こんにちは!
直近で株主優待の新設を発表した銘柄に関して、このタイミングで株を買った場合、利益を得ることができるのか?
株主優待のインパクトや足元の経営状況、客観的な指標、株価モメンタム等を踏まえ、総合的に分析しました。
今回は、東証スタンダードからサービス業種の日本エコシステムです。
最後までお付き合いいただけるとうれしいです!
「株主優待」とは?
株式会社が一定数以上の自社の株券を権利確定日に保有していた株主に与える優待制度のこと。
フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』より
株主優待の中でも、自社商品の割引券や金券(クオカード、ギフトカード等)、飲食券・飲食割引券など、さまざまな種類があり、一般的には100株(1単元)以上、権利確定日(期末、または中間期末)に保有した場合に、権利を獲得できます。
ただ、権利確定日に保有していた場合でも、1年以上等の継続保有が権利獲得の条件になる場合もありますので、注意が必要(※1)です。
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※1:例として、イタリアンレストランチェーンのサイゼリヤ(7581)の場合、毎年8月末に100株以上保有していると、自社店舗で使用できる食事券が2,000円相当分(500円券×4枚)進呈されるのですが、1年以上継続保有が権利獲得の条件となっています。
この会社の場合、継続保有の確認は、その年の8月末日および、前年の8月末日から任意の日で株式保有状況を確認するとしており、いつ保有確認がされるか定めていないので、優待の権利を獲得するなら、権利確定日のみ保有していれば良いということにはならず、途中で売却できません。
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また、株主優待は、通常の配当金に加え、株主優待分が株主還元として上乗せされることになります。
そして、総合利回り=(配当金+株主優待を金額に換算した金額)÷株価で算出した数値が指標とされ、これが高いと株主に還元する割合が高く、株主が恩恵を受けることになります。
したがって、株主優待の新設が発表された場合、特に個人投資家の買い需要が殺到し、株主優待の新設の発表後は株価が急騰するケースが多くなっています。
一方、突然、株主優待の廃止が発表されると上記の逆の現象(売りが殺到し、急落する)が起こるので注意が必要です。
それでは、見ていきましょう!
株主優待の概要
2024年1月19日に、株主優待制度の新設を発表しています。具体的な内容は以下です。
<対象の株主>
2024年以降、毎年3月末日、9月末日の株主名簿に記載または記録された、同社株式2単元(200株)以上を保有する株主
<株主優待の内容>
年間30,000円相当(3月末:15,000円、9月末:15,000円)の同社オリジナルクオカードを進呈
<株主優待の開始時期>
2024 年3月末の株主名簿に記載または記録された、2単元(200株)以上の同社株式を保有されている株主を対象として株主優待制度を開始
<株主優待制度導入の目的>
- 同社は、持続的な安定成長による株価上昇と継続的な配当の実施が株主還元の基本と考えている。
- 一方で、2023 年 12 月 27 日付公表の「上場維持基準の適合に向けた計画に基づく進捗状況について」で記載しているとおり、「流通株式時価総額」及び「流通株式比率」については基準を充たしておらず、上場維持基準の適合に向けた取組みの検討も進めている。
- 上記取組みの一つとして、2023 年8月に決定した「創立 25 周年記念株主優待」に引き続き、直近株価で総合利回り(配当と株主優待の各利回りの合計)最大 11%超に設定した株主優待制度の新設を決定した。
- 決算説明資料や投資家説明会等によるIR活動等を積極的に行い、より多くの株主に同社のビジネスモデルを理解してもらうことで、
中長期的な株価向上につなげる取り組みは継続しつつ、株価の感応性が高い株主優待も織り交ぜることで適切な株価形成につなげていく。
としています。
どんな会社?
1998年11月26日に設立、2021年10月8日に上場して以来、環境事業をはじめ公共サービス事業、交通インフラ事業など、公共性の高い事業を行っている会社です。
その根幹には社是「未晃道」に込められた“未来の地球を照らす”という想いがあり、
地球の環境を大切にすること、地域社会に貢献すること、交通インフラを整備すること。
これらを常に意識しながら、永続的に社会に必要とされる存在を目指しています。
同社グループは、製品・サービス別の事業拠点(事業所、営業所、出張所)を置き、各事業拠点は取り扱う製品・サービスについて横断的に相互連携的な戦略を立案し、事業活動を展開しています。
事業セグメントは、事業拠点を基礎とした製品・サービス別セグメントから構成されており、「公共サービス事業」「環境事業」「交通インフラ事業」の3つがあり、それぞれ、
- 公共サービス事業
- 公営競技場における、トータリゼータシステム(※2)の設計・製造・販売・機器設置や一般事業者も含めた空調衛生設備等のファシリティに関わる事業
- トータリゼータシステムのメンテナンスに関わる事業やAIによる競輪予想サービス・警備・清掃等の運営業務に関わる事業
を通じて安心・安全・快適な環境社会を実現する事業を展開。
※2:トータリゼータシステムとは公営競技における、オッズ(購入した馬券等が的中した際の戻り倍率)の表示、集計、投票券の発券、配当金の計算、払い戻しまでの一連の業務をコンピューターで一括処理するシステムのことを指す。
発券や払い戻しを行う機器を含め、業務に関わるコンピューターネットワークの総称
- 環境事業
- 排水浄化処理及び水循環に関わる事業の研究開発、製造及び販売業務
- 産業用太陽光の再生可能エネルギー発電設備の設計、施工、保守等業務
- 自社設備による売電に関わる事業
を通じて環境社会に貢献する事業を展開
- 交通インフラ事業
- 高速道路を中心とした構造物点検、電気通信設備・ETC保守、交通管制業務、道路照明灯保守等の道路エンジニアリングに関わる事業
- 維持修繕工事、事故・災害復旧工事、雪氷対策作業、土木工事、交通規制等の道路メンテナンスに関わる事業
を通じて安心・安全・快適な環境社会を実現する事業を展開
を行っています。
2023年9月期通期のセグメント別売上高構成比は、
- 公共サービス事業 48.2%
- 環境事業 9.7%
- 交通インフラ事業 38.0%
- その他(※3) 4.1%
となっており、「公共サービス事業」が5割弱、「交通インフラ事業」が4割弱を占めています。
※3:システム保守業務、AI技術を活用したICTソリューションの提供に関わる事業及び不動産売買、賃貸等不動産に関わる事業
直近の経営概況
【2023年9月期通期(2022年10月~2023年9月)の経営成績】
(2023年11月14日発表)
決算期 | 売上高 [百万円] (前期比 増減率 [%]) | 営業 利益 [百万円] (同) | 経常 利益 [百万円] (同) | 親会社株主に 帰属する 当期純利益 [百万円] (同) |
2022年9月期 通期実績 | 7,220 (3.4) | 798 (3.7) | 856 (6.9) | 408 (△28.7) |
2023年9月期 通期実績 | 7,577 (4.9) | 635 (△20.4) | 685 (△20.0) | 874 (114) |
2024年9月期 通期会社予想 | 9,133 (20.5) | 806 (26.8) | 839 (22.5) | 552 (△36.8) |
表2の通り、前期比 増収減益で、売上高は微増、利益面は営業利益と経常利益は2割減ですが、純利益は2.1倍の増益で着地しました。
今期(2024年9月期)の業績予想は、前期比 増収増益で、売上高は2割増、利益面は営業利益と経常利益は2割強の増益ですが、純利益は4割弱の減益を予想しています。
【2023年9月期の状況、経営成績の要因】
同社グループは「交通インフラ事業」にて収益基盤を構築、事業の裾野を拡大し、「公共サービス事業」で公営競技を中心とした事業規模の拡大を図り、これらの技術、収益を基盤にして「環境事業」を推進するべく取り組みました。
また、成長戦略として強化推進しているM&A・人材強化等の成長投資を積極的に行った結果、販管費が増加し営業利益が減少しました。
当連結会計年度のM&Aについては、株式取得及び事業譲受によるものを合せて6件を実行しました。
この他、保有する匿名組合出資に対する資産価値の下落による匿名組合投資損失41百万円を営業外費用に計上している他、
当期のM&Aによるグループ化に伴い負ののれん発生益191百万円、及び賃貸用オフィスビル(土地、建物)の売却による固定資産売却益428百万円を特別利益に計上する一方で、
同社が本社機能として一部利用していた賃貸ビル建替えに伴う建物の取壊し費用を固定資産処分損34百万円、固定資産の減損損失22百万円を特別損失に計上しています。
この結果、当期の経営成績は、表2の数値の前期比 増収減益となりました。
【セグメント別の業績】
セグメント別の業績は、表3の結果になりました。
主力の「公共サービス事業」と「交通インフラ事業」は前期比 増収増益、
「環境事業」は減収減益、
「その他」は減収増益となっています。
セグメント | 売上高 [百万円] (前期比 増減率 [%]) | セグメント 利益 [百万円] (同) |
公共サービス | 3,654 (4.9) | 562 (2.3) |
環境 | 731 (△16.1) | 64 (△11.3) |
交通インフラ | 2,881 (13.9) | 747 (7.9) |
その他 | 310 (△6.8) | 34 (24.8) |
各セグメントの状況は以下です。
<公共サービス事業>
M&Aによりグループ化したオー・ティー・エス技術サービス株式会社の業績寄与に加え、
公営競技場運営の包括受託業務や利益率の高いネット投票の売上も堅調に推移しました。
<環境事業>
排水浄化処理及び水循環に関する事業では、アクアリウムの受注案件が前期好調であった反動もあり、当期は鈍化傾向となりました。
産業用太陽光発電設備の施工金額は前期比で増加となっています。
<交通インフラ事業>
同社主要顧客であるNEXCO中日本関連会社からの電気通信設備・構造物の点検・保守、高速道路の維持管理等の業務が順調に推移したことに加え、
道路照明灯・LED工事の自治体需要も堅調でした。
<その他>
不動産の仲介、売買、賃貸等不動産に関わる事業及び、
システム保守業務、AI技術を活用したICTソリューションの提供に関わる事業を展開しました。
【財政面の状況】
<自己資本比率>(自己資本(総資本-他人資本)÷総資産)×100)
2023年9月期末時点で53.2%と前期末(57.6%)から4.4ポイント低下しています。
これは主に、それぞれ前期末比で、
- 負債
- 短期借入金が300百万円増加、その他流動負債が383百万円増加し、流動負債が合計で1,002百万円増加
- 社債が57.0百万円減少、長期借入金が105百万円増加し、固定負債が合計で140百万円増加
- 純資産
- 利益剰余金が699百万円増加し、株主資本が合計で701百万円増加
したことによるものです。
自己資本比率の数値としては問題ないレベルです。(20%以上を安全圏内としています。)
<キャッシュ・フロー>2023年9月期累計のキャッシュ・フロー(以下、CF)の状況
- フリーCF(営業活動によるCFと投資活動によるCFを合計した金額 ※4)1,184百万円の収入
- 営業活動によるCF 766百万円の収入(前期 884百万円の収入)
- 投資活動によるCF 418百万円の収入(同 743百万円の支出)
※4 フリーCFの説明:
- プラスの場合:会社が自由に使える資金が増える。
- マイナスの場合:会社が自由に使える資金が減る。
前期(2022年9月期累計)のフリーCF(140百万円の収入)から1,043百万円増加しています。
営業活動によるCFの主な内訳(百万円)
- 税金等調整前当期純利益 1,276
- 減価償却費 322
- 固定資産売却損益(△は益) △440
投資活動によるCFの主な内訳(百万円)
- 有形固定資産の取得による支出 △423
- 有形固定資産の売却による収入 688
- 連結の範囲の変更を伴う子会社株式の取得による支出 △206
【今期(2024年9月期通期)業績の見通し】
成長戦略であるM&Aの継続的実行と前期M&Aのグループ会社の売上高通期寄与による売上増加を予想しています。
また、売上増加による営業利益増に対し、M&A実行による仲介費用等発生も見込み営業利益増加を予想しています。
なお、親会社株主に帰属する当期純利益は、前期に固定資産売却益と負ののれん発生益(計 619百万円)があったことによる反動減で減益予想となっています。
株価指標と動向
【2024/1/19(金)終値時点の数値】
- 株価:1,684円
- 時価総額:45.4億円
- PER(株価収益率(予想)):8.22倍
PERは、同業で時価総額が近い、東京都競馬(9672) 15.0倍、ショーボンドホールディングス(1414) 26.1倍、多木化学(4025) 21.1倍と比較すると、低い水準です。
- PBR(株価純資産倍率):1.01倍
- 信用倍率(信用買い残÷信用売り残):ー(信用売り残無し)
- 年間配当金(予想):52円(年2回 3月 26円、9月 26円)、利回り:3.08%(配当性向 25.4%)
配当利回りは3.08%で、東証スタンダードの単純平均 2.19%(1/19時点)と比較すると高い水準です。
表4のように、直近5年間の配当金は、1株当たり0~51円で推移しており、2021年9月期以降は連続増配を継続中です。
配当性向は、無配の年を除き数%台~30%台で推移しています。
決算期 | 1株当たり 年間配当金 [円] | 配当性向 [%] |
2019年9月期 | 30 | 25.4 |
2020年9月期 | 0 | ー |
2021年9月期 | 25 | 8.7 |
2022年9月期 | 50 | 32.6 |
2023年9月期 | 51 | 15.7 |
この会社は、
中長期的に企業価値を高めるとともに、株主に利益を還元していくことを重要な経営課題の一つとして位置付けています。
配当については、安定性・継続性に配慮しつつ、業績動向、財務状況及び配当性向等を総合的に勘案し、配当性向25%を目指しています。
内部留保資金は、今後の企業としての成長と、財務基盤の安定のバランスに鑑みながら、設備投資、M&A等の投資、有利子負債の返済等に充当していくとしています。
【株主優待】
上述した通り、株主優待が新設が発表され、
200株保有の場合、配当金+株主優待(30,000円分)で、1/19時点の株価換算で利回りは12.0%となりました。
驚異的な利回りです。
ただし、株主優待新設発表の翌営業日(1/22)以降、株価が急騰した場合、この利回りよりは低くなることはご留意下さい。
【直近の株価動向】
<週足チャート(直近2年間)>
2022年1月末に安値(1,511円)をつけた後は、1,600~1,800円のレンジ内で推移していましたが、
2023年6月に急騰し、上場来高値(2,320円)をつけました。
しかしながら、すぐに急騰前の元の値に戻っています。
<日足チャート(直近3か月間)>
昨年12月に安値(1,626円)をつけた後は、1,640円前後のヨコヨコの推移でしたが、
12/28に急騰し高値(1,836円)をつけました。
しかし、その後は続かず調整しています。
今後は、昨年12月につけた高値(1,836円)を上抜け、上場来高値(2,320円)に迫っていくのか、それほど株価は上昇せずに、勢いが落ちていくのか、要注目です。
まとめ
【株主優待新設のインパクト】
- 2024年以降、毎年3月末日、9月末日の株主で、2単元(200株)以上を保有する場合、年間30,000円相当(3月末:15,000円、9月末:15,000円)の同社オリジナルクオカードが進呈され、インパクトはかなり大きい。
- 200株保有の場合、配当金+株主優待(30,000円分)で、1/19時点の株価換算で利回りは12.0%となった。
(株主優待新設発表の翌営業日(1/22)以降、株価が上昇した場合、この利回りよりは低くなる。)
【業績】
- 前期(2023年9月期)の業績は、M&Aによりグループ化したオー・ティー・エス技術サービス株式会社の業績寄与があったが、M&A・人材強化等の成長投資を積極的に行った結果、販管費が増加し営業利益が減少し、
前期比 増収減益で、売上高は微増、利益面は営業利益と経常利益は2割減だが、純利益は2.1倍の増益で着地。 - 今期(2024年9月期)の通期予想は、成長戦略であるM&Aの継続的実行と前期M&Aのグループ会社の売上高通期寄与による売上増加を予想し、
前期比 増収増益で、売上高は2割増、利益面は営業利益と経常利益は2割強の増益だが、純利益は前期の固定資産売却益と負ののれん発生益の反動減により4割弱の減益を見込む。
【株主還元】
- 配当利回り(会社予想)は3.08%で、東証スタンダードの単純平均 2.19%(1/19時点)と比較すると高い水準。
- 直近5年間の配当金は、1株当たり0~51円で推移しており、2021年9月期以降は連続増配を継続中。
配当性向は、数%台~30%台で推移。 - 会社の方針は、配当については、安定性・継続性に配慮しつつ、業績動向、財務状況及び配当性向等を総合的に勘案し、配当性向25%を目指している。
【流動性】
- 直近の出来高の5日平均は12.6百株、25日平均は23.8百株で、流動性はかなり低い水準。(1,000百株を平均水準とした。)
【株価モメンタム】
- 週足ベースの株価は、2022年1月末に安値(1,511円)をつけた後は、1,600~1,800円のレンジ内で推移していたが、
2023年6月に急騰し、上場来高値(2,320円)をつけた。しかしながら、すぐに急騰前の元の値に戻っている。 - 直近の株価は、昨年12月に安値(1,626円)をつけた後は、1,640円前後のヨコヨコで推移していたが、12/28に急騰し高値(1,836円)をつけた。
しかし、その後は続かず調整している。 - 今後の株価は、昨年12月につけた高値(1,836円)を上抜け、上場来高値(2,320円)に迫っていくのか、それほど株価は上昇せずに、勢いが落ちていくのか要注目。
以上のことから、
レベル (⭐(最低)~ ⭐⭐⭐⭐⭐(最高)) | |
株主優待新設 のインパクト | ⭐⭐⭐⭐⭐ |
業績 | ⭐⭐⭐⭐ |
株主還元 (配当、株主優待等) | ⭐⭐⭐⭐⭐ |
株価モメンタム | ⭐⭐⭐ |
流動性 | ⭐ |
総合判定 | ⭐⭐⭐⭐ (買い) |
と判断しました。
最後までご覧いただき、ありがとうございました。
※株式投資の実際の売買は、自己判断、自己責任でお願いします。