こんにちは!
公募増資・売出(以下、PO)の実施を発表した銘柄に関して、POに応募して買った場合、利益を得ることができるのか?直近の経営状況や客観的な指標、株価モメンタム等を踏まえ、総合的に分析しました。
今回は、東証スタンダードから食料品業種のピエトロです。
最後までお付き合いいただけるとうれしいです!
- 公募増資・売出(PO)とは?
既上場企業が新たに発行する株式(公募株式)や既に発行された株式(売出株式)を投資家に取得させることをいいます。 正確には、「PO」は「Public(公開の)Offering(売り物)」の略で、日本語では「公募」と呼ばれます。「公募」とは、「不特定かつ多数の投資家に対し、新たに発行される有価証券の取得の申込を勧誘すること」をいいます。 また、「売出」とは、「既に発行された有価証券の売付けの申込み又はその買付けの申込の勧誘のうち、均一の条件で50人以上の者を相手方として行う」ことをいい、通常は「公募」と「売出」を合わせて「PO」と呼ばれます。 「新規公開株(IPO)」は未上場企業が直接金融市場からの資金調達や知名度・信用力の向上を目的として証券取引所に新規上場するために一般投資家に株式を取得してもらう行為であるのに対して、「公募・売出(PO)」は既に上場していて証券取引所での株式取引が行われている企業が追加の資金調達や大株主の保有株売却などを目的として一般投資家に株式を取得してもらう行為であり、「新規公開株(IPO)」と「公募・売出(PO)」の違いを簡単にいえば、実施する企業が「未上場」か「既上場」かの違いといえます。
POの概要
今回のPOは、公募と第三者割当による増資です。発行価格等決定日や受渡期日、発行数量等は表1のようになっています。
ディスカウント率は、「発行価格等決定日」に決まり、その日の終値から数%です。
ちなみに、直近の主なPOのディスカウント率は、JR西日本(9021) 3.01%、日本郵政(6178) 2.01%、クリエイト・レストランツ・ホールディングス(3387) 3.09%となっており、ほぼほぼ2~5%程度です。
ただ、ディスカウント率が大きいPOもあり、直近ではENECHANGE(4169)の8.1%が最大です。
注意点として、どの証券会社でも購入できるわけでなく、主幹事(今回は野村證券)はじめ、引受人の証券会社で購入申込可能です。
早ければ、12/20(水)の夕刻に、会社側から発行価格等のお知らせが適時開示であります。
このブログ記事も更新しますので、チェックしてくださいね💖
発行価格等決定日 | 2023 年 12 月 20 日(水) |
受渡期日 (POで買った場合はこの日から売却可能) | 2023 年 12 月 28 日(木) |
①公募による新株式の発行 (一般募集) 数量 | 普通株式 700,000 株 ※発行済み株式総数 6,257,230 株 の約11.1% |
②株式の売出し (オーバーアロットメントによる売出し) 数量 | 普通株式 105,000 株(実施決定(12/20)) ※野村證券が売出す。 |
③第三者割当による新株式発行 数量 | 普通株式 105,000 株 (申込みのなかった株数は発行されない。) ※野村證券に割当。 |
調達資金手取り概算額(上限) | 13.2 億円 |
発行価格 | 1,785 円 (12/20決定:終値 1,850 円) |
ディスカウント率 | 3.51 % (12/20決定) |
申込単位数量 | 100 株 |
主幹事 | 野村證券 |
【資金調達の背景と目的】
- 同社グループは、1980 年 12 月に福岡市中央区天神において、1軒のレストラン「洋麺屋ピエトロ」を開業したのが創業。
その後、レストランで使用していた自家製ドレッシングが顧客に好評であったことから、1985 年7月にドレッシングの製造販売も事業化した。 - 「大きな厨房」と呼ぶ工場で、創業当時の手作りの味を守り、非加熱製法で提供している同社の主力商品「ピエトロドレッシング 和風しょうゆ」は今年5月に累計出荷本数3億本を突破した。
その他に第2、第3の柱となるレストラン生まれのパスタソースや冷凍商品、スープなどの商品も販売しており、多くの顧客に愛用いただいている。
特に成長事業でもある冷凍商品カテゴリーはレストランクオリティの味が家庭で簡単に楽しめる点を強みとしたプレミアム冷凍商品として順調に売上が伸びており、今後もさらなる増加を見込んでいる。 - このような状況の下、商品の販売拡大に伴い、生産量や生産品目が拡大してきたため、同社グループは、創業の地・福岡県にある古賀市に、2025 年秋、新しい製造工場を建設することとした。
新工場では、現在3工場に分散している生産を集約することなどによる生産性の向上と、冷凍食品製造ラインを中心とする生産能力の増強を図る予定。 - さらに、現工場の老朽化に鑑み、新工場での生産に切り替えることで、お客様により安全・安心な商品をお届けできると共に、工場で働くすべての人に快適な職場環境を提供する。
また、新工場は建屋の屋根にソーラーパネルを設置し、太陽光による自家発電を行う他、井戸水を飲料水や生産活動で使用する有効利用システムも導入を予定しており、地産地消の取り組みも含め、九州地方の再エネ由来の電気を使用して、2025 年度までに 100%再生可能エネルギーで稼働する環境配慮型の工場とすることを計画している。 - また、この新工場は製造機能だけでなく、ピエトロの顧客やファンが集う新たな拠点『Pietro Factory Park(ピエトロファクトリーパーク)』として、人々が「つながる場所」を目指す。
工場が立地する古賀市の方々をはじめ、顧客はもちろん、取引先、工場で働くスタッフなど、すべての関係者に、様々な体験を通して、楽しみながらファンになっていただくための体験型施設や設備を計画している。 - 今回の新株式発行による調達資金は、上記の新工場の設備投資資金に充当する。
生産性の向上、食の安全の強化、労働環境の改善に加え、ピエトロブランドの発信拠点を設けると共に資本の増強による財務基盤の強化を行うことで、更なる業容の拡大と継続的な企業価値の向上を目指していく。
としています。
【調達資金の使途】
今回の一般募集及び第三者割当増資に係る手取概算額合計上限約13.2億円については、全額を 2025 年 10 月末までに古賀新工場(福岡県古賀市)の新設のための設備投資資金の一部に充当する予定です。
古賀新工場の新設は、商品の販売拡大に伴う生産量及び生産品目に対応した生産能力の拡大と
現在古賀第一工場(福岡県古賀市)・古賀第二工場(福岡県古賀市)・古賀第三工場(福岡県古賀市)の3工場に分散している生産を集約することによる効率化、及び労働環境の改善を目的としています。
今回の新株式の発行数量は、発行済み株式総数の最大約12.8%(第三者割当を含む)で、
直近の新株式の発行を含むPOの発行株数比率(第三者割当を含む)は、GSユアサ 24.8%、AZ-COM丸和ホールディングス 7.75%、ゼンショーホールディングス 3.87%で、それらと比較すると中間的な数量です。
また、この銘柄の直近の出来高(売買が成立した株の数量)の5日平均は62.0百株、25日平均は31.1百株で、流動性は低い水準です。(1日 1,000百株を平均的な水準としています。)
どんな会社?
福岡市・天神三丁目に一軒のパスタレストランを開業して43年目を迎えた、
各種ドレッシング・ソース等の食品の製造販売、パスタ料理をメインとしたレストランの経営を主要な事業としている会社です。
同社は、製品、サービス別に事業単位を構成し、「商品事業」「店舗事業」「その他(本社ビル等の賃貸)事業」の3つのセグメントがあり、それぞれ、
- 商品事業
ドレッシング、ソース、レトルト等の製造販売 - 店舗事業
スパゲティ、ピザ等のレストラン経営、パスタ専門ファストフード店等の経営 - その他(本社ビル等の賃貸)事業
本社ビル等の賃貸
を行っています。
2023年3月期通期のセグメント別売上高構成比は、
- 商品事業 64.5%
- 店舗事業 33.8%
- その他(本社ビル等の賃貸)事業 1.7%
となっており、「商品事業」が6割強を占めています。
直近の経営概況
【2024年3月期2Q(2023年4月~9月)の経営成績】
(2023年11月14日発表)
決算期 | 売上高 [百万円] (前年 同期比 増減率 [%]) | 営業 利益 [百万円] (同) | 経常 利益 [百万円] (同) | 親会社株主 株主に 帰属する 純利益 [百万円] (同) |
2023年3月期 2Q累計 | 4,572 (6.9) | △36 (赤字 転落) | △30 (赤字 転落) | △81 (赤字 転落) |
2024年3月期 2Q累計 | 5,037 (10.2) | 186 (黒字 転換) | 187 (黒字 転換) | 74 (黒字 転換) |
2024年3月期 通期会社予想 | 10,170 (11.7) | 250 (黒字 転換) | 242 (黒字 転換) | 120 (黒字 転換) |
通期予想に対する 2Qの進捗率[%] | 49.5 | 74.4 | 77.2 | 61.6 |
表2の通り、前年同期比 増収増益で、売上高は1割増、利益面は黒字転換でした。
2024年3月期通期の業績予想は、前期比 増収増益で、売上高は1割強増、利益面は黒字転換を見込んでおり、
その通期予想に対する進捗率は2Q終了時点で、売上高は5割程度でそこそこ、利益面は6割を超過しており順調です。
【2024年3月期2Qの状況、経営成績の要因】
食品業界では原材料費の高騰等に伴う様々な商品の値上げ拡大による影響が大きく、節約志向が一段と強まりました。
一方、外食業界は、行動制限も緩和され回復傾向ですが、原材料やエネルギー価格の上昇、労働力不足による人件費上昇等、依然として経営環境は厳しいものとなっています。
このような状況のもと、同社グループは、商品、レストラン、ショップを通して「おいしさと健康」を顧客に提供し、ファンを基盤にした経営、マーケティングの強化、商品の強みを生かした価値訴求のさらなる追求を行いました。
商品事業では、流通顧客の課題解決に向けた提案力強化の営業改革に取り組んだことに加え、前期に行った価格改定の効果により増収となりました。
店舗事業では、顧客満足を追求した施策や新規出店効果により大幅な増収となり、当2Q連結累計期間の売上高は、グループ全体で5,037百万円(前年同期比10.2%増)となりました。
利益面では、商品事業において原材料や資材価格等の高騰影響はあったものの、価格改定の効果や、利益構造改革により店舗事業が再黒字化を達成したこと等により、
営業利益は186百万円(前年同期は36百万円の損失)、経常利益は187百万円(前年同期は30百万円の損失)、親会社株主に帰属する四半期純利益は74百万円(前年同期は81百万円の損失)となりました。
【セグメント別の業績】
セグメント別の業績は、表3の結果になりました。
主力の「商品事業」と「その他事業」は増収増益、
「店舗事業」は増収で黒字転換でした。
セグメント | 売上高 [百万円] (前年 同期比 増減率 [%]) | セグメント 利益 [百万円] (同) |
商品 | 3,072 (2.3) | 880 (6.9) |
店舗 | 1,883 (26.5) | 34 (前年同期 △87百万円) |
その他 (本社ビル等 の賃貸) | 82 (3.0) | 36 (0.4) |
各セグメントの状況は以下です。
<商品事業>
(ドレッシングカテゴリー)
収益基盤のドレッシングカテゴリーでは、発売から42年の主力商品「ピエトロドレッシング和風しょうゆ」が、2023年5月初めに累計出荷本数3億本を達成しました。
また、新商品として「ピエトロドレッシング黄金しょうが」(秋冬限定)やリニューアル商品として、主役の『ごま』にこだわった「ピエトロドレッシング焙煎香りごま」を発売しました。
以上の取り組みに加え、前期に行った価格改定の効果もあり、ドレッシングカテゴリーは前年同期を上回る販売額となりました。
(パスタカテゴリー)
第2の柱であるパスタカテゴリーでは、ボトル入りパスタソース「おうちパスタシリーズ」4種の個食パックアソートセットやお試し2種セットを発売し、新たな需要拡大を図るとともに、
ごま醤油ガーリック、ペペロンチーノ、バジルを中心に営業活動を強化し、量販店への配荷を拡大しました。
また、手軽で本格的なレトルトパスタソース「洋麺屋ピエトロ」は“レストランの味をご家庭で”の強みを活かした提案やエリア広報、プロモーションの強化を行った結果、なす辛、絶望スパゲティが好調に推移しました。
プレミアムパスタ麺「AGNESI」は“ピエトロレストランで使用するプレミアムパスタ麺”として認知拡大を図ったことにより、家庭用、業務用ともに前年同期を大きく上回る販売額となりました。
しかしながら、新型コロナウイルス自宅療養者向け商品供給の反動が影響し、パスタカテゴリー全体での販売額は前年同期を下回る結果となりました。
(冷凍商品カテゴリー)
成長事業である冷凍商品カテゴリーでは、シェフ自らが開発に携わり、レストランクオリティの味が家庭で簡単に楽しめる点を強みとし、冷凍パスタを中心にピザ、ドリア、グラタンなどの拡販強化を行いました。
また“できたての美味しさ”を追求したプレミアム冷凍商品として、新たに開発した「〔冷凍パスタ〕洋麺屋ピエトロ お肉好きのあなたのためのボロネーゼ」をはじめ、冷凍グラタンや冷凍ピザ等のリニューアル商品を発売し、配荷の拡大に繋げました。
特に量販店向けの「洋麺屋ピエトロシリーズ(冷凍パスタ)」が好調に推移し、前年同期の販売額を上回りました。
(スープカテゴリー)
素材や調理法にこだわった「PIETRO A DAY」ブランドとして育成中のスープカテゴリーは、通信販売をはじめ、店舗事業セグメントでもある直販店、レストラン店頭の物販商品として、販売を順調に伸ばしました。
特に夏季は冷たく冷やして食べられる「国産じゃがいものヴィシソワーズ-生クリーム仕立て-」や「北海道産ピュアホワイトの白いコーンポタージュ」等が好調に推移しました。
9月に数量・期間限定商品「小さい秋のSOUPマッシュルームとパルミジャーノのポタージュ」を発売する等、定番商品の他、季節・地域限定商品も取り揃えており、豊富なラインナップで選ぶ楽しさも好評です。
(その他カテゴリー)
フライドオニオン「PATFUTTE(パットフッテ)」シリーズは、レストランのテーブルに常備して自由に試せる“テーブルマーケティング”により、
レストラン店頭物販で好調が続く実績を基に量販店向けの配荷拡大に取り組んだ結果、流通商品としても順調に販売額を伸ばしました。
さらに通信販売では、自社ECサイトを、より顧客が魅力的に感じてもらえるようリニューアルを行うとともに、
大手ECモールへの新規出店等も積極的に行い、特に冷凍商品・スープの両カテゴリーを中心にEC販売の強化を行いました。
利益面では、主原料価格の高騰の影響があったものの、価格改定の効果や製造原価低減に努めた結果、商品事業セグメントは増収増益となりました。
<店舗事業>
(レストラン店舗)
味、雰囲気、サービスの総合点を磨き、顧客満足度向上を図っています。
おいしさをさらに追求した高付加価値メニューや季節のフルーツを贅沢に使用したデザートの提供、ディナーメニューの強化、
より質の高いサービスを追求するためのスタッフ研修のさらなる強化等の施策を行ったことにより、既存店の顧客単価、来客数ともに上昇しました。
さらに、8月から9月にかけて期間限定で、人気メニューでもある「絶望スパゲティ」に最辛バージョンが登場する『絶望まつり』を開催し、辛いもの好きの顧客に楽しんでもらうと同時に、「洋麺屋ピエトロ」レトルトソースの販売拡大に繋げました。
物販強化策としては、テイクアウトメニューの拡充、デリバリーへの対応、レストランでのテーブルマーケティング等に引き続き取り組みました。
また商品事業とのシナジーが期待できる未出店エリアへの出店を積極的に行いました。
これらの結果、レストラン店舗の販売額は前年同期を大きく上回りました。
(直販店舗)
スープカテゴリーでもあるPIETRO A DAY ブランド等の直販店舗では、スープの試食や、カフェメニューを通じて、商品の美味しさを顧客に直接伝えるマーケティングや期間限定のPOP UP 店舗の出店も継続的に行いました。
また季節やイベントに応じたギフト提案を行う等、認知拡大を図ったことにより、流通やオンラインでの販売にも繋げることができました。
また、同社の全商品シリーズが揃う初のオフィシャルショップを名古屋に新規出店しました。
より商品の魅力や価値が伝わるような商品ディスプレイの強化を図り、顧客が手にとりやすい売り場づくりを行いました。
新規出店は、今2Q累計で計5店舗です。
利益面は、レストラン店舗の売上が好調だったことに加え、原材料や諸費用の価格上昇に伴うメニューの見直しや価格改定の効果、人員配置の効率化等に取り組みました。
以上の結果、店舗事業セグメントは、増収で黒字転換しています。
<その他(本社ビル等の賃貸)事業>(省略)
【財政面の状況】
<自己資本比率>(自己資本(総資本-他人資本)÷総資産)×100)
2024年3月期2Q末時点で53.4%と前期末(57.3%)から3.9ポイント低下しています。
これは主に、それぞれ前期末比で、
- 負債
- 買掛金が106百万円増加、短期借入金が400百万円増加し、流動負債が合計で652百万円増加
- 長期借入金が66.6百万円減少し、固定負債が合計で26.7百万円減少
- 資本
- 利益剰余金が70.6百万円減少し、株主資本が合計で33.6百万円減少
したことによるものです。
自己資本比率の数値としては問題ないレベルです。(20%以上を安全圏内としています。)
<キャッシュ・フロー>2024年3月期2Q累計のキャッシュ・フロー(以下、CF)の状況
- フリーCF(営業活動によるCFと投資活動によるCFを合計した金額 ※1)65.2百万円の収入
- 営業活動によるCF 425百万円の収入(前年同期 407百万円の収入)
- 投資活動によるCF 360百万円の支出(同 220百万円の支出)
※1: フリーCFの説明
- プラスの場合:会社が自由に使える資金が増える。
- マイナスの場合:会社が自由に使える資金が減る。
前期(2023年3月期2Q累計)のフリーCF(186百万円の収入)から121百万円減少しています。
営業活動によるCFの主な内訳(百万円):
- 税金等調整前四半期純利益 179
- 減価償却費 215
- 売上債権の増減額(△は増加) △240
投資活動によるCFの主な内訳(百万円):
- 有形固定資産の取得による支出 △331
- 長期前払費用の取得による支出 △26.1
- 長期預り金の受入による収入 10.5
【今期(2024年3月期通期)業績予想】
新型コロナウイルス感染症の感染法上の分類が5類に移行すること等により、経済活動は本格的に回復することが期待される一方、国際情勢の不安定化や、原材料価格、エネルギー価格の上昇など、先行きは不透明な状況となっています。
同社グループは、商品事業では主原料価格の高騰による仕入れコストの上昇の影響が大きく、店舗事業では食材価格の高騰や人材不足の問題等、予断を許さない状況が続いています。
このような状況下ですが、商品事業では、前期に実施した価格改定の定着を進めるとともに、さらなる生産性の向上に努めていく方針です。
また商品価値を訴求した売り方を継続し、ブランド強化、利益率改善などに取り組んでいく計画です。
店舗事業は、高付加価値メニューやディナーメニューの強化、ホスピタリティ向上による顧客満足度アップ、利益構造改革を図り、2024年3月期での黒字化を目指しています。
さらに、ファンベース経営の継続を行うとともに、商品価値をダイレクトに伝えられる体験型ブランドマーケティング戦略として、
レストランや直販ショップで直接商品を手にとってもらう「レストラン・直販ショップマーケティング」、
料理教室やさまざまな地域でのイベントを通して商品のおいしさを知ってもらう「イベントマーケティング」、
未出店地域を中心に年3~5店の出店を行う「エリアマーケティング」等で情報発信を強化する計画です。
以上の取り組みを実施することにより、2024年3月期通期の業績は表2の数値の増収で黒字転換を予想しています。
なお、今2Q決算発表時点では、2023年5月12日に公表された業績予想に変更はありませんでした。
株価指標と動向
【2023/12/13(水)終値時点の数値】
- 株価:1,850円
- 時価総額:115億円
- PER(株価収益率(今期予想)):70.8倍
PERは、同業で時価総額が近い、ダイショー(2816) 28.2倍、ブルドックソース(2804) 563倍、ケンコーマヨネーズ(2915) 41.8倍と比較すると、中間的な水準です。
- PBR(株価純資産倍率):2.23倍
- 信用倍率(信用買い残÷信用売り残):8.40倍
- 年間1株当たり配当金(会社予想):24円(年1回 3月)、利回り:1.31%(配当性向 121%)
配当利回りは1.31%で、東証スタンダードの単純平均2.28%(12/13時点) と比較すると低い水準です。
表4のように、直近5年間の配当金は、年間1株あたり21~24円で推移しており、前年と同じ年もありますが、基本的には増配しています。
また、配当性向は、最終赤字の年を除き、40%台~80%台で推移しています。
決算期 | 1株当たり 年間配当金 [円] | 配当性向 [%] |
2019年3月期 | 21 | 44.2 |
2020年3月期 | 21 | 57.8 |
2021年3月期 | 23 | 43.9 |
2022年3月期 | 24 | 88.5 |
2023年3月期 | 24 | ー (最終 赤字) |
この会社は、
株主への利益配分を経営上の重要な課題の1つと考えています。
中長期的な視野のもと企業体質の強化と事業の拡充を図りながら、安定配当を行うことを基本方針とし、さらに業績に対応する株主還元を目指しています。
また、中間配当と期末配当の年2回の剰余金の配当を行うことを基本方針としています。
【株主優待】
この会社は、株主優待があり、毎年3月末に100株以上保有の株主は、1,200円相当(300株以上保有の場合は5,000円相当)の自社商品(ドレッシング等)が進呈されます。
また、毎年3月末と9月末の年2回、100株以上保有の株主は、自社通信販売商品が10%割引で購入できます。
100株保有の場合、配当金+株主優待(1,200円相当)で利回りは1.94%となります。
個人投資家にとってうれしい内容ですね!
【直近の株価動向】
<週足チャート(直近2年間)>
2022年に入って数回、安値(1,750円)をつけた後は、高値切り上げ安値切り上げの上昇基調で推移し、2023年3月に高値(1,905円)をつけました。
しかしその後は調整し、1,800~1,870円程度の狭い範囲での値動きが続いています。
<日足チャート(直近3か月間)>
9/21に高値(1,869円)をつけた後は下落に転じ、10/19と31に安値(1,795円)をつけました。
しかしその後は、1,810~1,840円のレンジ内で推移しており、
そして、今回のPO発表の翌営業日(12/13)は、最初は安く始まりましたが、その後は大陽線で前日比 26円高(+1.42%)と上昇しました。
今後は、5日移動平均線(緑線)や25日移動平均線(赤線)の上をキープし、上昇基調を継続するのか、これらを下抜けて下落に転じるのか、要注目です。
まとめ
【業績】
- 今期(2024年3月期)2Qの業績は、主力の商品事業、店舗事業ともに売上が好調で、利益面では商品事業において原材料や資材価格等の高騰影響はあったものの価格改定の効果や、利益構造改革により店舗事業が再黒字化を達成したこと等により、
前年同期比 増収増益で、売上高は1割増、利益面は黒字転換。 - 今期通期予想は、商品事業では、前期に実施した価格改定の定着を進めるとともに、さらなる生産性の向上に努め、店舗事業は、高付加価値メニューやディナーメニューの強化、ホスピタリティ向上による顧客満足度アップ、利益構造改革を図り、
前期比 増収増益で、売上高は1割強増、利益面は黒字転換を見込む。 - この通期業績予想に対する進捗率は、2Q終了時点で、売上高は5割前後でそこそこだが、利益面は6割を超過しており順調。
【株主還元】
- 配当利回り(予想)は1.31%で、東証スタンダードの単純平均 2.28%(12/13時点) と比較すると低い水準。
- 直近5年間の配当金は、年間1株あたり21~24円で推移しており、前年と同じ年もあるが、基本的には増配している。
配当性向は、最終赤字の年を除き、40%台~80%台で推移。 - 株主優待があり、毎年3月末に100株以上保有の株主は、1,200円相当(300株以上保有の場合は5,000円相当)の自社商品(ドレッシング等)が進呈される。
また、毎年3月末と9月末の年2回、100株以上保有の株主は、自社通信販売商品が10%割引で購入できる。
100株保有の場合、配当金+株主優待(1,200円相当)で利回りは1.94%となる。
【流動性・新株式の発行株数】
- 今回の新株式の発行数量は、発行済み株式総数の最大約12.8%(第三者割当を含む)で、
直近の新株式発行を含むPO(GSユアサ、AZ-COM丸和ホールディングス、ゼンショーホールディングス)の発行株数比率(第三者割当を含む)と比較すると中間的な数量。 - 直近の出来高の5日平均は62.0百株、25日平均は31.1百株で、流動性は低い水準。
【株価モメンタム】
- 週足ベースの株価は、2022年に入って数回、安値(1,750円)をつけた後は、高値切り上げ安値切り上げの上昇基調で推移し、2023年3月に高値(1,905円)をつけた。
しかしその後は調整し、1,800~1,870円程度の狭い範囲での値動きが続いている。 - 直近の株価は、9/21に高値(1,869円)をつけた後は下落に転じ、10/19と31に安値(1,795円)をつけた。
しかしその後は、1,810~1,840円のレンジ内で推移し、今回のPO発表の翌営業日(12/13)は、最初は安く始まったが、その後は大陽線で前日比 26円高(+1.42%)と上昇した。 - 今後の株価は、5日移動平均線や25日移動平均線の上をキープし、上昇基調を継続するのか、これらを下抜けて下落に転じるのか要注目。
以上のことから、
レベル (⭐(最低)~ ⭐⭐⭐⭐⭐(最高)) | |
業績 | ⭐⭐⭐ |
株主還元 (配当、株主優待等) | ⭐⭐⭐ |
株価モメンタム | ⭐⭐⭐ |
流動性 | ⭐⭐ |
新株式の発行数量 | ⭐⭐⭐ |
総合判定 | ⭐⭐⭐ (中立) |
と判断しました。
最後までご覧いただき、ありがとうございました。
※株式投資の実際の売買は、自己判断、自己責任でお願いします。