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【公募増資・売出(PO)は買いか?】ヴィッツ(4440)

こんにちは!

公募増資・売出(以下、PO)の実施を発表した銘柄に関して、POに応募して買った場合、利益を得ることができるのか?直近の経営状況や客観的な指標、株価モメンタム等を踏まえ、総合的に分析しました。

今回は、東証スタンダードから情報・通信業種のヴィッツです。

最後までお付き合いいただけるとうれしいです!

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既上場企業が新たに発行する株式(公募株式)や既に発行された株式(売出株式)を投資家に取得させることをいいます。
正確には、「PO」は「Public(公開の)Offering(売り物)」の略で、日本語では「公募」と呼ばれます。「公募」とは、「不特定かつ多数の投資家に対し、新たに発行される有価証券の取得の申込を勧誘すること」をいいます。
また、「売出」とは、「既に発行された有価証券の売付けの申込み又はその買付けの申込の勧誘のうち、均一の条件で50人以上の者を相手方として行う」ことをいい、通常は「公募」「売出」を合わせて「PO」と呼ばれます。
「新規公開株(IPO)」は未上場企業が直接金融市場からの資金調達や知名度・信用力の向上を目的として証券取引所に新規上場するために一般投資家に株式を取得してもらう行為であるのに対して、「公募・売出(PO)」は既に上場していて証券取引所での株式取引が行われている企業が追加の資金調達や大株主の保有株売却などを目的として一般投資家に株式を取得してもらう行為であり、「新規公開株(IPO)」と「公募・売出(PO)」の違いを簡単にいえば、実施する企業が「未上場」か「既上場」かの違いといえます。

POの概要

今回のPOは、大株主(株式会社SNA株式会社Office Hat他3者)からの株式の売出しです。売出価格等決定日や受渡期日、売出数量等は表1のようになっています。

ディスカウント率は、「売出価格等決定日」に決まり、その日の終値から数%です。

ちなみに、直近の主なPOのディスカウント率は、JR西日本(9021) 3.01%、ゆうちょ銀行(6178) 2.08%、デンソー(3387) 3.02%となっており、ほぼほぼ2~5%程度です。

ただ、ディスカウント率が大きいPOもあり、直近ではENECHANGE(4169)の8.1%が最大です。

注意点として、どの証券会社でも購入できるわけでなく、主幹事(今回は岡三証券)はじめ、引受人の証券会社で購入申込可能です。

早ければ、5/28(水)の夕刻に、会社側から売出価格等のお知らせが適時開示であります。

このブログ記事も更新しますので、チェックしてくださいね💖

売出価格等決定日2025 年5月 28 日(水)~ 30 日(金)までのいずれかの日
受渡期日
(POで買った場合はこの日から売却可能)
売出価格等決定日の5営業日後の日
①株式売出し(引受人の買取引受による売出し)
数量
普通株式 40 万株
発行済み株式総数 4,176,000  の約9.57%
②株式の売出し(オーバーアロットメントによる売出し)
数量
普通株式 6 万株(上限の数量)
岡三証券が売出す。
売出価格(決定後記載)
ディスカウント率(決定後記載)
申込単位数量100 株
主幹事岡三証券
表1:ヴィッツ(4440) PO概要

【株式売出しの目的】

としています。

【株式の売出し数量/流動性】

今回の株式の売出数量は、発行済み株式総数の最大約11.0%(OAを含む)で、

直近の株式の売出のみのPOの売出株数比率(OAを含む)は、マツオカ 11.8%、スズキ 5.6%、テレビ朝日ホールディングス 8.32%でしたので、それらと比較すると多めの数量です。

また、この銘柄の直近の出来高(売買が成立した株の数量)の5日平均は891百株、25日平均は722百株(5/21時点)で、流動性は低い水準です。(1日 1,000百株を平均的な水準としています。)

どんな会社?

「組込みソフトウェアで未来社会を創造していきたい。」という想いで、

制御ソフトウェアエンジニアリングサービス自動運転/先進安全向けシミュレーション技術による開発支援組込セキュリティサービスを行っている会社です。

事業セグメントは、「ソフトウェア開発事業」「サービスデザイン事業」「センシング事業」及び「その他事業」の4つがあり、それぞれ、

を行っています。

2024年8月期通期のセグメント別売上高構成比は、

となっており、「ソフトウェア開発事業」が8割強を占めています。

直近の経営概況

【2025年8月期2Q(2024年9月~2025年2月)の経営成績】

(日本基準(連結):2025年4月11日発表)

決算期売上高
[百万円]
(前年
同期比
増減率
[%])
営業
利益
[百万円]
(同)
経常
利益
[百万円]
(同)
親会社株主
帰属する
当期純利益
[百万円]
(同)
2024年8月期
2Q累計
1,487
(16.5)
124
(△21.8)
138
(△23.0)
85
(△32.0)
2025年8月期
2Q累計
2,338
(57.2)
306
(145)
323
(134)
225
(162)
2025年8月期
通期会社予想
(2025年5月20日
修正)
4,750
(36.6)
430
(53.0)
450
(29.6)
310
(12.7)
通期予想に対する
2Qの進捗率[%]
49.271.171.772.5
表2:ヴィッツ 2025年8月期2Q経営成績と2025年8月期通期予想

表2の通り、前年同期比 増収増益で、売上高は6割弱増利益面は2.3~2.6倍の増益でした。

今期(2025年8月期)通期の業績予想は、今回のPO発表と同時に上方修正(表4参照)しており、前期比 増収増益で、売上高は4割弱増利益面は1割強~5割強の増益を見込んでいます。

その通期予想に対する進捗率は2Q終了時点で、売上高は5割でそこそこ利益面は7割強で順調です。

【2025年8月期2Qの状況、経営成績の要因】

同社グループを取り巻く環境においては、引き続き開発依頼は高い需要を維持しています。

主力の組込みソフトウェアをはじめ、シミュレータ・仮想空間技術、セキュリティ及びセーフティの技術分野で自動車及び産業機器向けの売上が好調に推移しました。

さらに、前2Q連結会計期間において株式会社イーガーを、前3Q連結会計期間においてテスコ株式会社(以下、テスコ社という。)を新たに連結子会社とした影響もあり、売上高は前年同期比増収となりました。

営業利益は、人件費の引き上げや外注費の増加に加え、子会社の増加、事業の拡大・推進・強化等を目的とした人員の増強や拠点の整備等により売上原価及び販管費が増加したものの、

売上高の増収及び受注価額の見直し等による売上総利益率の上昇が牽引し、コスト増を上回る売上総利益の増加となった結果、前年同期比増益となりました。

経常利益及び親会社株主に帰属する中間純利益は、Go-Tech事業(成長型中小企業等研究開発支援事業)に係る補助金収入及び保険事務手数料が減少したものの、

営業利益の増加に加え、保険解約返戻金が増加した結果、前年同期比増益となりました。

この結果、当中間連結会計期間の経営成績は、表2の数値の前年同期比 増収増益となっています。

【セグメント別の業績】

セグメント別の業績は表3です。

なお、当1Q連結会計期間より、報告セグメントの区分を変更しており、以下の前年同期比較については、前年同期の数値を変更後のセグメント区分に組み替えた数値で比較しています。

また、「センシング事業」は、前3Q連結会計期間より新たに報告セグメントとして追加したため、前年同期比比較はありません。

主力の「ソフトウェア事業」前期比 増収増益となっています。

事業売上高
[百万円]
(前年
同期比
増減率
[%])
セグメント
利益
[百万円]
(同)
ソフトウェア1,943
(30.7)
276
(147)
センシング394
(ー)
16.4
(ー)
表3:2025年8月期2Q セグメント別業績

セグメント別の状況は以下です。

ソフトウェア事業

主力の組込みソフトウェアをはじめ、シミュレータ・仮想空間技術、セキュリティ及びセーフティの技術分野で自動車及び産業機器向けの売上が好調に推移したため、

売上高及びセグメント利益前年同期比増収増益となりました。

センシング事業

X線透過・CT装置の製造・販売・保守などを行っており、事業の特性上9月及び3月付近に売上が集中し利益貢献する傾向です。

なお、連結子会社であるテスコ社は同セグメントに含めています。

経営成績の状況は、大型案件に関して客先との納期調整等があったものの、X線透過・CT装置の販売が好調に推移したため、売上総利益が販管費を上回りセグメント利益となりました。

【財政面の状況】

自己資本比率>(自己資本(総資本-他人資本)÷総資産)×100

2025年8月期2Q末時点で71.1%と前期末(68.8%)から2.3ポイント増加しました。

負債及び純資産の、主な前期末比の増減は以下となっています。(単位:百万円)

自己資本比率の数値としては問題ないレベルです。(20%以上を安全圏内としています。)

キャッシュ・フロー>2025年8月期2Q累計のキャッシュ・フロー(以下、CF)の状況

 ※1 フリーCFの説明:

前期(2024年8月期)2Q累計のフリーCF(22.2百万円の支出)から168百万円減少しています。

営業活動によるCFの主な内訳(百万円):

投資活動によるCFの主な内訳(百万円):

【今期(2025年8月期)通期業績予想の修正】

今回のPO発表と同時に、2025年8月期通期の業績予想を従来予想から、売上高は2割弱利益面は3割前後の上方修正をしています。

2025年8月期通期の業績予想は表4です。

売上高
[百万円]
営業
利益
[百万円]
経常
利益
[百万円]
親会社株主に
帰属する
当期純利益

[百万円]
1株当たり
当期純利益

[円]
前回(2024/10/11)
発表予想
4,10033735023458.63
今回修正予想4,75043045031077.77
増減額6509310076
増減率[%]15.927.628.632.5
表4:ヴィッツ 2025年8月期通期業績予想数値の修正(2025年5月20日発表)

修正の理由は、

としています。

なお、配当金予想に関しては修正はありませんでした。

株価指標と動向

【2025/5/21(水)終値時点の数値】

PERは、同業で時価総額が近い、イーソル(4420) 14.4倍、エクスモーション(4394) 17.2倍と比較すると、低い水準です。

配当利回り1.40%で、東証スタンダードの単純平均2.66%(5/21時点) と比較すると低い水準です。

表5のように、直近5年間の配当金は、年間1株あたり6~14円で推移しており、前年と同額の年もありますが、減配無し増配傾向です。

配当性向は、10%台~20%台で安定して推移しています。

決算期1株当たり
年間配当金
[円]
配当性向
[%]
2020年8月期11.0
2021年8月期12.0
2022年8月期19.0
2023年8月期24.6
2024年8月期1420.7
表5:ヴィッツ 年間配当金推移

この会社は、

企業の持続的成長と中長期的な企業価値の向上に向けて、株主資本コストを上回るROE(自己資本利益率)の達成を目標に掲げており、

成長投資への内部留保を最優先とする一方で、適正なキャッシュ水準の維持最適な資本構成の実現を勘案した株主への配当還元も重要と考えています。

これを踏まえ、継続的かつ安定的な配当を実現し、また、内部留保とバランスシートの適正化に資する配当方針とするため、DOE(連結株主資本配当率 ※2)を配当還元の指標とし、2.4%を目安として配当を行う方針です。

※2:※DOE=年間配当総額÷((期首連結株主資本+期末連結株主資本)÷2)×100(%)

【直近の株価動向】

<週足チャート(直近2年間)>

2023年6月に高値(1,598円)をつけた後は、急速に下落し、翌年2月に上場来安値(722円)をつけました。

しかしその後はしばらくヨコヨコで推移しましたが、2024年後半からは上昇基調で推移しています。

<日足チャート(直近3か月間)>

4/7に年初来安値(736円)をつけた後は、上昇基調で推移し、5/16に年初来高値(1,231円)をつけました。

そして、今回のPOと今期通期業績の上方修正発表の翌営業日(5/21)は、POによる短期的な需給悪化を懸念され、窓を開けて出来高を伴い前日比 130円安(-10.8%)と急落しました。

今後の株価は、25日移動平均線(赤線)や75日移動平均線(青線)を割り込まず上昇に転じていくのか、割り込んで下値模索をするのか、要注目です。

まとめ

【業績】

【株主還元】

【流動性・新株式の発行株数】

【株価モメンタム】

以上のことから、

レベル
(⭐(最低)~
⭐⭐⭐⭐⭐(最高))
業績⭐⭐
株主還元
(配当、株主優待等)
株価モメンタム⭐⭐
流動性⭐⭐
株式の売出数量⭐⭐
総合判定⭐⭐
中立
※「総合判定」=⭐4つ以上「買い」、⭐3つ「中立」、⭐2つ以下「不参加」

と判断しました。

最後までご覧いただき、ありがとうございました。

※株式投資の実際の売買は、自己判断、自己責任でお願いします。

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