こんにちは!
直近で立会外分売の実施を発表した銘柄に関して、分売で買った場合、利益を得ることができるのか?直近の経営状況や客観的な指標、株価モメンタム等を踏まえ、総合的に分析しました。
今回は、東証1部からパルプ・紙業種の中越パルプ工業です。
最後までお付き合いいただけるとうれしいです!
- 立会外分売とは?
新規株主を増やすことを目的として、上場会社が大株主である銀行やオーナー経営者などの保有株を小口に分けて、証券取引所の立会外で不特定多数に売り出すこと。
取引開始前など取引時間外(=立会外)に売り出されることからこのように呼ばれる。
- 立会外分売の魅力
- 前日終値より安く購入可能
- 立会外分配における買付側の購入価格は確定値段(1本値)で、分売実施日の前日終値よりディスカウントされるのが一般的。過去の例では、約3~5%のディスカウントで実施されています。(ディスカウント率は取引所の規定により最大10%)
- 買付手数料はかからない
- 立会外分売による買付は、通常の立会時間内の取引と種類が異なるため一般的に手数料はかからない。(売却時には通常の手数料が発生)
- 即日売却OK
- 立会外分売で取得した株式は、実施日(買付当日)から売却することが可能
- 前日終値より安く購入可能
- デメリット:抽選で外れることもある
- 買い申し込みが多いと、抽選ではずれて購入できないこともある。
立会外分売の概要
実施日や株数は以下です。実施予定日は幅があり、実際の実施日と販売価格は、会社側から実施日前日に発表があります。
分売数量は決まっていて、100株単位で最大3,000株まで購入できます。
早ければ12/6(月)の夕刻に、会社側からの適時開示で分売値段のお知らせがあります。このブログでも追記しますので、チェックしてくださいね💖
分売予定日 | 2021 年 12 月7日(火) (12/6決定) |
分売数量 | 290,400 株 (発行済み株式総数 13,354,688 株の約2.2%) |
分売値段 | 986 円(12/6決定) |
ディスカウント率 | 3.05 %(12/6決定) |
申込単位数量 | 100株 |
申込上限数量 | 3,000株 |
【実施の目的】
- 11/26開催の取締役会において、新市場区分として「プライム市場」に申請することを決議しており、プライム市場の上場維持基準のうち、流通株式時価総額の基準を充たしておらず、
流通株式時価総額の構成要素である流通株式比率をアップすることにより、流通株式時価総額の基準を早期に達成する。 - 株式の分布状況の改善や流動性の向上を図る。
としています。
分売数量は、発行済み株式総数の約2.2%とほどほどの数量※です。
※一概に言えませんが、目安として、5%以上:かなり多い、3%以上5%未満:多い、1%以上3%未満:ほどほど、1%未満:少ないとしています。
この銘柄の直近の出来高(売買が成立した株式の数量)の5日平均は1,230百株、25日平均は504百株で、流動性は少し低い水準です。
どんな会社?
印刷用紙から産業用紙、新聞用紙までを手掛ける総合紙パルプメーカーです。
富山県高岡市に本社を置く業界中堅の会社です。
1998年から「竹紙」にも取り組みはじめており、現在では日本の竹を大量に活用する唯一で最大の企業となっています。
そのため、多くの地域が抱える放置竹林問題の解決、隣接する森林の保全、里山における生物多様性保全や地域経済活性化のモデルにもなっています。
事業内容は以下です。
- パルプ類、紙類およびその副産物の製造、加工、ならびに売買
- 林業、製材業および木材の加工、売買ならびに緑化事業の施工
- 化学薬品の製造、加工ならびに売買
- 不動産の売買、賃貸、管理および仲介ならびにスポーツ施設の経営
- 鉱業、電気供給および運送業ならびに倉庫業他
事業セグメントは、「紙・パルプ製造事業」「発電事業」「その他」があり、2021年3月期通期の売上高構成比は、
- 紙・パルプ事業 82.2%
- 発電事業 8.7%
- その他(ナノフォレスト事業、紙加工品製造事業、運送事業、設備設計施工・修理事業、原材料事業、紙断裁選別包装事業、中越エコプロダクツ事業等) 9.1%
と「紙・パルプ事業」が8割を占めています。
直近の経営概況
【2022年3月期2Q(2021年4月~2021年9月)の経営成績】(2021年11月11日発表)
決算期 | 売上高 [億円] (前年同期比[%]) | 営業利益 [百万円] (同) | 経常利益 [百万円] (同) | 親会社株主に 帰属する純利益 [百万円] (同) |
2021年3月期2Q累計 | 374 (△22.2) | △1,940 (ー) | △1,976 (ー) | △2,344 (ー) |
2022年3月期2Q累計 | 432 (15.6) | 1,108 (ー) | 1,414 (ー) | 802 (ー) |
2022年3月期通期会社予想 | 850 (3.7) | 1,650 (ー) | 1,750 (ー) | 700 (ー) |
通期予想に対する2Qの進捗率[%] | 50.8 | 67.2 | 80.8 | 115 |
2022年3月期2Qの業績は、前年同期比 増収増益で、売上は1割強増、利益面は黒字転換しており好調です。
通期予想は、今期から「収益認識に関する会計基準」を適用しており単純比較はできませんが、売上高は微増、利益面は黒字転換予想で、
通期予想に対する進捗率は、2Q終了段階で、売上高はそこそこ、利益面は6割を超えており、特に純利益は既に通期予想を超過している状況です。
【2022年3月期2Qの状況、経営成績の要因】
同社グループを取り巻く経済環境は、新型コロナウイルス感染症の影響により落ち込んだ経済活動再開への期待感を受け、
前年後半から緩やかに回復基調にあり、イベントの自粛等の影響で販売数量が大幅に減少した前期からは持ち直し傾向ですが、依然不透明な状況が続いています。
内需の大幅な回復が見込めない状況下、同社グループは輸出案件を積極的に受注しコロナ感染症拡大前の前々期並みの数量確保を目指しました。
以上の結果が、表2の経営成績です
【セグメント別の業績】
セグメント別の業績は、表3の結果になりました。
セグメント | 売上高[億円] (前年同期比[%]) | 営業利益 [百万円](同) |
紙・パルプ製造 | 379 (18.7) | 594 (前期2,723百万の損失) |
発電 | 32.4 (△9.9) | 435 (△44.6) |
その他 | 92.2 (15.0) | 45 (前期58百万の損失) |
主力の「紙・パルプ製造事業」と「その他」は前年同期比 増収で黒字転換、「発電事業」は減収減益の結果です。
各セグメントの状況は以下です。
<紙・パルプ製造事業>
(新聞用紙)
販売は、構造的な要因による発行部数の減少と新型コロナウイルス感染症による広告減での頁数減少という複合要素により減少傾向が続いていますが、
今期は他社災害による新聞社への救援納入を行ったことにより、一時的に前期を上回りました。
(印刷用紙)
販売は、コロナ禍で停滞した前期の反動を受けて数量・金額共に前期を上回りました。
(包装用紙)
販売は、コロナ禍での需要減少の影響を受け依然インバウンド需要に回復は見られませんが、自動車関連を中心とした需要が回復基調にあり、数量・金額共に前期を上回りました。
(特殊紙・板紙及び加工品等)
販売は、新型コロナウイルス感染症による影響で高級白板紙分野にて需要減退を余儀なくされましたが、壁紙は前期を上回り、巣ごもり需要の食品関連を中心とした加工原紙も前期を上回りました。
全般的な回復基調により、数量・金額ともに前期を上回りました。
(パルプ)
販売は、世界的にパルプ市況が回復し、数量・金額とも前期を上回りました。
<発電事業>
安定操業に努めましたが、紙生産数量増加に伴う売電量の減少や燃料価格の上昇などにより減収・減益となりました。
<その他>
販売数量増加に伴う工場稼働率向上もあり、紙断裁選別包装・運送事業等の紙・パルプ製造事業を補助する「その他事業」は増収・黒字転換となりました。
【財政面の状況】
<自己資本比率>(自己資本(総資本-他人資本)÷総資産)×100)
2022年3月期2Q末時点で40.1%と前期末(38.4%)から1.7ポイント増加しました。
自己資本比率の数値としては問題ない水準です。(20%以上を安全圏内としています。)
<キャッシュ・フロー>
2022年3月期2Q累計のキャッシュ・フロー(以下、CF)は、営業活動によるCF 48.2億円の収入、投資活動によるCF 15.8億円の支出の結果、営業活動によるCFと投資活動によるCFを合計したフリーCF※は32.4億円のプラスとなりました。
※フリー・キャッシュ・フロー:プラスの場合、会社が使える資金があることを意味し、マイナスの場合、会社が自由に使うことができる資金が少ないことを意味する。
前期(2021年3月期)2QのフリーCF(マイナス13.0億円)と比較すると、45.4億円増加しています。
これは主に、前期末に比べ、税金等調整前四半期純利益による収入が31.1億円増加、仕入債務が38.2億円減少し営業CFの収入が増加したことによるものです。
【今期(2022年3月期通期)の見通し】
2021 年5月 14 日に公表された、「2021 年3月期決算短信」の業績予想から見直しはされていません。
株価指標
【12/3(金)終値時点の数値】
- 株価:986円
- 時価総額:132億円
- PER:18.8倍
PERは、同業で時価総額が近い、王子ホールディングス(3861) 7.1倍、北越コーポレーション(3865) 6.2倍、三菱製紙(3864) 28.7倍と比較すると、中間的な水準です。
- PBR:0.27倍
- 信用倍率(信用買い残÷信用売り残):22.1倍
- 年間配当金(会社予想):40円(年2回 9月 20円、3月 20円)、年間利回り:4.1%(配当性向 76.3%)
配当は年利回り 4.1%で、東証1部の単純平均1.98%(12/3時点) と比較すると、2倍の高い水準です。
直近5年間の配当金は表4のようになっており、年間50円が続いていたのですが、
前期(2021年3月期)は、新型コロナウイルス感染症の影響を受けて紙の需要が大きく減退し、赤字だったため無配となっています。
決算期 | 1株当たり 年間配当金(円) | 配当性向(%) |
2017年3月期 | 50 | 53.2 |
2018年3月期 | 50 | ー(赤字) |
2019年3月期 | 50 | 92.5 |
2020年3月期 | 50 | 72.6 |
2021年3月期 | 0 | ー |
配当性向は配当が一定のためばらついていますが、50%以上と高くなっています。
この会社は、
株主価値と企業価値の持続的向上を目指し、業績の状況や企業体質の強化ならびに今後の事業展開等を勘案しながら充分な株主資本の水準を維持するとともに、
株主に対する利益還元のための安定配当の実施を基本方針としています。
【直近の株価動向】
<週足チャート(直近2年間)>
株価は、昨年のコロナショック前からずっと高値切り下げの下落トレンドが続いており、
直近では、コロナショック時の安値(1,023円)を下回ってきました。
<日足チャート(直近3か月間)>
直近の株価は、9月中旬の高値(1,279円)から緩やかながら、安値切り下げ高値切り下げの下落トレンドで推移しており、
今回の立会外分売発表の翌営業日(11/29)は、短期的な需給悪化懸念からか、窓を開けて大きく売られ、前日比 126円(-11.4%)下げました。
しかしその後は大きく下がらず、横ばいの動きになっています。
今後の株価は、節目の1,000円程度で下げ止まりを見せ、上昇に転じてくるのか、さらに下落していくのか要注目です。
まとめ
【業績】
- 2022年3月期2Qの業績は、イベントの自粛等の影響で販売数量が大幅に減少した前期からは持ち直し、前年同期比 増収増益で、売上は1割強増、利益面は黒字転換しており好調。
- 通期予想は、今期から「収益認識に関する会計基準」を適用しており単純比較はできないが、売上高は微増、利益面は黒字転換予想。
- 上記業績予想に対する進捗率は、2Q終了段階で、売上高はそこそこ、利益面は6割を超えており、特に純利益は既に通期予想を超過している状況。
【株主還元】
- 配当は年利回り 4.1%で、東証1部の単純平均1.98%(12/3時点) と比較すると2倍の高い水準。
- 前期(2021年3月期)業績悪化のため無配だったが今期復配。前期を除いて、直近の配当金は業績によらず50円と一定で、配当性向は50%以上と高めの傾向。
【流動性】
- 直近の出来高の5日平均は1,230百株、25日平均は504百株で、流動性は少し低い水準。
- 分売数量は、発行済み株式総数の約2.2%とほどほどの数量。
【株価モメンタム】
- 週足ベースの株価は、コロナショック前からずっと高値切り下げの下落トレンドが続いており、直近では、コロナショック時の安値(1,023円)を下回って推移。
- 直近の株価は、9月中旬の高値(1,279円)から緩やかながら、安値切り下げ高値切り下げの下落トレンドで推移しており、
今回の立会外分売発表の翌営業日(11/29)は、短期的な需給悪化懸念からか、窓を開けて大きく売られ、前日比 126円(-11.4%)下げた。 - しかしその後は大きく下がらず、横ばいの動き。今後の株価は、節目の1,000円程度で下げ止まりを見せ、上昇に転じてくるのか、さらに下落していくのか要注目。
以上のことから、
レベル(最低⭐~最高⭐⭐⭐⭐⭐) | |
業績 | ⭐⭐⭐⭐ |
株主還元(配当、株主優待等) | ⭐⭐⭐⭐ |
株価モメンタム | ⭐⭐ |
流動性 | ⭐⭐⭐ |
分売数量 | ⭐⭐⭐ |
総合判定 | ⭐⭐⭐(中立) |
と判断しました。
最後までご覧いただき、ありがとうございました。
※株式投資の実際の売買は、自己判断、自己責任でお願いします。