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【立会外分売は買いか?】マサル(1795) <2023年8月実施>

こんにちは!

直近で立会外分売の実施を発表した銘柄に関して、分売で買った場合、利益を得ることができるのか?直近の経営状況や客観的な指標、株価モメンタム等を踏まえ、総合的に分析しました。

今回は、東証スタンダードから建設業種のマサルです。

最後までお付き合いいただけるとうれしいです!

新規株主を増やすことを目的として、上場会社が大株主である銀行やオーナー経営者などの保有株を小口に分けて、証券取引所の立会外で不特定多数に売り出すこと。
取引開始前など取引時間外(=立会外)に売り出されることからこのように呼ばれる。

立会外分売の概要

実施日や株数は以下です。販売価格は、会社側から実施日前日に発表があります。

分売数量は決まっていて、100株単位で最大1,000株まで購入できます。

早ければ、8/25(金)の夕刻に、会社側からの適時開示で分売値段のお知らせがあります。このブログでも追記しますので、チェックしてくださいね💖

分売予定日2023 年 8 月 28 日(月)
分売数量45,000 株
(発行済み株式総数 901,151 株の約4.99%
分売値段3,541 円
(8/25決定:終値 3,650 円)
ディスカウント率2.99 %
(8/25決定)
申込単位数量100 株
申込上限数量1,000 株
表1:マサル(1795) 立会外分売概要

【立会外分売実施の目的】

としています。

今回の分売数量は、発行済み株式総数の約4.99%多い数量※1です。

※1:一概に言えませんが、目安として、5%以上:かなり多い、3%以上5%未満:多い、1%以上3%未満:ほどほど、1%未満:少ないとしています。

また、この銘柄の直近の出来高(売買が成立した株式の数量)の5日平均は11.0百株、25日平均は10.8百株で、流動性は低い水準です。

そして、今回の分売数量(450百株)は、1日の出来高(25日平均:10.8百株)の約42倍で、この銘柄の平均的な出来高からすると分売数量は多めといえます。

どんな会社?

主として建物の新築防水工事改修工事直接受注工事及び空調・冷暖房・給排水等の設備工事を展開している会社です。

特に、シーリング(気密性や防水性を高めるために、建物の継ぎ目やひび割れなどの隙間を充填すること)・防水工事は、東京都内の約7割の超高層ビルの施工実績があります。

同社グループは、「建設工事業」と「設備工事業」の2つの事業セグメントがあり、それぞれ、

を行っています。

2022年9月期通期のセグメント別売上高構成比は、

となっており、「建設工事業」が9割弱を占めています。

直近の経営概況

【2024年9月期3Q(2022年10月~2023年6月)の経営成績】

(2023年8月9日発表)

決算期売上高
[百万円]
(前年
同期比
[%])
営業利益
[百万円]
(同)
経常利益
[百万円]
(同)
親会社株主
帰属する
純利益
[百万円]
(同)
2022年9月期
3Q累計 ※2
4,890
(ー)
123
(ー)
138
(ー)
82
(ー)
2023年9月期
3Q累計
5,613
(14.8)
45
(△63.3)
56
(△58.9)
26
(△67.4)
2023年9月期
通期会社予想
8,200
(17.8)
450
(126)
455
(95.3)
280
(46.3)
通期予想に対する
3Qの進捗率[%]
68.410.012.39.2
表2:マサル 2023年9月期3Q経営成績と通期会社予想
※2:「収益認識に関する会計基準」等を前連結会計年度の期首から適用し、2022年9月期に係る各数値については、当該会計基準等を適用した後の数値となっており、対前年同四半期増減率は記載なし。

表2の通り、前年同期比 増収減益で、売上高は1割強増利益面は6割前後の減益でした。

2023年9月期通期の業績予想は、前期比 増収増益で、売上高は2割弱増利益面は5割弱~2.2倍の増益を見込んでおり、

その通期予想に対する進捗率は3Q終了時点で、売上高は3/4程度でそこそこですが、利益面は1割前後で遅れ気味です。

【2023年9月期3Qの状況、経営成績の要因】

当3Q連結累計期間の建築業界は、都心大型再開発が相次ぐ中、国土交通省統計によれば同累計期間の首都圏の非居住用建物の着工床面積が前年同期間比で18.3%減少していますが、

建設資材の高騰や人手不足により工事費予定額は同期間比で4.8%減少に留まっています。

また、同累計期間の建設大手50社による建築受注は前年同期間比で0.6%増とほぼ変わっていません。

建築資材高騰や労務費増加が工事費に織り込まれつつあるものの、大型再開発案件の受注競争による収益低下が懸念されており、依然として先行き不透明な状況続くと想定しています。

このような経営環境の中、引続き適切な工程管理と採算性に留意し、新築市場、リニューアル市場ともにバランスのとれた受注獲得を推進したほか、直接受注の拡大、子会社とのコラボレーション推進等により業績の向上を図りました。

この結果、当3Q連結累計期間の受注高は7,336百万円(前年同四半期比29.7%増となりました。

売上高は5,613百万円(同14.8%増となりました。

利益は、営業利益は45百万円(同63.3%減経常利益は56百万円(同58.9%減親会社株主に帰属する四半期純利益は26百万円(同67.4%減となりました。

【セグメント別の業績】

各セグメント別の業績は、表3の結果になりました。

主力の「建設工事業」は増収赤字転落

「設備工事業」は増収増益となりました。

なお、同社グループは、完成工事物件の引渡しが2Q連結会計期間及び4Q連結会計期間に集中するため、四半期連結会計期間の売上高には季節的変動があります。

セグメント売上高
[百万円]
(前年
同期比
[%])
セグメント
利益
[百万円]
(同)
受注高
[百万円]
(同)
建設工事業4,859
(12.8)
△46
(前年同期
47百円
の利益)
6,343
(19.9)
設備工事業753
(29.1)
92
(21.7)
993
(170)
表3:2023年9月期通期3Q セグメント別業績

各セグメント別の状況は以下になっています。

建設工事

増収となりましたが、今期業績予想に基づく販管費の増加及び、4Qに完工を迎える案件が比較的多いことから、46百万円のセグメント損失(前年同四半期セグメント利益47百万円)となりました。

設備工事業>(省略)

【財政面の状況】

自己資本比率>(自己資本(総資本-他人資本)÷総資産)×100

2023年9月期3Q末時点で60.8%と前期末(68.0%)から7.2ポイント低下しています。

これは主に、契約負債が613百万円増加し、流動負債が合計で733百万円増加したことによるものです。

自己資本比率の数値としては問題ないレベルです。(20%以上を安全圏内としています。)

【今期(2023年9月期通期)業績の見通し】

建築業界では、東京23区の大規模オフィスビルの供給量が2020年の185万㎡から2021年61万㎡、2022年51万㎡と大きく減少しましたが、2023年は132万㎡に回復するとみられています。

また、国土交通省調査による建設工事受注動態調査でも2021年10月から2022年9月のゼネコン大手50社の建築受注額が対前年同期間比で9.7%増加と回復基調が続いています。

一方、建築資材価格の上昇や労務費の上昇も避けがたく収益性の低下が懸念されるなど、先行き不透明な経営環境が続くと想定しています。

このような経営環境のなか、2021年10月から2030年9月までの9ヵ年に及ぶ長期経営計画『~100年選ばれ続ける会社を目指す!~』のもと、急激に変容していく経営環境の中でも永続的な成長ができる総合専門工事会社となることを目指しています

テーマとして、1.「ゼネコン上位10社でのシェアNo.1」2.「ROE15%」3.「成長性分野開拓」、を最終年度の達成目標として掲げ、

SDGsへの取り組みも強化し長期的視野で着実な態勢整備と業務推進により業容の拡大、業績の向上を図っています。

テーマごとに、この1年間で取り組みを強化する施策は次の通りです。

  1. 「ゼネコン上位10社でのシェアNo.1」
    1. 営業力強化:差別化した提案営業の推進、新規得意先開拓、直接受注顧客の増強
    2. 受注領域拡大:先行営業による改修工事受注強化、ワンストップ提案によるセット受注推進
  2. 「ROE15%」
    1. 生産性向上:ティール組織確立による最適配置、予実管理の徹底、健康経営への取組み
    2. 現場力の強化:プロジェクト情報のオンライン共有化、現場サポート体制構築とDX推進
  3. 「成長性分野開拓」
    新たな事業領域への進出シナジー効果を生む領域開拓

今期連結会計年度は、新築物件での工程が増加傾向にあるため採算性に留意しつつ人員手配に注力するとともに、引続き、改修工事、特に直接受注工事の受注を増強し利益確保を目指しています。

また、受注増強とともに採算確保に留意し、業績回復を目指しています。

今期の連結決算見通しは、受注高88億円売上高82億円営業利益4億50百万円経常利益4億55百万円親会社株主に帰属する当期純利益2億80百万円をそれぞれ予想しています。

なお、2023年9月期3Q決算発表時には、業績予想の修正はありませんでした。

株価指標と動向

【2023/8/21(月)終値時点の数値】

PERは、同業で時価総額が近い、高橋カーテンウォール(1994) 94.5倍と比較すると低い水準です。

配当利回りは3.06%で、東証スタンダードの単純平均 2.25%(8/18時点)と比較すると高い水準です。

表4のように、直近5年間の配当金は、1株当たり80~160円で推移しており、

配当性向は、30%台で推移し安定しています。

決算期1株当たり
年間配当金
[円]
配当性向
[%]
2018年9月期10033.4
2019年9月期14534.2
2020年9月期16033.2
2021年9月期12533.9
2022年9月期8036.6
表4:マサル 年間配当金推移

この会社は、

利益配分は株主に対する利益還元を最も重要な経営課題の一つと位置づけ、業績に裏付けられた利益配分を、安定的且つ継続的に行うことを基本方針としています。

また、同社グループを取り巻く経営環境を見据え、健全な経営基盤の構築と将来の事業展開に向けた内部留保の充実を目指し、

財務体質の強化に努めるとともに、事業基盤拡充を図るための有効投資を行っています。

剰余金の配当については年1回の期末配当で行うことを基本方針としています。

【株主優待】

この会社は株主優待があり、毎年3月末及び9月末「ジャンボ宝くじ」が進呈されます。

ユニークな優待内容ですね!

【直近の株価動向】

<週足チャート(直近2年間)>

2021年9月に高値(3,980円)をつけた後は急落し、同年12月に安値(2,994円)をつけました。

そしてその後は、3,200円前後で推移していましたが、今年に入り上昇基調で推移しています。

<日足チャート(直近3か月間)>

上昇基調で推移しており、今3Q決算が8/9の場中に発表され、一時的に急騰して年初来高値(3,890円)をつけました。

しかしそれ以降は調整し、今回の立会外分売が8/21の場中に発表されて、分売による需給悪化を懸念され、前日比 40円安(-1.1%)と大きめの陰線をつけて下落しました。

この下落で、25日移動平均線(赤線)を下抜けています。

今後は、75日移動平均線(青線)を下抜けずに上昇に転じていくのか、下抜けて下値模索をするのか、要注目です。

まとめ

【業績】

【株主還元】

【流動性・分売数量】

【株価モメンタム】

以上のことから、

レベル
(⭐(最低)~
⭐⭐⭐⭐⭐
(最高))
業績⭐⭐⭐
株主還元
(配当、株主優待等)
⭐⭐⭐⭐
株価モメンタム⭐⭐⭐
流動性⭐⭐
分売数量⭐⭐
総合判定⭐⭐⭐
(中立)
※「総合判定」=⭐4つ以上「買い」、⭐3つ「中立」、⭐2つ以下「不参加」

と判断しました。

最後までご覧いただき、ありがとうございました。

※株式投資の実際の売買は、自己判断、自己責任でお願いします。

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