【自社株買いは買いか?】FOOD&LIFECOMPANIES(3563)

寿司銘柄分析
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こんにちは!

直近で自社株式の取得を発表した銘柄に関して、この発表のタイミングで株を買った場合、利益を得ることができるのか?直近の経営状況や客観的な指標、株価モメンタム等を踏まえ、総合的に分析しました。

今回は、東証1部から小売業種のFOOD&LIFECOMPANIESです。

最後までお付き合いいただけるとうれしいです!

  • 「自社株買い」とは?

上場企業が自らの資金を使って、株式市場から自社の株式を買い戻すことをいう。

日本証券業協会HP 金融・証券用語集

自社の株を買った後は、

  1. 買い戻した株式を消却する。(無効とする。)
  2. 金庫株としてそのままにしておき、いずれ資金調達などの目的で売却する。

の2通りあります。

自社株買いのメリットとデメリット

<メリット>

  1. 発行済み株式数が減るため、会社の利益総額が変わらなければ、1株当たり利益(EPS)が増えるので、企業価値が上がる=株価が上がる可能性がある。(配当とともに株主還元の一つ)
  2. 配当金の支払いが少なくて済む。(企業側のメリット)
  3. 敵対的買収の防衛策(株価が上がって敵対企業が株を買いにくくなることと、市場に出回る株数の割合が少なくなるため)
  4. ROE(株主資本利益率:ROE = 当期純利益 ÷ 自己資本×100(%))が上がる。
    • 自社株買いを行った場合、自己資金が減りますので、分母の「自己資本」が小さくなりROEが上がります。
  5. 自社の株価は「割安」というメッセージを送ることができる。
    • 自社の株が安い時に買った方が、購入資金が少なくて済みます。(企業側のメリット)

<デメリット>

  1. 自己資金が減り、設備投資などの自社の成長に回せる資金が少なくなる。
  2. 自己資本比率(自己資本(総資本-他人資本)÷総資産) ×100)が下がる。

などがあります。

それでは、見ていきましょう!

自社株買いの概要

寿司

会社から発表された自己株式取得の概要は、表1のようになっています。

株数と金額の上限が設定されていますが、株価が上がれば、取得に必要な金額も大きくなりますので、予定の取得株数よりも少なくなることが多いです。

自社株買い発表日2021年11月5日(金)
自己株式取得を行う理由ストックオプション(新株予約権)の行使に伴い交付する株式に充当するため。
取得期間2021年11月15日~ 2021年12月17日
取得株式の総数普通株式 55万株(上限)
発行済株式総数に対する割合:0.47%
取得金額の総額20億円(上限)
取得方法東京証券取引所における市場買付け
表1: FOOD&LIFECOMPANIES 自社株買い概要

今回の自社株買いは、 ストックオプション(新株予約権)の交付する株式に充当するということで、取得する株式の将来的な消却はなさそうです。

今回の株式の取得数量は、発行済み株式総数の0.47%と自社株買いの数量としては少ない数量(※1)です。

※1 一概に言えませんが、目安として、5%以上:かなり多い、3%以上5%未満:多い、1%以上3%未満:ほどほど、1%未満:少ないとしています。

直近の出来高(売買が成立した株式の数量)の5日平均は6,557百株、25日平均は6,457百株で、流動性は高い水準です(1,000百株を平均水準としています)。

どんな会社?

居酒屋

皆さんご存知の、回転寿司大手「スシロー」を運営しているフードサービスの会社です。

その他には、同じ寿司業態の「京樽」「海鮮三崎港」や、居酒屋の「杉玉」も展開しています。

近年では、台湾、香港、タイなどの海外にも店舗進出しています。

事業セグメントは、以下の4つがあります。

  • 国内スシロー事業・・・国内で展開する「スシロー」及びテイクアウト専門店
  • 海外スシロー事業・・・海外で展開する「スシロー」及びテイクアウト専門店
  • 京樽事業・・・株式会社京樽が運営する全ブランド(主要ブランド「京樽」・「海鮮三崎港」)
  • その他事業・・・:株式会社FOOD & LIFE INNOVATIONS が運営する全ブランド(主要ブランド「杉玉」)

2021年9月期のセグメント売上高構成比は、

  • 国内スシロー事業 88.5%
  • 海外スシロー事業 7.1%
  • 京樽事業 3.8%
  • その他事業 0.6%

となっており、「国内スシロー事業」の売上が9割近く占めています。

直近の経営概況

経営状況

2022年9月期通期(2020年10月~2021年9月)の経営成績】(2021年11月5日発表)

決算期売上収益
[億円]
(前年同期比[%])
営業利益
[億円]
(同)
税引前利益
[億円]
(同)
親会社の所有者に
帰属する当期利益
[億円]
(同)
2020年9月期通期2,050
(2.9)
121
(△17.1)
105
(△26.6)
64.6
(△35.2)
2021年9月期通期2,408
(17.5)
229
(89.9)
216
(105)
132
(104)
2022年9月期通期会社予想3,100
(28.7)
210
(△8.3)
190
(△12.0)
120
(△9.0)
表2:FOOD&LIFECOMPANIES 2021年9月期通期経営成績

2021年9月期通期の業績は、前年同期比 増収益で、特に利益面は2倍程度の伸びとなっており好調でした。

しかしながら、今期(2022年9月期)の通期予想は、前期比 増収減益の予想となっており、少し寂しい感じです。

【2021年9月期通期の状況、経営成績の要因】

外食業界において、新型コロナウイルス感染症拡大の影響は大きく、消費マインドが回復するには相応に時間を要する状況にあり、かつテイクアウトやデリバリーの利用が増加するなど、外食業界をとりまく環境が大きく変化している状況です。

このような状況の中、同社グループでは、「変えよう、毎日の美味しさを。広めよう、世界に喜びを。」をVISIONとして、日々の食を美味しくすることで、お客様の生活や人生までゆたかにしたいという願いに向けて、

商品開発、店内調理、安心・安全の取り組み及びサービスの向上に取り組んできました。

また2021年4月1日に、テイクアウト寿司「京樽」ブランドを展開する株式会社京樽の株式を取得(完全子会社化)し、コロナ禍~アフターコロナにおける消費者行動の変化への対応を図っています。

上記の結果、売上高及び各段階利益共に過去最高(利益面ではコロナ禍の一過性の特殊要因あり)を記録し、コロナ禍でも ①国内外での出店拡大 ②省人化設備投資の継続 ③(株)京樽の買収により、将来の成長基盤作りを実現しています。

なお、利益の中には、「時短要請協力金」約110億円が含まれています。

グループ業態別の店舗数は、表3のようになっています。

表3:FOOD&LIFE COMPANIES 業態別店舗数(2021年9月期末時点)※出所:2021年9月期 決算短信[IFRS](連結)より抜粋

店舗数は、国内で前年度比 60.1%、海外で60.5%、全体で60.1%増とかなりのペースで増加しています。

【セグメント別の業績】

セグメント別の業績は、表4の結果になりました。

セグメント売上収益[億円]
(構成比[%])
営業利益[億円]
(同)
国内スシロー2,132
(88.5)
258
(113)
海外スシロー170
(7.1)
△12.1
(△5.3)
京樽92.7
(3.8)
1.8
(0.8)
その他14.7
(0.6)
△12.0
(△5.2)
表4:2021年9月期通期  セグメント別業績

「海外スシロー事業」は、コロナ禍の厳しい営業規制に大きく影響を受け、計画していた営業利益黒字化は未達でしたが、

EBITDA(営業利益に減価償却費及び償却費を引いた数値)では約14億円の利益を上げる事業に成長中です。

「京樽事業」は、営業利益やEBITDAでプラスですが、営業利益率2.0%となっており収益構造は改善(本社統合等)が必要と同社は考えています。

【財政面の状況】

自己資本比率(自己資本(総資本-他人資本)÷総資産)×100)は、2021年9月期末時点で21.3%と前期末(21.4%)から0.1ポイント減少しました。

自己資本比率の数値としてはぎりぎり問題ないレベルです。(20%以上を安全圏内としています。)

また、2021年9月期通期のキャッシュ・フロー(以下、CF)の状況は、営業活動によるCF 317億円の収入、投資活動によるCF 173億円の支出の結果、営業活動によるCFと投資活動によるCFを合計したフリーCF※は144億円のプラスとなりました。

フリー・キャッシュ・フロー:プラスの場合、会社が使える資金があることを意味し、マイナスの場合、会社が自由に使うことができる資金が少ないことを意味する。

前期(2020年9月期)2QのフリーCF(プラス90.4億円)から53.5億円増加しました。

これは主に、税引き前利益が前期より110億円増加したことにより、営業CFの収入が増加したことと等が要因です。

【今期(2022年9月期)の見通し】

今期の新規出店計画(テイクアウト専門店含む)は、

  • 国内スシロー 50~65店(前年 52店)
  • 海外スシロー 33~41店(22店)
  • 京樽 20~30店(7店)
  • その他(杉玉および新業態) 33~39店(20店)

としており、全体で136~175店新規出店、国内スシローは昨年と同等、その他は昨年よりもペースを上げ拡大をする計画です。

株価指標

株価指標

【11/5(金)終値時点の数値】

  • 株価:5,010円
  • 時価総額:5,815億円
  • PER:46.1倍

PERは、同業で時価総額が近い、くら寿司(2695) 86.6倍、カッパ・クリエイト(7421) 141倍、すかいらーくHD(3197) 863倍と比較すると、低い水準です。

  • PBR:10.1倍
  • 信用倍率(信用買い残÷信用売り残):4.58倍
  • 年間配当金(予想):22.5円(年1回 9月)、年間利回り:0.4%(配当性向 21.8%)  

配当は年利回り 0.4%で、東証1部の単純平均1.84%(11/5時点) と比較すると低い水準です。

直近の配当金は、表5のようになっています。

決算期1株当たり
年間配当金(円)
配当性向(%)
2017年9月期11.317.9
2018年9月期21.330.8
2019年9月期22.526.2
2020年9月期1527.0
2021年9月期22.519.8
表5:FOOD&LIFECOMPANIES 年間配当金推移

配当金は、10~20円程度、

配当性向は、15~30%と安定しています。

この会社は、

株主への利益の還元を経営上重要な施策の一つとして位置づけており、恒常的な業績向上と業績に応じた適正な利益配分を継続的に実施することを基本方針とし、

配当については、業績及び内部留保の充実等を総合的に勘案しながら、業績に連動した年1回の剰余金配当を実施する方針です。

内部留保資金については、経営基盤の強化に向けた諸施策の実施のための積極的な投資等の原資として充当していく予定です。

【株主優待】

この会社は株主優待があり、3月末と9月末の年2回、100株以上保有の株主に国内の「スシロー」と「鮨 酒 肴 杉玉」で利用可能な株主優待割引券(1枚につき、550円の割引)を2枚(200株以上:3枚、400株以上:4枚、800株以上:8枚、2,000株以上:20枚)贈呈されます。

100株保有の場合、配当金+株主優待(1,100円×年2回=2,200円相当)で、年利回り 0.9%となります。

【直近の株価動向】

<週足チャート(直近2年間)>

出所:楽天証券サイト

株価は、コロナショック時の安値(1,250円)から右肩上がりの上昇トレンドで、今年の4月中旬に、4倍以上の高値(5,480円)をつけました。

しかしその後は、この高値を更新できずに4,000円の節目を下値支持として、4,000~5,000円程度のレンジ内で推移しています。

<日足チャート(直近3か月間)>

出所:楽天証券サイト

直近の株価は、月中旬の安値(3,970円)から一気に上昇し、9月下旬(優待権利付き最終日)に高値(5,420円)をつけました。

しかしその後は上昇せずに、4,800~5,100円程度のレンジ内で推移しています。

今後、このレンジの上限を上放れして、9月の高値を上抜けてくれば、さらなる上昇が期待できそうです。

まとめ

まとめ

【業績】

  • 2021年9月期通期の業績は、前年同期比 増収増益で、特に利益面は2倍程度の伸びとなっており好調だった。
  • 今期(2022年9月期)の通期予想は、前期比 増収減益予想となっており、勢いがあまり感じられない。
  • しかしながら、今期の新規出店計画(テイクアウト専門店含む)は意欲があり、国内スシロー事業は昨年と同等、その他は昨年よりもペースを上げて店舗数を増やす計画となって、現在の業績予想から上振れる可能性も大いにある。

【株主還元】

  • 配当金は年利回り  0.4%で、東証1部の単純平均1.84%(11/5時点) と比較すると低い水準。
  • 株主優待制度があり、3月末と9月末の年2回、100株以上保有の株主に国内の「スシロー」と「鮨 酒 肴 杉玉」で利用可能な株主優待割引券(1枚につき、550円の割引)を2枚(200株以上:3枚、400株以上:4枚、800株以上:8枚、2,000株以上:20枚)贈呈される。100株保有の場合、配当+株主優待の年利回りは0.9%となる。

【流動性・自社株買い数量】

  • 直近の出来高(売買が成立した株式の数量)の5日平均は6,557百株、25日平均は6,457百株で、流動性は高い水準。
  • 自社株買い数量は、発行済み株式総数の0.47%と少ない数量。

【株価モメンタム】

  • 株価は、昨年の
  • 株価は、コロナショック時の安値(1,250円)から右肩上がりの上昇トレンドで、今年の4月中旬に、4倍以上の高値(5,480円)をつけたが、その後はこの高値を更新できずに、4,000円の節目を下値支持として、4,000~5,000円程度のレンジ内で推移。
  • 直近の株価は、8月中旬の安値(3,970円)から一気に上昇し、9月下旬(優待権利付き最終日)に高値(5,420円)をつけ、その後は上昇せずに、4,800~5,100円程度のレンジ内で推移。今後、このレンジの上限を上放れして、9月下旬の高値を上抜けてくれば、さらなる上昇が期待できそう。

以上のことから、

レベル(最低⭐~最高⭐⭐⭐⭐⭐)
業績⭐⭐⭐
配当を含む株主還元⭐⭐⭐
株価モメンタム⭐⭐⭐
流動性⭐⭐⭐⭐
自社株買い数量⭐⭐⭐
総合判定⭐⭐⭐(中立)
※「総合判定」=⭐4つ以上「買い」、⭐3つ「中立」、⭐2つ以下「見送り」

と判断しました。

最後までご覧いただき、ありがとうございました。

※株式投資の実際の売買は、自己判断、自己責任でお願いします。

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