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【公募増資・売出(PO)は買いか?】イオン北海道(7512)

公募増資・売出(以下、PO)の実施を発表した銘柄に関して、POに応募して買った場合、利益を得ることができるのか?直近の経営状況や客観的な指標、株価モメンタム等を踏まえ、総合的に分析しました。

今回は、東証スタンダードから小売業種のイオン北海道です。

最後までお付き合いいただけるとうれしいです!

既上場企業が新たに発行する株式(公募株式)や既に発行された株式(売出株式)を投資家に取得させることをいいます。
正確には、「PO」は「Public(公開の)Offering(売り物)」の略で、日本語では「公募」と呼ばれます。「公募」とは、「不特定かつ多数の投資家に対し、新たに発行される有価証券の取得の申込を勧誘すること」をいいます。
また、「売出」とは、「既に発行された有価証券の売付けの申込み又はその買付けの申込の勧誘のうち、均一の条件で50人以上の者を相手方として行う」ことをいい、通常は「公募」「売出」を合わせて「PO」と呼ばれます。
「新規公開株(IPO)」は未上場企業が直接金融市場からの資金調達や知名度・信用力の向上を目的として証券取引所に新規上場するために一般投資家に株式を取得してもらう行為であるのに対して、「公募・売出(PO)」は既に上場していて証券取引所での株式取引が行われている企業が追加の資金調達や大株主の保有株売却などを目的として一般投資家に株式を取得してもらう行為であり、「新規公開株(IPO)」と「公募・売出(PO)」の違いを簡単にいえば、実施する企業が「未上場」か「既上場」かの違いといえます。

POの概要

今回のPOは、大株主(イオン、北洋銀行、北海道銀行、加藤産業、北陸銀行)からの株式の売出しです。売出価格等決定日や受渡期日、売出数量等は表1のようになっています。

ディスカウント率は、「売出価格等決定日」に決まり、その日の終値から数%です。

ちなみに、直近の主なPOのディスカウント率は、JR西日本(9021) 3.01%、日本郵政(6178) 2.01%、クリエイト・レストランツ・ホールディングス(3387) 3.09%となってますが、ほぼほぼ2~5%程度です。

ただ、ディスカウント率が大きいPOもあり、直近ではENECHANGE(4169)の8.1%が最大です。

注意点として、どの証券会社でも購入できるわけでなく、主幹事(今回は大和証券)はじめ、引受人の証券会社で購入申込可能です。

早ければ、1/30(月)の夕刻に、会社側から売出価格等のお知らせが適時開示であります。

このブログ記事も更新しますので、チェックしてくださいね💖

売出価格等決定日2023 年1月 30 日(月)
受渡期日
(POで買った場合はこの日から売却可能)
2023 年2月 6 日(月)
①株式の売出し
(引受人の買取引受けによる売出し)数量
普通株式 1,610 万
発行済み株式総数 1.39 億株 の約11.5%
②株式の売出し
(オーバーアロットメント)

数量
普通株式 241.5 万株
実施決定(1/30)
※大和証券が売出す。
売出価格882 円
(1/30決定:終値 910 円)
ディスカウント率3.08 %
(1/30決定)
申込単位数量100 株
主幹事大和証券
表1:イオン北海道 PO概要

【株式の売出しの目的】

としています。

2021 年 12 月 27 日付開示「新市場区分の上場維持基準の適合に向けた計画書」によると、新基準の以降基準日(2021年6月30日)時点で、同社は「流通株式比率」の基準の25%以上のところ12.9%と満たしていません

今回の株式の売出数量は、発行済み株式総数の11.5%OAを含めた最大の株数で約13.2%)ですので、OAを含めた最大の数量を市場に放出した場合は、スタンダード市場の基準(25%以上)を満たすことになります。

直近の株式の売出のみのPOの売出株数比率(OA含む)は、SGホールディングス 1.57%、野村総合研究所 6.95%、エスビー食品 2.86%でしたので、それらと比較すると多い数量です。

また、この銘柄の直近の出来高(売買が成立した株の数量)の5日平均は1,144百株、25日平均は763百株で、流動性は中間的な水準です。(1日 1,000百株を平均的な水準としています。)

どんな会社?

北海道のヘルス&ウエルネスを支える企業になる」という経営ビジョンを掲げ、

ゼネラル・マーチャンダイズ・ストア(GMS:総合スーパー)を核とした小売事業を主力事業とし、衣料品・住居余暇・食品などの小売をしている会社です。

事業セグメントは、小売事業及びその付随業務の単一セグメントで、

2022年2月期通期の商品グループ別売上高構成比は、

となっており。「食品」が8割弱を占めています。

直近の経営概況

【2023年2月期3Q(2022年3月~2022年11月)の経営成績】

(2023年1月13日発表)

決算期売上高
[億円]
(前年
同期比
[%])
営業利益
[百万円]
(同)
経常利益
[百万円]
(同)
親会社株主に
帰属する
当期純利益
[百万円]
(同)
2022年2月期
3Q累計
2,366
(1.0)
3,150
(△41.0)
3,117
(△41.1)
1,666
(△54.7)
2023年2月期
3Q累計 ※2
2,310
(△2.4)
4,250
(34.9)
4,371
(40.2)
2,530
(51.9)
2023年2月期
通期会社予想
3,170
(△1.4)
9,000
(35.1)
8,800
(31.6)
4,500
(17.6)
通期予想に対する
3Qの進捗率[%]
72.847.249.656.2
表2:イオン北海道 2023年2月期3Q経営成績と2023年2月期通期予想
※2:「収益認識に関する会計基準」等を1Q連結会計期間の期首から適用しており、2023年2月期3Qに係る各数値については、当該会計基準等を適用した後の数値。

表2の通り、会計基準が異なるので単純比較はできませんが、前年同期比 減収増益で、売上高は微減利益面は3~5割強の増益でした。

ただ、新基準を適用しなかった場合の3Q累計の売上高は2,394億円ですので、それと比較すると1.2%の増収となっています。

2023年2月期通期の業績予想は、こちらも単純比較はできませんが、前期比 減収増益で、売上高は微減利益面は2割弱~4割弱の増益を予想しており(新基準を適用しなかった場合の売上高は前期比 2.1%増)、

その通期予想に対する進捗率は、3Q終了時点で、売上高は3/4程度でそこそこですが、利益面は5割前後で遅れ気味です。

【2023年2月期3Qの状況、経営成績の要因】

当3Q連結累計期間(2022年3月1日から2022年11月30日)において、北海道の経済活動は新型コロナウイルス感染症の影響が続く中、行動規制の緩和や社会行事の再開、外出マインドの高まりなどで持ち直しの動きがみられました。

一方、急激な円安進行やロシア・ウクライナ情勢悪化の長期化により、原材料価格やエネルギーコストが高騰するなど先行き不透明な状況が続き、生活防衛意識はさらに高まっています。

このような環境下、同社は経営ビジョンである「北海道のヘルス&ウエルネスを支える企業」の実現に向け、中期5カ年経営計画の2年目となる2022年度を事業の実験と検証の年度と位置づけ、

「商品と店舗の付加価値向上」「顧客化の推進」「収益構造の改革」「地域との連携」に取り組んでいます。

当3Q累計期間の売上高は前年同期比2.4%減となりました。なお、当3Q累計期間において当該収益認識会計基準等を適用しなかった場合の売上高は前年同期比
1.2%増
となっています。

営業総利益は、売上高の伸長に加えテナント収入が前期から回復し、同1.5%増となりました。

販売費及び一般管理費は、水道光熱費の高騰による影響があったものの、省エネの取り組みにより影響を最小限に留め、また人件費や一般費の削減により、同増減なしとなりました。

営業利益は営業総利益が改善したことで同34.9%増経常利益は同40.2%増四半期純利益は同51.9%といずれも増益となりました。

業態別の売上高は、前年同期比に関しては、当3Q累計期間に当該収益認識会計基準等を適用しなかった場合の数値との比較ですが、

GMS(総合スーパー)は前年同期比1.3%増既存店同3.2%増

SM(スーパーマーケット)は同0.6%減既存店同1.0%増

DS(ディスカウントストア)は同4.9%増既存店同4.0%増

となりました。

ライン別の売上高は、衣料は前年同期比6.3%増既存店前年同期比7.5%増)、

食品は同0.5%増既存店同1.9%増)、

住居余暇は同2.4%増既存店同3.5%増)と各商品グループで売上が伸びています

また、店舗数に関しては、新規に3店舗出店しました。

4月にまいばすけっと1店舗を出店しました。10月にはザ・ビッグ永山店(旭川市)を新規出店し、同社のDS業態において最大となるフローズンの品揃えを実現したほか、

11月にはマックスバリュ音更店(河東郡音更町)を新規出店し、「『地場と鮮度』にこだわった地域に密着したお店」をコンセプトに、「フードバレーとかち」の商品や地場商品・地元食材を使った地域こだわりの商品を充実させています。

また、GMS2店舗、SM4店舗、DS2店舗にて大型活性化を行い、設備を一新したほか、デリカ商品の拡充やフローズンの売場拡大による展開強化を図っています。

【財政面の状況】

自己資本比率>(自己資本(総資本-他人資本)÷総資産)×100

2023年2月期3Q末時点で41.1%と前期末(42.0%)から0.9ポイント低下しました。

これは主に、その他の流動負債(預り金、未払費用等)が前期末比で5,267百万増加し、流動負債が合計で7,248百万円増加したこと等によるものです。

自己資本比率の数値としては問題ないレベルです。(20%以上を安全圏内としています。)

キャッシュ・フロー>2023年2月期3Q累計のキャッシュ・フロー(以下、CF)の状況

 ※3 フリーCFの説明:

前期(2022年3月期2Q累計)のフリーCF(9,196百万円の支出)から127億円増加しています。

営業活動によるCFの主な内訳(百万円):

投資活動によるCFの主な内訳(百万円):

【今期(2023年2月期通期)業績の見通し】

2022年4月8日に「2022年2月期 決算短信」で公表された通期の業績予想から、変更はありません

株価指標と動向

【2023/1/20(金)終値時点の数値】

PERは、同業で時価総額が近い、イオン九州(2653) 29.6倍、アークス(9948) 11.0倍と比較すると、高い水準です。

決算期1株当たり
年間配当金
[円]
配当性向
[%]
2018年2月期1727.7
2019年2月期1231.8
2020年2月期1232.7
2021年2月期1228.5
2022年2月期1243.6
表3:イオン北海道 年間配当金推移

配当利回りは1.13%で、東証スタンダードの単純平均2.25%(1/20時点) と比較すると低い水準です。

表3のように、直近5年間の配当金は、年間1株あたり12~17円で推移しており、

配当性向は、20%台~40%台で推移しています。

この会社は、

企業基盤強化のための内部留保に留意しながら、一株当たりの株式価値を高め、株主への継続的な安定した利益還元を経営の重要な基本方針としています。

【株主優待】

この会社は株主優待があり、今回のPO発表と同時に「株主様ご優待券」の増額及び「長期保有株主優待」制度導入を発表しています。

従来の株主優待制度からの変更点は、以下の2点の内容になっています。

表4:「株主様ご優待券」の増額(2023年1月20日発表IR資料より抜粋)
表5:「長期保有株主優待」制度の導入(2023年1月20日発表IR資料より抜粋)

また、上記に加え、毎年2月末に500株以上を保有の場合、全国のイオングループの店舗に開設している「イオンラウンジ」を利用可能な「イオンラウンジ」利用カード(有効期限:発行後1年間)も合わせて進呈されます。

今まで200株保有の場合は、「株主様ご優待券」は2,500円相当だったものが、5,000円に2,500円増額されます。

100株又は200株保有の場合、配当金+株主優待の利回りは3.48%となります。

こちらは個人投資家にとってうれしい内容ですね!

【直近の株価動向】

<週足チャート(直近2年間)>

出所:楽天証券サイト

週足ベースの株価は、2021年11月に高値(1,460円)をつけた後は下落に転じ、

2022年4月に安値(972円)をつけました。

しかしその後は、この安値を割り込まず、1,000~1,200円程度で推移しています。

<日足チャート(直近3か月間)>

出所:楽天証券サイト

直近の株価は、昨年11月下旬に高値(1,241円)をつけるまで上昇基調で推移していましたが、

その後は下落に転じ、PO発表日(1/20)までは下落トレンドで推移して、直近の安値を更新しています。

今後は、昨年4月につけた昨年来安値(972円)を割り込まずに上昇に転じていくのか、割り込んで下値模索をするのか、要注目です。

まとめ

【業績】

【株主還元】

【流動性・発行株数】

【株価モメンタム】

以上のことから、

レベル
(⭐(最低)~
⭐⭐⭐⭐⭐(最高))
業績⭐⭐⭐
株主還元
(配当、株主優待等)
⭐⭐⭐⭐
株価モメンタム⭐⭐
流動性⭐⭐⭐
株式の売出数量⭐⭐
総合判定⭐⭐(中立)
※「総合判定」=⭐4つ以上「買い」、⭐3つ「中立」、⭐2つ以下「不参加」

と判断しました。

最後までご覧いただき、ありがとうございました。

※株式投資の実際の売買は、自己判断、自己責任でお願いします。

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