きよりん堅実投資

【上方修正は買いか?】多木化学(4025)

直近で今期業績予想の上方修正を発表した銘柄に関して、この発表のタイミングで株を買った場合、利益を得ることができるのか?

足元の経営状況や客観的な指標、株価モメンタム等を踏まえ、総合的に分析しました。

今回は、東証プライムから化学業種の多木化学です。

最後までお付き合いいただけるとうれしいです!

「上方修正」とは?

企業が決算において以前掲げていた予想利益などの数字を引き上げることを指します。

売り上げ増加や環境改善など、想定していなかった要因によって従来予想以上の達成が見込まれるときに発表されます。

SMBC日興証券HPより

特に利益面が上方修正されると、1株当たり利益(EPS)が上昇する可能性が高くなりますので、

株主還元の方針で、配当性向を定めている会社は、配当性向が一定の場合、EPSが上昇すると1株あたりの配当金も高くなり投資家が直接恩恵を受けることになります。

例えば、配当性向を30%と定めている会社が、当初の配当金予想は年間1株あたり30円(EPS=100円)だったとします。

この会社が、業績が好調なため上方修正をして、EPS予想が50%増額され、150円に修正されたとしましょう。

そうなった場合、配当金は配当性向30%と定めていますので、配当金も30円から45円(=150×0.3)と15円増額となり、配当金も1.5倍に増額されることになります。

また、配当金等のインカムゲインだけではなく、キャピタルゲイン(売買益)も得られる可能性は大です。

なぜかというと、上方修正を発表した会社の株は、業績が予想していた以上に良くなったため、株を買いたい投資家が増えますので、株価上昇の大きな要因になるわけです。

ただ時より、会社発表の上方修正後の経営数値がコンセンサス予想(マーケットにおいて支配的になっている予想(数値等))を下回る場合は、「失望売り」といわれ、大きく売り込まれ株価が下落するケースがありますので注意が必要です。

それでは、見ていきましょう!

上方修正の概要

2022年10月28日に、2022年12月期通期の業績予想の上方修正をしています。

2022年12月期通期の業績予想は表1です。

売上高
[億円]
営業利益
[百万円]
経常利益
[百万円]
親会社株主に
帰属する
当期純利益

[百万円]
1株当たり
当期利益
[円]
前回(2022/2/14)
発表予想
3301,5501,8501,450167.56
今回修正予想3522,3502,7501,950225.24
増減額22800900500
増減率[%]6.751.648.634.5
表1:多木化学 2022年12月期通期業績予想数値の修正(2022年10月28日発表)

当初予想と比べ、売上高は1割弱増利益面は3~5割強の増額修正をしています。

修正の理由は、

としています。

配当金予想は、変更ありません

どんな会社?

明治18年(1885年)、わが国初の人造肥料の開発に成功し、それ以降、農業用肥料を製造・販売している会社です。

事業内容は、

を行っています。

2021年12月期通期のセグメント別売上高構成比は、

となっており、「アグリ」と「化学品」を合わせて7割強を占めています。

直近の経営概況

【2022年12月期3Q(2022年1月~9月)の経営成績】

(2022年10月28日発表)

決算期売上高
[億円]
(前年
同期比[%])
営業利益
[百万円]
(同)
経常利益
[百万円]
(同)
親会社株主
に帰属する
純利益
[百万円]
(同)
2021年12月期
3Q累計
233
(8.4)
1,982
(83.0)
2,190
(65.3)
1,423
(44.9)
2022年12月期
3Q累計 ※1
254
(ー)
1,923
(ー)
2,182
(ー)
1,670
(ー)
2022年12月期
通期会社予想
(2022年10月28日
修正)
352
(ー)
2,350
(ー)
2,750
(ー)
1,950
(ー)
通期予想に対する
3Qの進捗率[%]
72.381.879.385.6
表2:多木化学 2022年12月期3Q経営成績と通期会社予想
※1:「収益認識に関する会計基準」等を今1Qから適用しており、2022年12月期3Qに関わる数値については、当該会計基準等を適用した後の数値になっており、対前年四半期増減率は記載なし

表2の通り、会計基準が異なるので単純比較はできませんが、前年同期比 増収減益で、売上高は1割弱増、利益面は、営業利益と経常利益は微減純利益は2割弱の増益の結果でした。

2022年12月期通期の業績予想は、こちらも単純比較はできませんが、上方修正で、前期比 1割弱の増収、利益面は営業利益と経常利益は1割前後の減益純利益は微増を見込んでおり、

その通期予想に対する進捗率は3Q終了時点で、売上高、営業利益、経常利益は3/4程度でそこそこ純利益は85%進捗しており順調です。

【2022年12月期3Qの状況、経営成績の要因】

当3Q連結累計期間における我が国経済は、国内外の新型コロナウイルス感染症の動向や供給面での制約に加え、原材料価格の上昇、金融市場の変動との影響による下振れリスクの高まりなど不透明な状況にあります。

このような環境の中、同社グループは2021年1月から推進している「中期経営計画2023」に基づいて、既存事業に収益力強化などに努めた結果、

当3Q連結累計期間の売上高は254億円(前年同期 233億円)営業利益は19.2億円(前年同期 19.8億円)経常利益は21.8億円(前年同期 21.9億円)親会社株主に帰属する四半期純利益は16.7億円(前年同期 14.2億円)となりました。

【セグメント別の業績】

セグメント別の業績は、表3の結果になりました。

部門売上高
[億円]
(前年
同期[億円])
アグリ74.0
(66.5)
化学品113
(105)
建材21.0
(21.0)
石油15.9
(13.9)
不動産10.0
(9.4)
運輸20.0
(17.3)
表3:2022年12月期3Q セグメント別業績

主力の「アグリ」と「化学品」は増益

その他の事業も「建材」以外は増収でした。

セグメント別の状況は以下です。

アグリ

肥料の販売数量は値上がりを見越した駆け込み需要の反動で減少したものの、販売価格が原料の上昇により値上がりしました。

化学品

水処理薬剤は、販売数量が超高塩基度ポリ塩化アルミニウム等の好調な出荷により増加しました。

機能性材料は、自動車関連セラミック繊維向け高塩基性塩化アルミニウムの販売数量が半導体不足の影響により減少したものの、スマートフォン向け高純度化タンタルの販売数量が増加しました。

建材

石こうボードの販売数量並びに販売価格は前年並みに推移しました。

石油

燃料油の販売数量は減少したものの、販売価格が原油価格の高騰により値上がりしました。

不動産

ショッピングセンターの賃料収入が回復しました。

運輸

内航輸送市場が回復基調で、荷役量が増加しました。

【財政面の状況】

自己資本比率>(自己資本(総資本-他人資本)÷総資産)×100

2022年12月期3Q末時点で63.6%と前期末(63.5%)から0.1ポイント増加しています。

これは主に、支払手形及び買掛金が前期末比で14.8億円増加し、流動負債が増加しましたが、

利益剰余金が12.3億円増加したことにより、株主資本が増加したこと等によるものです。

自己資本比率の数値としては問題ないレベルです。(20%以上を安全圏内としています。)

株価指標と動向

【2022/10/28(金)終値時点の数値】

PERは、同業で時価総額が近い、片倉コープアグリ(4031) 11.7倍と比較すると、高い水準です。

決算期1株当たり
年間配当金(円)
配当性向(%)
2017年12月期37.517.0
2018年12月期4019.8
2019年12月期4025.4
2020年12月期4525.0
2021年12月期5022.6
表4:多木化学 年間配当金推移

年利回りは0.95%で、東証プライムの単純平均 2.39%(10/28時点) と比較すると低い水準です。

表4のように、直近5年間の配当金は、1株当たり37.5~50円の間で推移しており、前期と同額の年もありますが基本的には増配しています。

配当性向は10%台~20%台で推移しており、安定しています。

この会社は、

株主への利益還元を重要な経営課題として位置づけ、安定した配当を継続することを基本方針としています。

また、企業の持続的発展と企業価値の向上を図るため、設備投資、研究開発投資及び合理化投資等にも配分しています。

【株主優待】

毎年12月末の年1回、100株以上保有の株主に、クオカード1,000円分(400株以上の場合は3,000円分)が進呈されます。

100株保有の場合、配当金+株主優待(1,000円)で利回りは1.14%となります。

こちらは個人投資家にとってうれしい内容ですね!

【直近の株価動向】

<週足チャート(直近2年間)>

出所:楽天証券サイト

週足ベースの株価は、2020年11月に高値(7,480円)をつけた後は下落トレンドで推移し、今年の5月に安値(4,220円)をつけました。

しかしその後は、安値切り下げは起こっておらず、現在は全ての移動平均線の上に位置しており回復基調です。

<日足チャート(直近3か月間)>

出所:楽天証券サイト

直近の株価は、8月初旬に安値(4,580円)をつけた後は、高値切り上げ安値切り上げの上昇基調で推移しています。

今後は、業績の上方修正を好感されて、全ての移動平均線の上をキープし、直近の5月初旬につけた高値(5,530円)に向かって上昇を継続していくのか、

出尽くしで下落に転じるのか、要注目です。

まとめ

【上方修正のインパクト】

【業績】

【株主還元】

【流動性】

【株価モメンタム】

以上のことから、

レベル
(⭐(最低)~
⭐⭐⭐⭐⭐(最高))
上方修正の
インパクト
⭐⭐⭐⭐
業績⭐⭐⭐
株主還元
(配当、株主優待等)
⭐⭐
株価モメンタム⭐⭐⭐⭐
流動性⭐⭐
総合判定⭐⭐⭐(中立)
※「総合判定」=⭐4つ以上「買い」、⭐3つ「中立」、⭐2つ以下「見送り」

と判断しました。

最後までご覧いただき、ありがとうございました。

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