契約を締結し、同社の車載用デバイスのソフトウェアやコネクテッド基盤の開発の強みと、両社が持つデジタル技術を掛け合わせることで、
モビリティ領域におけるDXを推進し、事業の拡大を加速させる計画です。
包装関連は、原材料の値上げの影響を受けたものの、価格転嫁が進展したことに加え、スナックや日用品関連などの受注が好調に推移したほか、ペットボトル用無菌充填システムの販売も増加しました。
また、「DNP環境配慮パッケージング GREEN PACKAGING®」をはじめとする機能性包材の開発・販売に注力し、当事業全体で前年を上回りました。
メディカル・ヘルスケア関連は、医療用パッケージの開発・販売に注力しました。
また、創薬開発の支援拡大に向け、iPSC(人工多能性幹細胞)専門のバイオ企業である韓国のNEXEL社と心筋細胞の培養に関する技術提携を行い研究・開発を強化・推進していく方針です。
生活空間関連は、高い耐久性とデザイン性を両立させた外装材「アートテック®」が国内外で堅調に推移したものの、国内の新設住宅着工戸数(持家)の減少などによって住宅向け内装材が減少し、当事業全体で前年を下回りました。
飲料事業(北海道コカ・コーラボトリング(2573))は、自動販売機やコンビニエンスストア、Webサイトでの販売が好調に推移したほか、
主要な販売チャネルでの昨年来の価格改定の効果もあり、当事業全体で前年を上回りました。
その結果、部門全体の売上高は前年同期比微増となりました。
営業利益は、原材料費や物流費の上昇ペースが落ち着き、価格転嫁が進んだことに加えて、包装関連事業の売上増加もあり、同8割弱増となりました。
<エレクトロニクス部門>
デジタルインターフェース関連は、光学フィルムが液晶テレビ用パネルの大型化にともなう出荷面積の拡大等により、堅調に推移しました。
有機ELディスプレイ製造用メタルマスクは、スマートフォンでの有機ELディスプレイ採用拡大にともなって増加し、当事業全体で前年を上回りました。
なお、タブレット端末、ノートPC、車載デバイス向けの有機ELディスプレイ採用拡大への対応として、福岡県北九州市の黒崎工場内に新設したメタルマスク生産ラインを2024年5月より稼動しています。
半導体関連は、市場の回復によって半導体製造用フォトマスクの出荷量が堅調に推移し、当事業全体で前年を上回りました。
その結果、部門全体の売上高は前年同期比1割弱増となりました。
営業利益は、メタルマスクの新ライン増設による設備費増加の影響がありましたが、為替のプラス効果、デジタルインターフェース関連の売上増加により、同1割強増となりました。
【財政面の状況】
<自己資本比率>(自己資本(総資本-他人資本)÷総資産)×100)
2025年3月期2Q末時点で60.7%と前期末(59.6%)から1.1ポイント増加しました。
負債及び純資産の、主な前期末比の増減は以下となっています。
- 負債 (億円)
- 流動負債 △34.8
(内訳)未払法人税等 +293、支払手形及び買掛金 △181、短期借入金 △78.2、その他の流動負債 △44.8 - 固定負債 △221
(内訳)長期借入金 +12.3、繰延税金負債 △245
- 流動負債 △34.8
- 純資産(億円)
- 株主資本 +386
(内訳)利益剰余金 +840、自己株式 △454(自己株式数は増加) - その他の包括利益累計額 △269
(内訳)為替換算調整勘定 +111、その他有価証券評価差額金 △314、退職給付に係る調整累計額 △65.0
- 株主資本 +386
自己資本比率の数値としては問題ないレベルです。(20%以上を安全圏内としています。)
<キャッシュ・フロー>2025年3月期2Qのキャッシュ・フロー(以下、CF)の状況
- フリーCF(営業活動によるCFと投資活動によるCFを合計した金額 ※3)1,039億円の収入
- 営業活動によるCF 647億円の収入(前年同期 384億円の収入)
- 投資活動によるCF 392億円の収入(同 357億円の収入)
※3 フリーCFの説明:
- プラスの場合:会社が自由に使える資金が増える。
- マイナスの場合:会社が自由に使える資金が減る。
前期(2024年3月期2Q)のフリーCF(741億円の収入)から297億円増加しています。
営業活動によるCFの主な内訳(億円)
- 税引前中間利益 1,237
- 投資有価証券売却損益(△は益) △616
- 売上債権の増減額(△は増加) 391
投資活動によるCFの主な内訳(億円)
- 有形固定資産の取得による支出 △300
- 有形固定資産の売却による収入 112
- 投資有価証券の売却による収入 649
【今期(2025年3月期)通期業績の見通し】
「経営の基本方針」に沿って、長期を見据えて自らが「より良い未来」を作っていくために、中期経営計画の推進を加速させる方針です。
セグメント別の業績予想は、表5となっています。
主力の「スマートコミュニケーション部門」と「ライフ&ヘルスケア部門」は前期比 増収増益、
「エレクトロニクス部門」は、増収減益を見込んでいます。
セグメント | 売上高 [億円] (前年 同期比 増減率 [%]) | 営業 利益 [億円] (同) |
スマート コミュニケーション | 7,200 (0.1) | 300 (14.7) |
ライフ& ヘルスケア | 5,000 (5.9) | 180 (34.9) |
エレクトロニクス | 2,400 (2.0) | 540 (△7.1) |
※いずれも、調整額を含まない金額
なお、今2Q決算発表時には、2024年5月13日に公表された業績予想に変更はありませんでした。
株価指標と動向
【2024/12/2(月)終値時点の数値】
- 株価:2,251円
- 時価総額:1兆2,481億円
- PER(株価収益率):11.5倍
PERは、同業で時価総額が近い、TOPPANホールディングス(7911) 17.1倍、共同印刷(7914) 8.8倍と比較すると、中間的な水準です。
- PBR(株価純資産倍率):0.87倍
- 信用倍率(信用買い残÷信用売り残):6.55倍
- 年間配当金(1株当たり予想):32円(年2回 9月 16円(2024年10月1日付の1/2株式分割後換算)、3月 16円)、利回り:1.42%(配当性向 17.0%)
配当利回りは1.42%で、東証プライムの単純平均 2.50%(11/29時点)と比較すると、低い水準です。
表5のように、直近5年間の配当金は、年間1株当たり32円(2024年4月1日付の1/3株式分割後換算)で一定です。
配当性向は、10%台~70%台で幅があります。
決算期 | 1株当たり 年間配当金 [円] | 配当性向 [%] |
2020年3月期 | 32 | 27.2 |
2021年3月期 | 32 | 71.7 |
2022年3月期 | 32 | 18.0 |
2023年3月期 | 32 | 19.9 |
2024年3月期 | 32 | 14.4 |
※配当金は、2024年10月1日付1/2株式分割後換算
この会社は、
利益の配分については、株主へ安定的かつ継続的に行うことを基本とし、中長期の経営視点から、財務基盤の安定性を維持した上で、
成長事業への投資と株主還元のバランスを考慮した上で、業績と配当性向などを総合的に勘案して実行していく方針です。
また、将来の事業展開に備えて、適切な内部留保を確保し、経営基盤の強化を図っています。
内部留保資金は、資金需要や市場動向をみながら、今後の新製品・新サービス・新技術の開発投資、新規事業展開のための設備投資、戦略的提携やM&A、それらを支える人材への投資などに充当していく方針です。
剰余金の配当は、中間配当及び期末配当の年2回行っています。
【直近の株価動向】
<週足チャート(直近2年間)>
2023年1月に安値(1,248.5円)をつけた後は、高値切り上げ安値切り上げの上昇トレンドで推移し、2024年7月に高値(2,788.5円)をつけました。
しかしその後は、この高値を超えられず調整しています。
<日足チャート(直近3か月間)>
2,500~2,800円のレンジ内での推移でしたが、直近でこのレンジを下抜けています。
そして今回のPO発表の翌営業日(12/2)は、POによる短期的な需給悪化懸念により、窓を開けて出来高を伴い前日比34円安(-1.49%)と急落しました。
今後は、8月につけた安値(2,136円)を割り込まず、ヨコヨコから上昇に転じていくのか、下抜けて下値模索を継続するのか、要注目です。
まとめ
【業績】
- 今期(2025年3月期)2Qの業績は、2023-2025年度の3か年の「中期経営計画」の2年目として、「事業戦略」「財務戦略」「非財務戦略」に基づく具体的な取り組みを通じて、持続的な事業価値・株主価値の創出に注力し、
前年同期比 増収増益で、売上高は微増、利益面は2割弱~4割弱増。 - 今期業績予想は、中期経営計画の推進を加速させる方針で、
前期比 増収増益で、売上高は微増、利益面は営業利益と経常利益は微増~1割弱増だが、純利益は2割弱減を見込む。 - その通期予想に対する進捗率は2Q終了時点で、売上高は5割弱でそこそこ、利益面は営業利益と経常利益は5割弱でそこそこだが、純利益は通期予想にほぼ達しており順調。
【株主還元】
- 配当利回り(予想)は1.42%(12/2時点)で、東証プライムの単純平均 2.50%(11/29時点)と比較すると低い水準。
- 直近5年間の配当金は、年間1株あたり32円(2024年10月1日付の1/2株式分割後換算)で一定。
配当性向は、10%台~70%台で幅がある。 - 会社の還元方針は、株主へ安定的かつ継続的に行うことを基本とし、
中長期の経営視点から、財務基盤の安定性を維持した上で、成長事業への投資と株主還元のバランスを考慮した上で、業績と配当性向などを総合的に勘案して実行していく方針。 - 今回のPO発表と同時に、POによる株式需給への影響を緩和するため、自社株買いを行うことも発表。
この自社株買いにより、今回の株式の売出数量(最大約1,680万株)に対し、そのうちの最大約6割を市場で買い入れて、一時的な需給悪化の緩和を図っている。
【流動性・新株式の発行株数】
- 今回の株式の売出数量(OA含む)は、発行済み株式総数の最大約3.03%で、
直近の株式の売出を含むPOの売出株数比率(OAを含む)(ユー・エス・エス、ウェザーニューズ、ダブルエー)と比較すると少ない数量。 - 直近の出来高の5日平均は14,219百株、25日平均は12,137百株(12/2時点)で、流動性は高い水準。
【株価モメンタム】
- 週足ベースの株価は、2023年1月に安値(1,248.5円)をつけた後は、高値切り上げ安値切り上げの上昇トレンドで推移し、2024年7月に高値(2,788.5円)をつけた。
しかしその後は、この高値を超えられず調整している。 - 直近の株価は、2,500~2,800円のレンジ内での推移だったが、直近でこのレンジを下抜け。
そして今回のPO発表の翌営業日(12/2)は、POによる短期的な需給悪化懸念により、窓を開けて出来高を伴い前日比 34円安(-1.49%)と急落した。 - 今後の株価は、8月につけた安値(2,136円)を割り込まず、ヨコヨコから上昇に転じていくのか、下抜けて下値模索を継続するのか要注目。
以上のことから、
レベル (⭐(最低)~ ⭐⭐⭐⭐⭐(最高)) | |
業績 | ⭐⭐⭐⭐ |
株主還元 (配当、株主優待等) | ⭐⭐⭐ |
株価モメンタム | ⭐⭐ |
流動性 | ⭐⭐⭐⭐ |
株式の売出数量 | ⭐⭐⭐⭐ |
総合判定 | ⭐⭐⭐ (中立) |
と判断しました。
最後までご覧いただき、ありがとうございました。
※株式投資の実際の売買は、自己判断、自己責任でお願いします。