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【公募増資・売出(PO)は買いか?】豊田合成(7282)

こんにちは!

公募増資・売出(以下、PO)の実施を発表した銘柄に関して、POに応募して買った場合、利益を得ることができるのか?直近の経営状況や客観的な指標、株価モメンタム等を踏まえ、総合的に分析しました。

今回は、東証プライムから輸送用機器業種の豊田合成です。

最後までお付き合いいただけるとうれしいです!

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既上場企業が新たに発行する株式(公募株式)や既に発行された株式(売出株式)を投資家に取得させることをいいます。
正確には、「PO」は「Public(公開の)Offering(売り物)」の略で、日本語では「公募」と呼ばれます。「公募」とは、「不特定かつ多数の投資家に対し、新たに発行される有価証券の取得の申込を勧誘すること」をいいます。
また、「売出」とは、「既に発行された有価証券の売付けの申込み又はその買付けの申込の勧誘のうち、均一の条件で50人以上の者を相手方として行う」ことをいい、通常は「公募」「売出」を合わせて「PO」と呼ばれます。
「新規公開株(IPO)」は未上場企業が直接金融市場からの資金調達や知名度・信用力の向上を目的として証券取引所に新規上場するために一般投資家に株式を取得してもらう行為であるのに対して、「公募・売出(PO)」は既に上場していて証券取引所での株式取引が行われている企業が追加の資金調達や大株主の保有株売却などを目的として一般投資家に株式を取得してもらう行為であり、「新規公開株(IPO)」と「公募・売出(PO)」の違いを簡単にいえば、実施する企業が「未上場」か「既上場」かの違いといえます。

POの概要

今回のPOは、大株主(トヨタ自動車、三井住友銀行)からの株式の売出しです。売出価格等決定日や受渡期日、売出数量等は表1のようになっています。

ディスカウント率は、「売出価格等決定日」に決まり、その日の終値から数%です。

ちなみに、直近の主なPOのディスカウント率は、JR西日本(9021) 3.01%、ゆうちょ銀行(6178) 2.08%、デンソー(3387) 3.02%となっており、ほぼほぼ2~5%程度です。

ただ、ディスカウント率が大きいPOもあり、直近ではENECHANGE(4169)の8.1%が最大です。

注意点として、どの証券会社でも購入できるわけでなく、主幹事(今回は野村證券)はじめ、引受人の証券会社で購入申込可能です。

早ければ、12/1(月)の夕刻に、会社側から売出価格等のお知らせが適時開示であります。

このブログ記事も更新しますので、チェックしてくださいね💖

売出価格等決定日2025 年 12 月1日(月)から4日(木)までの間のいずれかの日
受渡期日
(POで買った場合はこの日から売却可能)
売出価格等決定日の5営業日後の日
株式売出し(引受人の買取引受による売出し)
数量
普通株式 29,746,000 株
発行済み株式総数 127,614,147 株 の約23.3%
②株式の売出し(オーバーアロットメントによる売出し)
数量
普通株式 4,461,800 株(上限の数量)
野村證券が売出す。
売出価格(決定後記載)
ディスカウント率(決定後記載)
申込単位数量100 株
主幹事野村證券
表1:豊田合成(7282) PO概要

【株式売出しの目的】

としています。

【株式の売出し数量/流動性】

今回の株式の売出数量は、発行済み株式総数の約26.8%(OAを含む)で、

直近の株式の売出のみのPOの売出株数比率(OAを含む)は、meito 18.8%、Japan Eyewear Holdings 24.2%、イオン九州 5.94%でしたので、それらと比較すると多い数量です。

また、この銘柄の直近の出来高(売買が成立した株の数量)の5日平均は6,047百株、25日平均は4,621百株(11/21時点)で、流動性は高い水準です。(1日 1,000百株を平均的な水準としています。)

【自己株式の取得と消却】

今回のPOと同時に、自己株式の取得消却を発表しています。

内容は表2です。

取得期間・今回の売出しの売出価格等決定日が2025年12月1日(月)から3日(水)の間のいずれかとなった場合、
「2026年1月7日(水)から2027年1月6日(水)まで」
・12月4日(木)となった場合、
「2026年1月8日(木)から2027年1月7日(木)まで」
取得株式の総数普通株式 1,000 万株
発行済株式総数(自己株式を除く)に対する割合 7.86%
取得価額の総額500 億円(上限)
※取得株数の上限で割ると1株あたり5,000 円換算
取得方法自己株式立会外買付取引(ToSTNeT-3)による買付けを含む東京証券取引所における市場買付け
表2:豊田合成(7282) 自社株買い概要

(自己株式の取得及び消却を行う理由)

としています。

この自社株買いにより、今回の株式の売出数量最大約3,420万株)に対し、そのうちの最大約3割を市場で買い入れて一時的な需給悪化の緩和を図っているといえます。

なお、今回決定された自社株買いで取得した全株消却予定(消却日は未定)です。

どんな会社?

1949年の設立以来70有余年にわたり、合成ゴム・樹脂の配合技術をベースに、開発から生産・販売にわたり総合力を発揮し、高機能・高品質な製品・サービスを提供している会社です。

主要材料と「新しいものを生み出す」ことを理念として社名に「合成」を用いており、そのマインドは今日まで受け継がれています。

事業内容は、各種エアバッグ・ハンドルなどのセーフティシステム製品、インストルメントパネル構成部品・ラジエータグリルなどの内外装部品、樹脂フューエルフィラーパイプ・樹脂ターボダクトなどの機能部品

オープニングトリムウェザストリップ・ドアガラスランなどのウェザストリップ(自動車のドアやウィンドウとボディの間に取り付けられるシール材)製品など、自動車部品およびその金型・機械装置を製造・販売しています。

同社グループは、自動車部品の製造、販売を基礎とした各社の所在地別のセグメントから構成されており、

日本」、「米州」、「欧州・アフリカ」、「中国」、「アジア」、「インド」の6つあります。

2025年3月期通期のセグメント別売上高構成比は、

となっており、「日本」と「米州」がそれぞれ4割弱を占めています。

直近の経営概況

【2026年3月期2Q(2025年4月~9月)の経営成績】

(国際基準(IFRS、連結):2025年10月31日発表)

決算期売上収益
[億円]
(前年
同期比
増減率
[%])
営業
利益
[億円]
(同)
税引前
利益
[億円]
(同)
親会社の
所有者に
帰属する
当期利益
[億円]
(同)
2025年3月期
2Q累計
5,159
(△1.3)
288
(△14.3)
253
(△25.8)
182
(△21.7)
2026年3月期
2Q累計
5,356
(3.8)
329
(14.0)
357
(41.0)
277
(52.3)
2026年3月期
通期会社予想
(2025年10月31日
修正)
10,500
(△0.9)
600
(0.3)
640
(8.2)
430
(18.4)
通期予想に対する
2Qの進捗率[%]
51.054.855.764.4
表3:豊田合成 2026年3月期2Q経営成績と2026年3月期通期予想

表3の通り、前年同期比 増収増益で、売上収益は微増利益面は1割強~5割強増でした。

今期(2026年3月期)通期の業績予想は、今2Q決算発表と同時に当初予想から上方修正(表5参照)しており、前期比 減収増益で、売上収益微減利益面は微増~2割弱増を見込んでいます。

そして、その通期予想に対する進捗率は2Q終了時点で、売上収益5割強でそこそこ、利益面は営業利益と税引前利益は5~6割でそこそこ当期利益は6割強で順調です。

【2026年3月期2Qの状況、経営成績の要因】

当2Q連結累計期間の売上収益は、顧客の生産台数増加等により、5,356億円(前年同期比 3.8%増となりました。

利益については、米国の関税影響はあるものの、増販効果や原価改善等により、営業利益は 329億円(同14.0%増親会社の所有者に帰属する中間利益は 277億円(同52.3%増となりました。

【セグメント別の業績】

セグメント別の業績は、表4の結果になりました。

主力の「日本」「アジア」「インド」は、前年同期比 増収増益

「米州」増収減益

「欧州・アフリカ」減収減益

「中国」減収増益

でした。

セグメント売上収益
[億円]
(前年
同期比
増減率
[%])
営業
利益
[億円]
(同)
日本2,224
(6.4)
76
(55.1)
米州2,074
(3.3)
140
(△1.6)
欧州・アフリカ156
(△5.7)

(△33.9)
中国424
(△10.2)

(320)
アジア700
(6.6)
66
(13.4)
インド235
(15.3)
25
(40.4)
表4:2026年3月期2Q セグメント別業績

セグメント別の状況は以下です。

日本

顧客の生産台数増加等により前年同期比 増収

原価改善等により前年同期比 増益となりました。

米州

顧客の生産台数増加等により前年同期比 増収

増販効果等はあるものの、米国の関税影響等により、前年同期比 減益となりました。

欧州・アフリカ

顧客の生産台数減少等により前年同期比 減収

減販影響等により前年同期比 減益となりました。

中国

顧客の生産台数減少等により前年同期比 減収

原価改善や固定費の削減等により前年同期比 増益となりました。

アジア

顧客の生産台数増加等により前年同期比 増収

増販効果や原価改善等により前年同期比 増益となりました。

インド

顧客の生産台数増加等により前年同期比 増収

増販効果や原価改善等により前年同期比 増益となりました。

【財政面の状況】

自己資本比率>(自己資本(総資本-他人資本)÷総資産)×100

2026年3月期2Q末時点で59.7%と前期末(59.4%)から0.3ポイント増加しました。

主な負債と資本の、前期末比の増減は以下となっています。(単位:億円)

自己資本比率の数値としては問題ないレベルです。(20%以上を安全圏内としています。)

キャッシュ・フロー>2026年3月期2Q累計のキャッシュ・フロー(以下、CF)の状況

 ※2 フリーCFの説明:

2025年3月期2Q累計のフリーCF(103円の収入)から470億円増加しています。

営業活動によるCFの主な内訳(百万円):

投資活動によるCFの主な内訳(百万円):

【今期(2026年3月期)通期業績予想の修正】

今2Q決算発表と同時に、前回予想と比べ、2026年3月期通期の業績予想売上高は微増利益面は1割前後の増額修正をしています。

2026年3月期通期の業績予想は表5です。

売上
収益
[億円]
営業
利益
[億円]
税引前
利益
[億円]
親会社の
所有者に
帰属する
当期利益

[億円]
基本的
1株当たり
当期利益

[円]
前回(2025/4/25)
発表予想
10,000550580380298.99
今回修正予想10,500600640430338.35
増減額500506050
増減率[%]0.59.110.313.2
表5:豊田合成 2026年3月期通期連結業績予想数値の修正(2025年10月31日発表)

修正の理由は、

としています。

なお、配当予想に関しては、修正はありませんでした。

株価指標と動向

【2025/11/21(金)終値時点の数値】

PERは、同業で時価総額が近い、トヨタ自動車(7203) 13.7倍、トヨタ紡織(3116) 9.3倍、東海理化電機(6995) 9.2倍と比較すると、中間的な水準です。

配当利回り3.19%で、東証プライムの単純平均 2.45%(11/21時点) と比較すると高い水準です。

表6のように、直近5年間の配当金は、1株当たり60~105円で推移しており、2023年3月期までは60円で一定でしたが、それ以降は連続増配を継続中です。

配当性向は、20%台~40%台で推移してます。

決算期1株当たり
年間配当金
[円]
配当性向
[%]
2021年3月期6022.1
2022年3月期6033.3
2023年3月期6048.6
2024年3月期9523.6
2025年3月期10536.7
表6:豊田合成 年間配当金推移

この会社は、

財務方針に掲げる「安定的かつ継続的な増配」を実現するため、

DOE(株主資本配当率:配当額÷株主資本)2.5%を下限目標として配当を実施しています。

配当の回数については中間配当と期末配当の年2回を基本としています。

【直近の株価動向】

<週足チャート(直近2年間)>

2024年8月に安値(2,100円)をつけるまでは下落基調でしたが、

その後は、高値切り上げ安値切り上げの上昇トレンドで推移し、翌年11月に高値(3,935円)をつけています。

<日足チャート(直近3か月間)>

高値切り上げ安値切り上げの上昇基調で推移し、11月中旬に年初来高値(3,935円)をつけました。

しかし、今回のPO発表の翌営業日(11/21)は、POによる短期的な需給悪化懸念により、出来高を伴い窓を空けて前日比 308円安(-8.20%)と急落しました。

今後の株価は、節目の3,400円や3,300円を割り込まずヨコヨコから上昇に転じていくのか、割り込んで下値模索をするのか、要注目です。

まとめ

【業績】

【株主還元】

【流動性・新株式の発行株数】

【株価モメンタム】

以上のことから、

レベル
(⭐(最低)~
⭐⭐⭐⭐⭐(最高))
業績⭐⭐
株主還元
(配当、株主優待等)
株価モメンタム⭐⭐
流動性⭐⭐
株式の売出数量⭐⭐
総合判定⭐⭐
(中立)
※「総合判定」=⭐4つ以上「買い」、⭐3つ「中立」、⭐2つ以下「不参加」

と判断しました。

最後までご覧いただき、ありがとうございました。

※株式投資の実際の売買は、自己判断、自己責任でお願いします。

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