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【公募増資・売出(PO)は買いか?】ヒューリック(3003) <2024年12月実施>

こんにちは!

公募増資・売出(以下、PO)の実施を発表した銘柄に関して、POに応募して買った場合、利益を得ることができるのか?直近の経営状況や客観的な指標、株価モメンタム等を踏まえ、総合的に分析しました。

今回は、東証プライムから不動産業種のヒューリックです。

最後までお付き合いいただけるとうれしいです!

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既上場企業が新たに発行する株式(公募株式)や既に発行された株式(売出株式)を投資家に取得させることをいいます。
正確には、「PO」は「Public(公開の)Offering(売り物)」の略で、日本語では「公募」と呼ばれます。「公募」とは、「不特定かつ多数の投資家に対し、新たに発行される有価証券の取得の申込を勧誘すること」をいいます。
また、「売出」とは、「既に発行された有価証券の売付けの申込み又はその買付けの申込の勧誘のうち、均一の条件で50人以上の者を相手方として行う」ことをいい、通常は「公募」「売出」を合わせて「PO」と呼ばれます。
「新規公開株(IPO)」は未上場企業が直接金融市場からの資金調達や知名度・信用力の向上を目的として証券取引所に新規上場するために一般投資家に株式を取得してもらう行為であるのに対して、「公募・売出(PO)」は既に上場していて証券取引所での株式取引が行われている企業が追加の資金調達や大株主の保有株売却などを目的として一般投資家に株式を取得してもらう行為であり、「新規公開株(IPO)」と「公募・売出(PO)」の違いを簡単にいえば、実施する企業が「未上場」か「既上場」かの違いといえます。

POの概要

今回のPOは、大株主(損害保険ジャパン、東京海上日動火災保険、東京建物、他2社)からの株式の売出しです。売出価格等決定日や受渡期日、売出数量等は表1のようになっています。

ディスカウント率は、「売出価格等決定日」に決まり、その日の終値から数%です。

ちなみに、直近の主なPOのディスカウント率は、JR西日本(9021) 3.01%、ゆうちょ銀行(6178) 2.08%、デンソー(3387) 3.02%となっており、ほぼほぼ2~5%程度です。

ただ、ディスカウント率が大きいPOもあり、直近ではENECHANGE(4169)の8.1%が最大です。

注意点として、どの証券会社でも購入できるわけでなく、主幹事(今回はみずほ証券、野村證券、大和証券)はじめ、引受人の証券会社で購入申込可能です。

早ければ、12/10(火)の夕刻に、会社側から売出価格等のお知らせが適時開示であります。

このブログ記事も更新しますので、チェックしてくださいね💖

売出価格等決定日2024年12月10日(火)から12日(木)までの間のいずれかの日
受渡期日
(POで買った場合はこの日から売却可能)
売出価格等決定日の5営業日後の日
株式の売出し
引受人の買取引受による売出し
数量
普通株式 85,374,600
発行済み株式総数 767,907,735  の約11.1%
②株式の売出し
(オーバーアロットメントによる売出し)
数量
普通株式 12,806,100 (上限の数量)
みずほ証券が売出す。
売出価格(決定後記載)
ディスカウント率(決定後記載)
申込単位数量100 株
主幹事みずほ証券、野村證券、大和証券
表1:ヒューリック(3003) PO概要

【株式売出しの目的】

としています。

また、今回の株式の売出数量は、発行済み株式総数の最大約12.7%(OAを含む)で、

直近の株式の売出を含むPOの売出株数比率(OAを含む)は、ユー・エス・エス 3.26%、ウェザーニューズ 7.93%、ダブルエー 14.9%でしたので、それらと比較するとやや多い数量です。

また、この銘柄の直近の出来高(売買が成立した株数)の5日平均は46,559百株、25日平均は24,924百株(11/29時点)で、流動性はかなり高い水準です。(1日 1,000百株を平均的な水準としています。)

どんな会社?

半世紀以上にわたって都心に保有する多くのオフィス・商業ビル等を中心とした不動産賃貸事業を営んでいる会社です。

都心の好立地に多くの事業基盤を有する強みを持っています。

具体的には、将来の変化を予測し、都心駅近のオフィス・商業ビル・観光地のホテル・旅館や高齢者施設への積極的な投資開発を行っています。

一方で、マンション開発、地方のオフィスへの投資や大規模開発は人口動向や事業リスクを考えて行わない方針で、

経営資源を「選択と集中」することで、大きな成長を続けています。

事業セグメントは、「不動産事業」、「保険事業」及び「ホテル・旅館事業」の3つがあり、それぞれ、

を行っています。

2023年12月期通期のセグメント別売上高構成比は、

となっており、「不動産事業」が9割を占めています。

直近の経営概況

【2024年12月期3Q(2024年1月~9月)の経営成績】

(2024年10月28日発表:日本基準(連結))

決算期売上高
[億円]
(前年
同期比
増減率
[%])
営業
利益
[億円]
(同)
経常
利益
[億円]
(同)
親会社
株主に
帰属する
当期純利益
[億円]
(同)
2023年12月期
3Q累計
2,785
(△30.2)
909
(17.7)
835
(9.8)
586
(20.6)
2024年12月期
3Q累計
3,149
(13.0)
888
(△2.3)
816
(△2.3)
545
(△6.9)
2024年12月期
通期会社予想
(2024年10月28日
修正)
5,900
(32.1)
1,570
(7.4)
1,500
(9.1)
985
(4.0)
通期予想に対する
3Qの進捗率[%]
53.356.554.455.4
表2:ヒューリック 2024年12月期3Q経営成績と2024年12月期通期予想

表2の通り、前年同期比 増収減益で、売上高は1割強増利益面は微減~1割弱減でした。

今期(2024年12月期)通期の業績は、今3Q決算発表と同時に上方修正(表4参照)しており、前期比 増収増益で、売上高は3割強増利益面は1割弱増を予想しています。

この通期予想に対する進捗率は、3Q終了時点で、売上高、利益面ともに5割強で遅れ気味です。

【2024年12月期3Qの状況、経営成績の要因】

当3Q連結累計期間の連結業績は、前連結会計年度及び当3Q連結累計期間に竣工、取得した物件によりオフィス等の不動産賃貸収入は安定的に推移しています。

また、販売用不動産の売上も順調に推移したことなどにより、

となりました。

【セグメント別の業績】

セグメント別の業績は、表3の結果になりました。

主力の「不動産事業」前年同期比 増収減益

その他の事業は、増収増益となっています。

セグメント売上高
[億円]
(前年
同期比

増減率
[%])
営業
利益
[億円]

(同)
不動産2,693
(8.8)
932
(△4.2)
保険29.3
(7.7)
9.5
(9.2)
ホテル・旅館369
(19.4)
19.8
(155)
その他155
(226)
16.1
(300)
表3:2024年12月期3Q セグメント別業績

セグメント別の状況は以下です。

不動産事業

同社グループの中核事業は、東京23区を中心に、約250件(販売用不動産除く)の賃貸物件・賃貸可能面積約119万㎡を活用した不動産賃貸事業です。

環境変化に対応した競争優位性のある高品質な賃貸ポートフォリオを構築する観点から、継続的な物件の入れ替えや耐震・環境配慮に優れた開発・建替の加速による優良アセットの積み上げに取り組んでいます。

また、開発・建替、バリューアッド物件のパイプラインを充実させ、出口戦略の多様化により、安定的・継続的な開発利益と運用報酬の獲得にも取り組んでいます。

当セグメントにおける事業は順調に進行しており、前連結会計年度及び当3Q連結累計期間に竣工、取得した物件によりオフィス等の不動産賃貸収入は安定的に推移したことに加え、販売用不動産の売上も順調に推移したことなどから、

表3の前年同期比 増収減益となっています。

保険事業

連結子会社であるヒューリック保険サービス株式会社が、国内・外資系の保険会社と代理店契約を結んでおり、法人から個人まで多彩な保険商品を販売しています。

保険業界の事業環境は引き続き厳しい環境にありますが、既存損保代理店の営業権取得を重点戦略として、法人取引を中心に営業展開をしています。

ホテル・旅館事業

連結子会社であるヒューリックホテルマネジメント株式会社は「THE GATE HOTEL」シリーズ及び「ビューホテル」シリーズ、

ヒューリックふふ株式会社は「ふふ」シリーズを中心に、ホテル及び旅館の運営を行っています。

当3Q連結累計期間においては、引き続き国内・インバウンドとも好調に推移し、稼働・客室単価とも高水準を維持しています。

その他

主に連結子会社であるヒューリックビルド株式会社が、同社保有ビル等の営繕工事、テナント退去時の原状回復工事、新規入居時の内装工事を中心に受注実績を積み上げているほか、

連結子会社である株式会社リソー教育進学学習指導等を行っています。

【財政面の状況】

自己資本比率>(自己資本(総資本-他人資本)÷総資産)×100

2024年12月期3Q末時点で27.5%と前期末(30.8%)から3.3ポイント低下しました。

負債と純資産の、主な前期末比の増減は以下となっています。

自己資本比率の数値としては危険水域に近いレベルです。(20%以上を安全圏内としています。)

【今期(2024年12月期通期)通期業績予想の修正】

今3Q決算発表と同時に、2024年12月期通期の業績予想利益面のみ上方修正をしています。

2024年12月期通期の業績予想は表4です。

売上高
[億円]
営業
利益
[億円]
経常
利益
[億円]
親会社株主に
帰属する
当期純利益

[億円]
1株当たり
当期純利益
[円]
1株当たり
配当金
[円]
前回(2024/1/30)
発表予想
1,5301,440980128.7452
今回修正予想5,9001,5701,500985129.3854
増減額40605.00.64
増減率[%]2.64.20.51.43.8
表4:ヒューリック 2024年12月期通期業績予想数値の修正(2024年10月28日発表)

前回予想と比べ、売上高は前回予想は未定だったものを前期比 3割強増と予想し、利益面は当初予想から微増の増額修正をしています。

修正の理由は、

としています。

また、同社は、株主への適切な利益還元を経営課題と位置付け、安定した配当の継続を基本方針としつつ業績動向を踏まえた配当を行なうことを重視し、現中期計画画(2023-2025)において配当性向40%以上を目標としており、

当期の期末配当予想としては、上記の通り親会社株主に帰属する当期純利益の見通しを上方修正したことから、普通配当として当初予想から1株当たり2.0円増額28.0円としています。

この結果、中間配当は26.0円ですので、2024年12月期通期の配当は54.0円(前期比 4円増となっています。

株価指標と動向

【2024/11/29(金)終値時点の数値】

PERは、同業で時価総額が近い、東京建物(8804) 11.1倍、野村不動産HD(3231) 9.1倍、東急不動産HD(3289) 9.5倍と比較すると、中間的な水準です。

配当利回り4.00%で、東証プライムの単純平均2.50%(11/29時点) と比較すると高い水準です。

表3のように、直近5年間の配当金は、年間1株あたり31.5~50円で推移しており、連続増配を継続中です。

配当性向は、35~40%で安定して推移しています。

決算期1株当たり
年間配当金
[円]
配当性向
[%]
2019年12月期31.535.4
2020年12月期3637.8
2021年12月期3938.5
2022年12月期4240.3
2023年12月期5040.2
表3:ヒューリック 年間配当金推移

この会社は、

上述した通り、株主への適切な利益還元を経営課題と位置付け、安定した配当の継続を基本方針としつつ業績動向を踏まえた配当を行なうことを重視し、現中期計画において配当性向40%以上を目標としています。

また、期末配当による年1回の剰余金の配当をおこなうことを基本方針としていますが、中間配当制度を採用していることから、各事業年度の業績の状況を勘案し、中間配当を実施することにより、年2回の剰余金の配当をおこなう場合もあります。

【株主優待】

この会社は株主優待があり、毎年12月末に300株以上保有の株主は、

【変更前】

が進呈されていましたが、2023年12月期から変更となり、

【変更後】(2025年12月期以降)

2年以上継続保有の場合、3,000円相当のグルメカタログギフトを2点(6,000円相当)

になりました。

ただし、2024年12月末時点で300株以上保有の場合は、2年未満の継続保有の場合でも、3,000円相当のグルメカタログギフト(1点)が進呈されます。

したがって、2024年末は、

となります。

2025年末以降は、一律、2年以上300株保有の場合、配当金+株主優待(6,000円相当)となります。

個人投資家にとってうれしい内容ですね!

【直近の株価動向】

<週足チャート(直近2年間)>

2023年1月に安値(1,007円)をつけた後は、高値切り上げ安値切り上げの上昇トレンドで推移し、2024年1月に高値(1,648円)をつけました。

しかしその後は、高値を切り下げながら下落基調で推移しています。

<日足チャート(直近3か月間)>

9/27に高値(1,518.5円)をつけた後は、高値切り下げ安値切り下げの下落基調で推移しており、

今回のPO発表の翌営業日(11/28)は、POによる短期的な需給悪化懸念により、窓を開けて出来高を伴い前日比 77円安(-5.41%)と急落しました。

今後は、この日つけた安値(1302.5円)や8月につけた年初来安値(1260.5円)を割り込まずに、ヨコヨコから上昇に転じていくのか、割り込んで下値模索をするのか、要注目です。

まとめ

【業績】

【株主還元】

【流動性・新株式の発行株数】

【株価モメンタム】

以上のことから、

レベル
(⭐(最低)~
⭐⭐⭐⭐⭐(最高))
業績⭐⭐
株主還元
(配当、株主優待等)
株価モメンタム⭐⭐
流動性⭐⭐
株式の売出数量⭐⭐
総合判定⭐⭐
(買い)
※「総合判定」=⭐4つ以上「買い」、⭐3つ「中立」、⭐2つ以下「不参加」

と判断しました。

最後までご覧いただき、ありがとうございました。

※株式投資の実際の売買は、自己判断、自己責任でお願いします。

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