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【立会外分売は買いか?】第一カッター興業(1716)

こんにちは!

直近で立会外分売の実施を発表した銘柄に関して、分売で買った場合、利益を得ることができるのか?直近の経営状況や客観的な指標、株価モメンタム等を踏まえ、総合的に分析しました。

今回は、東証プライムから建設業種の第一カッター興業です。

最後までお付き合いいただけるとうれしいです!

新規株主を増やすことを目的として、上場会社が大株主である銀行やオーナー経営者などの保有株を小口に分けて、証券取引所の立会外で不特定多数に売り出すこと。
取引開始前など取引時間外(=立会外)に売り出されることからこのように呼ばれる。

立会外分売の概要

実施日や株数は以下です。実施予定日は幅があり、実際の実施日と販売価格は、会社側から実施日前日に発表があります。

分売数量は決まっていて、100株単位で最大2,000株まで購入できます。

早ければ8/21(月)の夕刻に、会社側からの適時開示で分売値段のお知らせがあります。このブログでも追記しますので、チェックしてくださいね💖

分売予定期間2023 年 8 月 22 日(火)
分売数量599,700
(発行済み株式総数 12,000,000 株の約5.00%
分売値段1,174 円
(8/21決定:終値 1,211 円)
ディスカウント率3.06 %
(8/21決定)
申込単位数量100 株
申込上限数量2,000 株
表1:第一カッター興業(1716) 立会外分売概要

【立会外分売実施の目的】

としています。

今回の分売数量は、発行済み株式総数の約5.00%多い数量※1です。

※1:一概に言えませんが、目安として、5%以上:かなり多い、3%以上5%未満:多い、1%以上3%未満:ほどほど、1%未満:少ないとしています。

また、この銘柄の直近の出来高(売買が成立した株式の数量)の5日平均は1,319百株、25日平均は398百株(8/18時点)で、流動性はやや低い水準です。

そして、今回の分売数量(約6,000百株)は、1日の出来高(25日平均:398百株)の約15倍で、この銘柄の平均的な出来高からすると分売数量は多めといえます。

どんな会社?

「切る」「洗う」「はつる」「剥がす」「削る」それぞれの技術で社会インフラの維持修繕を支える専門工事会社です。

事業内容は、切断・穿孔工事(※2)事業、ビルメンテナンス事業及びリユース・リサイクル事業を展開しています。

※2:切断・穿孔(せんこう)工事

道路等の各種舗装、及びコンクリート構造物の解体、撤去等に必要な切断工事、穿孔(穴を開けること)工事のこと

事業セグメントは、事業を基礎としたセグメントから構成され、「切断・穿孔工事事業」、「ビルメンテナンス事業」及び「リユース・リサイクル事業」の3つがあり、それぞれ、

を行っています。

2023年6月期通期のセグメント別売上高構成比は、

となっており、「切断・穿孔工事事業」が9割弱を占めています。

直近の経営概況

【2023年6月期(2022年7月~2023年6月)の経営成績】

(2023年8月14日発表)

決算期売上高
[億円]
(前期比
[%])
営業
利益
[百万円]
(同)
経常
利益
[百万円]
(同)
親会社株主
に帰属する
当期純利益

[百万円]
(同)
2022年6月期
通期実績
209
(8.3)
2,502
(△9.4)
2,704
(△7.9)
1,580
(△9.4)
2023年6月期
通期実績
221
(5.8)
2,631
(5.2)
2,865
(5.9)
1,946
(23.2)
2024年6月期
通期会社予想
210
(△5.3)
2,710
(3.0)
2,800
(△2.3)
1,750
(△10.1)
表2:第一カッター興業 2023年6月期通期経営成績と2024年6月期通期予想

表2の通り、前期比 増収増益で、売上高は1割弱増利益面は1割弱~2割強の増益で着地しました。

今期(2024年6月期)通期の業績前期比 減収増益で、売上高は1割弱減、利益面は営業利益は微増ですが、経常利益と純利益は微減~1割の減益を予想しています。

【2023年6月期通期の状況、経営成績の要因】

当連結会計年度におけるわが国経済は、新型コロナウイルス感染症が5類へ移行されたことに伴い、経済活動の正常化が一層進み、景気は持ち直しつつあります。

しかし、ウクライナ情勢に端を発した資源価格及び穀物価格の高騰や各国の金融引き締め政策等が国内経済に及ぼす影響に対しては、引き続き注視が必要になるものと思われます。

国内建設市場は、国土強靭化計画等を背景とする公共投資は底堅く推移し、民間設備投資にも持ち直しの動きがみられる一方で、

建設資材の価格高騰等による企業収益の悪化が懸念されており、先行き不透明な状況が続いています。

このような状況下で、同社グループは、全事業セグメントにおいて積極的な事業活動を展開しました。

その結果、特に同社グループの主要事業である切断・穿孔工事事業において完成工事高が増加したため、当連結会計年度の同社グループ全体の売上高は221億円(前期比5.8%増となりました。

また、完成工事高の増加に伴い、営業利益は2,631百万円(同5.2%増経常利益は2,865百万円(同5.9%増親会社株主に帰属する当期純利益は1,946百万円(同23.2%増増収増益となっています。

【セグメント別の業績】

各セグメント別の業績は、表3の結果になりました。

主力の「切断・穿孔事業」は増収増益

「ビル・メンテナンス」は増収減益

「リユース・リサイクル」は減収増益となりました。

セグメント完成工事高
[億円]
(前期比
[%])
セグメント
利益
[百万円]
(同)
切断・穿孔
工事
195
(6.9)
3,469
(8.7)
ビル
メンテナンス
4.7
(1.3)
42
(△26.0)
リユース・
リサイクル
21.3
(△2.2)
181
(34.9)
表3:2023年6月期通期 セグメント別業績

各セグメント別の状況は以下になっています。

切断・穿孔工事事業

主に高速リニューアル工事の受注が増加したため、完成工事高は増加し、また、完成工事高の増加に伴い増益となりました。

ビルメンテナンス事業

首都圏を中心に大手デベロッパーの新規案件開拓に努めた結果、完成工事高は増収となりました。

一方、外注加工費の増加等により、減益となりました。

リユース・リサイクル事業

中古スマートフォン等の販売に係る新規の顧客開拓に努めましたが、減収となりました。

一方、利益率の高い商品が売上の中心を占めたことにより、増益となりました。

【財政面の状況】

自己資本比率>(自己資本(総資本-他人資本)÷総資産)×100

2023年6月期末時点で77.1%と前期末(77.4%)から0.3ポイント低下しました。

これは主に、未払法人税等が前期末比で233百万円増加し、流動負債が合計で609百万円増加したことによるものです。

自己資本比率の数値としては問題ないレベルです。(20%以上を安全圏内としています。)

キャッシュ・フロー>2023年6月期通期のキャッシュ・フロー(以下、CF)の状況

 ※3 フリーCFの説明:

前期(2022年6月期)通期のフリーCF(1,392百万円の収入)から787百万円増加しています。

営業活動によるCFの主な内訳(百万円):

投資活動によるCFの主な内訳(百万円):

【今期(2024年6月期通期)業績の見通し】

コロナ禍による社会活動の制約がほぼ解消されたことにより、内需は緩やかに回復するものと見込まれますが、

一方で世界情勢が資源価格等の更なる上昇をもたらす可能性もあり、わが国全体の景気動向も影響を受けることを想定しています。

同社グループが主力事業を展開している建設業界も、今後は建設資材やエネルギー価格の高騰により企業収益の下押しが懸念され、受注環境は厳しくなることを見込んでいます。

このような厳しい情勢の中で、切断・穿孔工事事業は、高速道路・橋梁補修工事、電力関連工事等への営業・施工力強化に取り組む計画です。

リユース・リサイクル事業は、新規の大口顧客の獲得及び市場の拡大をはかり、ビルメンテナンス事業は、前期に引き続き高層集合住宅を中心に営業を強化する予定です。

上記の取り組みに加えて、技術力増進のための研究開発投資や人員増加・人材育成のための投資は今後も継続する計画です。

以上の結果、表2の経営成績を予想しています。

株価指標と動向

【2023/8/18(金)終値時点の数値】

PERは、同業で時価総額が近い、旭ダイヤモンド(6140) 20.8倍、コンセック(9895) 20.2倍と比較すると、低い水準です。

配当利回りは2.83%で、東証プライムの単純平均2.27%(8/17時点) と比較すると高い水準です。

表4のように、直近5年間の配当金は、年間1株あたり10~35円で推移しており、連続増配を継続中です。

配当性向は、9~20%で推移しています。

決算期1株当たり
年間配当金
[円]
配当性向
[%]
2019年6月期109.1
2020年6月期12.59.3
2021年6月期1811.8
2022年6月期2820.2
2023年6月期3520.4
表4:第一カッター興業 年間配当金推移

この会社は、

株主への利益還元を重要課題と考えており、企業体質の充実ならびに競争力を保持するために必要な技術開発と設備投資等を推進するための内部留保の確保を行い、

さらに、長期的かつ安定的な配当を維持し業績を勘案した成果配分を基本方針としています。

そのため、剰余金の配当は、期末配当の年1回を基本的な方針としています。

【直近の株価動向】

<週足チャート(直近2年間)>

2021年11月に高値(1,465円)をつけた後は、しばらくヨコヨコの動きでしたが、2022年の後半にかけて下落基調で推移し、同年12月に安値(996円)をつけました。

しかしその後は、上昇基調で推移しています。

<日足チャート(直近3か月間)>

7月下旬に年初来高値(1,458円)をつけるまでは上昇基調でしたが、それ以降は調整しており、

今回の立会外分売と2023年6月期決算発表の翌営業日(8/15)は、立会外分売による需給悪化懸念を嫌気され、窓を開けて出来高を伴い、前日比 102円安(-7.5%)と急落しました。

今後は、この日つけた安値(1,222円)や年初来安値(1,000円)を下抜けずに、ヨコヨコから上昇に転じていくのか、下抜けて下値模索をするのか、要注目です。

まとめ

【業績】

【株主還元】

【流動性・分売数量】

【株価モメンタム】

以上のことから、

レベル
(⭐(最低)~
⭐⭐⭐⭐⭐
(最高))
業績⭐⭐⭐
株主還元
(配当、株主優待等)
⭐⭐⭐⭐
株価モメンタム⭐⭐⭐
流動性⭐⭐
分売数量⭐⭐
総合判定⭐⭐⭐
(中立)
※「総合判定」=⭐4つ以上「買い」、⭐3つ「中立」、⭐2つ以下「不参加」

と判断しました。

最後までご覧いただき、ありがとうございました。

※株式投資の実際の売買は、自己判断、自己責任でお願いします。

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