こんにちは!
直近で立会外分売の実施を発表した銘柄に関して、分売で買った場合、利益を得ることができるのか?直近の経営状況や客観的な指標、株価モメンタム等を踏まえ、総合的に分析しました。
今回は、東証マザーズからサービス業種のフォースタートアップスです。
最後までお付き合いいただけるとうれしいです!
- 立会外分売とは?
新規株主を増やすことを目的として、上場会社が大株主である銀行やオーナー経営者などの保有株を小口に分けて、証券取引所の立会外で不特定多数に売り出すこと。
取引開始前など取引時間外(=立会外)に売り出されることからこのように呼ばれる。
- 立会外分売の魅力
- 前日終値より安く購入可能
- 立会外分配における買付側の購入価格は確定値段(1本値)で、分売実施日の前日終値よりディスカウントされるのが一般的。過去の例では、約3~5%のディスカウントで実施されています。(ディスカウント率は取引所の規定により最大10%)
- 買付手数料はかからない
- 立会外分売による買付は、通常の立会時間内の取引と種類が異なるため一般的に手数料はかからない。(売却時には通常の手数料が発生)
- 即日売却OK
- 立会外分売で取得した株式は、実施日(買付当日)から売却することが可能
- 前日終値より安く購入可能
- デメリット:抽選で外れることもある
- 買い申し込みが多いと、抽選ではずれて購入できないこともある。
立会外分売の概要
実施日や株数は以下です。実施予定日は幅があり、実際の実施日と販売価格は、会社側から実施日前日に発表があります。
分売数量は決まっていて、100株単位で最大5,000株まで購入できます。
早ければ2/15(火)の夕刻に、会社側からの適時開示で分売値段のお知らせがあります。このブログでも追記しますので、チェックしてくださいね💖
分売予定日 | 2022 年 2 月 16 日(水) |
分売数量 | 174,000 株 (発行済み株式総数 3,489,800 株の約5.0%) |
分売値段 | 2,467 円(2/15発表) |
ディスカウント率 | 2.99 %(2/15発表) |
申込単位数量 | 100株 |
申込上限数量 | 5,000株 |
実施の目的 | 同社株式の分布状況改善、流動性の向上を図るため |
今回の分売数量は、発行済み株式総数の約5.0%と多めの数量※です。
※一概に言えませんが、目安として、5%以上:かなり多い、3%以上5%未満:多い、1%以上3%未満:ほどほど、1%未満:少ないとしています。
この銘柄の直近の出来高(売買が成立した株式の数量)の5日平均は1,104百株、25日平均は536百株で、流動性は少し低い水準です。
どんな会社?
「for Startups」という経営ビジョンを掲げ、挑戦者に対し、必要な支援を行う成長産業支援インフラになることを目指している会社です。
そのための足掛かりとして、「タレントエージェンシー」と「オープンイノベーション」の2つのサービスを「成長産業支援事業」として展開しています。
2つのサービスの内容は以下です。
- タレントエージェンシー
スタートアップ企業・急成長企業に対して人材支援サービスを提供しており、具体的には①人材紹介、②起業支援 に区分 - オープンイノベーション
同社が運営するデータベース「STARTUP DB」を活用し、大企業や官公庁・自治体とスタートアップ企業を連携するサービスを提供。
具体的には、①資金調達支援、②データベース課金、③公共事業受託 に区分
同社は、「成長産業支援事業」の単一セグメントで、サービス別の2021年3月期の売上高構成比は、
- タレントエージェンシー 94.3%
- オープンイノベーション 5.7%
となっており、9割以上が「タレントエージェンシー」の売上になっています。
直近の経営概況
【2022年3月期3Q(2021年4月~2021年12月)の経営成績】(2022年2月7日発表)
決算期 | 売上高 [百万円] (前年同期比[%]) | 営業利益 [百万円] (同) | 経常利益 [百万円] (同) | 親会社株主に 帰属する 当期純利益 [百万円] (同) |
2021年3月期3Q累計 ※ | ー | ー | ー | ー |
2022年3月期3Q累計 ※ | 1,632 (ー) | 447 (ー) | 450 (ー) | 316 (ー) |
2022年3月期通期会社予想 ※ (2022年2月7日修正) | 2,300 (ー) | 600 (ー) | 600 (ー) | 450 (ー) |
通期予想に対する3Qの進捗率[%] | 71.0 | 74.5 | 75.0 | 70.2 |
※2022年3月期2Qより四半期連結財務諸表を作成しているため、2021年3月期3Qの数値及び対前年同四半期増減率は記載なし
2022年3月期3Q累計の業績は、前年同期比のデータがなく比較できませんが、
2022年3月期通期予想に対する進捗率は、3Q終了時点で売上高、利益面ともに、3/4程度に達していて順調です。
【2022年3月期3Qの状況、経営成績の要因】
2021年6月18日に閣議決定された政府の「成長戦略(2021年)」において、イノベーションの担い手となるスタートアップ企業への多様な資金供給を促進することが盛り込まれるなど、スタートアップのエコシステム形成に向けた包括的支援の重要性が提唱されています。
成長戦略のKPIとして、時価総額が10億ドル以上となる未上場ベンチャー企業(ユニコーン企業)又は上場ベンチャー企業を2025年までに50社創出することや、ベンチャー企業へのVC投資額の対名目GDP比を2022年度までに倍増させることが掲げられており、スタートアップ支援は国策であると考えられます。
同社は、「(共に)進化の中心へ」をミッションに、「for Startups」をビジョンに掲げ、挑戦者に対し必要な支援を行う成長産業支援インフラとなることを目指しています。その為の足掛かりとして「タレントエージェンシー」、「オープンイノベーション」、ハイブリッドキャピタル(人材と資金の支援を同時に行うことで企業成長を後押しする状態(造語))としてスタートアップ企業への投資を開始し、これらをまとめて成長産業支援事業と称して展開しています。
【サービス別の業績】
サービス別の売上高は、表3の結果になりました。
サービス | 売上高[百万円] |
タレント エージェンシー | 1,560 |
オープン イノベーション | 72 |
<タレントエージェンシー>
前年度においては新型コロナウイルス感染症の影響を受け、売上高は前年比マイナス成長となりました。
一方、1Q以降は、スタートアップ・成長企業の資金調達額の増加を背景とした採用ニーズの高まりにより、求人案件数は比較的安定した成長が続いています。
このような中、採用ニーズの強い企業や経営幹部層・エンジニアなど、需要の高いポジションの支援強化に継続して取り組んだ他、採用ニーズの高いクライアントの採用をより強力に支援する採用支援サービスの営業強化が功を奏した結果、当3Q連結累計期間における売上高は1,560百万円となりました。
なお、2022年3月期3Q連結会計期間の受注高は、四半期会計期間で過去最高受注高を更新した1Q会計期間に続き同水準の受注高となりました。
<オープンイノベーション>
オープンイノベーションサービスは、同社が運営するデータベース「STARTUP DB」を活用し、大手企業や官公庁・自治体とスタートアップ企業の連携を促進するサービスを提供しております。新型コロナウイルス感染症の流行を契機に、従来の大手企業のオープンイノベーション関連投資は全般的に見直しが図られてはいるものの、
新規事業創出や既存事業変革、既存オペレーションのDX化に対して優先度高く向き合う大手企業の予算は引き続き底堅く推移しています。
当3Q連結会計期間においては、「Public Affairs(※)」において、1Qから引き続き地方自治体の主催するインキュベーションプログラムなどにも積極的に連携を図り営業先を拡大したこと、前四半期より売上貢献を開始したスタートアップ企業の資金調達を支援する「資金調達支援」の受注増等により、当3Q連結累計期間における売上高は72百万円となりました。
※産学官の連携を主体的に推進し、スタートアップ関連の事業を受託する同社のサービス
これらの結果、表2の経営成績になっています。
【財政面の状況】
<自己資本比率>(自己資本(総資本-他人資本)÷総資産)×100)
2022年3月期3Q末時点で66.4%です。
※2022年3月期2Qより四半期連結財務諸表を作成しているため、2021年3月期の数値についてはデータなし。
自己資本比率の数値としては良好なレベルです。(20%以上を安全圏内としています。)
【今期(2022年3月期通期)の見通し】
2022年3月期3Q決算発表と同時に、通期業績見通しを上方修正しています。
通期業績予想は、表4のようになっています。
売上高 [百万円] | 営業利益 [百万円] | 経常利益 [億円] | 親会社株主に 帰属する 当期純利益 [億円] | 1 株当たり 当期純利益 [円] | |
前回(2021/11/8) 発表予想 | 2,200 | 450 | 450 | 310 | 90.46 |
今回(2/7) 修正予想 | 2,300 | 600 | 600 | 450 | 131.22 |
増減額 | 100 | 150 | 150 | 140 | ー |
増減率[%] | 4.5 | 33.3 | 33.3 | 45.2 | ー |
2Q決算発表時点の予想から、売上高は微増ですが、利益面は3~4割程度増額修正しています。
修正の理由は、
前回発表予想の基礎としていた全社の採用予定数が、計画より下回る見込みとなり、主に人件費が予定より縮減したことに伴って販売管理費が減少。
また、コロナ禍においてDX(デジタルトランスフォーメーション)化が加速している現在、環境変化に対応するための革新的なサービスを提供するスタートアップ企業からの求人需要は引き続き拡大傾向にあります。
タレントエージェンシーサービスにおいては、当該求人需要を捉えるべく、採用意欲旺盛な企業への集中的な営業活動を継続して実施しており、
オープンイノベーションサービスについても、好調な「Public Affairs」において政府・自治体向けの営業活動を強化しています。
これにより、両サービスともに受注高が計画を上回っているためです。
株価指標と動向
【2022/2/9(水)終値時点の数値】
- 株価:2,841円
- 時価総額:99.1億円
- PER(株価収益率):32.0倍
PERは、同業で時価総額が近い、エス・エム・エス(2175) 54.4倍、MS-Japan(6539) 21.7倍、アルプス技研(4641) 12.5倍と比較すると、中間的な水準です。
- PBR(株価純資産倍率):7.70倍
- 信用倍率(信用買い残÷信用売り残):ー(信用売り残無し)
- 年間配当金(予想):0円(無配)、年間利回り:ー
決算期 | 1株当たり 年間配当金(円) | 配当性向(%) |
2018年3月期 | 0 | ー |
2019年3月期 | 0 | ー |
2020年3月期 | 0 | ー |
2021年3月期 | 0 | ー |
表5のように、創立以来、無配となっています。
この会社は、
現在成長過程にあり、経営基盤の長期安定化に向けた財務体質の強化及び事業の継続的な拡大発展を目指すため、内部留保の充実が重要であると考え、会社創設以来配当は実施していません。
配当時期や配当回数等については、現在のところ未定で、今後については、経営成績、財政状態、内部留保とのバランス等を総合的に勘案して検討する方針です。
内部留保資金については、事業拡張のための人材採用やシステムの改修、投資等を目的とした中長期的な事業原資として利用していく予定です。
【直近の株価動向】
<週足チャート(直近2年間)>
週足ベースの株価は、一昨年の3月に新規上場した後は、さえない展開が続き、同年12月に安値(1,167円)をつけました。
しかし昨年の8月から出来高を伴い急激に上昇し始め、その安値の5倍の上場来高値(6,610円)を昨年の11月に記録しました。
しかしそれ以降は大きく調整し、高値の半値ほどに落ち込んでいます。
<日足チャート(直近3か月間)>
直近の株価は、11月の上場来高値から調整しており、右肩下がりの下落トレンドで推移しています。
そして、今3Qの決算発表と通期業績の上方修正発表の翌営業日(2/8)は、この内容をあまり評価されなかったのか、大きめの陰線をつけて下落しました。
しかし、今回の立会外分売発表の翌営業日(2/9)は、短期的な需給悪化懸念で売られると思いきや、始値は下げましたが、その後引けにかけて上昇し結局、前日比 105円高(+3.8%)で終了しました。
ただ、下落トレンドは継続中ですので、今後は、5日移動平均線(緑線)や25日移動平均線(赤線)を上抜けて上昇に転じていくのか、さらに下落していくのか要注目です。
まとめ
【業績】
- 2022年3月期3Q累計の業績は、前年同期比のデータがなく比較できないが、
2022年3月期通期予想に対する進捗率は、3Q終了時点で売上高、利益面ともに、3/4程度に達していて順調。 - 主力の「タレントエージェンシー」の、2022年3月期3Q期間の受注高は、四半期会計期間で過去最高受注高を更新した1Q期間に続き同水準の受注高となっている。
【株主還元】
- 配当金は創立以来、無配となっているが、成長企業であるが故、事業拡大のための設備投資等に資金を回すことは理解できる。
【流動性】
- 直近の出来高の5日平均は1,104百株、25日平均は536百株で、流動性は少し低い水準。
- 分売数量は、発行済み株式総数の約5.0%と多めの数量。
【株価モメンタム】
- 週足ベースの株価は、一昨年の3月に新規上場した後は、さえない展開が続き、同年12月に安値(1,167円)をつけたが、昨年の8月から出来高を伴い急激に上昇し始め、同年11月に、その安値の5倍の上場来高値(6,610円)を記録。
それ以降は大きく調整し、高値の半値ほどに落ち込んでいる。 - 直近の株価は、11月の上場来高値から調整しており、右肩下がりの下落トレンドで推移。
そして、今3Qの決算発表と通期業績の上方修正発表の翌営業日(2/8)は、この内容をあまり評価されなかったのか、大きめの陰線をつけて下落。 - しかし、今回の立会外分売発表の翌営業日(2/9)は、短期的な需給悪化懸念で売られると思いきや、始値は下げたが、その後引けにかけて上昇し結局、前日比 105円高(+3.8%)で終了。
- ただ、下落トレンドは継続中で、今後の株価は、5日移動平均線や25日移動平均線を上抜けて上昇に転じていくのか、さらに下落していくのか要注目です。
以上のことから、
レベル(最低⭐~最高⭐⭐⭐⭐⭐) | |
業績 | ⭐⭐⭐⭐ |
株主還元(配当、株主優待等) | ⭐⭐ |
株価モメンタム | ⭐⭐ |
流動性 | ⭐⭐⭐ |
分売数量 | ⭐⭐ |
総合判定 | ⭐⭐⭐(中立) |
と判断しました。
最後までご覧いただき、ありがとうございました。
※株式投資の実際の売買は、自己判断、自己責任でお願いします。