直近で立会外分売の実施を発表した銘柄に関して、買った場合、利益を得ることができるのか?直近の経営状況や客観的な指標、株価モメンタム等を踏まえ、総合的に分析しました。
最後までお付き合いいただけると嬉しいです!
- 立会外分売とは?
新規株主を増やすことを目的として、上場会社が大株主である銀行やオーナー経営者などの保有株を小口に分けて、証券取引所の立会外で不特定多数に売り出すこと。
取引開始前など取引時間外(=立会外)に売り出されることからこのように呼ばれる。
- 立会外分売の魅力
- 前日終値より安く購入可能
- 立会外分配における買付側の購入価格は確定値段(1本値)で、分売実施日の前日終値よりディスカウントされるのが一般的。過去の例では、約3~5%のディスカウントで実施されています。(ディスカウント率は取引所の規定により最大10%)
- 買付手数料はかからない
- 立会外分売による買付は、通常の立会時間内の取引と種類が異なるため一般的に手数料はかからない。(売却時には通常の手数料が発生)
- 即日売却OK
- 立会外分売で取得した株式は、実施日(買付当日)から売却することが可能
- 前日終値より安く購入可能
- デメリット:抽選で外れることもある
- 買い申し込みが多いと、抽選ではずれて購入できないこともある。
第16回目は、東証1部から卸売業種の明治電機工業です。
分売の概要
実施日や株数は以下です。実施予定日は幅があり、実際の実施日と販売価格は、会社側が実施日前日に発表しますので前日にならないとわかりません。分売数量は決まっていて、100株単位で最大1,000株まで購入できます。
6/15(火)の夕刻に、会社側からの適時開示で実施日と分売価格のお知らせがありますので、チェックしてくださいね💖
分売実施予定日 | 2021/6/16(水)~2021/6/18(金) |
分売数量 | 200,000株 (発行済み株数12,067,120株の約1.7%) |
申込単位数量 | 100株 |
申込上限数量 | 1,000株 |
実施の目的 | 一定数量の売却意向があり、当社として検討した結果、立会外分売による当社株式の分布状況の改善および流動性の向上を図るため |
分売株数が、発行済み株数の1.7%とそれほど多くありません。
また、この銘柄の直近の出来高(売買が成立した株式の数量)の5日平均は28,700株、25日平均は8,900株ですので、流動性は低いレベルです。
事業内容
電気機器・計測器及び電気設備、自動・省力化用機能部品とその設備の販売及び輸出入業務をしている会社です。
その他は、
- エレクトロニクス製品・各種検査装置・メカトロ・FA・情報・物流システムの開発、設計、製作
- 計測・制御・情報処理のコンサルティング
- 工業計器・電気計測器の保守
をしています。
販売先は、トヨタグループが売上高の半分弱を占めています。
2021年3月期通期の製品カテゴリ別の売上高は、
- 産業機器 37.7%
- 制御機器 29.8%
- 計測機器 12.3%
- 実装機器 5.3%
- 電源機器 5.1%
- その他 9.8%
となっています。
直近の経営状況
2021年3月期通期の経営成績は、
- 売上高 639.1億円(前年比 20.5%減)
- 営業利益 18.9億円(同 51.6%減)
- 経常利益 21.6億円(同 47.1%減)
- 親会社株主に帰属する当期純利益 15.2億円(同 45.1%減)
でした。減収減益で、特に利益面は前期と比較して50%ほど減少しています。
経営概況としては、
当社グループの主要ユーザーである自動車関連企業において、中国を中心とした需要回復により生産台数は回復傾向が見られたが、新型コロナウイルス感染症拡大の影響は大きく、設備投資は慎重な姿勢のまま推移。
電気・電子・半導体関連企業は、次世代通信規格「5G」関連需要は好調であり自動車向け電子部品需要なども回復に転じたが、年度前半における設備投資低迷の影響も一部に残る状況。
工作機械・産業機械関連企業は生産動向は弱含みで推移したが、中国及び国内需要が回復に転じるなど持ち直しの動きも見られているとのこと。
新型コロナウイルス感染症拡大の影響を、かなり受けているという印象です。
財務面は、自己資本比率(自己資本(総資本ー他人資本)÷総資産 ×100)が、2020年3月期末時点の51.4%から、2021年3月期末時点で58.4%と上がっています。また、営業キャッシュ・フロー対有利子負債比率は0.1%から0.0%と下がっており、健全な状態を維持しています。
2022年3月期通期の会社側予想は、
- 売上高 680億円 ※会計基準を変更したため、前年比比較は無し
- 営業利益 21.5億円
- 経常利益 23.2億円
- 親会社株主に帰属する当期純利益 16.2億円
としており、増収減益の計画となっています。会社側のコメントとしては、
新型コロナウイルス感染症収束の目途が立っていないが、ワクチンの普及により経済活動が徐々に正常化していくことを想定し、自動車関連企業におきましては、CASE(コネクテッド、自動運転、シェアリング、電動化)への取り組みに向けた投資は底堅く推移していくものと見込んでいる。
また、電気・電子・半導体、工作機械・産業機械関連企業においても、設備投資や生産動向は持ち直してくるものと予想。
こうした中、当社グループにおいては、「“新たな価値創造”と“自ら考え考動する”」を基本方針とした第10次中期経営計画(2021年度~2023年度)をスタートさせ、お客様の変化に応じた新たな価値創造・価値提供を目指していくとのこと。
第10次中期経営計画(2021年度~2023年度)の販売計画は、以下のようになっています。
特に利益面は、毎年20%程度増加する計画としており、意欲的な目標となっています。今後に期待ですね!
株価指標
6/9(水)終値時点の数値
- 株価:1,336円
- 時価総額:161.2億円
- PER:9.5倍
PERは、同業で時価総額が近い、英和(9857) 6.5倍、ナ・デックス(7435) 14.7倍、NaITO(7624) 27.7倍と比較すると、中間的な水準となっています。
- PBR:0.62倍
- 信用倍率(信用買い残÷信用売り残):50.33倍
- 年間配当金(会社予想):43円(年2回 9月 20円、3月 23円)、年間利回り:3.2%(配当性向 30.4%)
※直近5年間の配当金は、以下のようになっています。
決算期 | 年間配当金(円) | 配当性向(%) |
2017年3月期 | 40 | 30.2 |
2018年3月期 | 55 | 29.3 |
2019年3月期 | 82 | 29.8 |
2020年3月期 | 72 | 29.9 |
2021年3月期 | 60 | 45.4 |
配当性向は、ここ数年30%前後となっており、他の会社(約30%)と比較すると、ほどほどとなっています。2021年3月期は、100周年記念配当が20円加算されたため、配当性向が高くなっています。
会社の配当方針は、株主の利益還元を重要な経営課題と位置づけ、連結配当性向30%を目処として、将来の持続的成長に必要な内部留保の充実を図りながら、配当を行うとしています。
週足チャート(2年間):
株価は、昨年のコロナショック時から徐々に上昇し、直近では少し下げていますが、1,300円~1,600円程度でもみ合っている状況です。
まとめ
2021年3月期の業績は、特に利益面が前期比50%程度も落ち込み減収減益の結果でした。
しかしながら、2021年度~2023年度の3か年の中期経営計画は、利益面が年20%づつ増加の計画の為、会社側の意欲がうかがえます。
コロナ禍で先行きは見通しづらいものの、中期計画に沿った業績が出せれば、株価の伸長も大いに期待できそうです。
株価は、立会外分売発表の翌日(6/9)に、短期的な需給悪化懸念からか出来高を伴い売られ急落しました。過去の例からは分売日以降は、売りが収まってくることも多いです。
チャートから見ても、株価1,300円ほどのところに節目があり、これが下支えするという予想もたちます。
以上のことから、
レベル(最低⭐~最高⭐⭐⭐⭐⭐) | |
業績 | ⭐⭐⭐⭐(中期経営計画の期待を込めて) |
配当を含む株主還元 | ⭐⭐⭐⭐ |
株価モメンタム | ⭐⭐⭐ |
流動性 | ⭐⭐ |
分売数量 | ⭐⭐⭐⭐ |
総合判定 | ⭐⭐⭐⭐(買い) |
と判断しました。
最後までご覧いただき、ありがとうございました。
※株式投資の実際の売買は、自己判断、自己責任でお願いします。