こんにちは!
今期黒字転換を見込んでいる会社は、一般的に株価が上がりやすいと言われています。そこで、前期赤字から今期黒字転換を見込んでいて、かつ高配当(予想利回り3%以上)銘柄をピックアップし、今買うべき銘柄なのか?事業内容や直近の経営状況、客観的な株価指標、株価モメンタム等を総合的に勘案して判断しました。
今回は、東証1部から輸送用機器業種のサノヤスホールディングスです。
最後までお付き合いいただけるとうれしいです!
事業内容
祖業の造船業から始まりましたが、2021年2月に造船事業を譲渡し、現在は設備関連等のニッチ事業の集合体の持ち株会社です。
現在は、傘下の会社が、それぞれ以下の事業を行っています。
- サノヤス・エンジニアリング株式会社・・・工事用エレベータの製造・販売・レンタル、機械式駐車装置の製造・販売・メンテナンス、ショットブラスト(様々な材料の表面加工を行う方法)マシンの製造販売
- サノヤス精密工業株式会社・・・半導体産業向け等の精密機械部品の加工、特殊車両用機械部品の製造
- みづほ工業株式会社、美之賀機械(無錫)有限公司・・・化粧品・医療品の真空乳化装置等の製造・販売、工場排水処理装置の製造・販売、各種タンク・鋼構造物の設計・施工
- 山田工業株式会社・・・空調・給排水・衛生設備の設計・施工、医療廃棄物滅菌破砕装置の販売
- ハピネスデンキ株式会社・・・高層ビル向け等動力制御盤・配電盤の製造・販売
- サノヤス・ライド株式会社、サノヤス・ライドサービス株式会社・・・遊園地遊戯機械の製造・販売・運営、遊園地・遊園地施設の運営管理受託
中でも、有名なお台場のパレットタウン大観覧車はサノヤス・ライドとライドサービスが運営、管理しています。
2021年3月期のセグメント別の売上高構成比は、2021年2月まで「造船事業」が入っていますので、
- 造船事業 58.1%
- M&T事業(造船事業以外) 41.9%
となっています。
直近の経営状況
前期(2021年3月期)の経営成績は、
- 売上高 446.3億円(前年同期比 10.4%減)
- 営業損失 52.7億円
- 経常損失 51.5億円
- 親会社株主に帰属する当期純損失 36.9億円
でした。減収減益で、利益面は赤字でした。
会社側コメントは、
当社グループを取り巻く事業環境は、造船事業においては従来からの“船腹及び建造設備の過剰”という構造が依然として継続し、競合する中国や韓国が造船事業を政策的に支援する中、上記グローバル経済の失速に伴う海運マーケットの不調と併せ、厳しい状況が続いてきた。
バルクキャリアー(ばら積み貨物船:梱包されていない穀物・鉱石・セメントなどのばら積み貨物を船倉に入れて輸送するために設計された貨物船)の海運市況も2020年年央まで低位で推移した後、年後半から足元にかけてスポット案件の需給状況の好転から上昇局面も見られたものの用船料水準は依然として厳しく、新規商談も低調で新造船価が回復しない状況となった。
これを踏まえ当社は、造船事業を行うサノヤス造船㈱について、昨今の事業環境や単独で存続していく為に必要な規模・体力面について熟考した結果、2021年2月28日付で当該事業の譲渡を行い㈱新来島どっく傘下に入る形で事業の継続を図ることとした。これに先立ち、サノヤス造船(株)傘下で食品タンク等の製造・販売を行っていたプラント事業を、2021年1月4日付でサノヤスMTG(株)内に移管し、2021年4月1日付でみづほ工業と合併することとした。
2021年3月以降は、造船事業を持たない持株会社の下に8事業会社を擁する中堅企業連合体として再編し、新たなトップの下に従来事業の継承と発展に向けて一歩を踏み出した。
とのこと。損益面においては、コロナ禍の中、M&T事業(造船事業以外)は営業損失を15百万円に止めましたが、造船事業の損失を補填するまでには至らなかったということです。
個別で見ていくと、
造船事業の売上高は、前期比22.5億円(8.0%)減少の259.2億円。営業損益は資材費や工費の高騰を背景に原価が高止まりしていることや、2020年3月末対比で2021年2月末時点では円高に進行していたことより、新規受注船を含む今後製造する米ドル建受受注済新造船の円換算売上見込額が減少した結果、46.7億円の営業損失(前期は29.0億円の営業損失)となっています。
M&T事業においては、半導体及び電子機器業界向け精密機械加工の売上好調と、2020年1月に買収した配電盤製造の販売上乗せが業績に寄与した一方、コロナ対応の緊急事態宣言や海外渡航制限の直撃を受けた国内レジャー、事業譲渡に至った海外レジャーに加えて、顧客層の投資意欲が一気に後退したショットブラスト販売や管工事・プラント工事の不振の影響から、グループ業績は大きな後退を余儀なくされ、売上高は、前期比29.2億円(13.5%)減少の187.1億円、営業損失は15百万円(前期は15.1億円の営業利益)となっています。
造船事業とM&T事業の両方で、営業損失が大きくなっています。
経常損失より純損失が減っているのは、投資有価証券売却益の特別利益が81.5億円と、関係会社株式等売却損(造船事業と豪州観覧車事業の売却損:48.5億円)と特別損失(14.1億円)を合わせ、利益の金額のほうが大きかったためです。
財政面は、
キャッシュフローは、2021年3月期末における現金及び現金同等物は、2020年3月期末に比べ96億円減少し、54.5億円となっています。この減少は、造船事業等を譲渡したことによる連結の範囲の変更を伴う子会社株式の売却による支出を含んでいます。
自己資本比率(自己資本(総資本-他人資本)÷総資産) ×100)は、2021年3月期末時点で26.5%と前期末(18.2%)から8.3ポイント上がっています。前期より改善されている状況です。
今期(2022年3月期)通期の会社予想は、
- 売上高 200億円(前年比 55.2%減)
- 営業利益 6.0億円(同 +58.7億円)
- 経常利益 5.0億円(同 +56.5億円)
- 親会社株主に帰属する当期純利益 30.0億円(同 +39.9億円)
としており、売上高は造船事業がない分減少の見込みですが、利益面は改善される計画です。
会社側コメントとしては、
2021年3月の取締役会において、2022年3月期を初年度とする4ヵ年の「中期経営計画2021」を決定した。これは、新たな成長軌道を展望した経営戦略を打ち出すことによりグループの一層の結集を図るものであり、従来以上に総合力発揮に重心を移すことにより、それぞれの事業領域においてニッチトップを目指すという、より高い目標を掲げて力強く再出発する内容となっている。
「技術オリエンティッド」(=技術を経営の中核に据え、製品・ものづくりを鍛える)、「ハイサイクル経営」(=経営サイクルや情報・意思伝達が高速で回転する経営管理を実現する)をメインコンセプトとして、4年後(2024年度)には「連結売上300億円(2021年度:200億円)、経常利益率6%(2021年度:2.5%)、ROE10%」の達成目標を目指す。としています。かなり高い目標ですね!
また、2021年4月以降政府による緊急事態宣言が発出・期間延長されたことから、遊園地来客のさらなる減少等売上・利益の押し下げ要因が生じる可能性があるとしています。
株価指標
6/24(木)終値時点の数値
- 株価:154円
- 時価総額:50.7億円
- PER:16.9倍
PERは、同業で時価総額が近い、名村造船所(7014) 0倍、内海造船(7018) 17.1倍となっており、内海造船と比較すると同水準となっています。
- PBR:0.72倍
- 信用倍率(信用買い残÷信用売り残):416倍
- 年間配当金(会社予想):5円(年1回 3月 5円)、年間利回り:3.2%(配当性向 54.6%)
※直近5年間の配当金は、以下のようになっています。
決算期 | 年間配当金(円) | 配当性向(%) |
2017年3月期 | 5 | ―(赤字) |
2018年3月期 | 5 | ―(赤字) |
2019年3月期 | 5 | 11.8 |
2020年3月期 | 5 | ―(赤字) |
2021年3月期 | 5 | ―(赤字) |
配当金は、直近では5円と変わらないですが、2019年3月期を除き赤字を計上していますので、少し無理をしているという印象があります。
会社の方針としては、2024年度までの中期経営計画で、2021年度から配当性向30%以上(最低5円配当)を掲げています。
また、株主優待として、100株以上所有で3月末の株主は「パレットタウン大観覧車」利用券2枚をいただけます。こちらを金額換算すると(1,000円×2=2,000円)
- 株主優待+配当金の年利回り(100株以上の場合):16.2%
になります。こちらはお得ですね!
週足チャート(2年間):
株価は、昨年のコロナショック前の水準(173円)に、数回タッチしています。
特に、昨年(2020年)10月に投資有価証券売却益(特別利益)を36.4億円を計上し、借入極度額を30億円から10億円に減額する。と発表があった直後に、株価は出来高を伴い急騰し216円まで到達。現在はそこから下落基調で推移しています。
まとめ
2022年3月期は、不採算の造船事業を譲渡した効果で、売上は減少するのですが、利益面はプラスという計画です。
また、2024年度までの中期経営計画を発表しており、連結売上300億円(2021年度:200億円)、経常利益率6%(2021年度:2.5%)、ROE10%」の数値達成目標としており、高い目標を掲げています。この目標を取り下げすることなく到達できれば、今よりも高い株価が目指せそうです。
配当は、直近5年以上は年間5円の配当を維持していますが、2019年3月期以外は利益が出ていませんので、配当金の支払いによる現金の流出が気になる所です。
株価は、昨年10月の高騰以降、下落基調ですので、いつ上昇基調に転じるのかがポイントです。
以上のことから、
レベル(最低⭐~最高⭐⭐⭐⭐⭐) | |
業績 | ⭐⭐ |
配当、株主優待を含む株主還元 | ⭐⭐⭐⭐ |
株価モメンタム | ⭐⭐ |
総合判定 | ⭐⭐⭐(中立) |
と判断しました。
直近は中期的に下落基調ですので、上昇に転じたら押し目で買うのもありかもしれません。
最後までご覧いただき、ありがとうございました。
※株式投資の実際の売買は、自己判断、自己責任でお願いします。