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【公募増資・売出(PO)は買いか?】第一工業製薬(4461)

こんにちは!

公募増資・売出(以下、PO)の実施を発表した銘柄に関して、POに応募して買った場合、利益を得ることができるのか?直近の経営状況や客観的な指標、株価モメンタム等を踏まえ、総合的に分析しました。

今回は、東証プライムから化学業種の第一工業製薬です。

最後までお付き合いいただけるとうれしいです!

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既上場企業が新たに発行する株式(公募株式)や既に発行された株式(売出株式)を投資家に取得させることをいいます。
正確には、「PO」は「Public(公開の)Offering(売り物)」の略で、日本語では「公募」と呼ばれます。「公募」とは、「不特定かつ多数の投資家に対し、新たに発行される有価証券の取得の申込を勧誘すること」をいいます。
また、「売出」とは、「既に発行された有価証券の売付けの申込み又はその買付けの申込の勧誘のうち、均一の条件で50人以上の者を相手方として行う」ことをいい、通常は「公募」「売出」を合わせて「PO」と呼ばれます。
「新規公開株(IPO)」は未上場企業が直接金融市場からの資金調達や知名度・信用力の向上を目的として証券取引所に新規上場するために一般投資家に株式を取得してもらう行為であるのに対して、「公募・売出(PO)」は既に上場していて証券取引所での株式取引が行われている企業が追加の資金調達や大株主の保有株売却などを目的として一般投資家に株式を取得してもらう行為であり、「新規公開株(IPO)」と「公募・売出(PO)」の違いを簡単にいえば、実施する企業が「未上場」か「既上場」かの違いといえます。

POの概要

今回のPOは、自己株式の処分大株主(朝日生命保険相互会社、他5社)からの株式の売出しです。処分価格等決定日や受渡期日、処分数量等は表1のようになっています。

ディスカウント率は、「処分価格等決定日」に決まり、その日の終値から数%です。

ちなみに、直近の主なPOのディスカウント率は、JR西日本(9021) 3.01%、ゆうちょ銀行(6178) 2.08%、デンソー(3387) 3.02%となっており、ほぼほぼ2~5%程度です。

ただ、ディスカウント率が大きいPOもあり、直近ではENECHANGE(4169)の8.1%が最大です。

注意点として、どの証券会社でも購入できるわけでなく、主幹事(今回は野村證券)はじめ、引受人の証券会社で購入申込可能です。

早ければ、9/2(火)の夕刻に、会社側から売出価格等のお知らせが適時開示であります。

このブログ記事も更新しますので、チェックしてくださいね💖

処分価格等決定日2025年9月2日(火)から5日(金)までの間のいずれかの日
受渡期日
(POで買った場合はこの日から売却可能)
2025年9月10日(水)から12日(金)までの間のいずれかの日。
ただし、処分価格等決定日が、
・2日(火)又は3日(水)の場合は 10 日(水)
・4日(木)の場合は11日(木)
・5日(金)の場合は12日(金)
とする。
①公募による自己株式の処分(一般募集
数量
普通株式 1,000,000
発行済み株式総数 10,684,321 株 の約9.35%
②株式売出し(引受人の買取引受による売出し)
数量
普通株式 337,400 株
発行済み株式総数 10,684,321 の約3.15%
③株式売出し(オーバーアロットメントによる売出し)
数量
普通株式 200,600 株(上限の数量)
野村證券が売出す。
調達資金手取り概算額(上限)57.2 億円
処分価格(決定後記載)
ディスカウント率(決定後記載)
申込単位数量100 株
主幹事野村證券
表1:第一工業製薬(4461) PO概要

【資金調達及び株式売出しの目的】

としています。

【資金調達の使途】

今回の一般募集に係る手取概算額約57.2億円については、

に充当する予定です。

【自己株式の処分・株式の売出し数量/流動性】

今回の自己株式の処分数量は、発行済み株式総数の約9.35%

株式の売出数量は、発行済み株式総数の最大約5.03%(OAを含む)で、それぞれ、

です。

自己株式の処分1株利益の希薄化株式の売出し短期的な需給悪化につながりますので、これらの要因が短期的に株価を押し下げる可能性があります。

また、この銘柄の直近の出来高(売買が成立した株の数量)の5日平均は1,594百株、25日平均は1,055百株(8/27時点)で、流動性は平均的な水準です。(1日 1,000百株を平均的な水準としています。)

どんな会社?

界面活性剤を始めとする各種工業用薬剤や、健康食品などのライフサイエンス関連製品を製造・販売している会社です。

界面活性剤などの多様な技術を組み合わせ幅広い産業分野に材料を提供することに強みがあります。

同社グループの事業セグメントは、以下の6つがあり、それぞれ、

を製造販売しています。

2025年3月期通期のセグメント別売上高構成比は、

となっており、「機能材料」が4割弱「界面活性剤」が3割弱を占めています。

直近の経営概況

【2026年3月期1Q(2025年4月~6月)の経営成績】

(2025年7月29日発表:日本基準(連結))

決算期売上高
[億円]
(前年
同期比
増減率
[%])
営業
利益
[百万円]
(同)
経常
利益
[百万円]
(同)
親会社株主
に帰属する
当期純利益

[百万円]
(同)
2025年3月期
1Q累計
175
(26.3)
1,058
(黒字
転換)
1,194
(黒字
転換)
608
(黒字
転換)
2026年3月期
Q累計
190
(8.6)
1,723
(62.8)
1,689
(41.4)
984
(61.7)
2026年3月期
通期会社予想
(2025年7月29日
修正)
800
(9.2)
6,800
(27.1)
6,800
(18.5)
3,700
(43.1)
通期予想に対する
1Qの進捗率[%]
23.825.324.826.5
表2:第一工業製薬 2026年3月期1Q経営成績(連結)と2026年3月期通期予想

表2のように、前年同期比 増収増益で、売上高は1割弱増利益面は4割強~6割強の増益でした。

今期(2026年3月期)通期の業績は、今1Q決算発表と同時に利益面のみ上方修正(表4参照)しており、前期比 増収増益で、売上高は1割増利益面は2割弱~4割強増を予想しています。

その通期予想に対する進捗率は、1Q終了時点で、売上高は2割強でそこそこ利益面は2割強~3割弱でそこそこです。

【2026年3月期1Qの状況、経営成績の要因】

同社グループは低誘電樹脂の堅調な販売に加え、出荷を開始した電池材料の負極用複合バインダー(接着剤)が大きく伸長し、過去最高を更新する好調なスタートを切ることができました。

4月から始まった中期経営計画「SMART 2030」をさらに前倒しすべく、研究開発のスピードアップと早期実績化を進めていく方針です。

当1Q期間の業績は、『電子・情報』セグメントの電子材料の低誘電樹脂や『環境・エネルギー』セグメントの電池用材料の負極用水系複合接着剤が大幅に伸長したことにより、売上高は190億円(前年同期比8.6%増となりました。

損益面は、『電子・情報』セグメントの売上高が伸長したことにより、営業利益は1,723百万円(同62.8%増経常利益は1,689百万円(同41.4%増親会社株主に帰属する四半期純利益は984百万円(同61.7%増となりました。

【セグメント別の業績】

セグメント別の業績は表3です。

なお、当1Qより、報告セグメントの区分を、材料別の「界面活性剤」、「アメニティ材料」、「ウレタン材料」、「機能材料」、「電子デバイス材料」、「ライフサイエンス」の6セグメントから、

分野別の「電子・情報」、「環境・エネルギー」、「ライフ・ウェルネス」、「コア・マテリアル」の4セグメントへ変更しています。

また、前年同期比は、変更後の区分方法により作成した前1Q期間の数値と比較しています。

主力の電子・情報「ライフ・ウェルネス」「コアマテリアル」前年同期比 増収増益

「環境・エネルギー」増収赤字幅縮小となっています。

セグメント売上高
[百万円]
(前年
同期比
増減率
[%])
営業
利益
[百万円]
(同)
電子・情報6,937
(11.2)
1,447
(34.6)
環境・
エネルギー
4,627
(16.4)
△73
(赤字幅
縮小
)
ライフ・
ウェルネス
3,512
(3.7)
226
(134)
コア・
マテリアル
3,969
(1.1)
122
(11倍)
表3:2026年3月期1Q セグメント別業績

セグメント別の状況は以下です。

電子・情報

国内

ディスプレイ材料のフレームに用いられる難燃剤やモニターに用いられる特殊界面活性剤が低調に推移しましたが、電子材料の低誘電樹脂が大幅に伸長しました。

海外

ディスプレイ材料のフレームに用いられる難燃剤が大きく落ち込みましたが、電子材料の低誘電樹脂が大幅に伸長しました。

環境・エネルギー

総じて大幅に伸長しました。

国内では、フロン規制に関連する環境配慮型の合成潤滑油は低調に推移しました。

モビリティの電装部材に用いられる基板用封止剤や接着剤が大幅に伸長しました。

太陽電池用途の高性能導電性ペーストは大幅に伸長しました。

海外では、電池用材料の負極用水系複合接着剤が前期末に立ち上がったことで、大幅に伸長しました。

太陽電池用途の高性能導電性ペーストは低調に推移しました。

その結果、前年同期比 増収となりましたが、営業利益は、売上高が伸長したものの研究開発活動の推進により営業経費が増加したことにより営業損失となりました。

ライフ・ウェルネス

売上高は、総じて堅調に推移しました。

国内では、石鹸・洗剤用途は低調に推移しました。

食品用途のショ糖脂肪酸エステルが堅調に推移しました。

海外では、ショ糖脂肪酸エステルの食品用途香粧品(香りの製品と化粧品)用途が堅調に推移しました。

その結果、当セグメントの売上高は前年同期比 増収となりました。

営業利益は、海外のショ糖脂肪酸エステルを中心に採算性が改善したことにより、前年同期比 増益となりました。

コア・マテリアル

売上高は、総じて堅調に推移しました。

土木・建築用途トンネル崩落防止剤が堅調に推移しました。

ゴム・プラスチック製品加工用途難燃剤は堅調に推移しました。

その結果、当セグメントの売上高前年同期比 増収となりました。
営業利益は、高付加価値品の売上高が増加したことにより、前年同期比 増益となりました。

【財政面の状況】

自己資本比率>(自己資本(総資本-他人資本)÷総資産)×100

2026年3月期1Q末時点で41.3%と前期末(39.9%)から1.4ポイント増加しています。

主な負債と純資産の、前期末比の増減は以下となっています。(単位:百万円)

自己資本比率の数値としては問題ないレベルです。(20%以上を安全圏内としています。)

【今期(2026年3月期)通期業績予想の修正】

今2Q決算発表と同時に、2026年3月期通期の業績予想を当初予想から、利益面を1割強~2割弱の増額修正をしています。

2026年3月期通期の業績予想は表4です。

売上高
[億円]
営業
利益
[百万円]
経常
利益
[百万円]
親会社株主に
帰属する
当期純利益

[百万円]
1株当たり
当期純利益

[円]
前回(2025/5/14)
発表予想
8006,0006,0003,200334.17
修正予想8006,8006,8003,700386.39
増減額800800500
増減率[%]13.313.315.6
表4:第一工業製薬 2026年3月期通期業績予想の修正(2025年7月29日発表)

修正の理由は、

としています。

また、配当予想に関しては、修正はありませんでした。

株価指標と動向

【2025/8/27(水)終値時点の数値】

PERは、同業で時価総額が近い、三洋化成(4471) 6.0倍、東邦化学(4409) 14.0倍、日華化学(4463) 8.8倍と比較すると、高い水準です。

配当利回り2.22%で、東証プライムの単純平均2.47%(8/27時点) と比較するとやや低い水準です。

表4のように、直近5年間の配当金は、1株当たり65~100円で推移しており、

配当性向は、最終赤字の年を除き、20%台~50%台で推移しています。

決算期1株当たり
年間配当金
[円]
配当性向
[%]
2021年3月期7027.8
2022年3月期8032.7
2023年3月期80
(最終赤字)
2024年3月期6552.9
2025年3月期10037.0
表5:第一工業製薬 年間配当金推移

この会社は、

配当は、将来の事業展開に必要な内部留保との整合を図りつつ、株主への長期的、安定的な配当を維持することを基本方針としています。

内部留保金は、国際的な競争力の強化や新たな成長につながる今後の事業展開に必要な投資等に積極的に活用し、企業価値の増大に努めています。

また、2030年3月期までの5か年の中期経営計画「SMART 2030」では、最終年度(2030年3月期)連結配当性向40%を目標にしています。

なお、中間配当と期末配当の年2回の剰余金の配当を行うことを基本方針としています。

【株主優待】

この会社は株主優待があり、毎年3月末に、100株以上保有の株主は保有株数に応じて、以下の株主優待ポイント(1ポイント≒1円)が進呈されます。

株主優待ポイントは、株主限定の特設ウェブサイト「第一工業製薬プレミアム優待倶楽部」において、

同社製品である消臭・除菌スプレー「NIOCAN」 スプレーボトルや、機能性表示食品「快脳冬虫夏草」をはじめ、お米やブランド牛などのこだわりグルメ、スイーツや飲料類、銘酒、電化製品、選べる体験ギフトなど4,000種類以上の商品から好みの商品を選べます。

優待ポイントは、他のプレミアム優待倶楽部導入企業の優待ポイントと合算可能な共有株主優待コイン『WILLsCoin』にも交換できます。

加えて、ライフサイエンス関連の商品を特別価格で購入可能な「株主優待特別販売クーポン」がいただけます。

100株保有の場合、配当金+株主優待(1,000円相当)利回りは2.41%となります。

個人投資家にとってうれしい内容ですね!

【直近の株価動向】

<週足チャート(直近2年間)>

2023年10月に安値(1,569円)をつけた後は、しばらく2,000~4,000円のレンジ内で推移していましたが、

2025年4月の安値の後は、右肩上がりの上昇を続け、同年8月に上場来高値(6,280円)をつけています。

<日足チャート(直近3か月間)>

右肩上がりに順調に値を伸ばし8/18に上場来高値(6,280円)をつけました。

そして、その後は調整していましたが、今回のPO発表の翌営業日(8/26)は、POによる1株利益の希薄化と短期的な需給悪化懸念により、窓を開けて出来高を伴い、前日比 590円安(-10.0%)と急落しました。

今後の株価は、25日移動平均線(赤線)や75日移動平均線(青線)で下げ止まりヨコヨコから上昇に転じていくのか、割り込んで下値模索をするのか、要注目です。

まとめ

【業績】

【株主還元】

【流動性・新株式の発行株数】

【株価モメンタム】

以上のことから、

レベル
(⭐(最低)~
⭐⭐⭐⭐⭐(最高))
業績⭐⭐⭐
株主還元
(配当、株主優待等)
⭐⭐
株価モメンタム⭐⭐
流動性⭐⭐
自己株式の処分数量
株式の売出し数量
⭐⭐
総合判定⭐⭐
(中立)
※「総合判定」=⭐4つ以上「買い」、⭐3つ「中立」、⭐2つ以下「不参加」

と判断しました。

最後までご覧いただき、ありがとうございました。

※株式投資の実際の売買は、自己判断、自己責任でお願いします。

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