公募増資・売出(以下、PO)の実施を発表した銘柄に関して、POに応募して買った場合、利益を得ることができるのか?直近の経営状況や客観的な指標、株価モメンタム等を踏まえ、総合的に分析しました。
今回は、東証プライムからサービス業種の楽天グループです。
最後までお付き合いいただけるとうれしいです!
- 公募増資・売出(PO)とは?
既上場企業が新たに発行する株式(公募株式)や既に発行された株式(売出株式)を投資家に取得させることをいいます。 正確には、「PO」は「Public(公開の)Offering(売り物)」の略で、日本語では「公募」と呼ばれます。「公募」とは、「不特定かつ多数の投資家に対し、新たに発行される有価証券の取得の申込を勧誘すること」をいいます。 また、「売出」とは、「既に発行された有価証券の売付けの申込み又はその買付けの申込の勧誘のうち、均一の条件で50人以上の者を相手方として行う」ことをいい、通常は「公募」と「売出」を合わせて「PO」と呼ばれます。 「新規公開株(IPO)」は未上場企業が直接金融市場からの資金調達や知名度・信用力の向上を目的として証券取引所に新規上場するために一般投資家に株式を取得してもらう行為であるのに対して、「公募・売出(PO)」は既に上場していて証券取引所での株式取引が行われている企業が追加の資金調達や大株主の保有株売却などを目的として一般投資家に株式を取得してもらう行為であり、「新規公開株(IPO)」と「公募・売出(PO)」の違いを簡単にいえば、実施する企業が「未上場」か「既上場」かの違いといえます。
POの概要
今回のPOは、公募及び第三者割当による新株式発行です。発行価格等決定日や受渡期日、発行数量等は表1のようになっています。
ディスカウント率は、「発行価格等決定日」に決まり、その日の終値から数%です。
ちなみに、直近の主なPOのディスカウント率は、JR西日本(9021) 3.01%、日本郵政(6178) 2.01%、クリエイト・レストランツ・ホールディングス(3387) 3.09%となってますが、ほぼほぼ2~5%程度です。
ただ、ディスカウント率が大きいPOもあり、直近ではENECHANGE(4169)の8.1%が最大です。
注意点として、どの証券会社でも購入できるわけでなく、主幹事(今回は大和証券、みずほ証券、三菱UFJモルガン・スタンレー証券、ゴールドマン・サックス証券、SMBC日興証券)はじめ、引受人(楽天証券、他)の証券会社で購入申込可能です。
早ければ、5/24(水)の夕刻に、会社側から発行価格等のお知らせが適時開示であります。
このブログ記事も更新しますので、チェックしてくださいね💖
発行価格等決定日 | 2023 年 5 月 24 日(水) |
受渡期日 (POで買った場合はこの日から売却可能) | 2023 年 6月 1 日(木) |
①公募による新株式の発行 (一般募集)数量 | 普通株式 468,102,100 株 ※国内:234,051,000 株、海外:234,051,100 株 ※発行済み株式総数 1,592,398,500株 の約29.3%) |
②並行第三者割当による 新株式の発行数量 | 普通株式 78,799,000 株 ※発行済み株式総数 1,592,398,500株 の約4.94% ※三木谷興産、スピリット、サーバーエージェント、東急に割当。 (申込が行われなかった普通株式は発行されない。) |
調達資金手取り概算額(上限) | 3,321 億円 |
発行価格 | 566 円 (5/24決定:584 円) |
ディスカウント率 | 3.08 % (5/24決定) |
申込単位数量 | 100 株 |
主幹事 | 大和証券、みずほ証券、三菱UFJモルガン・スタンレー証券、ゴールドマン・サックス証券、SMBC日興証券 |
【資金調達の背景及び目的】
- 同社は、楽天会員を中心としたメンバーシップを軸に有機的に結び付けながら他にはない独自の「楽天エコシステム(経済圏)」を形成している。
国内外の会員が複数のサービスを回遊的・継続的に利用できる環境を整備することで、会員一人当たりの生涯価値(ライフタイムバリュー)の最大化、顧客獲得コストの最小化等の相乗効果の創出、グループ収益の最大化を目指している。 - 近年、ユーザーのモバイルシフトが着実に進んでいる中、『楽天市場』をはじめ、同社サービスにおけるモバイル経由の取扱高は一貫して増加傾向にある。
今後の同社のサービスの拡充及び新規展開を図る上で、モバイル端末が最も重要なユーザーとのタッチポイントであることに疑いの余地はなく、5Gの普及や IoT が社会に浸透していく中で、モバイル端末は今以上に人々の生活に欠かせないものとなっていくことが考えられる。
多種多様なサービスを展開している同社グループがモバイル事業を運営していくことは、楽天エコシステムの強化とそれによる同社グループの更なる成長の実現及び企業価値向上に資する点で、非常に大きな意義がある。 - 当該モバイル事業の一層の拡大に注力する一方で、同社は、財務健全性の強化も重要な課題と認識している。
同社はこれまで、同社が所有する楽天銀行株式会社の株式の売出しや楽天証券ホールディングス株式会社によるみずほ証券株式会社に対する楽天証券株式会社の一部株式譲渡をはじめとして、様々な非有利子負債性(資本性)資金の調達にも取り組んできた。
また、既に発表のとおり、楽天証券ホールディングス株式会社の株式上場の準備を進めているほか、親会社及び子会社での戦略的業務提携等も柔軟に検討している。 - 今般、モバイルセグメントの営業損失の逓減傾向が確かなものとなり今後の収益化の目途が立ったこと、前倒しでの基地局設置の実現により当該設備投資額の定常状態への移行が見込まれること等を背景に、今後のモバイル事業の成長に必要となる資金調達総額を相当程度見通すことが可能になった。
このような中、2023 年2月 14 日付の「2022 年度第4四半期および通期決算説明会 CEO グループ戦略」において公表したとおり、有利子負債に過度に依存することなく、成長投資と中長期的な財務健全性のバランスに十分配慮した規律ある経営を行うとの方針に基づき、同社新株式発行による資金調達を行うことが、当該方針に基づく最適な財務戦略上の選択肢と判断した。 - なお、新株式発行に伴い、一株当たり株主持分等の希薄化が生じるが、モバイル事業の拡大による楽天エコシステムのさらなる発展や会員一人当たりの生涯価値(ライフタイムバリュー)の最大化、財務基盤の拡充及び並行第三者割当増資の各割当先との関係強化等が、同社の企業価値の向上及び既存株主の利益に繋がるものと考えている。
としています。
【調達資金の使途】
今回の一般募集及び並行第三者割当増資に係る手取概算額合計上限3,321億円についての調達資金の使途は、以下の表2のとおりです。
使途 | 金額 [億円] | 支出予定時期 |
2023 年6月に償還期限が到来する 第5回無担保社債の償還資金 | 100 | 2023 年6月 |
2023 年 12 月に初回任意償還日が到来する 第1回公募劣後特約付社債の償還資金 | 680 | 2023 年 12 月 |
楽天モバイル株式会社 への投融資資金 | 1,883 | 2023 年 12 月末 まで |
(上記内訳) 第4世代移動通信システム(4G) 及び第5世代移動通信システム(5G) に関する基地局等に係る設備投資 | 400 | 同上 |
(同) 運転資金 (端末購入資金、顧客獲得に関する費用 及びローミング費用) | 1,483 | 同上 |
2023 年 12 月末までに償還期限を迎える コマーシャル・ペーパーの償還資金 | 540 | 2023 年 12 月末 まで |
2024 年 11 月に償還期限が到来する ドル建無担保社債の償還資金の 一部又は全部 | 残額 (約118) | 2024 年 11 月 |
合計 | 3,321 | ー |
今回の新株式の発行数量は、発行済み株式総数の約29.3%(第三者割当を含めた最大の株数で約34.3%)で、
直近の新株式の発行を含むPOの発行株数比率(第三者割当を含む)は、フルハシEPO 18.4%、大光 10.6%、Macbee Planet 9.54%でしたので、それらと比較すると多い数量です。
また、この銘柄の直近の出来高(売買が成立した株の数量)の5日平均は560,189百株、25日平均は196,057百株で、流動性はかなり高い水準です。(1日 1,000百株を平均的な水準としています。)
どんな会社?
「イノベーションを通じて、人々と社会をエンパワーメントする」を経営の基本理念に掲げ、
国内外において、E コマース、トラベル、デジタルコンテンツ等のインターネットサービス、
クレジットカードをはじめ、銀行、証券、保険、電子マネー、スマホアプリ決済といったフィンテック(金融)サービス、
携帯キャリア事業等のモバイルサービス、
さらにプロスポーツといった多岐にわたる分野で 70 以上のサービスを、
楽天会員を中心としたメンバーシップを軸に有機的に結び付けながら他にはない独自の「楽天エコシステム(経済圏)」を形成し、国内外の会員が複数のサービスを回遊的・継続的に利用できる環境を整備することで、
会員一人当たりの生涯価値(ライフタイムバリュー)の最大化、顧客獲得コストの最小化等の相乗効果の創出、グループ収益の最大化を目指している会社です。
事業セグメントは、「インターネットサービス」「フィンテック」「モバイル」の3つがあり、それぞれ、
- インターネットサービス
インターネット・ショッピングモール『楽天市場』をはじめとする各種ECサイト、オンライン・キャッシュバック・サイト、旅行予約サイト、ポータルサイト、北米地域でのデジタルコンテンツサイト等の運営、メッセージングサービスの提供や、これらのサイトにおける広告等の販売、プロスポーツの運営等を行う事業 - フィンテック
クレジットカード関連サービス、インターネットを介した銀行及び証券サービス、暗号資産(仮想通貨)の媒介、生命保険サービス、損害保険サービス、電子マネーサービスの提供等を行う事業 - モバイル
通信サービス及び通信技術の提供、電力供給サービスの運営並びに北米地域以外でデジタルコンテンツサイト等の運営等を行う事業
を行っています。
2022年12月期通期のセグメント別売上高構成比は、
- インターネットサービス 51.3%
- フィンテック 31.3%
- モバイル 17.4%
となっており、「インターネットサービス」が5割強を占めています。
直近の経営概況
【2023年12月期1Q(2023年1月~3月)の経営成績】
(IFRS(国際会計基準)ベース:2023年5月12日発表)
決算期 | 売上収益 [億円] (前年 同期比 [%]) | 営業利益 [億円] (同) | 税引前 利益 [億円] (同) | 親会社所有者 に帰属する 当期利益 [億円] (同) |
2022年12月期 1Q累計 ※1 | 4,350 (ー) | △1,131 (赤字幅 拡大) | △1,192 (赤字幅 拡大) | △918 (赤字幅 拡大) |
2023年12月期 1Q累計 | 4,756 (9.3) | △761 (赤字幅 縮小) | △794 (赤字幅 縮小) | △825 (赤字幅 縮小) |
2023年12月期 通期会社予想 | ー | ー | ー | ー |
※1:IFRS第17号「保険契約」を2023年12月期1Q連結会計期間の期首から適用し、基準移行日である2022年1月1日時点に基準変更による累積的影響額を反映。これに伴い、2022年12月期1Qに係る各数値については、当該会計基準を遡って適用した後の数値。したがって、2022年12月期1Qの対前年同四半期増減率は記載なし。
表3の通り、前年同期比で1割弱の増収 、利益面は赤字幅縮小でした。
2023年12月期通期の業績予想は、数値の開示はありませんが、
株式市況の影響を大きく受ける証券サービスを除いた連結売上収益は、2022年12月期に比べ2桁の成長率を目指しています。
【2023年12月期1Qの状況、経営成績の要因】
同社に関係するインターネット業界は、「令和4年版 情情報通信白書」(総務省)によると、ドローン、AI等の新たなICTサービスが登場し、社会へ急速に浸透していく中で、ICTはもはや生活に欠かすことのできない社会・経済インフラとなっていると指摘されています。
また、ウィズコロナからアフターコロナへの変革期を迎えている今、様々なデジタルサービスの社会的需要が一層増していると同社は考えています。
このような環境下、同社グループは、メンバーシップ及び共通ポイントプログラムを基盤にしたオンライン・オフライン双方のデータ、AI等の先進的技術を活用したサービスの開発及び展開を進めています。
楽天モバイルにおいては、携帯電話基地局等を含む無線アクセスネットワークのマルチベンダー化を実現するOpen RANや仮想化技術によるvRAN等を、世界に先駆けて商用ネットワーク全体に導入し、
また、楽天シンフォニーにおいては、通信事業者におけるネットワーク機器の構成を刷新する取組が進む中、『楽天モバイル』で実装したオープンで完全仮想化されたアーキテクチャを世界の通信各社に提案しています。
今後も楽天エコシステムを更に進化させ、同社グループの競争力を高めていく計画です。
インターネットサービスは、インターネット・ショッピングモール『楽天市場』において、コロナ禍における「巣ごもり消費」等が一巡した後も、顧客の利便性や満足度の向上を追求した各種施策や販促活動等の奏功により顧客の更なる定着が進みました。
また、国内旅行に対する需要の堅調な回復が継続したこと等により、国内EC取扱高が伸長しました。
フィンテックは、各サービスにおける顧客基盤の拡大が続き、クレジットカード関連サービスや銀行サービス、証券サービス等において増収増益を達成しました。
また、モバイルは、通信料金収入の増加等により、前1Q連結累計期間と比較して売上収益が拡大し、これに伴いセグメント損失は着実に縮小しています。
この結果、同社グループの当1Q連結累計期間における売上収益は4,756億円(前年同期比9.3%増)となりました。
モバイルは、前1Q連結会計期間をピークにセグメント損失は縮小していますが、自社基地局設置等の先行投資が継続中のため、同社グループのNon-GAAP営業損失(※2)は689億円(前年同期は991億円の損失)となりました。
※2 Non-GAAP営業利益:IFRS(国際会計基準)に基づく営業利益から、同社グループが定める非経常的な項目やその他の調整項目を控除したもの
【セグメント別の状況】
セグメント別の業績は、表4の結果になりました。
主力の「インターネット」は前年同期比 増収減益、
「フィンテック」は増収増益、
「モバイル」は増収で赤字幅縮小でした。
セグメント | 売上高 [億円] (前年同期比 増減率[%]) | セグメント 利益 [億円] (同) |
インターネット サービス | 2,711 (8.7) | 118 (△17.1) |
フィンテック | 1,680 (7.6) | 266 (20.4) |
モバイル | 963 (25.7) | △1,026 (前年同期 △1,323億円) |
各セグメント別の状況は以下です。
<インターネット>
主力サービスである国内ECは、流通総額及び売上収益の更なる成長を目指し、ロイヤルカスタマーの醸成や新規顧客の獲得のための販促活動、クロスユースの促進、共通の送料無料ラインの導入促進等の施策に加え、楽天エコシステムのオープン化戦略等に注力しました。
インターネット・ショッピングモール『楽天市場』は、顧客の利便性や満足度の向上を追求した各種施策や販促活動等の奏功により顧客の更なる定着が促進したほか、
インターネット旅行予約サービス『楽天トラベル』は、政府による支援施策等の継続に後押しされ、国内旅行の需要回復に合わせた販促施策等が奏功し、前連結会計年度と比較して取扱高が大幅に拡大しました。
また、国内EC取扱高の伸長を受け、マーケットプレイスとして魅力が増したことで、広告事業の売上も引き続き拡大しました。
海外インターネットサービスを含むその他インターネットサービスは、米国のオンライン・キャッシュバック・サービス『Rakuten Rewards』を中心に売上収益が伸長しました。
また、米国地域における広告事業等が景気減速の影響を受けたこと等により、セグメント利益は前1Q連結累計期間と比較して減少しています。
<フィンテック>
クレジットカード関連サービスは、2022年12月に『楽天カード』の累計発行枚数が2,800万枚を突破した後も新規発行枚数の増加が継続しました。
2022年3月に、まん延防止等重点措置が解除されたこと等を背景に、オフライン消費の回復が見られたことに加え、コロナ禍における「巣ごもり需要」で定着したオンライン消費もニーズが継続し、ショッピング取扱高が伸長しました。
銀行サービスは、2022年12月に預金口座数が1,338万口座を突破した後も引き続き顧客基盤が拡大しました。
証券サービスは、『楽天キャッシュ』決済での投信積立設定者がサービス開始からわずか9ヶ月で100万人を突破する等、顧客の更なる定着が進みました。
<モバイル>
計画の前倒しによる自社基地局の整備に注力することでネットワーク品質の向上に努めました。
また、新料金プラン移行に伴い、通信料金収入が増加し、売上収益の増加に貢献しました。
他方で、減価償却費等のネットワーク関連費用も増加しました。
この結果、モバイルセグメントにおける売上収益は963億円(前年同期比25.7%増)となりました。
モバイルにおける自社基地局設置等の先行投資が継続中のため、セグメント損失は1,026億円(前年同期は1,323億円の損失)となりましたが、前1Q連結会計期間をピークに損失は縮小しています。
【財政面の状況】
<自己資本比率>(自己資本(総資本-他人資本)÷総資産)×100)
2023年12月期1Q末時点で3.5%と前期末(3.9%)から0.4ポイント低下しました。
これは主に、利益剰余金が前期末比で908億円減少し、親会社の所有者に帰属する持分が合計で696億円減少したことによるものです。
自己資本比率の数値としては危険領域のレベルです。(20%以上を安全圏内としています。)
<キャッシュ・フロー>2023年12月期1Q累計のキャッシュ・フロー(以下、CF)の状況
- フリーCF(営業活動によるCFと投資活動によるCFを合計した金額 ※3)2,324億円の支出
- 営業活動によるCF 1,225億円の支出(前年同期 2,099億円の支出)
- 投資活動によるCF 1,098億円の支出(同 4,036億円の支出)
※3 フリーCFの説明:
- プラスの場合:会社が自由に使える資金が増える。
- マイナスの場合:会社が自由に使える資金が減る。
前期(2022年12月期1Q累計)のフリーCF(6,135億円の収入)から3,811億円増加しています。
営業活動によるCFの主な内訳(億円)
- カード事業の貸付金の増減額(△は増加) 1,286
- 銀行事業の預金の増減額(△は減少) 1,439
- 銀行事業の貸付金の増減額(△は増加) △2,324
投資活動によるCFの主な内訳(億円)
- 有形固定資産の取得による支出 △676
- 銀行事業の有価証券の取得による支出 △1,338
- 銀行事業の有価証券の売却及び償還による収入 1,055
【今期(2023年12月期)業績の見通し】
当期の連結業績予想において、株式市況の影響を大きく受ける証券サービスを除いた連結売上収益については、前期に比べ二桁成長を目指しています。
各セグメントの業績の見通しは、以下のとおりです。
<インターネットサービス>
ECをはじめとした国内インターネットサービスは、引き続き、ロイヤルカスタマーの醸成、新規顧客の獲得、クロスユースの促進、ECプラットフォーム拡大にむけた楽天エコシステムのオープン化戦略等に取り組むとともに、
データやAI等の活用を通じた新しい市場の創造により、流通総額及び売上収益の成長を目指しています。
なお、旅行予約サービスである『楽天トラベル』等は、インバウンド需要の再拡大や政府による旅行支援施策等により業績が好調であるものの、当該施策の継続、感染症等の影響によっては、売上収益や利益が減少する可能性があります。
海外インターネットサービスは、楽天エコシステムの会員基盤拡大、海外におけるブランド認知度の向上を図るとともに、ユーザーに新たな価値を提供することを目指しています。
<フィンテック>
クレジットカード関連サービスは、引き続きマーケットシェアやグループシナジーの拡大を狙いとしたマーケティング施策の強化により、ショッピング取扱高の更なる成長を目指しています。
銀行サービスは、新規口座獲得に加え、顧客の給与振込及び口座振替を獲得する等、生活口座としての利用を推進しています。
保険サービスは、新規契約件数の増加、インターネットサービスとの親和性が高い商品の拡充等により、一層の成長を目指しています。
証券サービスにおいては、株式市況の影響を大きく受けるため、予想は困難としています。
<モバイル>
収益面について、新規契約者の増加及びデータ使用量増加による通信料収入の増加を見込んでいます。
なお、新ローミング契約の締結により、顧客体験の改善を見込んでいます。
また、今後の設備投資や営業費用等の計画の見直しを行った結果、モバイル事業単体での2023年中の単月営業黒字化は困難と考えているものの、早期の年間黒字化を目指しています。
引き続き顧客体験の向上に取り組むことで、顧客満足度を高め、解約率の減少に加え、より一層の契約者獲得を目指しています。
株価指標と動向
【2023/5/18(木)終値時点の数値】
- 株価:606円
- 時価総額:9,649億円
- PER(株価収益率(今期予想)):0倍
同業で時価総額が近いPERは、Zホールディングス(4689) 21.1倍、イオンフィナンシャルサービス(8570) 9.8倍、リクルートホールディングス(6098) 23.9倍です。
- PBR(株価純資産倍率):1.18倍
- 信用倍率(信用買い残÷信用売り残):2.44倍
- 年間配当金(予想):4.5円(会社予想は未定:年1回 12月)、年間利回り:0.74%
配当金の利回り(予想)は、会社予想は未定ですが前期並とすると0.74%で、東証プライムの単純平均 2.31%(5/17時点) と比較すると低い水準です。
表5のように、直近5年間の配当金は、1株当たり4.5円で一定です。
配当性向は、最終黒字の年は1年しかありませんが、4.3%で低い水準です。
決算期 | 1株当たり 年間配当金 [円] | 配当性向 [%] |
2018年12月期 | 4.5 | 4.3 |
2019年12月期 | 4.5 | ー (最終赤字) |
2020年12月期 | 4.5 | ー (最終赤字) |
2021年12月期 | 4.5 | ー (最終赤字) |
2022年12月期 | 4.5 | ー (最終赤字) |
この会社は、
株主還元については、中長期的な成長に向けた投資や財務基盤の安定化のための内部留保の充実を勘案しつつ、安定的・継続的に配当を行うよう努めています。
必要となる株主資本の水準については、以下の考え方を基本としています。
- 拡大する事業機会を迅速かつ確実に捉えるために必要な財務基盤を整えておくこと
- 事業活動及び資産のリスクと比較して充分であること
- 安定的な資金調達を行う上で必要な格付けを維持すること及び監督規制上求められる水準を充足していること
【株主優待】
この会社は、株主優待があり、毎年12月末に100株以上保有の株主は、以下が進呈されます。
- 楽天キャッシュ(100株以上:500円相当、1,000株以上:1,000円、5,000株以上:1,500円、10,000株以上:2,000円(5年以上継続保有の場合は500円加算))
- NBA Rakuten 3カ月間無料で利用可能なLEAGUE PASS
- 楽天ミュージック【初めての方限定】 スタンダードプランまたは楽天カード/モバイル会員対象プランが90日間無料
- 楽天マガジン【初めての方限定】 90日間無料
- お買いものパンダグッズ抽選
100株を5年未満継続保有の場合は、楽天キャッシュのみを金額換算すると、配当金+株主優待(500円相当)で、利回りは1.56%となります。
【直近の株価動向】
<週足チャート(直近2年間)>
週足ベースの株価は、2021年8月に高値(1,371円)をつけた後は下落トレンドで推移していましたが、
2022年6月以降は、600~700円前後でヨコヨコで推移しています。
<日足チャート(直近3か月間)>
直近の株価は、600~700円のレンジ内での推移でしたが、
5/15に年初来高値(749円)をつけた後、場中に今回のPO実施の情報がリークされ急落しました。
そして、正式発表があった翌営業日(5/17)は、年初につけた年初来安値(584円)まで下落しましたが、その後は陽線をつけて値を戻しています。
今後は、この年初来安値を割り込まずに上昇に転じていくのか、年初来安値を割り込んで下値模索をするのか、要注目です。
まとめ
【業績】
- 今期(2023年12月期)1Qの業績は、国内EC取扱高の伸長、フィンテックの各サービスにおける顧客基盤の拡大、モバイルの通信料金収入の増加等により、
前年同期比で、売上高は1割弱の増収、利益面は赤字幅縮小の結果。 - 今期通期予想は、株式市況の影響を大きく受ける証券サービスを除いた連結売上収益は、2022年12月期に比べ2桁の成長率を目指している。
【株主還元】
- 配当利回り(予想)は0.74%で、東証プライムの単純平均2.31%(5/17時点) と比較すると低い水準。
- 直近5年間の配当金は、年間1株あたり4.5円で一定で、
配当性向は4.3%で低い水準(ただし、最終黒字の年は1年だけ)。 - 株主優待があり、毎年12月末に100株以上保有の株主は、楽天キャッシュの付与(100株以上:500円相当、1,000株以上:1,000円、5,000株以上:1,500円、10,000株以上:2,000円(5年以上継続保有の場合は500円加算))や「NBA Rakuten」「楽天ミュージック」の無料サービス等が進呈される。
100株を5年未満継続保有の場合は、楽天キャッシュのみを金額換算すると、配当金+株主優待(500円相当)で、利回りは1.56%となる。
【流動性・発行株数】
- 今回の新株式の発行数量は、発行済み株式総数の約29.3%(並行第三者割当を含めた最大の株数で約34.3%)で、
直近の新株式発行を含むPO(フルハシEPO、大光、Macbee Planet)の発行株数比率(第三者割当を含む)と比較するとかなり多い数量。 - 直近の出来高の5日平均は560,189百株、25日平均は196,057百株で、流動性はかなり高い水準。
【株価モメンタム】
- 週足ベースの株価は、2021年8月に高値(1,371円)をつけた後は下落トレンドで推移していたが、
2022年6月以降は、600~700円前後でヨコヨコで推移している。 - 直近の株価は、600~700円のレンジ内での推移だったが、
5/15に年初来高値(749円)をつけた後、場中に今回のPO実施の情報がリークされ急落。
そして、正式発表があった翌営業日(5/17)は、年初につけた年初来安値(584円)まで下落したが、その後は陽線をつけて値を戻している。 - 今後の株価は、この年初来安値を割り込まずに上昇に転じていくのか、年初来安値を割り込んで下値模索をするのか要注目。
以上のことから、
レベル (⭐(最低)~ ⭐⭐⭐⭐⭐(最高)) | |
業績 | ⭐⭐⭐ |
株主還元 (配当、株主優待等) | ⭐⭐ |
株価モメンタム | ⭐⭐⭐ |
流動性 | ⭐⭐⭐⭐⭐ |
新株式の発行数量 | ⭐ |
総合判定 | ⭐⭐⭐(中立) |
と判断しました。
最後までご覧いただき、ありがとうございました。
※株式投資の実際の売買は、自己判断、自己責任でお願いします。