こんにちは!
直近で立会外分売の実施を発表した銘柄に関して、分売で買った場合、利益を得ることができるのか?直近の経営状況や客観的な指標、株価モメンタム等を踏まえ、総合的に分析しました。
今回は、東証スタンダードから建設業種の南海辰村建設です。
最後までお付き合いいただけるとうれしいです!
- 立会外分売とは?
新規株主を増やすことを目的として、上場会社が大株主である銀行やオーナー経営者などの保有株を小口に分けて、証券取引所の立会外で不特定多数に売り出すこと。
取引開始前など取引時間外(=立会外)に売り出されることからこのように呼ばれる。
- 立会外分売の魅力
- 前日終値より安く購入可能
- 立会外分配における買付側の購入価格は確定値段(1本値)で、分売実施日の前日終値よりディスカウントされるのが一般的。過去の例では、約3~5%のディスカウントで実施されています。
(ディスカウント率は取引所の規定により最大10%)
- 立会外分配における買付側の購入価格は確定値段(1本値)で、分売実施日の前日終値よりディスカウントされるのが一般的。過去の例では、約3~5%のディスカウントで実施されています。
- 買付手数料はかからない
- 立会外分売による買付は、通常の立会時間内の取引と種類が異なるため一般的に手数料はかからない。(売却時には通常の手数料が発生)
- 即日売却OK
- 立会外分売で取得した株式は、実施日(買付当日)から売却することが可能
- 前日終値より安く購入可能
- デメリット:抽選で外れることもある
- 買い申し込みが多いと、抽選ではずれて購入できないこともある。
立会外分売の概要
実施日や株数は以下です。実施予定日は幅があり、実際の実施日と分売値段は、会社側から実施日前日に発表があります。
分売数量は決まっていて、100株単位で最大2,000株まで購入できます。
早ければ11/14(月)の夕刻に、会社側からの適時開示で分売値段のお知らせがあります。このブログでも追記しますので、チェックしてくださいね💖
分売予定日 | 2022 年11 月15 日(火) |
分売数量 | 360,000 株 (発行済み株式総数 28,835,730 株の約1.24%) |
分売値段 | 302 円 (11/14決定) |
ディスカウント率 | 2.89 % (11/14決定:終値 311円) |
申込単位数量 | 100 株 |
申込上限数量 | 2,000 株 |
【立会外分売実施の目的】
- 株主からの売却意向があり、検討した結果、同社株式の分布状況の改善及び流動性の向上を図るため
としています。
今回の分売数量は、発行済み株式総数の約1.24%とほどほどの数量※1です。
※1:一概に言えませんが、目安として、5%以上:かなり多い、3%以上5%未満:多い、1%以上3%未満:ほどほど、1%未満:少ないとしています。
また、この銘柄の直近の出来高(売買が成立した株式の数量)の5日平均は112百株、25日平均は91百株(11/10時点)で、流動性は低い水準です。
そして、今回の分売数量(3,600百株)は、1日の出来高(25日平均:91百株)の約40倍ですので、この銘柄の通常の出来高からすると分売数量は多めといえます。
ご参考までに、この会社は、今年8月も上記と同様の目的で立会外分売を実施しており、その時の分売値段と分売日以降の株価の動きは、表2のようになっています。
分売日 | 分売株数 [万株] | 分売値段 [円] | ディス カウント率 [%] | 分売日 始値[円] (増減[円]) | 分売日 終値[円] (同) | 一週間後の 始値[円] (日付) | 損益[円] (増減率[%]) |
2022/ 8/26(金) | 36 | 323 | 2.71 | 323 (±0) | 323 (±0) | 324 (9/2) | +1 (+0.3) |
分売値段で購入し、分売日の寄付や大引で売却した場合は損益トントン、
分売日1週間後の寄付で売却した場合は、わずかながら損益プラスの結果でした。(売買手数料は考慮していません。)
その時の地合いの良し悪しも影響してくるとは思いますが、ご参考まで。
【ご参考:前回の記事】:【立会外分売は買いか?】南海辰村建設(1850)
どんな会社?
自然環境との調和を図り、建設事業を通じて豊かな人間社会に貢献することを信条としている、
南海電鉄グループの中堅建設会社です。
事業内容は、以下の2つのセグメントがあり、それぞれ、
- 建設事業
建築・土木・電気その他の建設工事全般に関する事業 - 不動産事業
不動産の販売、賃貸その他不動産に関連する事業
を行っています。
2022年3月期通期のセグメント別売上高構成比は、
- 建設事業 99.3%
- 不動産事業 0.7%
となっており、ほぼ「建設事業」で占めています。
直近の経営概況
【2023年3月期2Q(2022年4月~9月)の経営成績】
(2022年10月28日発表)
決算期 | 売上高 [億円] (前年 同期比[%]) | 営業利益 [百万円] (同) | 経常利益 [百万円] (同) | 親会社株主 に帰属する 純利益 [百万円] (同) |
2022年3月期 2Q累計 | 176 (△12.4) | 674 (58.7) | 647 (53.2) | 530 (173) |
2023年3月期 2Q累計 | 191 (8.4) | 1,028 (52.6) | 1,027 (58.7) | 817 (54.2) |
2023年3月期 通期会社予想 | 468 (25.8) | 2,130 (10.3) | 2,080 (11.3) | 1,730 (32.0) |
通期予想に対する 2Qの進捗率[%] | 40.9 | 48.2 | 49.3 | 47.2 |
表3の通り、前年同期比 増収増益で、売上高は1割弱増、利益面は5~6割の増益で好調な結果でした。
2023年3月期通期の業績予想は、前期比 増収増益で、3割弱の増収、利益面は1割~3割強の増益を見込んでいて、
その通期予想に対する進捗率は2Q終了時点で、売上高、利益面ともに5割弱でそこそこです。
【2023年3月期2Qの状況、経営成績の要因】
建設業界では、国土強靭化対策に伴い公共投資は底堅く推移しているものの、建設資材価格の上昇や受注競争の激化が顕在化しており、今後も経営環境への影響に十分注視する必要があります。
このような状況の下、同社グループでは「3カ年経営計画」(※2)の基本方針にもとづき、主要目標数値の達成に向けて取り組んできました。
※2:「3カ年経営計画(2022~2024)」の基本方針
- 持続的成長と企業価値の向上
- 品質と安全で信頼性の確立
- 変化に強い事業・収益基盤の構築
- 従業員が生き生きと活躍できる職場環境の整備
これらの結果、当2Q連結累計期間における経営成績は表3となりました。
当初予想の比較としての2Q累計の業績は、
売上高は、受注の時期ずれや一部工事の進捗遅れ等の影響により、前回発表の業績予想を下回りました。
利益面は、売上高が減少するものの、一部工事の採算性向上に伴う利益率改善や諸経費の削減等により、前回発表の業績予想を上回りました。
【セグメント別の業績】
セグメント別の売上高は、表4の結果になりました。
セグメント | 売上高 [億円] (前年 同期比[%]) | セグメント 利益 [百万円] (同) |
建設 | 190 (8.5) | 1,018 (53.4) |
不動産 | 1.3 (△1.9) | 26 (△7.6) |
主力の「建設事業」は増収増益、
「不動産事業」は減収減益の結果でした。
セグメント別の状況は以下です。
<建設事業>
売上高は前期繰越工事高が増加したこと等により、前年同四半期に比べ8.5%増となり、
セグメント利益は増収及び一部工事の採算性向上に伴う利益率改善等により、前年同四半期に比べ53.4%増となりました。
<不動産事業>
不動産賃貸収入が減少し、
売上高は前年同四半期比1.9%減、セグメント利益は同7.6%減となりました。
【財政面の状況】
<自己資本比率>(自己資本(総資本-他人資本)÷総資産)×100)
2023年3月期2Q末時点で45.8%と前期末(39.1%)から6.7ポイント増加しています。
これは主に、支払手形・工事未払金等が803百万円減少、電子記録債務が885百万円減少し、流動負債が減少したことと、
利益剰余金が732百万円増加したことにより、株主資本が増加したことによるものです。
自己資本比率の数値としては問題ないレベルです。(20%以上を安全圏内としています。)
【今期(2023年3月期通期)業績の見通し】
2022年4月27日に公表された、2023年3月期の連結業績予想から変更はありません。
株価指標と動向
【2022/11/9(水)終値時点の数値】
- 株価:319円
- 時価総額:91.9億円
- PER(株価収益率):5.31倍
PERは、同業で時価総額が近い、大末建設(1814) 12.1倍、森組(1853) 11.0倍と比較すると、低い水準です。
- PBR(株価純資産倍率):0.68倍
- 信用倍率(信用買い残÷信用売り残):ー(信用売り残無し)
- 年間配当金(予想):3円(年1回 3月)、年間利回り:0.94%(配当性向 5.0%)
決算期 | 1株当たり 年間配当金(円) | 配当性向 (%) |
2018年3月期 | 0 | ー |
2019年3月期 | 0 | ー |
2020年3月期 | 0 | ー |
2021年3月期 | 0 | ー |
2022年3月期 | 3 | 6.6 |
年利回りは0.94%で、東証スタンダードの単純平均 2.23%(11/9時点) と比較すると低い水準です。
表5のように、直近5年間の配当金は、2021年3月期までは無配が続いていましたが、2022年3月期に久々に復配しています。
配当性向は、無配の年を除いて、10%弱で低めです。
今後の配当金の増額に期待したいですね!
この会社は、
剰余金の配当は、安定的な配当の維持を基本方針としています。
また、内部留保金は財務体質の強化、将来の事業展開に必要な諸投資における資金需要に充当していくとともに、
業績等を総合的に勘案して配当を実施していく考えです。
また、剰余金の配当は、基準日を毎年3月31日とした期末配当を基本方針としています。
【直近の株価動向】
<週足チャート(直近2年間)>
週足ベースの株価は、2021年の年末に安値(272円)をつけた後は、右肩上がりの上昇トレンドで推移し、今年7月に年初来高値(378円)をつけました。
しかしその後は調整しており、直近では320円程度でもみ合っている状況です。
<日足チャート(直近3か月間)>
直近の株価は、8月中旬に高値(373円)をつけた後は急速に下落し、現在は320円近辺で推移しています。
今回の立会外分売発表の翌営業日(11/9)は、それほど出来高が増えず、前日比 4円安(-1.23%)と小幅に下落し、5日移動平均線(緑線)や25日移動平均線(赤線)を下抜けています。
今後は、5日移動平均線や25日移動平均線を再び上抜け、上昇転換していくのか、年初につけた年初来安値(293円)に向かって下落していくのか要注目です。
まとめ
【業績】
- 今期(2023年3月期)2Qの業績は、前期繰越工事高が増加したことと、増収及び一部工事の採算性向上に伴う利益率改善等により、
前年同期比 増収増益で、売上高は1割弱増、利益面は5~6割の増益で好調な結果。 - 今期通期予想は、前期比 増収増益で、3割弱の増収、利益面は1割~3割強の増益を見込み、
その通期予想に対する進捗率は2Q終了時点で、売上高、利益面ともに5割弱でそこそこ。
【株主還元】
- 配当利回り(予想)は0.94%で、東証スタンダードの単純平均 2.23%(11/9時点) と比較すると低い水準。
- 直近5年間の配当金は、2021年3月期までは無配が続いていたが、2022年3月期に久々に復配している。
配当性向は、10%弱で低め。 - 会社の方針は、安定的な配当の維持を基本方針とし、業績を総合的に勘案して配当を実施していく考え。
【流動性・分売数量】
- 直近の出来高の5日平均は112百株、25日平均は91百株で、流動性は低い水準。
- 分売数量は、発行済み株式総数の約1.24%とほどほどの数量で、
この銘柄の1日の平均的な出来高の約40倍であり、それからすると多めの数量。
【株価モメンタム】
- 週足ベースの株価は、2021年の年末に安値(272円)をつけた後は、右肩上がりの上昇トレンドで推移し、今年7月に年初来高値(378円)をつけたが、
その後は調整しており、直近では320円程度でもみ合っている状況。 - 直近の株価は、8月中旬に高値(373円)をつけた後は、急速に下落し、現在は320円近辺で推移しており、
今回の立会外分売発表の翌営業日(11/9)は、それほど出来高が増えず、前日比 4円安(-1.23%)と小幅に下落し、5日移動平均線や25日移動平均線を下抜けている。 - 今後の株価は、5日移動平均線や25日移動平均線を再び上抜け、上昇転換していくのか、年初につけた年初来安値(293円)に向かって下落していくのか要注目。
以上のことから、
レベル (⭐(最低)~ ⭐⭐⭐⭐⭐(最高)) | |
業績 | ⭐⭐⭐ |
株主還元 (配当、株主優待等) | ⭐ |
株価モメンタム | ⭐⭐⭐ |
流動性 | ⭐⭐ |
分売数量 | ⭐⭐⭐ |
総合判定 | ⭐⭐⭐(中立) |
と判断しました。
最後までご覧いただき、ありがとうございました。