【立会外分売は買いか?】エプコ(2311) <2022年8月実施>

住宅立会外分売
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こんにちは!

直近で立会外分売の実施を発表した銘柄に関して、分売で買った場合、利益を得ることができるのか?直近の経営状況や客観的な指標、株価モメンタム等を踏まえ、総合的に分析しました。

今回は、東証プライムからサービス業種のエプコです。

最後までお付き合いいただけるとうれしいです!

  • 立会外分売とは?
新規株主を増やすことを目的として、上場会社が大株主である銀行やオーナー経営者などの保有株を小口に分けて、証券取引所の立会外で不特定多数に売り出すこと。
取引開始前など取引時間外(=立会外)に売り出されることからこのように呼ばれる。
  • 立会外分売の魅力
    • 前日終値より安く購入可能
      • 立会外分配における買付側の購入価格は確定値段(1本値)で、分売実施日の前日終値よりディスカウントされるのが一般的。過去の例では、約3~5%のディスカウントで実施されています。
        (ディスカウント率は取引所の規定により最大10%)
    • 買付手数料はかからない
      • 立会外分売による買付は、通常の立会時間内の取引と種類が異なるため一般的に手数料はかからない。(売却時には通常の手数料が発生)
    • 即日売却OK
      • 立会外分売で取得した株式は、実施日(買付当日)から売却することが可能
  • デメリット:抽選で外れることもある
    • 買い申し込みが多いと、抽選ではずれて購入できないこともある。

立会外分売の概要

まとめ

実施日や株数は以下です。実施予定日は幅があり、実際の実施日と販売価格は、会社側から実施日前日に発表があります。

分売数量は決まっていて、100株単位で最大10,000株まで購入できます。

早ければ8/26(金)の夕刻に、会社側からの適時開示で分売値段のお知らせがあります。このブログでも追記しますので、チェックしてくださいね💖

分売予定2022 年 8 月 29 日(月)
(8/26決定)
分売数量419,000 株
発行済み株式総数 9,316,000 株の約4.49%
分売値段631 円
(8/26決定)
ディスカウント率3.52 %
(8/26決定)
申込単位数量100 株
申込上限数量10,000 株
表1:エプコ 立会外分売概要

【立会外分売実施の目的】

  • 東京証券取引所の市場区分見直しに関して、プライム市場における流通株式時価総額の基準を達成すること
  • 同社株式の分布状況の改善および流動性向上を図ること

としています。

プライム市場における流通株式時価総額の基準は、「100億円以上」ですが、そもそも全体の時価総額が100億円(2022/8/23終値時点は63.1億円)に届いていない状況です。

まずは流動性を向上させ、企業価値向上などの施策を打ち、全体の時価総額を上げる取り組みが必要と思われます。

今回の分売数量は、発行済み株式総数の約4.49%多い数量※1です。

※1:一概に言えませんが、目安として、5%以上:かなり多い、3%以上5%未満:多い、1%以上3%未満:ほどほど、1%未満:少ないとしています。

また、この銘柄の直近の出来高(売買が成立した株式の数量)の5日平均は140百株25日平均は184百株で、流動性は低い水準です。

そして、今回の分売数量(4,190百株)は、1日の出来高(25日平均:184百株)の22倍ほどですので、この銘柄の通常の出来高からすると分売数量は多めといえます。

ご参考までに、この会社は、昨年12月にも上記と同様の目的で立会外分売を実施しています。昨年12月実施の立会外分売の分売値段と分売日以降の株価の動きは、表2のようになっています。

分売日分売株数
[万株]
分売値段
[円]
ディス
カウント
[%]
分売日
始値
[円]
(増減[円])
分売日
終値
[円]
(同)
一週間後の
始値[円]
(日付)
損益[円]
(増減率[%])
2021/
12/22(水)
38.47163.50740
(+3.4)
769
(+7.4)
780
(12/29)
+64
(+8.9)
表2:エプコ 前回の分売価格とその後の価格

分売値段で購入し、分売日の寄付大引け、分売日1週間後の寄付で売却した場合は、いずれも損益プラスの結果でした。

その時の地合いの良し悪しも影響してくるとは思いますが、ご参考まで。

【ご参考:前回の記事】:【立会外分売は買いか?】エプコ(2311)

どんな会社?

建築設計

住宅分野を主な事業分野として、設計コンサルティング事業カスタマーサポート事業スマートエネルギー事業を主に行っている会社です。

事業内容は、主に以下の4つがあり、それぞれ、

  • D-TECH事業(デザインテック事業)
    低層住宅を新築する際に、工事コスト・作業工数の削減及び工事品質の向上を実現するため、同社とアライアンス関係にある設備機器メーカーや建築建材商社等と連携して、住宅会社等に対して設計及びコンサルティングサービスを提供
  • H-M事業(ハウスマネジメント事業)
    住宅の着工・引き渡し後に、住宅会社に代わって施主からのメンテナンス対応、施主情報の管理及び施主へのメンテナンス・リフォーム提案
  • E-Saving事業
    主に住宅及び商業施設向けの省エネ設備(太陽光発電システム、蓄電池、オール電化住宅設備等)設置工事の請負
  • システム開発事業
    家庭向けに省エネルギーや節電を提案する企業に対して、主としてシステム開発受託業務、アプリケーションサービスの提供

を行っています。

2021年12月期通期のセグメント別売上高構成比は、

  • D-TECH事業 47.9%
  • H-M事業 28.6%
  • E-Saving事業 16.9%
  • システム開発事業 6.6%

となっており、「D-TECH(デザインテック)事業」が半分弱を占めています。

直近の経営概況

経営状況

【2023年12月期2Q(2022年1月~2022年6月)の経営成績】

(2022年8月10日発表)

決算期売上高
[百万円]
(前年
同期比[%])
営業利益
[百万円]
(同)
経常利益
[百万円]
(同)
親会社株主
帰属する
純利益
[百万円]
(同)
2021年12月期
2Q累計
2,271
(10.6)
206
(0.0)
186
(△25.0)
94
(△44.7)
2022年12月期
2Q累計
2,378
(4.7)
43
(△78.9)
84
(△54.7)
159
(67.7)
2022年12月期
通期会社予想
4,848
(3.2)
125
(△71.4)
204
(△44.9)
276
(△57.9)
通期予想に対する
2Qの進捗率[%]
49.034.441.157.6
表2:エプコ 2022年12月期2Q経営成績と通期会社予想

表2の通り、前年同期比 増収減益で、売上高は、利益面は、営業利益は7割減経常利益は4割強減で、純利益のみは7割弱の増益の結果でした。

今期通期の業績予想は、前期比 増収減益で、売上高は微増利益面は4~7割強の減益を見込んでおり、

その通期予想に対する進捗率は2Q終了時点で、売上高、経常利益、純利益は5割前後でそこそこですが、営業利益は遅れている状況です。

【2022年12月期2Qの状況、経営成績の要因】

同社グループが主に関連する住宅産業は、当2Q連結累計期間における住宅着工戸数は前年同四半期比1.6%の増加となったものの、

業績に影響の大きい住宅着工戸数(持家)は前年同四半期比-8.0%と大きく減少しており、引き続き予断を許さない状況です。

このような外部環境の変化を新たな成長市場の創出機会と捉えて、2021年2月に中期経営計画(2021年~2025年)を発表し、住宅ライフサイクル全体(設計から工事、アフターメンテナンスまで)の最適化を実現するために、

各事業においてデジタル技術を活用した新サービスの立ち上げ準備・先行投資を進めてきました

この結果、当2Q連結累計期間の売上高は前年同四半期比4.7%増営業利益は同78.9%減経常利益は同54.7%減となりました。

一方で、政策保有株式であるENECHANGE株式の一部売却に伴う投資有価証券売却益119百万円の発生により、親会社株主に帰属する四半期純利益は同67.7%増となりました。

【セグメント別の業績】

従来、報告セグメントを「D-TECH事業」「H-M事業」「E-Saving事業」「システム開発事業」の4セグメントとしていましたが、

「システム開発事業」はENESAP事業の事業譲渡完了により重要性が低下したことから成長事業とは位置付けず、今後の事業展開を見据えて同社グループ内の業績管理区分の見直しを行った結果、

「システム開発事業」を主に「H-M事業」に統合し、報告セグメントの区分を3セグメントに変更し、

報告セグメントの名称を従来の「D-TECH事業」「H-M事業」「E-Saving事業」から、

設計サービス事業」「メンテナンスサービス事業」「省エネサービス事業」に変更しています。

セグメント別の業績は、表3の結果になりました。

セグメント売上高
[百万円]
(前年
同期比[%])
営業利益
[百万円]
(同)

設計サービス
(旧・D-TECH事業)
1,068
(△4.9)
97
(△62.2)
メンテナンスサービス
(旧・H-M事業、
システム開発事業)
863
(10.8)
117
(4.9)
省エネサービス
(旧・E-Saving事業)
446
(21.3)
17
(176)
表3:2022年12月期2Q セグメント別業績

主力の「設計サービス事業」は減収減益でしたが、

「メンテナンスサービス事業」と「省エネサービス事業」は増収増益でした。

セグメント別の状況は以下です。

設計サービス事業(旧・D-TECH事業)>

前述のとおり、同社が主たる事業領域とする持家分野の新設住宅着工戸数は減少傾向が続いており(前年同四半期比8.0%減)、

同社の設計受託戸数も減少した結果、売上高は前年同四半期比4.9%減

また、急激な円安の進行による中国における設計費用の増加や、全社的な中長期に向けた取り組みとしてBIM(Building Information Modeling)を活用した事業モデルへの投資(日本及び中国(シンセン)における設計人員の増員)を継続した結果、営業利益は同62.2%減

メンテナンスサービス事業(旧・H-M事業、システム開発事業)>

既存得意先における預かり顧客数及び受電件数が堅調に増加したことによりメンテナンスサービス売上が増加し、

また、東京電力エナジーパートナー株式会社と同社の合弁会社であるTEPCOホームテック株式会社をはじめとするエネルギー系企業からの受託案件が増加した結果、売上高は同10.8%増

一方で、金沢オペレーションセンターの開設をはじめとして将来の業容拡大に向けた投資(主に人件費)が発生した結果、営業利益は同4.9%増

省エネサービス事業(旧・E-Saving事業)>

株式会社ENE’sにおいて、TEPCOホームテック株式会社及び同社との営業連携の効果で、太陽光設備や蓄電池設置工事等の受注が増加し、

売上高は同21.3%増営業利益は同176%増

【財政面の状況】

自己資本比率>(自己資本(総資本-他人資本)÷総資産)×100

2022年12月期2Q末時点で84.3%と前期末(79.2%)から5.1ポイント増加しています。

自己資本比率の数値としては良好なレベルです。(20%以上を安全圏内としています。)

<キャッシュ・フロー>2022年12月期2Q累計のキャッシュ・フロー(以下、CF)の状況

  • フリーCF(営業活動によるCFと投資活動によるCFを合計した金額 ※3)296百万円の支出
    • 営業活動によるCF 112百万円の支出(前期 19.7百万円の収入
    • 投資活動によるCF 184百万円の支出(前期 17.3百万円の支出

 ※3 フリーCFの説明:

  • プラスの場合:会社が自由に使える資金が増える
  • マイナスの場合:会社が自由に使える資金が減る

前期(2021年12月期)2Q累計のフリーCF(2.4百万円の収入)から298百万円減少しています。

営業活動によるCFの主な内訳(百万円):

  • 税金等調整前四半期純利益 203
  • 投資有価証券売却損益(△は益) △119
  • 法人税等の支払額 △279

投資活動によるCFの主な内訳(百万円):

  • 投資有価証券の売却による収入 121
  • 関係会社株式の取得による支出 △196
  • 貸付けによる支出 △100

【今期(2022年12月期通期)業績の見通し】

2022年7月20日付の、「業績予想の修正及び特別利益の発生に関するお知らせ」により公表された連結業績予想に変更はありません

株価指標と動向

株価指標

【2022/8/23(火)終値時点の数値】

  • 株価:678円
  • 時価総額:63.1億円
  • PER(株価収益率):21.9倍

PERは、同業で時価総額が近い、トランス・コスモス(9715) 8.9倍、構造計画研究所(4748) 10.2倍と比較すると、高い水準です。

  • PBR(株価純資産倍率):1.26倍
  • 信用倍率(信用買い残÷信用売り残):ー(信用売り残無し)
  • 年間配当金(予想):32円(年2回 6月 14円、12月 18円)、年間利回り:4.71%(配当性向 137%)
決算期1株当たり
年間配当金(円)
配当性向(%)
2017年12月期27.569.7
2018年12月期27.584.7
2019年12月期3062.4
2020年12月期3061.0
2021年12月期3243.3
表5:エプコ 年間配当金推移

年利回りは4.71%で、東証プライムの単純平均 2.30%(8/22時点) と比較すると2倍の高い水準です。

直近5年の配当金は表5のように、年間1株あたり27.5~32円で推移しており、

前期と同額の年もありますが、基本的には増配継続しています。

配当性向は、40%台~80%台で高めに推移しています。

この会社は、

株主への利益還元を経営上の重要政策の一つとして位置付けており、

現在および今後の事業収益を基に、将来の事業展開や経営環境の変化に対応するために必要な内部留保などを総合的に勘案し、

連結配当性向50%及び純資産配当率(DOE)8%を目安とした利益還元を安定的に実施すべきものと考えています。

また、中間配当と期末配当の年2回の剰余金の配当を行うことを基本方針としています。

【株主優待】

この会社は、今年5月に株主優待の新設を発表し、「抽選式株主優待制度」を毎年6月末と12月末に100株以上保有している株主に進呈することになりました。

2022 年は、上半期及び下半期合わせて6名に対して『太陽光発電システム(100 万円相当、工事代・メンテナンス込み )を戸建住宅(新築及び既築)に無償で設置する権利』が進呈されます。

※2022 年 6 月末(上半期) 太陽光発電システムのみ。2022 年 12 月末(下半期) 太陽光発電システム、蓄電池のいずれかを選択可能。

なお、2022 年上半期は、2022 年 6 月末の株主名簿に記載された株主のうち抽選に応募した方を抽選対象として3名を当選者として選出する予定であり、下半期(2022 年 12 月末)は3名を当選者として選出する予定です。

抽選で当選した場合のみですが、100万円相当は大盤振る舞いですね。

【直近の株価動向】

<週足チャート(直近2年間)>

出所:楽天証券サイト

週足ベースの株価は、一昨年11月につけた高値(1,136円)からずっと右肩下がりの下落トレンドで推移しており、今年3月に上場来安値(650円)をつけました。

その後はこの安値を更新していませんが、高値切り上げも起こっていない状況です。

<日足チャート(直近3か月間)>

出所:楽天証券サイト

直近の株価は、6月下旬に高値(810円)をつけた後は下落トレンドで推移していましたが、ようやく25日移動平均線(赤線)を上抜いてきたと思いきや、

今回の立会外分売の発表により、翌営業日(8/23)は、短期的な需給悪化懸念からか出来高を伴い下落し、前日比 12円安(-1.74%)となり、25日移動平均線を下抜けて終了しました。

今後は、再び25日移動平均線を上抜け上昇気流に乗っていくのか、3月につけた上場来安値(650円)に向かって下落していくのか、要注目です。

まとめ

まとめ

【業績】

  • 今期(2022年12月期)2Qの業績は、主たる事業領域とする持家分野の新設住宅着工戸数は減少傾向が続き、デジタル技術を活用した新サービスの立ち上げ準備・先行投資を進めたため、
    前年同期比 増収減益で、売上高は、利益面は、営業利益は7割減経常利益は4割強減で、純利益のみは7割弱の増益の結果。
  • 今期通期予想は、前期比 増収減益で、売上高は微増利益面は4~7割強の減益を見込んでおり、
    その通期予想に対する進捗率は2Q終了時点で、売上高、経常利益、純利益は5割前後でそこそこだが、営業利益は遅れている状況。

【株主還元】

  • 配当利回り(予想)は4.71%で、東証プライムの単純平均 2.30%(8/22時点) と比較すると約2倍の高い水準
  • 直近5年間の配当金は、年間1株あたり27.5~32円で推移しており、前期と同額の年もあるが、基本的には増配を継続している。
    配当性向は、40%台~80%台で高めで推移
  • 会社の方針は、連結配当性向50%及び純資産配当率(DOE)8%を目安とした利益還元を安定的に実施すべきものと考えている。
  • 今年5月に株主優待の新設を発表し、「抽選式株主優待制度」を毎年6月末と12月末に100株以上保有している株主に、
    2022 年は、上半期及び下半期合わせて6名に対して『太陽光発電システム(100 万円相当、工事代・メンテナンス込み )を戸建住宅(新築及び既築)に無償で設置する権利』が進呈される。
    抽選であるとはいえ、大盤振る舞いの内容となっている。

【流動性・分売数量】

  • 直近の出来高の5日平均は140百株25日平均は184百株で、流動性は低い水準
  • 分売数量は、発行済み株式総数の約4.49%多い数量

【株価モメンタム】

  • 週足ベースの株価は、一昨年11月につけた高値(1,136円)からずっと右肩下がりの下落トレンドで推移しており、今年3月に上場来安値(650円)をつけた。
    その後はこの安値を更新していないが、高値切り上げもない状況
  • 直近の株価は、6月下旬に高値(810円)をつけた後は下落トレンドで推移しており、ようやく25日移動平均線を上抜いてきたと思いきや、
    今回の立会外分売の発表により、翌営業日(8/23)は、短期的な需給悪化懸念からか出来高を伴い下落し、前日比 12円安(-1.74%)となり25日移動平均線を下抜けて終了
  • 今後の株価は、再び25日移動平均線を上抜け上昇気流に乗っていくのか、3月につけた上場来安値(650円)に向かって下落していくのか、要注目。

以上のことから、

レベル
(⭐(最低)~
⭐⭐⭐⭐⭐(最高))
業績⭐⭐
株主還元
(配当、株主優待等)
⭐⭐⭐⭐
株価モメンタム⭐⭐
流動性⭐⭐
分売数量⭐⭐
総合判定⭐⭐⭐(中立)
※「総合判定」=⭐4つ以上「買い」、⭐3つ「中立」、⭐2つ以下「不参加」

と判断しました。

最後までご覧いただき、ありがとうございました。

※株式投資の実際の売買は、自己判断、自己責任でお願いします。

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