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【立会外分売は買いか?】兵機海運(9362) <2023年5月実施>

海運

こんにちは!

直近で立会外分売の実施を発表した銘柄に関して、分売で買った場合、利益を得ることができるのか?直近の経営状況や客観的な指標、株価モメンタム等を踏まえ、総合的に分析しました。

今回は、東証スタンダードから倉庫・運輸関連業種の兵機海運です。

最後までお付き合いいただけるとうれしいです!

新規株主を増やすことを目的として、上場会社が大株主である銀行やオーナー経営者などの保有株を小口に分けて、証券取引所の立会外で不特定多数に売り出すこと。
取引開始前など取引時間外(=立会外)に売り出されることからこのように呼ばれる。

立会外分売の概要

実施日や株数は以下です。実施予定日は幅があり、実際の実施日と分売値段は、会社側から実施日前日に発表があります。

分売数量は決まっていて、100株単位で最大1,500株まで購入できます。

早ければ5/22(月)の夕刻に、会社側からの適時開示で分売値段のお知らせがあります。このブログでも追記しますので、チェックしてくださいね💖

分売予定日2023年5月23日(火)
分売数量46,800
(発行済み株式総数 1,224,000 株の約3.82%
分売値段1,857 円
(5/22決定:終値 1,914 円)
ディスカウント率2.98 %
(5/22決定)
申込単位数量100 株
申込上限数量1,500 株
表1:兵機海運(9362) 立会外分売概要

【立会外分売実施の目的】

としています。

また、今回の分売数量は、発行済み株式総数の約3.82%多い数量(※1)です。

※1:一概に言えませんが、目安として、5%以上:かなり多い、3%以上5%未満:多い、1%以上3%未満:ほどほど、1%未満:少ないとしています。

また、この銘柄の直近の出来高(売買が成立した株式の数量)の5日平均は46.4百株、25日平均は49.8百株(5/19時点)で、流動性は低い水準です。(1,000百株を平均水準としています)

そして、今回の分売数量(468百株)は、1日の出来高(25日平均:39.6百株)の約9.4倍で、この銘柄の通常の出来高からすると分売数量はほどほどといえます。

ご参考までに、この会社は、2022年5月と11月にも今回と同様の目的で立会外分売を実施しており、その時の分売値段と分売日以降の株価の動きは、表2のようになっています。

分売日分売株数
[万株]
分売値段
[円]
ディス
カウント
[%]
分売日
始値
[円]
(騰落率[%])
分売日
終値
[円]
(同)
一週間後の
始値[円]
(日付)
損益[円]
(騰落率[%])
2022/
5/23
1,3302.991,400
(+5.3)
1,394
(+4.8)
1,501
(5/30)
+171
(+12.9)
2022/
11/22
1,7783.001,813
(+2.0)
1,834
(+3.1)
1,923
(11/30)
+145
(+8.2)
表2:兵機海運 前回の分売価格とその後の価格

いずれも、分売値段で購入し、分売日の寄付大引分売日1週間後の寄付で売却した場合のいずれも損益プラスの結果でした。

そしてなんと、2022年5月実施の時は、分売日1週間後の寄付で売却した場合は12.9%もの利益が出ていました。

※売買手数料は考慮していません。

その時の地合いの良し悪しも影響してくるとは思いますが、ご参考まで。

【ご参考】

前々回の記事:【立会外分売は買いか?】兵機海運(9362)

前々回の振り返り:【結果検証:立会外分売は買いか?】兵機海運(9362)、イワキポンプ(6237)、前澤給装工業(6485)

前回の記事:【立会外分売は買いか?】兵機海運(9362) <2022年11月実施>

前回の振り返り:【結果検証:立会外分売は買いか?】兵機海運(9362)、モリテックスチール(5986)、アクセスグループ(7042)

どんな会社?

昭和17年に兵庫県下の全内航(日本国内の貨物輸送)業者(218社)と船主が集約統合された兵庫機帆船運送株式会社に端を発し、現在の兵機海運が創立され、

創立以来、『安全、迅速、信頼』を一番のモットーとして輸送サービスの向上に努めている会社です。

事業内容は、内航海運港湾運送倉庫外航海運をしています。

決算報告セグメントは、「海運事業」と「港運・倉庫事業」の2つがあり、

を行っています。

2023年3月期通期のセグメント別売上高構成比は、

となっており、ほぼ半々ですが、若干「海運事業」が多くなっています。

直近の経営概況

【2023年3月期(2022年4月~2023年3月)の経営成績】

(2023年5月12日発表)

決算期売上高
[億円]
(前期比
[%])
営業
利益
[百万円]
(同)
経常
利益
[百万円]
(同)
親会社株主に
帰属する
当期純利益
[百万円]
(同)
2022年3月期
通期実績
160
(23.7)
488
(162)
523
(149)
358
(10.7)
2023年3月期
通期実績
183
(14.3)
548
(12.3)
609
(16.5)
442
(23.2)
2024年3月期
通期会社予想
160
(△13.0)
520
(△5.1)
550
(△9.8)
400
(△9.5)
表3:兵機海運 2023年3月期経営成績と2024年3月期会社予想

表3の通り、前期比 増収増益で、売上高は1割強増利益面は1割強~2割強の増益で着地しました。

今期(2024年3月期)の業績予想は、前期比 減収減益で、売上高は1割強減利益面は1割弱の減益を予想しています。

【2023年3月期の概況、経営成績の要因】

当連結会計年度におけるわが国経済は、新型コロナウイルスによる行動制限が段階的に緩和され、経済活動が平常へと回復していく明るい兆候が見られました。

一方で、ロシアによるウクライナ侵攻が続き、新たな地政学リスクに晒された中での経済活動を余儀なくされました。

半導体を始めとする原材料不足による企業の生産スケジュールの混乱、エネルギー資源の高止まり及び食糧供給の不安定化、

さらには欧米が実施したインフレ抑制の利上げ対策に影響された為替の乱高下及び金融システム不安などもあり、経済の回復歩調は一進一退の状況で推移しました。

このような状況下で、同社グループは「安全・迅速・信頼」をモットーに、国民生活と企業活動のライフラインを支える物流業者として、如何なる時世にも顧客に対する輸送責任を果たす「堅実な兵機」との信頼を得るべく、事業展開を進めました

内航事業では、所属船団の維持と効率配船に努めましたが、航海数及び輸送取扱いトン数が伸び悩みました。

また、燃料油価格の高止まり船舶維持管理コスト増が利益を圧迫しました。

外航事業では、3Q末まで建機類の輸送やスポット案件が好調に推移したことに加え、ドル建て海上運賃の収益改善を受け、前期実績を大幅に上回る売上・利益を確保しました。

港運事業では、前期マイナス要因となっていた海上運賃高騰や海上コンテナ不足などの事案は解消しました。

倉庫部門及び国際輸送部門などの他部門と連携し、新規貨物受注に努めました

倉庫事業では、兵庫埠頭物流センター内に3棟目となる危険品倉庫を増築し、危険品取扱いの更なる強化に努めると同時に、大阪物流センターでの毒劇物貨物の集荷営業を展開しました。

これらの結果、当連結会計年度の売上高は183億円(前期比2,300百万円増 114.3%)と増収になりました。

なお、4Qに老朽化した倉庫の修繕費として39百万円計上し、人的資本投資の一環として従業員へインフレ特別一時金30百万円を支給しました。

また、社内規程(賃金規則)の改定により、賞与引当金の対象期間を見直し、2023年度の夏季賞与支給見込額158百万円を当期末で引当計上したことにより、

経常利益は609百万円(同86百万円増 116.5%となり、親会社株主に帰属する当期純利益は442百万円(同83百万円増 123.2%となりました。

【セグメント別の業績】

セグメント別の業績は、表4の結果になりました。

「外航事業」と「倉庫事業」増収増益

「内航事業」と「港運事業」増収減益でした。

セグメント事業売上高
[百万円]
(前年同期比
増減率[%])
営業利益
[百万円]

(同)
海運内航6,729
(1.5)
164
(△39.9)
外航3,129
(59.1)
247
(2.2倍)
港運・
倉庫
港運6,867
(14.8)
66
(△20.9)
倉庫1,660
(10.4)
70
(3.1倍)
表4:2023年3月期通期  セグメント別業績

各セグメントの状況は以下です。

海運事業

内航事業

上半期の鋼材及び原材料スクラップの鉄鋼輸送は、前年同期比で28%増と好調に推移しましたが、

下半期は荒天による停船やメーカーの出荷調整などで伸び悩み、通期では前年比4.5%減の輸送量となりました。

また、所属船の傭船料改定燃料油価格の高止まり及び船舶維持管理コスト増、さらには乗組員の退職による社艀の不稼働などの影響もありました。

結果として、取扱量が1,739千トン(前期比△6.1%)と減少しました。

外航事業

同社が極東ロシア向けとして定期的に海上輸送を請け負っていた主力国内貨物は、期初より輸出が取り止められ、配船計画の見直しを実施しました。

一方で、新たに受注した建機類の輸送が好調に推移した事に加えて、円安ドル高の為替相場において、ドル建て運賃の海上輸送契約が利益を押し上げました。

しかしながら、4Qは建機類の輸送契約が終了した事により、再度配船計画の見直しを迫られました。

結果として、前期比で大幅な増収増益となりました。

港運・倉庫事業

港運事業

2020年半ばから続いていた、海外港湾労働者不足や海上コンテナ不足による海上輸送費の高騰は落ち着きを取り戻しました

一方で、原材料供給不足による輸出入スケジュール遅延や2022年12月以降の中国ゼロコロナ政策見直し後の感染再拡大による中国発着貨物の取扱量減少など、不安定な状況下での営業活動となりました。

前期より堅調な小売り用食品輸入取り扱いを維持させつつ、倉庫部門など他のセグメントと一体となった営業活動を推進させ、新規貨物の獲得に努めました

倉庫事業

兵庫埠頭物流センターでは、前期末に倉庫用地の一部を取得したことにより、原価の圧縮効果が見られました。

また、前期に引き続き危険品貨物取扱いが順調に推移しました。

大阪物流センターでは、小規模ながら高単価の毒劇物取扱いが軌道に乗り始め収益の改善が見られました。

姫路地区倉庫は、輸出鋼材貨物の取扱いが堅調に推移し、収益の底上げをしました。

一方で、倉庫事業全体として普通品貨物の作業や保管業務は、収益性が改善せず苦戦を強いられました。

【財政面の状況】

自己資本比率>(自己資本(総資本-他人資本)÷総資産)×100

2023年3月期末時点で31.3%と前期末(27.4%)から3.9ポイント増加しています。

これは主に、長期借入金が前期末比で436百万円減少し、固定負債が合計で392百万円減少したことと、

利益剰余金が前期末比で329百万円増加し、株主資本が合計で342百万円増加したことによるものです。

自己資本比率の数値としてはまだ問題ないレベルです。(20%以上を安全圏内としています。)

キャッシュ・フロー>2023年3月期累計のキャッシュ・フロー(以下、CF)の状況

 ※2 フリーCFの説明:

前期(2022年3月期累計)のフリーCF(428百万円の支出)から901百万円増加しています。

営業活動によるCFの主な内訳(百万円)

投資活動によるCFの主な内訳(百万円)

【今期(2024年3月期通期)業績の見通し】

経営環境の見通しは、欧米に遅れながらもウィズコロナへと一歩進んだ日本国内の景気は、個人消費の増加やインバウンド需要の回復が内需拡大に寄与し、緩やかに回復していくと予想しています。

しかしながら、ウクライナ危機の長期化懸念、米中対立の深刻化など、国際情勢の複雑化や社会経済構造の変化に関連し、経済安全保障政策が強化され、

特に海外貿易の分野では、自由で効率的な企業活動に一定の制限を受ける事による物流の停滞、ならびに欧米の主要中央銀行の利上げと金融システム不安による、世界的な景気後退が国内経済に波及を懸念しています。

そのような状況下、

内航事業では船舶燃料油価格高止まりが続いており、また、安全運航維持に欠かせない船体ドック費用及び新船建造費の高騰もあり、企業利益を圧迫しています。

引き続きコスト上昇分を適正価格に反映できるよう、顧客に交渉を続ける予定です。

また、船員の安定的確保には待遇、労働環境の改善及び若年船員の人材育成が不可避です。

船舶リプレイス計画としての新船建造の際には船員育成登録船を増強し、国内物流の一翼を担う基幹的輸送インフラの内航海運業者として、社会的使命を果たしていく計画です。

外航事業では、前期好調だった建機類の輸送の代替航路として中国経由、中央アジア向け貨物の獲得を目指しています

また、海外プロジェクト案件の集荷代理店契約先と中国船会社との三国間協定を締結し、三国間輸送の取扱いに注力する予定です。

国際複合輸送事業は、スポット案件の受注に努めるとともに、欧州、南米などこれまで輸送実績の無い国での輸送サービスの提案が出来るよう、新規海外代理店との提携を推進する予定です。

港運事業では、事業連携に欠かせない海上コンテナ輸送業者、トラック輸送業者への業務委託に関して間近に迫っている2024年問題、

すなわちドライバー不足による物流の停滞が港湾地区においても業界全体の喫緊課題として対応策を講じる必要があると考えています。

顧客に対し早期に周知し、コスト上昇分の価格転嫁に理解を求め、これまでと同様の物流サービスを提供出来るよう、協力会社のネットワークを強化する計画です。

また、売上高は増収しているものの、営業利益率は伸び悩んでいますので、管理経費の圧縮及びシステム運用を活用し業務効率化を進め、収益性の改善に努めています。

倉庫事業では、2022年11月に兵庫埠頭物流センター内に3棟目となる危険品倉庫を増設しました。

増設と同時に満床となり、作業品質面も含めて顧客より好評価を得ています。

今後は、姫路地区、大阪地区はもとより、地方港においても同社元請けで危険物貨物の取扱いが出来るよう、パートナーとなる危険品取扱業者の協力体制を構築していく計画です。

一方で、普通品倉庫で取り扱う一般貨物の作業料金及び保管料金に関しては、他のセグメントと同様に既存顧客への値上げ交渉を進め利益率を改善させるとともに、

倉庫部門独自の営業展開も強化し、国内外貨物を問わず集荷営業を推進する計画です。

全体として、2023年3月期は、外航事業における建機類の輸送などのスポット特需や運賃相場が高水準に推移したことによる影響で対前期比で大幅な増収・増益となりましたが、

今期はスポット特需など当期の伸長要因が減少するため、表3のとおり、減収減益を見込んでいます。

株価指標と動向

【2023/5/19(金)終値時点の数値】

PERは、同業で時価総額が近い、玉井商船(9127) 3.5倍、栗林商船(9171) 8.4倍、東海運(9380) 15.0倍と比較すると、低めの水準です。

配当利回りは5.16%で、東証スタンダードの単純平均2.22%(5/19時点) と比較すると2倍超の高い水準です。ただ、前期比では15円減配予想です。

表6のように、直近5年間の配当金は、2021年3月期までは1株あたり50円で一定でしたが、それ以降は連続増配しています。

配当性向は、10%台~30%台で推移しています。

決算期1株当たり
年間配当金
[円]
配当性向
[%]
2019年3月期5016.1
2020年3月期5036.1
2021年3月期5018.0
2022年3月期9230.1
2023年3月期11530.7
表6:兵機海運 年間配当金推移

この会社は、

グループの業績及び今後の事業展開を勘案した安定的かつ積極的な配当を実施することを基本方針としており、

安定配当を基本とし、EPS(1株当たり当期純利益)100 円を上回る場合は配当性向 30%レベル又は1株当たり 50 円のいずれか高い基準での配当方針としています。

株主にとって魅力ある内容ですね!

【直近の株価動向】

<週足チャート(直近2年間)>

週足ベースの株価は、右肩上がりの上昇トレンドで、2023年3月に高値(2,638円)をつけましたが、

その後は調整して、下落基調で推移しています。

<日足チャート(直近3か月間)>

3月に年初来高値(2,638円)をつけた後は、右肩下がりの下落トレンドで推移しており、

2023年3月期決算発表の翌営業日(5/15)は、決算内容があまり好感されず、年初来安値(1,910円)をつけました。

そして、今回の立会外分売発表の翌営業日(5/17)は、株価にそれほど反応はなく、前日比 31円安(-1.58%)で終了しました。

その後は、年初来安値を割り込まず、ヨコヨコで推移しています。

今後は、5/15につけた年初来安値を割り込まずに、上昇に転じていくのか、割り込んで下値模索をするのか、要注目です。

まとめ

【業績】

【株主還元】

【流動性・分売数量】

【株価モメンタム】

以上のことから、

レベル
(⭐(最低)~
⭐⭐⭐⭐⭐(最高))
業績⭐⭐⭐
株主還元
(配当、株主優待等)
⭐⭐⭐⭐
株価モメンタム⭐⭐
流動性⭐⭐
分売数量⭐⭐
総合判定⭐⭐⭐(中立)
※「総合判定」=⭐4つ以上「買い」、⭐3つ「中立」、⭐2つ以下「不参加」

と判断しました。

最後までご覧いただき、ありがとうございました。

※株式投資の実際の売買は、自己判断、自己責任でお願いします。

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