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【自社株買いは買いか?】コニシ(4956)

直近で自己株式の取得を発表した銘柄に関して、この発表のタイミングで株を買った場合、利益を得ることができるのか?

足元の経営状況や客観的な指標、株価モメンタム等を踏まえ、総合的に分析しました。

今回は、東証プライムから化学業種のコニシです。

最後までお付き合いいただけるとうれしいです!

「自社株買い」とは?

上場企業が自らの資金を使って、株式市場から自社の株式を買い戻すことをいう。

日本証券業協会HP 金融・証券用語集

自社の株を買った後は、

  1. 買い戻した株式を消却する。(無効とする。)
  2. 金庫株としてそのままにしておき、いずれ資金調達などの目的で売却する。

の2通りあります。

【自社株買いのメリットデメリット

<メリット>

  1. 発行済み株式数が減るため、会社の利益総額が変わらなければ、1株当たり利益(EPS)が増えるので、企業価値が上がる=株価が上がる可能性がある。
    (配当とともに株主還元の一つ)
  2. 配当金の支払いが少なくて済む。(企業側のメリット)
  3. 敵対的買収の防衛策(株価が上がって敵対企業が株を買いにくくなることと、市場に出回る株数の割合が少なくなるため)
  4. ROE(株主資本利益率:ROE = 当期純利益 ÷ 自己資本×100(%))が上がる。
    自社株買いを行った場合、自己資金が減りますので、分母の「自己資本」が小さくなりROEが上がります。

<デメリット>

  1. 自己資金が減り、設備投資などの自社の成長に回せる資金が少なくなる。
  2. 自己資本比率(自己資本(総資本-他人資本)÷総資産) ×100)が下がる。

などがあります。

それでは、見ていきましょう!

自社株買いの概要

会社から発表された自己株式取得の概要は、表1のようになっています。

株数と金額の上限が設定されていますが、株価が上がれば、取得に必要な金額も大きくなりますので、予定の取得株数よりも少なくなることも多いです。

自社株買い発表日2023年6月20日(火)
取得期間2023年6月21日~ 2024年3月29日
取得株式の総数普通株式 300 万株(上限)
発行済株式総数(自己株式を除く)に対する割合:8.47%
取得金額の5総額50 億円(上限)
※取得株数の上限で割ると1株あたり1,666円換算
取得方法①自己株式立会外買付取引(ToSTNeT-3)による買付け
②東京証券取引所における市場買付
表1:コニシ 自社株買い概要

【自社株買いを行う理由】

としています。

同社は「中期経営計画 2026」の中の資本政策おいて、 株主還元の強化、資本効率の向上を目的に、過去最大となる約60億円の自己株式取得を計画し、「総還元性向 約60%(3期平均)」を目指すとしています。

今回の自己株式の取得数量は、発行済み株式総数(自己株式を除く)の8.47%と自社株買いの数量としてはかなり多い数量(※1)です。

※1 一概に言えませんが、目安として、5%以上:かなり多い、3%以上5%未満:多い、1%以上3%未満:ほどほど、1%未満:少ないとしています。

なお合わせて、今回取得する自己株式については、原則消却する予定となっています。

そして、2023年6月21日に東京証券取引所の自己株式立会外買付取引(ToSTNeT-3)による買付けが約34億円分既に実施されましたので、今後は、50億円分の予定の内あと残り約16億円分の自社株買いが、市場買付で実施見込みです。

また、この銘柄の直近の出来高(売買が成立した株式の数量)の5日平均は1,248百株、25日平均は623百株で、流動性は平均的な水準です(1,000百株を平均水準としています)。

どんな会社?

1870 年創業の薬種商から始まり 、その後、洋酒や工業用薬品の販売から化学品を扱う商社として事業を拡大1952年には合成接着剤「ボンド」 を開発するなど、 顧客、 社会の要望に応えながら「化学」 を扱う企業へと変化

現在のコニシグループは、合成接着剤「ボンド」 を製造・ 販売するメーカーとしての「ボンド事業」創業からの問屋業の流れを受け継ぎ化学品を扱う 専門商社としての「化成品事業」、そし て関係会社を中心に展開する社会インフラおよび建築ストック市場の補修・ 改修・ 補強を目的とした「工事事業」 を主力事業として、 事業展開を行っ ている会社です。

それぞれの事業内容は、

を行っており、

2023年3月期通期のセグメント別売上高構成比は、

となっており、「ボンド」が6割弱を占めています。

直近の経営概況

【2023年3月期(2022年4月~2023年3月)の経営成績】

(2023年4月28日発表)

決算期売上高
[億円]
(前期比
[%])
営業
利益
[億円]
(同)
経常
利益
[億円]
(同)
親会社株主に
帰属する
当期純利益
[億円]
(同)
2022年3月期
通期実績
1,136
(5.5)
72.9
(3.1)
78.2
(5.4)
51.3
(4.1)
2023年3月期
通期実績
1,233
(8.5)
74.2
(1.7)
79.2
(1.3)
100
(95.4)
2024年3月期
通期会社予想
1,290
(4.6)
93.0
(25.3)
97.0
(22.4)
62.0
(△38.2)
表3:コニシ 2023年3月期経営成績と2024年3月期会社予想

表3の通り、前期比 増収増益で、売上高は1割弱増利益面は微増~2倍弱の増益の結果で着地しました。

今期(2024年3月期)の業績は、前期比 増収増益で、売上高は微増、利益面は営業利益と経常利益は2割強の増益ですが、当期純利益は、前期に固定資産の譲渡による固定資産売却益がありその反動減4割弱減を予想しています。

【2023年3月期の概況、経営成績の要因】

当連結会計年度における日本経済は、新型コロナウイルス感染症対策と社会経済活動の両立に向けて、生活の正常化が進む中、景気は緩やかに持ち直しの動きが見られたものの、

世界的な資源・エネルギー価格高騰の影響を受け、電力・燃料価格等の物価上昇が続き、回復は弱含みの状況となりました。

今後は経済活動の正常化が進むことで景気は緩やかに回復すると予想していますが、ウクライナ情勢の長期化による資源コストの更なる高騰や、欧米での金融機関に対する信用不安が日本経済の回復に大きな影響を及ぼす可能性もあり、依然として先行きは不透明な状況が続いています。

このような事業環境の中、同社グループは、建築・土木分野の需要が復調し、補修・改修・補強向けの売上高が、ボンド・工事事業、両セグメントともに好調に推移しました。

また化成品セグメントは、自動車向けの商材が好調に推移しました。

一方で原材料コストや電力・燃料価格の高騰が、全体の収益を圧迫しましたが、年度後半にかけて販売価格への転嫁が進んだことにより、回復基調となりました。

その結果、当連結会計年度における同社グループの経営成績は、売上高1,233億円(前年同期比8.5%増)営業利益74.2億円(同1.7%増)経常利益79.2億円(同1.3%増)

親会社株主に帰属する当期純利益は、2021年8月24日公表の「固定資産の譲渡および特別利益の計上に関するお知らせ」のとおり固定資産売却益を計上したことから、100億円(同95.4%増)となりました。

【セグメント別の状況】

セグメント別の業績は、表4の結果になりました。

主力の「ボンド」と「工事事業」前期比 増収減益

「化成品」は増収増益「その他」は減収減益の結果でした。

セグメント売上高
[億円]
(前期比
増減率[%])
営業
利益
[百万円]
(同)
ボンド689
(8.4)
4,536
(△1.5)
化成品346
(8.9)
1,265
(27.9)
工事事業195
(8.3)
1,606
(△4.0)
その他
(不動産賃貸等)
1.8
(△5.7)

(△82.5)
表4:2023年3月期通期 セグメント別業績

各セグメント別の状況は以下です。

ボンド

一般家庭用分野は、ホームセンター向けやコンビニエンスストア向けは堅調に推移しました。

住関連分野は、建築コストが上昇傾向となり新設住宅着工戸数の持ち直しの動きは鈍く、内装工事用の販売数量は減少しました。

産業資材分野は、自動車・電子部品等に使用される弾性接着剤の販売数量が増加しました。

建築分野は、建築補修用や建築用シーリング材の販売数量は増加し、土木分野においても、表面保護・はく落防止工法が好調に推移しました。

当連結会計年度については、接着剤やシーリング材に使用される原材料価格が過去にない水準で高騰しましたが、

経費削減や原価改善の取り組み、製品販売価格への転嫁が年度後半にかけて進捗し、営業利益は前年同期並みまで回復しました。

化成品

売上高、利益ともに、仕入商材の価格改定による影響もあり、全体的に好調に推移しました。

化学工業分野は、樹脂原料の販売が堅調に推移しました。

自動車向けの商材は、半導体不足等で需要影響はあったものの、供給制約の緩和や新規採用により好調に推移しました。

また、電子電機向けの商材は、供給先の生産調整もあり低調に推移しました。

丸安産業㈱は、コンデンサ用商材は半導体不足の影響を受け減少しましたが、半導体製造に使用される商材は引き続き好調に推移しました。

工事事業

公共事業を中心としたインフラおよびストック市場の補修・改修・補強工事が引き続き好調に推移し、ボンドエンジニアリング㈱は売上・利益ともに増加しました。

また、2023年1月に子会社化した中信建設㈱も売上・利益の増加に寄与しました。

その他の関係工事会社は、工事の受注状況は堅調であるものの、資材価格の高騰や大型工事案件を得られなかったこと等により低調に推移しました。

【財政面の状況】

自己資本比率>(自己資本(総資本-他人資本)÷総資産)×100

2023年3月期末時点で57.9%と前期末(57.6%)から0.3ポイント増加しています。

これは主に、利益剰余金が前期末比で8,285百万円増加し、

株主資本が合計で7,899百万円増加したことによるものです。

自己資本比率の数値としては問題ないレベルです。(20%以上を安全圏内としています。)

キャッシュ・フロー>2023年3月期累計のキャッシュ・フロー(以下、CF)の状況

 ※2 フリーCFの説明:

前期(2022年3月期累計)のフリーCF(3,524百万円の収入)から4,631百万円増加しています。

営業活動によるCFの主な内訳(百万円)

投資活動によるCFの主な内訳(百万円)

【今期(2024年3月期通期)業績の見通し】

2024年3月期における日本経済は、経済活動の正常化が進むことで景気は緩やかに回復し、個人消費についてもコロナ禍からの自粛傾向が薄まり、また物価高や人手不足を背景とする賃金上昇を受けて底堅く推移すると考えています。

しかしながら、ウクライナ情勢の長期化による資源コストの更なる高騰や、欧米で急拡大している金融機関に対する信用不安が日本経済の回復に大きな影響を及ぼす可能性もあり、依然として先行きは不透明な状況が続いています。

このような中、各事業について以下のような見通しです。

ボンド

住関連分野では建設コストの増加などが影響し、住宅需要の回復が見込めず、前年同程度の住宅着工戸数になることを予想しています。

一方、土木建築分野は、ビル・マンションなどのストック市場およびインフラ市場における補修・補強・改修は堅調に推移する見込みです。

また、接着剤やシーリング材に使用される原材料価格は、緩やかに調達コストが下がることが予想されるものの、エネルギーコストの上昇などにより価格の高止まりが継続していることから、先行き不透明な状況となっています。

このような状況のもと、住関連分野向け接着剤や土木建築用接着剤・シーリング材などのコア事業の強化だけでなく、電子電材、自動車業界などの成長市場向け製品の開発、新規開拓活動の強化に努め、事業領域の拡大を図る計画です。

化成品

スマートフォンやパソコンなど個人消費者向け市場の減少が懸念されるものの、自動車業界や産業機器などは引き続き成長が続くと予想しています。

このような状況のもと、同社材料科学研究所が進めている自社技術を活かした製品開発を推進し、市場導入を目指しています

また、成長市場である自動車、電子電機、化学工業分野への営業活動を強化し、放熱、耐熱用途商材の拡販する計画です。

工事事業

国土強靭化基本計画の推進により、老朽化したインフラ整備や維持管理の需要拡大が引き続き見込まれています

このような状況のもと、ボンド事業が持つ補修・補強・改修用接着剤や工法を活用し、橋梁などの社会インフラ、建築ストック市場における補修・補強・改修工事事業の拡大を強化する計画です。

課題である人手不足については、採用強化、雇用確保の施策を検討し、事業拡大を継続できる体制構築に努めています。

株価指標と動向

【2023/6/21(水)終値時点の数値】

PERは、同業で時価総額が近い、アイカ工業(4206) 14.9倍、ショーボンドホールディングス(1414) 24.0倍と比較すると、低い水準です。

配当金の利回り(予想)は2.24%で、東証プライムの単純平均 2.22%(6/20時点) と同水準です。

表5のように、直近5年間の配当金は、1株当たり26~49円で推移しており、連続増配を継続中です。

配当性向は、10%台~30%台で比較的安定して推移しています。

決算期1株当たり
年間配当金
[円]
配当性向
[%]
2019年3月期2621.4
2020年3月期3628.5
2021年3月期4029.1
2022年3月期4430.5
2023年3月期4917.4
表5:コニシ 年間配当金推移

この会社は、

利益配分の基本方針として、株主に対する利益還元を経営の重要課題と認識しています。

収益を重視した企業活動により財務体質の充実を図り、経営基盤の強化に努め、配当性向30%を目安に、毎期の業績等を勘案しながら、継続的かつ安定的な配当を実施する方針です。

また、生産性の向上を可能にする自動化・省力化製造・物流設備への投資、M&Aによる事業領域の拡大、新基幹システム導入への投資などを行い、業績向上に努める予定です。

【直近の株価動向】

<週足チャート(直近2年間)>

2022年6月に安値(1,432円)をつけた後は、高値切り上げ安値切り上げの上昇トレンドで推移しています。

<日足チャート(直近3か月間)>

直近では、高値切り上げ安値切り上げの上昇トレンドが継続しており、

今回の自社株買い発表の翌営業日(6/21)は、これを好感され窓を開けて出来高を伴い、前日比 226円(+10.3%)と急騰しました。

これで、5月につけた年初来高値を更新しています。

今後は、今回つけた年初来高値近辺を保ち、更なる上値追いをしていくのか、勢いが失速し、急騰前の元の値に戻っていくのか、要注目です。

まとめ

【業績】

【株主還元】

【自社株買い数量・流動性】

【株価モメンタム】

以上のことから、

レベル
(⭐(最低)~
⭐⭐⭐⭐⭐(最高))
業績⭐⭐⭐
株主還元
(配当、株主優待等)
⭐⭐⭐
株価モメンタム⭐⭐⭐⭐
自社株買い数量⭐⭐⭐
流動性⭐⭐
総合判定⭐⭐⭐
(中立)
※「総合判定」=⭐4つ以上「買い」、⭐3つ「中立」、⭐2つ以下「見送り」

と判断しました。

最後までご覧いただき、ありがとうございました。

※株式投資の実際の売買は、自己判断、自己責任でお願いします。

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