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【公募増資・売出(PO)は買いか?】AnyMind Group(5027)

こんにちは!

公募増資・売出(以下、PO)の実施を発表した銘柄に関して、POに応募して買った場合、利益を得ることができるのか?直近の経営状況や客観的な指標、株価モメンタム等を踏まえ、総合的に分析しました。

今回は、東証グロースから情報・通信業種のAnyMind Groupです。

最後までお付き合いいただけるとうれしいです!

既上場企業が新たに発行する株式(公募株式)や既に発行された株式(売出株式)を投資家に取得させることをいいます。
正確には、「PO」は「Public(公開の)Offering(売り物)」の略で、日本語では「公募」と呼ばれます。「公募」とは、「不特定かつ多数の投資家に対し、新たに発行される有価証券の取得の申込を勧誘すること」をいいます。
また、「売出」とは、「既に発行された有価証券の売付けの申込み又はその買付けの申込の勧誘のうち、均一の条件で50人以上の者を相手方として行う」ことをいい、通常は「公募」「売出」を合わせて「PO」と呼ばれます。
「新規公開株(IPO)」は未上場企業が直接金融市場からの資金調達や知名度・信用力の向上を目的として証券取引所に新規上場するために一般投資家に株式を取得してもらう行為であるのに対して、「公募・売出(PO)」は既に上場していて証券取引所での株式取引が行われている企業が追加の資金調達や大株主の保有株売却などを目的として一般投資家に株式を取得してもらう行為であり、「新規公開株(IPO)」と「公募・売出(PO)」の違いを簡単にいえば、実施する企業が「未上場」か「既上場」かの違いといえます。

POの概要

今回のPOは、大株主(SMBC信託銀行 )からの株式の売出しです。売出価格等決定日や受渡期日、売出数量等は表1のようになっています。

ディスカウント率は、「売出価格等決定日」に決まり、その日の終値から数%です。

ちなみに、直近の主なPOのディスカウント率は、JR西日本(9021) 3.01%、日本郵政(6178) 2.01%、クリエイト・レストランツ・ホールディングス(3387) 3.09%となってますが、ほぼほぼ2~5%程度です。

ただ、ディスカウント率が大きいPOもあり、直近ではENECHANGE(4169)の8.1%が最大です。

注意点として、どの証券会社でも購入できるわけでなく、主幹事(今回はみずほ証券、三菱UFJモルガン・スタンレー証券)はじめ、引受人の証券会社で購入申込可能です。

早ければ、10/3(火)の夕刻に、会社側から売出価格等のお知らせが適時開示であります。

このブログ記事も更新しますので、チェックしてくださいね💖

売出価格等決定日2023 年 10 月3日(火)
受渡期日
(POで買った場合はこの日から売却可能)
2023 年 10 月11日(水)
①株式の売出し
(引受人の買取引受けによる売出し)
数量
普通株式 4,452,200
※当該株式の一部につき、欧州及びアジアを中心とする海外市場
(ただし、米国及びカナダを除く。)の海外投資家に対して販売されることがある。
発行済み株式総数 57,803,600株 の約7.70%
②株式の売出し
(オーバーアロットメントによる売出し)
数量
普通株式 667,800 株
実施決定(10/3)
みずほ証券が売出す。
売出価格844 円
(10/3決定:終値 880円)
ディスカウント率4.09 %
(10/3決定)
申込単位数量100 株
主幹事みずほ証券、三菱UFJモルガン・スタンレー証券
表1:AnyMind Group(5027) PO概要

【株式売出しの目的】

としています。

また、今回の株式の売出数量は、発行済み株式総数の約7.70%OAを含めた最大の株数で約8.85%)で、

直近の株式の売出のみのPOの売出株数比率(OAを含む)は、jig.jp 38.7%、FPパートナー 7.0%、ナガセ 11.3%でしたので、それらと比較すると少なめの数量です。

また、今回の売出株数(OAを含むと最大51,200百株)は、1日の平均的な出来高(25日平均:1,060百株(9/26時点))の約48倍となっており、これからすると多めの数量です。

そして、この銘柄の流動性は、直近の出来高(売買が成立した株の数量)の5日平均は2,435百株、25日平均は1,060百株で、流動性は平均的な水準です。(1日 1,000百株を平均的な水準としています。)

どんな会社?

「Make Every Business Borderless」というミッションのもと、

ブランド構築、生産管理、メディア運営、ECサイト構築・運営、マーケティング、物流管理等のソリューションをワンストップで支援するプラットフォームを提供している会社です。

アジア・中東を中心に世界13ヵ国・地域にて事業を展開しており、2022年度における地域別売上収益比率は日本が47%東南アジアが37%インド・中華圏等のその他地域が16%となっています。

同社は、「ブランドコマース領域」と「パートナーグロース領域」の2つの領域で事業を展開しており、それぞれ、

を行っています。

同社グループはインターネット関連事業の単一セグメントです。

直近の経営概況

【2023年12月期2Q(2023年1月~6月)の連結経営成績】

(2023年8月14日発表:IFRS(国際会計基準)ベース)

決算期売上収益
[億円]
(前年
同期比
[%])
営業
利益
[百万円]
(同)
税引前
利益
[百万円]
(同)
親会社の
所有者に
帰属する利益
[百万円]
(同)
2022年12月期
2Q累計
108
(28.5)
△148
(赤字幅
拡大)
196
(黒字
転換)
52
(黒字
転換)
2023年12月期
2Q累計
143
(31.6)
108
(黒字
転換
)
149
(△24.3)
87
(66.9)
2023年12月期
通期会社予想
(2023年9月25日
修正)
332
(34.3)
481
(16)
450
(38.0)
227
(△5.0)
通期予想に対する
2Qの進捗率[%]
42.922.433.138.3
表2:AnyMind Group 2023年12月期2Q連結経営成績と通期会社予想

表2の通り、前年同期比 増収増益で、売上高は3割強増、利益面は営業利益は黒字転換経常利益は2割強の減益最終利益は7割弱の増益でした。

2023年12月期通期の業績予想は、今回のPO発表と同時に上方修正しており、前期比 増収増益で、売上高は3割強増、利益面は営業利益と経常利益は4割弱~16倍の増益ですが、最終利益は微減の減益を見込んでおり、

その通期予想に対する進捗率は2Q終了時点で、売上高1/2程度でそこそこですが、利益面は2割強~4割弱遅れ気味です。

【2023年12月期2Qの状況、経営成績の要因】

従来より継続してきた営業体制の強化施策によりインフルエンサーマーケティングプラットフォーム「AnyTag」とパブリッシャーグロースプラットフォーム「AnyManager」に関して事業が順調に伸長したこと、ECプロダクトの機能拡充やサービス強化により法人向けEC支援が成長していることでD2Cプラットフォームが増収になったことにより、

全てのプラットフォームにおいて売上収益および売上総利益が着実に成長し、増収増益となりました。

同社グループは、既存事業に加え、引き続きD2CプラットフォームのEC領域に注力しており、特に法人向けEC支援は日本だけでなくアジア各国における高い需要を取り込むべく体制強化を継続しています。

また、マーケティング、パートナーグロース及びD2Cの既存事業に加えて、越境EC支援においても、代理店や競争力のあるブランドを有するメーカー各社との協業を進めることで継続的な事業拡大及び成長に注力しています。

さらに、同社グループはプラットフォームの機能追加や利便性の向上に継続的に取り組んでいます

具体的には、物流管理プラットフォーム「AnyLogi」における海外配送自動化機能の充実、パブリッシャーグロースプラットフォーム「AnyManager」における短期間・低コストでニュースメディアをアプリ化する新サービス「AnyManager App Builder」の提供、およびインフルエンサーマーケティングプラットフォーム「AnyTag」における継続的な機能追加・改善などです。

同社グループは、これらの継続的な機能改善・向上は、同社グループが提供するサービスの付加価値の増大に貢献し、当2Q累計期間の成長のみならず、今後の継続的な成長に資すると考えています。

以上のことから、各プラットフォームの売上収益は、

となりました。

また、当2Q累計期間の地域別売上収益比率は、

となっており、これらの結果、表2の経営成績となりました。

【財政面の状況】

自己資本比率>(自己資本(総資本-他人資本)÷総資産)×100

2023年12月期2Q末時点で63.2%と前期末(60.7%)から2.5ポイント増加しています。

これは主に、資本金が前期末比で465百万円増加資本剰余金が470百万円増加し、親会社の所有者に帰属する持分が合計で1,589百万円増加したことよるものです。

自己資本比率の数値としては問題ないレベルです。(20%以上を安全圏内としています。)

キャッシュ・フロー>2023年12月期2Qのキャッシュ・フロー(以下、CF)の状況

 ※1 フリーCFの説明:

前期(2022年12月期)2QのフリーCF(455百万円の支出)から469百万円増加しています。

営業活動によるCFの主な内訳(百万円):

投資活動によるCFの主な内訳(百万円):

【今期(2023年12月期通期)業績の見通し】

今回のPO発表と同時に、2023年12月期通期連結業績予想の上方修正を発表しています。

2023年12月期通期の業績予想は表3です。

売上
収益
[億円]
営業
利益
[百万円]
経常
利益
[百万円]
親会社
株主に
帰属する
当期純利益

[百万円]
1株当たり
当期利益

[円]
前回
(2023/3/29)
発表予想
327309278841.48
今回修正予想3324814502273.96
増減額5.49172172143
増減率[%]1.755.661.8170
表3:AnyMind Group 2023年12月期通期連結業績と配当予想数値の修正(2023年9月25日発表)

前回予想と比べ、売上高は微増利益面は6割弱~2.7倍の増額修正をしています。

修正の理由は、

としています。

株価指標と動向

【2023/9/26(火)終値時点の数値】

PERは、同業で時価総額が近い、Appier Group(4180) 235倍、ラクスル(4384) 81.1倍、プレイド(4165) 0倍と比較すると、高めの水準です。

表4のように、直近5年間の配当金は、創業来無配です。

決算期1株当たり
年間配当金
[円]
配当性向
[%]
2019年12月期
2020年12月期
2021年12月期
2022年12月期
表4:AnyMind Group 年間配当金推移

この会社は、

経営基盤の長期安定に向けた財務体質の強化及び事業の継続的な成長を目指し、必要な内部留保の確保を優先しているため、創業以来、配当を行っていません。

しかしながら、株主利益の最大化を重要な経営目標の一つと認識し、今後の株主への剰余金の配当は、業績の推移・財務状況、今後の事業・投資計画等を総合的に勘案し、内部留保の状況を踏まえて検討していく方針です。

内部留保は、経営基盤の長期安定に向けた財務体質の強化及び事業の継続的な成長のための投資を行う資金として、有効に活用していく予定です。

【直近の株価動向】

<週足チャート(直近2年間)>

2023年3月に上場後、翌月4月に上場来安値(861円)をつけました。

そしてその後は、同年6月に急上昇し、7月に上場来高値(1,587円)をつけています。

しかしその後は、急下降して1,000円を割り込んで推移しています。

<日足チャート(直近3か月間)>

7/3に上場来高値(1,587円)をつけた後は下落に転じ、下落基調で推移しています。

そして、今回のPOと通期業績の上方修正を発表した翌営業日(9/26)は、POによる需給悪化懸念より通期業績の上方修正の好感が上回り、出来高を伴い前日比 44円高(+4.76%)と上昇しました。

今後は、25日移動平均線(赤線)や75日移動平均線(青線)を上抜いて上昇に転じていくのか、直近の安値(885円)を下抜けて下値模索をするのか、要注目です。

まとめ

【業績】

【株主還元】

【流動性・売出株数】

【株価モメンタム】

以上のことから、

レベル
(⭐(最低)~
⭐⭐⭐⭐⭐(最高))
業績⭐⭐⭐
株主還元
(配当、株主優待等)
株価モメンタム⭐⭐
流動性⭐⭐
株式の売出数量⭐⭐
総合判定⭐⭐
(中立)
※「総合判定」=⭐4つ以上「買い」、⭐3つ「中立」、⭐2つ以下「不参加」

と判断しました。

最後までご覧いただき、ありがとうございました。

※株式投資の実際の売買は、自己判断、自己責任でお願いします。

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