きよりん堅実投資

【公募増資・売出(PO)は買いか?】芝浦メカトロニクス(6590)

こんにちは!

公募増資・売出(以下、PO)の実施を発表した銘柄に関して、POに応募して買った場合、利益を得ることができるのか?直近の経営状況や客観的な指標、株価モメンタム等を踏まえ、総合的に分析しました。

今回は、東証プライムから電気機器業種の芝浦メカトロニクスです。

最後までお付き合いいただけるとうれしいです!

既上場企業が新たに発行する株式(公募株式)や既に発行された株式(売出株式)を投資家に取得させることをいいます。
正確には、「PO」は「Public(公開の)Offering(売り物)」の略で、日本語では「公募」と呼ばれます。「公募」とは、「不特定かつ多数の投資家に対し、新たに発行される有価証券の取得の申込を勧誘すること」をいいます。
また、「売出」とは、「既に発行された有価証券の売付けの申込み又はその買付けの申込の勧誘のうち、均一の条件で50人以上の者を相手方として行う」ことをいい、通常は「公募」「売出」を合わせて「PO」と呼ばれます。
「新規公開株(IPO)」は未上場企業が直接金融市場からの資金調達や知名度・信用力の向上を目的として証券取引所に新規上場するために一般投資家に株式を取得してもらう行為であるのに対して、「公募・売出(PO)」は既に上場していて証券取引所での株式取引が行われている企業が追加の資金調達や大株主の保有株売却などを目的として一般投資家に株式を取得してもらう行為であり、「新規公開株(IPO)」と「公募・売出(PO)」の違いを簡単にいえば、実施する企業が「未上場」か「既上場」かの違いといえます。

POの概要

今回のPOは、大株主(東芝、ニューフレアテクノロジー、東芝保険サービス)からの株式の売出しです。売出価格等決定日や受渡期日、発行数量等は表1のようになっています。

ディスカウント率は、「売出価格等決定日」に決まり、その日の終値から数%です。

ちなみに、直近の主なPOのディスカウント率は、JR西日本(9021) 3.01%、日本郵政(6178) 2.01%、クリエイト・レストランツ・ホールディングス(3387) 3.09%となってますが、ほぼほぼ2~5%程度です。

ただ、ディスカウント率が大きいPOもあり、直近ではENECHANGE(4169)の8.1%が最大です。

注意点として、どの証券会社でも購入できるわけでなく、主幹事(今回は野村證券)はじめ、引受人の証券会社で購入申込可能です。

早ければ、8/29(火)の夕刻に、会社側から売出価格等のお知らせが適時開示であります。

このブログ記事も更新しますので、チェックしてくださいね💖

売出価格等決定日2023 年8月 29 日(火)
受渡期日
(POで買った場合はこの日から売却可能)
2023 年9月 5 日(火)
①株式の売出し
(引受人の買取引受けによる売出し)
数量
普通株式 703,500
発行済み株式総数 4,657,300株 の約15.1%
②株式の売出し
(オーバーアロットメントによる売出し)
数量
普通株式 105,500
実施決定(8/29)
野村證券が売出す。
売出価格23,115 円
(8/29決定:終値 23,830 円)
ディスカウント率3.00 %
(8/29決定)
申込単位数量100 株
主幹事野村證券
表1:芝浦エレクトロニクス(6590) PO概要

【株式売出しの目的】

としています。

今回の株式の売出しに伴い、ニューフレアテクノロジーとの資本提携を解消しますが、業務提携は継続することについても合わせて発表されました。

また、今回の株式の売出数量は、発行済み株式総数の約15.1%OAを含めた最大の株数で約17.3%)で、

直近の株式の売出のみのPOの売出株数比率(OAを含む)は、ライフドリンクカンパニー 29.8%、日本ホスピスホールディングス 30.2%、プラスアルファ・コンサルティング 26.3%でしたので、それらと比較すると少ない数量ですが、

今回の売出株数(OAを含むと8,090百株)は、1日の平均的な出来高(25日平均:8,090百株(8/23時点))の約1.9倍となっており、これからすると少なめの数量です。

また、この銘柄の直近の出来高(売買が成立した株の数量)の5日平均は3,664百株、25日平均は4,253百株で、流動性は少し高い水準です。(1日 1,000百株を平均的な水準としています。)

【自己株式取得】

そして、今回の株式の売出しと同時に表2の内容で自己株式の取得発表も行っています。

取得期間2023 年9月22日(金)から 9月 27 日(水)まで
取得株式の総数普通株式 137,200株(上限)
発行済株式総数(自己株式を除く)に対する割合:3.10%
取得金額の総額36億円(上限)
※取得株数の上限で割ると1株あたり26,239円換算
取得方法東京証券取引所の自己株式立会外買付取引(ToSTNeT-3)による買付け
表2:芝浦メカトロニクス 自社株買い概要

【自己株式の取得を行う理由】

としています。

今回の株式の売出数量(発行済み株式総数の最大(OA含む)約17.3%)に対し、

自社株買いの最大の数量(約2.94%(自己株式を含む))分が、今回の市場に売り出される株式による一時的な需給悪化の緩和を図っているといえます。

どんな会社?

1939年に設立し、長年培ってきたコア技術(精密メカトロニクス、洗浄、ボンディング、エッチング、真空、成膜など)を結集して、

半導体、フラットパネルディスプレイ、電子部品などの用途向けに製造装置の開発からサービスまでトータルソリューションを提供している会社です。

IoT・5G・AIと、これから更に広がるデータ社会に向けて、半導体製造装置やフラットパネルディスプレイ製造装置を通じた先端技術顧客の「価値づくり」に貢献しています。

主な事業は、半導体製造装置、FPD製造装置、真空応用装置、レーザ応用装置、自動券売機等の製造および販売であり、さらに保守サービスならびに工場建物等の維持管理等の事業活動を展開しています。

同社は、事業部を基礎とした製品・サービス別のセグメントから構成され、ファインメカトロニクス」、「メカトロニクスシステム」、「流通機器システム」、「不動産賃貸」の4つを報告セグメントとしており、それぞれ、

を行っています。

2023年3月期通期のセグメント別売上高構成比は、

となっており、「ファインメカトロニクス」が7割を占めています。

直近の経営概況

【2024年3月期1Q(2023年4月~6月)の経営成績】

(2023年8月3日発表)

決算期売上高
[億円]
(前年
同期比
[%])
営業
利益
[百万円]
(同)
経常
利益
[百万円]
(同)
親会社株主
に帰属する
純利益

[百万円]
(同)
2023年3月期
1Q累計
138
(36.8)
2,120
(222)
1,912
(214)
1,675
(黒字
転換)
2024年3月期
1Q累計
142
(3.1)
2,129
(0.4)
2,209
(15.5)
1,794
(7.1)
2024年3月期
通期会社予想
590
(△3.3)
7,300
(△33.1)
6,700
(△36.3)
5,200
(△43.5)
通期予想に対する
1Qの進捗率[%]
24.129.132.934.5
表3:芝浦メカトロニクス 2024年3月期1Q経営成績と通期会社予想

表3の通り、前年同期比 増収増益で、売上高は微増利益面は微増~2割弱の増益でした。

2024年3月期通期の業績予想は、前期比 減収減益で、売上高は微減利益面は4割前後の減益を見込んでおり、

その通期予想に対する進捗率は1Q終了時点で、売上高、利益面ともに1/4程度でそこそこです。

【2024年3月期1Qの状況、経営成績の要因】

当1Q連結累計期間における同社グループの事業環境は、スマートフォン、パソコンの需要低下などを受け、半導体業界においてはメモリ向けを中心に設備投資の減速が見られ、FPD(Flat Panel Display)業界は全般的に設備投資が低調な状況が継続しました。

その一方で、半導体業界においてIoT、5G、AIなどの需要は引き続き底堅く、ロジック/ファウンドリ向け、パワーデバイス向け、及びウェーハ向けなどの設備投資がいずれも堅調に推移しました。

また、いずれの業界においても部品や部材の供給が不安定な状況が続きました。

このような環境の中、当1Q連結累計期間の業績は、売上高は、前年同期に比べ半導体分野では増加FPD分野では減少し、全体では142億円(前年同期比3.1%増となりました。

利益面では、研究開発の強化などによる販売費及び一般管理費の増加があったものの、半導体前工程の売上増加により営業利益が2,129百万円(同0.4%増

為替の影響もあり、経常利益が2,209百万円(同15.5%増親会社株主に帰属する四半期純利益が1,794百万円(同7.1%増となりました。

なお、受注高は、半導体分野は高水準であった前年同期に比べ減少はしたものの全体として堅調に推移しました。

一方FPD分野は低調に推移しました。

この結果、当1Q連結累計期間における受注高は177億円(同38.8%減となりました。

【セグメント別の業績】

主な事業セグメント別の業績は、表4の結果になりました。

主力の「ファインメカトロニクス」は増収増益

「メカエレクトロニクスシステム」は減収減益となりました。

セグメント売上高
[億円]
(前年
同期比
[%])
セグメント
利益
[百万円]
(同)
受注高
[億円]
(同)
ファイン
メカトロニクス
111
(30.7)
2,146
(59.1)
115
(△47.2)
メカトロニクス
システム
20.5
(△51.8)
39
(△94.7)
50.4
(△16.8)
表4:2024年3月期通期1Q セグメント別業績

各セグメント別の状況は以下になっています。

ファインメカトロニクス

売上高は、半導体前工程ではロジック/ファウンドリ向け装置及びウェーハ向け装置がいずれも順調に推移し、前年同期に比べ増加しました。

一方FPD前工程は低調で、前年同期に比べ減少しました。

この結果、部門全体では前年同期に比べ増収となりました。

セグメント利益は、半導体前工程での売上増加により増益となりました。

なお、受注高は、半導体前工程では全体として堅調に推移したものの、特に好調であった前年同期に比べ減少しました。

FPD前工程では顧客の設備投資の影響を受け低調に推移しました。この結果、部門全体では前年同期に比べ受注高が減少しました。

メカトロニクスシステム

売上高は、半導体後工程では前年同期に比べ減少しましたが、その中でも先端パッケージ向け装置は堅調に推移しました。

FPD後工程では、前年度、特に後半の受注が低調だったことを受け前年同期に比べ減少しました。

真空応用装置も前年同期に比べ減少しましたが、半導体分野向けは堅調に推移しました。

この結果、部門全体では前年同期に比べ減収となりました。

セグメント利益は、半導体後工程での売上減少の影響により大幅な減益となりました。

なお、受注高は、半導体後工程では生成AI用GPUの需要増に伴い先端パッケージ向け装置が堅調に推移しました。

FPD後工程では顧客の設備投資の影響を受け低調に推移し、前年同期に比べ大幅に減少しました。

真空応用装置では、半導体分野向けを中心に順調に推移しました。

この結果、部門全体では前年同期に比べ受注高が減少しました。

【財政面の状況】

自己資本比率>(自己資本(総資本-他人資本)÷総資産)×100

2024年3月期1Q末時点で39.7%と前期末(40.3%)から0.6ポイント低下しています。

これは主に、2023年5月末に実施された自己株式の消却(53.5万株)に伴い、資本剰余金が2,098百万円利益剰余金が674百万円自己株式が2,772百万円のそれぞれの減少により、株主資本が合計で683百万円減少したことによるものです。

自己資本比率の数値としては問題ないレベルです。(20%以上を安全圏内としています。)

【今期(2024年3月期通期)業績の見通し】

同社グループの事業環境は、半導体業界においては、短期的には設備投資の減速があると見込まれますが、

中長期的には今後もあらゆる産業や製品における半導体の需要を受け、ロジック/ファウンドリ向け、メモリ向け、パワーデバイス向け、及びウェーハ向けとも設備投資が順調に推移すると想定しています。

FPD業界においては、コロナ禍における強い需要の反動から設備投資が落ち込み、より長期化する様相を呈していますが、

その先は車載向けパネルの大型化や、IT製品向けOLEDパネルの大型化などの需要に向けた設備投資を期待しています。

2024年3月期の業績は、上記のような設備投資の減速や、部品や部材の供給が不安定な状況が継続すると見込まれること、

また、同社グループとして次の成長に向けた投資を行うことなどから、表3の減収減益を見込んでいます。

なお、2024年3月期1Q決算発表時には、上記の2023年5月11日に公表された通期連結業績予想から変更ありませんでした。

株価指標と動向

【2023/8/23(水)終値時点の数値】

PERは、同業で時価総額が近い、アルバック(6728) 17.2倍、東京エレクトロン(8035) 32.7倍、SCREENホールディングス(7735) 11.7倍と比較すると、中間的な水準です。

配当利回りは1.59%で、東証プライムの単純平均 2.26%(8/22時点) と比較すると低い水準です。

表5のように、直近5年間の配当金は、年間1株当たり110~560円で推移し、

配当性向は、30%前後でほぼ一定です。

決算期1株当たり
年間配当金
[円]
配当性向
[%]
2019年3月期14024.9
2020年3月期11025.0
2021年3月期11024.7
2022年3月期23034.1
2023年3月期56026.9
表5:芝浦メカトロニクス 年間配当金推移

この会社は、

株主への利益還元を重要な経営課題として位置付けており、業績に裏付けられた配当を維持していくことを基本方針としています。

その実施については、業績及び財務状況等を総合的に勘案し、連結配当性向はおおむね30%を目途としています。

【直近の株価動向】

<週足チャート(直近2年間)>

高値切り上げ安値切り上げの上昇トレンドで推移しています。

2022年の年末までは緩やかな上昇でしたが、2023年に入り急上昇しはじめ、8月には上場来高値(26,300円)をつけています。

<日足チャート(直近3か月間)>

8/4に上場来高値(26,300円)をつけた後は、少し調整していましたが、

今回のPOと自社株買い発表の翌営業日(8/23)は、POによる需給悪化を嫌気され、前日比 2,470円(-9.84%)と急落しました。

この下落で、5日移動平均線(緑線)と25日移動平均線(赤線)を下抜けています。

今後は、75日移動平均線(青線)を下抜けずに上昇に転じていくのか、下抜けて下値模索をするのか、要注目です。

まとめ

【業績】

【株主還元】

【流動性・売出株数】

【株価モメンタム】

以上のことから、

レベル
(⭐(最低)~
⭐⭐⭐⭐⭐(最高))
業績⭐⭐⭐
株主還元
(配当、株主優待等)
⭐⭐
株価モメンタム⭐⭐⭐
流動性⭐⭐
株式の売出数量⭐⭐
総合判定⭐⭐
(中立)
※「総合判定」=⭐4つ以上「買い」、⭐3つ「中立」、⭐2つ以下「不参加」

と判断しました。

最後までご覧いただき、ありがとうございました。

※株式投資の実際の売買は、自己判断、自己責任でお願いします。

モバイルバージョンを終了