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【公募増資・売出(PO)は買いか?】古河電気工業(5801)

こんにちは!

公募増資・売出(以下、PO)の実施を発表した銘柄に関して、POに応募して買った場合、利益を得ることができるのか?直近の経営状況や客観的な指標、株価モメンタム等を踏まえ、総合的に分析しました。

今回は、東証プライムから非鉄金属業種の古河電気工業です。

最後までお付き合いいただけるとうれしいです!

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既上場企業が新たに発行する株式(公募株式)や既に発行された株式(売出株式)を投資家に取得させることをいいます。
正確には、「PO」は「Public(公開の)Offering(売り物)」の略で、日本語では「公募」と呼ばれます。「公募」とは、「不特定かつ多数の投資家に対し、新たに発行される有価証券の取得の申込を勧誘すること」をいいます。
また、「売出」とは、「既に発行された有価証券の売付けの申込み又はその買付けの申込の勧誘のうち、均一の条件で50人以上の者を相手方として行う」ことをいい、通常は「公募」「売出」を合わせて「PO」と呼ばれます。
「新規公開株(IPO)」は未上場企業が直接金融市場からの資金調達や知名度・信用力の向上を目的として証券取引所に新規上場するために一般投資家に株式を取得してもらう行為であるのに対して、「公募・売出(PO)」は既に上場していて証券取引所での株式取引が行われている企業が追加の資金調達や大株主の保有株売却などを目的として一般投資家に株式を取得してもらう行為であり、「新規公開株(IPO)」と「公募・売出(PO)」の違いを簡単にいえば、実施する企業が「未上場」か「既上場」かの違いといえます。

POの概要

今回のPOは、大株主(みずほ銀行、損害保険ジャパン、みずほ信託銀行)からの株式の売出しです。売出価格等決定日や受渡期日、売出数量等は表1のようになっています。

ディスカウント率は、「売出価格等決定日」に決まり、その日の終値から数%です。

ちなみに、直近の主なPOのディスカウント率は、JR西日本(9021) 3.01%、ゆうちょ銀行(6178) 2.08%、デンソー(3387) 3.02%となっており、ほぼほぼ2~5%程度です。

ただ、ディスカウント率が大きいPOもあり、直近ではENECHANGE(4169)の8.1%が最大です。

注意点として、どの証券会社でも購入できるわけでなく、主幹事(今回はみずほ証券)はじめ、引受人の証券会社で購入申込可能です。

早ければ、7/23(水)の夕刻に、会社側から売出価格等のお知らせが適時開示であります。

このブログ記事も更新しますので、チェックしてくださいね💖

売出価格等決定日2025 年7月 23 日(水)から 28 日(月)までの間のいずれかの日
受渡期日
(POで買った場合はこの日から売却可能)
売出価格等決定日の5営業日後の日
①株式売出し(引受人の買取引受による売出し)
数量
普通株式 1,566,300 株
発行済み株式総数 70,666,917  の約2.21%
②株式の売出し(オーバーアロットメントによる売出し)
数量
普通株式 234,900 (上限の数量)
みずほ証券が売出す。
売出価格(決定後記載)
ディスカウント率(決定後記載)
申込単位数量100 株
主幹事みずほ証券
表1:古河電気工業(5801) PO概要

【株式売出しの目的】

としています。

【株式の売出し数量/流動性】

今回の株式の売出数量は、発行済み株式総数の最大約2.54%(OAを含む)で、

直近の株式の売出のみのPOの売出株数比率(OAを含む)は、グローバル・リンク・マネジメント 7.90%、ヴィッツ 11.0%、いすゞ自動車 4.71%でしたので、それらと比較すると少ない数量です。

また、この銘柄の直近の出来高(売買が成立した株の数量)の5日平均は49,079百株、25日平均は37,446百株(7/11時点)で、流動性はかなり高い水準です。(1日 1,000百株を平均的な水準としています。)

どんな会社?

光ファイバ、光ファイバ・ケーブルなどのインフラ、自動車ワイヤハーネス等の電装エレクトロニクス、機能製品の各事業において培われた技術を発展、応用した製品の製造販売を主な内容とし、

さらに各事業に関連する研究及びその他のサービス等の事業活動を展開している会社です。

事業セグメントは、「インフラ」「電装エレクトロニクス」「機能製品」「サービス・開発等」の4つがあり、それぞれ、

を製造・販売しています。

2025年3月期通期のセグメント別売上高構成比は、

となっており、自動車ワイヤハーネス等の「電装エレクトロニクス」が6割を占めています。

直近の経営概況

【2025年3月期通期(2024年4月~2025年3月)の経営成績】

(日本基準(連結):2025年5月13日発表)

決算期売上高
[億円]
(前期比
増減率
[%])
営業
利益
[億円]
(同)
経常
利益
[億円]
(同)
親会社株主
帰属する
当期純利益
[億円]
(同)
2024年3月期
通期実績
10,565
(△0.9)
111
(△27.7)
102
(△40.5)
65.0
(△59.1)
2025年3月期
通期実績
12,017
(13.7)
470
(321)
485
(373)
333
(412)
2026年3月期
通期会社予想
12,000
(△0.1)
530
(12.5)
520
(7.1)
360
(7.9)
表2:古河電気工業 2025年3月期通期経営成績と2026年3月期通期予想

表2の通り、前期比 増収増益で、売上高は1割強増利益面は4.2~5.1倍で着地しました。

今期(2026年3月期)通期の業績予想は、前期比 減収増益で、売上高は微減利益面は1割前後の増益を見込んでいます。

【2025年3月期通期の状況、経営成績の要因】

同社グループでは、2030年におけるありたい姿を描き、そこへ向けての時間軸と領域を明確にした「古河電工グループ ビジョン2030」からバックキャストして2025年に目指す姿の達成を見据えて策定した中期経営計画「Road to Vision2030-変革と挑戦-」(以下、「25中計」)に基づき、

「資本効率重視による既存事業の収益最大化」及び「開発力・提案力の強化による新事業創出に向けた基盤整備」を推進しました。

また、これらを下支えする「ESG経営の基盤強化」に取り組みました。

資本効率重視による既存事業の収益最大化」については、事業ポートフォリオ最適化の取組みを進めることで、利益創出を図りました。

主な取組みとして、統一された戦略による事業運営の効率化及びリソースの効率的な配分による競争力強化等を目的とした光ファイバ・ケーブル事業及びメタル電線事業の再編のほか、

シナジーの発揮により成長市場における同社の優位性を確立するため、光コネクタにおいて開発力・コスト競争力に強みを持つ会社高速光変調器において世界トップレベルのシェアを有する会社の子会社化を決定しました。

また、データセンタ・AI関連市場においては、機能製品関連事業等において製品供給体制を強化売上拡大を図りました。

特に放熱・冷却製品について、競合他社との差別化を図り、より高機能な製品を顧客に対して提供することによって収益基盤の拡大に取り組みました。

「開発力・提案力の強化による新事業創出に向けた基盤整備」については、日本国内において道路や鉄道等の社会インフラの老朽化と労働人口の減少が進行するなか、

社会インフラ維持管理向けデジタルソリューションの提供により省人化・省力化に貢献しました。

また、環境負荷や労働衛生の観点から課題の多い薬品等を使用することなく錆・塗膜を除去できるレーザ施工システムの開発を進めました。

加えて、ライフサイエンスを中心とするフォトニクス技術の非通信領域に関する事業の強化を図るため、医療・産業機器向け光ファイバ及び光関連部品を製造する会社を子会社化しました。

「ESG経営の基盤強化」については、脱炭素社会実現に向けた更なる貢献のためバリューチェーン全体で温室効果ガスの排出量ネットゼロを目指すべく「古河電工グループ 環境ビジョン2050」を改定しました。

また、同社グループの存在意義を表す古河電工グループ パーパス「『つづく』をつくり、世界を明るくする。」(以下、「パーパス」という。2024年3月制定)について、従業員の理解促進及び共感の醸成を目的とした活動を実施しました。

これにより、従業員が同社グループで働くことへの誇りをもつことにつなげて従業員エンゲージメントの向上に取り組みました。

当期の業績は、電装エレクトロニクス事業におけるワイヤハーネス等の自動車部品での増収機能製品事業におけるデータセンタ関連製品での増収、また銅地金価格・為替の変動の影響により、グループ全体の売上は増加しました。

損益面では、高付加価値製品のラインナップ拡充生産性の改善、販売価格の適正化に取り組んだことにより増益となりました。

その結果、連結売上高は1兆2,018億円(前期比13.7%増連結営業利益は471億円(同359億円増連結経常利益は486億円(同383億円増となりました。

株式交換差益48億円、投資有価証券売却益104億円等を特別利益に、減損損失26億円製品補償引当金繰入額61億円等を特別損失として計上した結果、

親会社株主に帰属する当期純利益は334億円(同269億円増となりました。

なお、海外売上高は6,378億円(同17.0%増で、海外売上高比率は53.1%(同1.5ポイント増となりました。

【セグメント別業績】

セグメント別の業績は、表3の結果になりました。

主力の電装エレクトロニクス「機能製品」前期比 増収増益

「インフラ」増収黒字転換

「サービス・開発等」増収赤字幅拡大でした。

セグメント売上高
[億円]

(前期比
増減率
[%])
営業利益
[億円]
(同
インフラ3,094
(11.2)
45
(黒字
転換)
電装
エレクトロニクス
7,364
(12.7)
323
(72.7)
機能製品1,470
(27.4)
140
(2.5倍)
サービス・開発等338
(7.1)
△36
(赤字幅
拡大
)
表3:2025年3月期通期 セグメント別業績

各セグメントの状況は以下です。

インフラ

情報通信ソリューション事業

データセンタ・AI関連市場の伸長を背景に、ローラブルリボンケーブル等の高付加価値製品をはじめとする製品ラインナップの拡充及び供給体制の強化により、売上の増加を図りました。

また、北米テレコム市場においては、光ファイバ等について顧客の投資抑制や在庫調整による需要低迷から緩やかに回復しつつあり、

継続的なマーケティング活動の強化製造体制の整備を実施するとともに、生産性の改善に取り組んだことで、増収増益となりました。

エネルギーインフラ事業

電力事業において、国内の超高圧地中線や再生可能エネルギー向け海底線及び地
中線の堅調な需要
を背景に、ケーブルの製造能力及び工事施工能力の増強に取り組みました。

産業電線・機器事業においては、軽量かつ柔軟性に優れ建設工事の省力化・効率化に貢献するアルミCVケーブル等の機能線及び送配電部品の堅調な需要のもと、マーケティング活動の推進による拡販に努めました。

さらに、利益確保を重視した受注活動販売価格の適正化に取り組んだことで増収増益となりました

電装エレクトロニクス

自動車部品事業

車両の軽量化に貢献するアルミワイヤハーネスの搭載車種拡大等により売上が堅調に推移しました。

また、電動自動車市場に向けた高電圧に対応したワイヤハーネス等の製品開発及び拡販に取り組みました。

さらに、円安の影響により海外子会社において生産した製品の輸入価格が上昇したものの、

顧客の安定的な生産計画に基づく受注により生産性が改善したことに加え、販売価格の適正化に取り組んだことで、増収増益となりました。

電装エレクトロニクス材料事業

エレクトロニクス関連市場の低迷が続いたものの、パワー半導体用及び放熱部品用耐熱無酸素銅条等の高付加価値製品の品揃えの充実及び拡販や、販売価格の適正化を含む製品ミックスの改善に取り組みました。

さらに、銅地金価格の高騰円安の影響により、増収増益となりました。

機能製品

機能製品事業では、データセンタ・AI関連市場の成長に伴う需要を取り込むべく各施策を実施しました。

特に、放熱・冷却製品については需要が旺盛な空冷方式ヒートシンクの供給体制を整備しました。

また、ハードディスクドライブ用アルミブランク材については、顧客の在庫調整の解消を受け回復した需要を捉えたことにより収益を拡大し、増収増益となりました。

サービス・開発等

水力発電、新製品の研究開発、不動産の賃貸、各種業務受託等による同社グループ各事業のサポート等を行っています。

なお、同社日光事業所においては、必要な電力のほとんどを再生可能エネルギー(水力発電)で賄っており、

本水力発電は25中計におけるサステナビリティ目標「電力消費量に占める再生可能エネルギー比率30%」達成の一端を担っています。

【財政面の状況】

自己資本比率>(自己資本(総資本-他人資本)÷総資産)×100

2025年3月期末時点で34.6%と前期末(33.3%)から1.3ポイント増加しました。

負債及び純資産の、主な前期末比の増減は以下となっています。(単位:億円)

自己資本比率の数値としては問題ないレベルです。(20%以上を安全圏内としています。)

キャッシュ・フロー>2025年3月期累計のキャッシュ・フロー(以下、CF)の状況

 ※2 フリーCFの説明:

前期(2024年3月期)累計のフリーCF(71.0億円の収入)から454億円増加しています。

営業活動によるCFの主な内訳(億円):

投資活動によるCFの主な内訳(億円):

【今期(2026年3月期)通期業績の見通し】

米国・欧州において金融緩和やインフレの鈍化及び所得環境の改善があったものの、米国関税措置、ロシア・ウクライナ情勢や中東の地政学リスク等により、先行きが不透明な状況が続くものと予想しています。

このような状況の中、情報通信ソリューション事業・機能製品事業でのデータセンタ関連製品の売上増や、高付加価値品の増産・拡販、生産性改善等により、

連結売上高1兆2,000億円連結営業利益530億円連結経常利益520億円親会社株主に帰属する当期純利益を360億円と、前期比 減収増益を予想しています。

予想の前提としては、以下のセグメント毎の営業利益増減額(単位:億円)を想定しています。

インフラ

情報通信ソリューション+115

データセンタ関連製品等の売上増

エネルギーインフラ△33

国内超高圧・再エネ関連・機能線等の需要堅調

電装エレクトロニクス

自動車部品・電池△76

電装エレクトロニクス材料±0

エレクトロニクス関連製品需要は回復傾向

機能製品+49

株価指標と動向

【2025/7/11(金)終値時点の数値】

PERは、同業で時価総額が近い、フジクラ(5803) 22.5倍、SWCC(5805) 15.5倍、住友電工(5802) 12.6倍と比較すると、やや低い水準です。

配当利回り1.69%で、東証プライムの単純平均2.64%(7/10時点) と比較すると低い水準です。

表4のように、直近5年間の配当金は、年間1株あたり60~120円で推移しており、

配当性向は、20%台~60%台で推移しています。

決算期1株当たり
年間配当金
[円]
配当性向
[%]
2021年3月期6042.3
2022年3月期6041.8
2023年3月期8031.4
2024年3月期6064.9
2025年3月期12025.3
表4:古河電気工業 年間配当金推移

この会社は、

資本効率を重視した経営を目指し、成長戦略投資や次世代新事業育成、財務体質の改善並びに株主還元のバランスをとることを、資本政策の基本方針としています。

この基本方針のもと、2025年度を最終年度として策定した中期経営計画「Road to Vision2030-変革と挑戦-」においては、利益成長を通じて企業価値向上を図るべく、成長分野に重点的に投資するとともに、安定的かつ継続的に株主還元していくこととし、

親会社株主に帰属する当期純利益の30%を目途として業績に連動した配当を行うことを株主還元方針としています。

【直近の株価動向】

<週足チャート(直近2年間)>

2023年12月に安値(2,134円)をつけた後は、高値切り上げ安値切り上げの上昇トレンドで推移し、

2025年1月にこの安値の約4倍の高値(8,304円)をつけています。

その後は一旦は4,000円を割り込む場面もありましたが、直近では7,000円台に回復してきています。

<日足チャート(直近3か月間)>

4/22に安値(3,947円)をつけた後は、高値切り上げ安値切り上げの上昇基調で推移し、7/8に高値(7,561円)をつけました。

そして、今回のPO発表の翌営業日(7/11)は、POによる短期的な需給悪化を懸念され、前日比 222円安(-3.03%)と急落しました。

今後の株価は、25日移動平均線(赤線)や75日移動平均(青線)を割り込まずヨコヨコから上昇に転じていくのか、割り込んで下値模索をするのか、要注目です。

まとめ

【業績】

【株主還元】

【流動性・新株式の発行株数】

【株価モメンタム】

以上のことから、

レベル
(⭐(最低)~
⭐⭐⭐⭐⭐(最高))
業績⭐⭐
株主還元
(配当、株主優待等)
株価モメンタム⭐⭐
流動性⭐⭐⭐⭐
株式の売出数量⭐⭐⭐
総合判定⭐⭐
(買い)
※「総合判定」=⭐4つ以上「買い」、⭐3つ「中立」、⭐2つ以下「不参加」

と判断しました。

最後までご覧いただき、ありがとうございました。

※株式投資の実際の売買は、自己判断、自己責任でお願いします。

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