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【公募増資・売出(PO)は買いか?】昭和産業(2004)

こんにちは!

公募増資・売出(以下、PO)の実施を発表した銘柄に関して、POに応募して買った場合、利益を得ることができるのか?直近の経営状況や客観的な指標、株価モメンタム等を踏まえ、総合的に分析しました。

今回は、東証プライムから食料品業種の昭和産業です。

最後までお付き合いいただけるとうれしいです!

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既上場企業が新たに発行する株式(公募株式)や既に発行された株式(売出株式)を投資家に取得させることをいいます。
正確には、「PO」は「Public(公開の)Offering(売り物)」の略で、日本語では「公募」と呼ばれます。「公募」とは、「不特定かつ多数の投資家に対し、新たに発行される有価証券の取得の申込を勧誘すること」をいいます。
また、「売出」とは、「既に発行された有価証券の売付けの申込み又はその買付けの申込の勧誘のうち、均一の条件で50人以上の者を相手方として行う」ことをいい、通常は「公募」「売出」を合わせて「PO」と呼ばれます。
「新規公開株(IPO)」は未上場企業が直接金融市場からの資金調達や知名度・信用力の向上を目的として証券取引所に新規上場するために一般投資家に株式を取得してもらう行為であるのに対して、「公募・売出(PO)」は既に上場していて証券取引所での株式取引が行われている企業が追加の資金調達や大株主の保有株売却などを目的として一般投資家に株式を取得してもらう行為であり、「新規公開株(IPO)」と「公募・売出(PO)」の違いを簡単にいえば、実施する企業が「未上場」か「既上場」かの違いといえます。

POの概要

今回のPOは、大株主(千葉銀行みずほ銀行損害保険ジャパン 他4社)からの株式の売出しです。売出価格等決定日や受渡期日、売出数量等は表1のようになっています。

ディスカウント率は、「売出価格等決定日」に決まり、その日の終値から数%です。

ちなみに、直近の主なPOのディスカウント率は、JR西日本(9021) 3.01%、ゆうちょ銀行(6178) 2.08%、デンソー(3387) 3.02%となっており、ほぼほぼ2~5%程度です。

ただ、ディスカウント率が大きいPOもあり、直近ではENECHANGE(4169)の8.1%が最大です。

注意点として、どの証券会社でも購入できるわけでなく、主幹事(今回は野村證券)はじめ、引受人の証券会社で購入申込可能です。

早ければ、12/8(月)の夕刻に、会社側から売出価格等のお知らせが適時開示であります。

このブログ記事も更新しますので、チェックしてくださいね💖

売出価格等決定日2025年12月8日(月)から11日(木)までの間のいずれかの日
受渡期日
(POで買った場合はこの日から売却可能)
売出価格等決定日の5営業日後の日
①株式売出し(引受人の買取引受による売出し)
数量
普通株式 3,236,000
発行済み株式総数 32,995,420 株 の約9.80%
②株式の売出し(オーバーアロットメントによる売出し)
数量
普通株式 485,400 株(上限の数量)
野村證券が売出す。
売出価格(決定後記載)
ディスカウント率(決定後記載)
申込単位数量100 株
主幹事野村證券
表1:昭和産業(2004) PO概要

【株式売出しの目的】

としています。

【株式の売出し数量/流動性】

今回の株式の売出数量は、発行済み株式総数の最大約11.2%(OAを含む)で、

直近の株式の売出のみのPOの売出株数比率(OAを含む)は、meito 18.8%、Japan Eyewear Holdings 24.2%、イオン九州 5.94%でしたので、それらと比較すると中間的な数量です。

また、この銘柄の直近の出来高(売買が成立した株の数量)の5日平均は978百株、25日平均は465百株(12/1時点)で、流動性は低い水準です。(1日 1,000百株を平均的な水準としています。)

どんな会社?

同社グループは、多種多量の穀物から小麦粉、天ぷら粉等のプレミックス、植物油、大豆たん白、糖化製品、さらには畜産用の配合飼料まで、余すことなくおいしさをつくる材料にして届けている会社です。

ホットケーキミックス全品合計の売上個数ではシェア NO.1(※1)を誇っています。

※1:インテージ SCI調べホットケーキミックス市場2022年1月~2023年3月メーカーシェア(個数)

事業内容は、小麦粉、植物油、糖化製品等の食品と飼料の製造販売を主要な内容とし、他に倉庫業、不動産の賃貸等の事業を行っています。

事業セグメントは、「食品事業」と「飼料事業」の2つがあり、それぞれ以下の製品を製造販売しています。

2025年3月通期のセグメント別売上高構成比は、

となっており、「食品事業」が8割強を占めています。

直近の経営概況

【2026年3月期2Q(2025年4月~9月)の経営成績】

(日本基準(連結):2025年11月7日発表)

決算期売上高
[億円]
(前年
同期比
増減率
[%])
営業
利益
[億円]
(同)
経常
利益
[億円]
(同)
親会社株主
帰属する
当期純利益
[億円]
(同)
2025年3月期
2Q累計
1,685
(△4.0)
68.6
(△6.6)
82.6
(△3.5)
75.8
(32.4)
2026年3月期
2Q累計
1,667
(△1.1)
60.5
(△11.8)
72.7
(△11.9)
57.6
(△24.0)
2026年3月期
通期会社予想
3,400
(1.7)
110
(△1.1)
130
(△4.4)
95.0
(△18.1)
通期予想に対する
2Qの進捗率[%]
49.055.055.960.7
表2:昭和産業 2026年3月期2Q経営成績と2026年3月期通期予想

表2の通り、前年同期比 減収減益で、売上高は微減利益面は1割強~2割強減でした。

今期(2026年3月期)通期の業績予想は、前期比 増収減益で、売上高は微増利益面は微減~2割弱減を見込んでいます。

そして、その通期予想に対する進捗率は2Q終了時点で、売上高は5割でそこそこ利益面は割前後でそこそこです。

【2026年3月期2Qの状況、経営成績の要因】

当中間連結会計期間における我が国経済は、雇用・所得環境が緩やかに改善しているほか、インバウンド消費の堅調な推移等により緩やかな回復基調となっています。

しかしながら、物価上昇による消費者の節約志向の一層の高まりや、原材料価格やエネルギー価格の高騰、物流コスト・人件費の増加に加え、

米国の関税政策などの動向による世界経済への影響や長期化する不安定な国際情勢などもあり、依然として先行きは不透明な状況が続いています。

このような状況の中、同社は創立90周年を迎える2025年度のありたい姿(長期ビジョン)「SHOWA Next Stage for 2025」の実現に向け、3rd Stage「中期経営計画23-25」を2023年4月にスタートし、

基本コンセプト『SHOWA の“SHIN-KA”宣言~90年、そしてその先へ~』を掲げ、新たな財務指標とともに5つの基本戦略「①基盤事業の強化」「②事業領域の拡大」「③環境負荷の低減」「④プラットフォームの再構築」「⑤ステークホルダーエンゲージメントの強化」の各施策を推進しています。

その結果、当中間連結会計期間の経営成績は、表2の数値の前年同期比 減収減益となりました。

【セグメント別の業績】

セグメント別の業績は、表3の結果になりました。

主力の「食品事業」は、前年同期比 減収減益

「飼料事業」「その他」増収増益

でした。

セグメント売上高
[億円]
(前年
同期比
増減率
[%])
営業
利益
[百万円]
(同)
食品1,358
(△2.0)
5,735
(△12.6)
飼料283
(3.0)
370
(16.8)
その他25.1
(5.9)
741
(0.6)
表3:2026年3月期2Q セグメント別業績

セグメント別の状況は以下です。

食品事業

食品事業全体としては、コストアップ要因となる物流コスト・人件費、資材価格等の上昇基調が続く中、製品価格の改定が進む一方で、消費者の節約志向が高まり販売環境は厳しい状況となりました。

このような市場環境の中、同社の強みであるマーケット分析力を生かした、ターゲット業態ごとのソリューション型営業の強化適正価格での販売に取り組みました。

肥料事業

顧客ニーズに対する提案型営業、畜産物の販売支援や付加価値向上へのサポート等の生産者との取り組み強化高付加価値商材の拡販に努めています。

配合飼料および鶏卵の販売数量は、昨年10月からの鳥インフルエンザ感染拡大による影響を受け前年同期を下回りました。

配合飼料の平均販売価格前期を下回りましたが、鶏卵の販売価格は鶏卵相場が堅調に推移したことにより前年同期を上回りました。

その他

倉庫業は、貨物獲得競争が激化する中、商社や主要顧客との取り組みを強化荷役量の増加に努めていますが、貨物取扱量は前年同期を下回りました。

【財政面の状況】

自己資本比率>(自己資本(総資本-他人資本)÷総資産)×100

2026年3月期2Q末時点で54.4%と前期末(52.8%)から1.6ポイント増加しました。

主な負債と純資産の、前期末比の増減は以下となっています。(単位:百万円)

自己資本比率の数値としては問題ないレベルです。(20%以上を安全圏内としています。)

キャッシュ・フロー>2026年3月期2Q累計のキャッシュ・フロー(以下、CF)の状況

 ※2 フリーCFの説明:

2025年3月期2Q累計のフリーCF(2,899百万円の収入)から4,473百万円減少しています。

営業活動によるCFの主な内訳(百万円):

投資活動によるCFの主な内訳(百万円):

【今期(2026年3月期)通期業績の見通し】

国内の経済情勢は、雇用・所得環境の改善を背景に緩やかな回復基調で推移する一方、

物価上昇による消費者の節約志向の高まり、為替相場の変動リスク、長期化する不安定な国際情勢等により、依然として先行き不透明な状況にあると同社は考えています。

同社グループは、穀物の一次加工を主な事業としており、小麦、大豆、菜種、とうもろこしなどの原料穀物相場、為替相場の影響を受けるため、同社グループのビジネスを取り巻く環境は不透明な状況が継続しています。

このような状況の中、事業環境に左右されにくい収益構造を確立するために、

「中期経営計画 23-25」で掲げた5つの基本戦略(「①基盤事業の強化」「②事業領域の拡大」「③環境負荷の低減」「④プラットフォームの再構築」「⑤ステークホルダーエンゲージメントの強化」)の各施策を推進していく方針です。

以上により、今期の経営成績は、表2の数値の前期比 増収減益を見込んでいます。

なお、今2Q決算発表時には、2025年5月12日に公表された2026年3月期通期の連結業績予想変更はありませんでした。

株価指標と動向

【2025/12/1(月)終値時点の数値】

PERは、同業で時価総額が近い、J-オイルミルズ(2613) 16.2倍、日清オイリオグループ(2602) 6.9倍、ニップン(2001) 9.9倍と比較すると、中間的な水準です。

配当利回り3.43%で、東証プライムの単純平均 2.38%(11/28時点) と比較すると高い水準です。

表4のように、直近5年間の配当金は、1株当たり60~100円で推移しており、2023年3月期以降は連続増配をしています。

配当性向は、20%台~50%で推移してます。

決算期1株当たり
年間配当金
[円]
配当性向
[%]
2021年3月期6520.3
2022年3月期6049.7
2023年3月期6527.9
2024年3月期8021.7
2025年3月期10028.1
表4:昭和産業 年間配当金推移

この会社は、

将来の企業価値の源泉となる成長投資および設備投資とともに、株主への利益還元を経営の重要課題の一つとして認識をしており、

長期的に安定した配当の継続を目指しつつ、経営基盤の一層の安定化を図ることを基本方針とし、配当性向は30%程度を一つの目安としています。

また、剰余金の配当は、中間配当及び期末配当の年2回を基本的な方針としています。

【株主優待】

この会社は株主優待があり、毎年3月末に100株以上保有の株主は、以下の株数に応じて自社商品(家庭用商品詰め合わせ:写真1)が進呈されます。

写真1:昭和産業 株主優待品(イメージ)

100株保有の場合、配当金+株主優待(1,000円相当)利回りは3.77%となります。

個人投資家にとってうれしい内容ですね!

【直近の株価動向】

<週足チャート(直近2年間)>

2024年4月に高値(3,615円)をつけるまでは上昇トレンドで推移していましたが、

その後は高値切り下げ安値切り下げの下落トレンドで推移し、翌年4月に安値(2,570円)をつけました。

それ以降は、2,850~3,150円程度のレンジ内で推移しています。

<日足チャート(直近3か月間)>

9月下旬に年初来高値(3,165円)をつけるまでは上昇基調で推移していましたが、

その後は調整しています。

そして今回のPO発表の翌営業日(12/1)は、POによる短期的な需給悪化を懸念され、出来高を伴い窓を空けて前日比 190円安(-6.12%)と急落しました。

今後の株価は、節目の2,900円や今年6月につけた安値(2,854円)を割り込まずヨコヨコから上昇に転じていくのか、割り込んで下値模索をするのか、要注目です。

まとめ

【業績】

【株主還元】

【流動性・新株式の発行株数】

【株価モメンタム】

以上のことから、

レベル
(⭐(最低)~
⭐⭐⭐⭐⭐(最高))
業績⭐⭐
株主還元
(配当、株主優待等)
株価モメンタム⭐⭐
流動性⭐⭐
株式の売出数量⭐⭐
総合判定⭐⭐
(中立)
※「総合判定」=⭐4つ以上「買い」、⭐3つ「中立」、⭐2つ以下「不参加」

と判断しました。

最後までご覧いただき、ありがとうございました。

※株式投資の実際の売買は、自己判断、自己責任でお願いします。

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