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【自社株買いは買いか?】DCMホールディングス(3050)

ホームセンター

直近で自己株式の取得を発表した銘柄に関して、この発表のタイミングで株を買った場合、利益を得ることができるのか?

足元の経営状況や客観的な指標、株価モメンタム等を踏まえ、総合的に分析しました。

今回は、東証プライムから小売業種のDCMホールディングスです。

最後までお付き合いいただけるとうれしいです!

「自社株買い」とは?

上場企業が自らの資金を使って、株式市場から自社の株式を買い戻すことをいう。

日本証券業協会HP 金融・証券用語集

自社の株を買った後は、

  1. 買い戻した株式を消却する。(無効とする。)
  2. 金庫株としてそのままにしておき、いずれ資金調達などの目的で売却する。

の2通りあります。

【自社株買いのメリットデメリット

<メリット>

  1. 発行済み株式数が減るため、会社の利益総額が変わらなければ、1株当たり利益(EPS)が増えるので、企業価値が上がる=株価が上がる可能性がある。
    (配当とともに株主還元の一つ)
  2. 配当金の支払いが少なくて済む。(企業側のメリット)
  3. 敵対的買収の防衛策(株価が上がって敵対企業が株を買いにくくなることと、市場に出回る株数の割合が少なくなるため)
  4. ROE(株主資本利益率:ROE = 当期純利益 ÷ 自己資本×100(%))が上がる。
    自社株買いを行った場合、自己資金が減りますので、分母の「自己資本」が小さくなりROEが上がります。
  5. 株価は「割安」というメッセージを送ることができる。
    自社の株が安い時に買った方が、購入資金が少なくて済みます。(企業側のメリット)

<デメリット>

  1. 自己資金が減り、設備投資などの自社の成長に回せる資金が少なくなる。
  2. 自己資本比率(自己資本(総資本-他人資本)÷総資産) ×100)が下がる。

などがあります。

それでは、見ていきましょう!

自社株買いの概要

会社から発表された自己株式取得の概要は、表1のようになっています。

株数と金額の上限が設定されていますが、株価が上がれば、取得に必要な金額も大きくなりますので、予定の取得株数よりも少なくなることが多いです。

自社株買い発表日2022年9月29日(木)
取得期間2022年9月30日~ 2023年3月31日
取得株式の総数普通株式 800 万株(上限)
発行済株式総数(自己株式を除く)に対する割合:5.49%
取得金額の総額80 億円(上限)
※取得株数の上限で割ると1株あたり1,000円換算
取得方法自己株式取得に係る取引一任勘定取引契約に基づく市場買付け
表1:DCMホールディングス 自社株買い概要

【自社株買いを行う理由】

としています。

自己株式の取得数量は、発行済み株式総数(自己株式を除く)の5.49%と自社株買いの数量としてはかなり多い数量(※1)です。

※1 一概に言えませんが、目安として、5%以上:かなり多い、3%以上5%未満:多い、1%以上3%未満:ほどほど、1%未満:少ないとしています。

直近の出来高(売買が成立した株式の数量)の5日平均は10,119百株、25日平均は5,474百株で、流動性は高い水準です(1,000百株を平均水準としています)。

どんな会社?

「Do Create Mystyle くらしの夢をカタチに」という経営理念のもと、DIYを通じて「くらしと住まいの快適化」を実現する価値創造企業として、社会・お客さま・地域に「新価値」を創造し続ける企業です。

事業内容は、「ホームセンター事業」の単一セグメントで、

で、それぞれホームセンター事業を行っています。

店舗数は、ケーヨーを含め全国に836店舗展開しています。(2022年2月末現在)

主な取扱商品は、

があります。

2022年2月期通期の商品別売上高構成比は、

となっており、「ホームインプルーブメント」と「ハウスキーピング」の売上が多くなっており、それぞれ2割強を占めています。

直近の経営概況

【2023年2月期2Q(2022年3月1日~8月31日)の経営成績】

(2022年9月29日発表)

決算期営業収益
[億円]
(前年
同期比[%])
営業利益
[億円]
(同)
経常利益
[億円]
(同)
親会社株主
に帰属する
純利益
[億円]
(同)
2022年2月期
2Q累計
2,350
(△7.1)
197
(△11.3)
197
(△11.1)
134
(△10.8)
2023年2月期
2Q累計
2,388
(ー)
※2
189
(△4.0)
191
(△3.0)
121
(△10.2)
2023年2月期
通期会社予想
4,951
(11.3)
310
(1.1)
307
(1.3)
190
(1.0)
通期予想に対する
2Qの進捗率[%]
48.261.162.463.8
表2:DCMホールディングス 2023年2月期2Q経営成績と通期会社予想
※2:「収益認識に関する会計基準」等を当1Q連結会計期間の期首から適用しており、2023年2月期2Qに係る営業収益は、当該会計基準等を適用した後の数値で、対前年同四半期増減率は記載なし。

表2の通り、会計基準が異なるので営業収益は単純比較はできませんが、前年同期比 増収減益で、営業収益は微増利益面は1割弱の減益でした。

2023年2月期通期の業績予想は、前期比 増収増益で、営業収益は1割強増利益面は微増を見込んでおり、

その通期予想に対する進捗率は2Q終了時点で、営業収益は1/2程度でそこそこですが、利益面は6割を超えており順調です。

【2023年2月期2Qの状況、経営成績の要因】

当2Q連結累計期間におけるわが国経済は、新型コロナウイルスのオミクロン変異株による急速な感染再拡大、ロシアによるウクライナ侵攻に伴うエネルギー価格や原材料価格の高騰に加え、

日米金利差拡大等による急激な円安の進行など、先行きの不透明感が高まっています。

そんな中、小売業界は、個人所得や雇用の悪化リスク、エネルギー価格や原材料価格の上昇と円安による販売価格の上昇などにより、個人消費の回復には時間を要するものと同社は考えています。

また、業態を超えた販売競争もあり、引き続き厳しい経営環境にあります。

販売面においては、新型コロナウイルス対策及び在宅勤務拡大による需要の反動減がありました。

一方、春先や6月以降の天候不順による影響を受けたものの、ガーデニングの需要拡大は継続しています。

また、行動制限解除によって、行楽用品やカー用品なども好調に推移しました。

DCMブランド商品は、原材料価格の上昇と円安による仕入価格の上昇、物流コスト上昇などの影響を受けていますが、

商品開発・販促強化などに取り組んだ効果もあり、好調に売上を伸ばしつつ、売上高構成比率も引き上げることができました

同社グループの新規出店は4店舗退店は2店舗です。これにより、当2Q連結会計期間末日現在の店舗数は671店舗となりました。

また、2022年3月24日付でエクスプライス株式会社の株式を100%取得し完全子会社化しました。みなし取得日を2022年5月31日としているため、当2Q連結累計期間より、エクスプライス株式会社の業績が含まれています。

これらの結果、当2Q連結累計期間の営業収益は2,388億円営業利益は189億円(前年同期比4.0%減経常利益は191億円(同3.0%減親会社株主に帰属する四半期純利益は121億円(同10.2%減となりました。

【商品部門別の業績】

商品部門別の売上高は、表3の結果になりました。

部門売上高
[億円]
(前年
同期比[%])

園芸
411
(△1.4)
ホーム
インプルーブメント
484
(△2.0)
ホームレジャー
・ペット
341
(△3.1)
ハウスキーピング497
(△5.6)
ホーム
ファニシング
119
(△7.0)
ホーム
エレクトロニクス
206
(△2.5)
表3:2023年2月期2Q 商品部門別売上高

全ての部門で、微減の減収となっています。

セグメント別の状況は以下です。

園芸部門

天候不順の影響を受けた上半期となりましたが、ガーデニング需要は継続しており、肥料・用土や除草剤、観葉植物などが好調に推移しました。

DCMブランド商品は、培養土や除草剤などが好調でした。

ホームインプルーブメント部門

作業用品については、空調服など作業衣料が好調に推移しました。

DIY関連商品については、プロ向けの合板や、販売を強化しているモバイルバッテリー関連商品は好調に推移しましたが、

金物や塗料関連商品は低調でした。

ホームレジャー・ペット部門

行動制限の解除によって整備用品などのカー用品は好調に推移しました。

自転車用品は原材料高騰の影響を受けていますが、折りたたみ自転車や電動自転車は好調でした。

ハウスキーピング部門

節約志向の高まりや行楽需要の増加等により、ステンレスボトルや冷水筒が好調でしたが、

アルコール除菌関連商品などの需要低下によって、ハウスキーピング部門全体で低調でした。

DCMブランド商品は、新規で展開したコピー用紙などが好調でした。

ホームファニシング部門

冷感素材のクッションは好調でしたが、長引く雨の影響で全体的に夏物季節用品が低調でした。

また、在宅勤務関連商品としてのビジネスチェア等のオフィス家具も需要の反動減により低調でした。

ホームエレクトロニクス部門

物置や収納庫など、エクステリア用品が好調に推移しました。

また、エネルギー価格上昇に伴う節約志向の高まりによって、節電や省エネ対策商品も好調でした。

一方、空気清浄機などの除菌関連商品は低調でした。

【財政面の状況】

自己資本比率>(自己資本(総資本-他人資本)÷総資産)×100

2023年2月期2Q末時点で46.2%と前期末(53.6%)から7.4ポイント低下しています。

これは主に、エクスプライス株式会社の連結子会社化などから、

短期借入金が前期末比 160億円増加長期借入金が同 739億円増加により、負債が増加したためです。

自己資本比率の数値としては問題ないレベルです。(20%以上を安全圏内としています。)

キャッシュ・フロー>2023年2月期2Q累計のキャッシュ・フロー(以下、CF)の状況

 ※3 フリーCFの説明:

前期(2022年2月期)2Q累計のフリーCF(113億円の支出)から45.2億円増加しています。

営業活動によるCFの主な内訳(億円):

投資活動によるCFの主な内訳(億円):

【今期(2023年2月期通期)業績の見通し】

2022年4月12日の決算短信発表時に公表された業績予想から変更ありません

株価指標と動向

【2022/9/30(金)終値時点の数値】

PERは、同業で時価総額が近い、コメリ(8218) 7.4倍、コーナン商事(7516) 6.4倍、ナフコ(2790) 5.6倍と比較すると、高い水準です。

決算期1株当たり
年間配当金(円)
配当性向(%)
2018年2月期2632.4
2019年2月期2730.0
2020年2月期2827.1
2021年2月期3225.1
2022年2月期3326.1
表4:DCMホールディングス 年間配当金推移

年利回りは3.39%で、東証プライムの単純平均 2.39%(9/29時点) と比較すると高い水準です。

表4のように、直近5年間の配当金は、26~33円の間で推移しており、連続増配を継続中です。

配当性向は、25%~30%台で安定しています。

この会社は、

株主へ安定した配当を維持することが重要であると考えており、2020 年4月に策定した当期最終年度となる中期経営計画(2020~2022 年度)において、

配当性向 30%を目安に安定配当を目指すことにしています。

当期の中間配当及び期末配当予想は、それぞれ1株当たり 17 円としていましたが、

今2Q決算発表と同時に、上期の業績と財務状況等を総合的に勘案し、それぞれ3円増配し、中間配当 20円、期末配当 20円、年間配当予想 40円(年間1株当たり6円増配に修正しています。

【株主優待】

この会社は株主優待があり、毎年2月末の年1回、100株以上保有の株主は、同社グループの店舗で利用可能な「株主買物優待券」500円相当が進呈されます。

(500株以上:1,000円、1,000株以上:2,000円相当)

また、3年以上継続保有で100株以上保有の場合は、2,000円相当に増額(1,500円加算)されます。

(500株以上:3,000円(2,000円加算)、1,000株以上:5,000円(3,000円加算))

100株保有(3年未満継続保有)の場合、配当金+株主優待(500円相当)で利回りは3.82%(3年以上継続保有の場合は5.09%)になります。

お近くに店舗がある個人投資家にとってうれしい内容ですね!

【直近の株価動向】

<週足チャート(直近2年間)>

出所:楽天証券サイト

週足ベースの株価は、2020年10月につけた高値(1,542円)から調整し、

2021年以降は、1,000~1,200円のレンジ内で推移しています。

<日足チャート(直近3か月間)>

出所:楽天証券サイト

直近の株価は、1,000~1,080円程度のレンジ内で推移していましたが、

今回の今2Q決算と増配、そして自社株買い発表の翌営業日(9/30)は、これを好感され、地合いが悪い中、窓を開けで出来高を伴い前日比 110円高(+10.3%)と急騰しました。

これで年初来高値を更新しています。

今後は、この日の高値付近をキープし上値追いをしていくのか、急騰前の元の値に戻っていくのか、要注目です。

まとめ

【業績】

【株主還元】

【流動性・自社株買い数量】

【株価モメンタム】

以上のことから、

レベル
(⭐(最低)~
⭐⭐⭐⭐⭐(最高))
業績⭐⭐⭐⭐
株主還元
(配当、株主優待等)
⭐⭐⭐⭐
株価モメンタム⭐⭐⭐⭐
流動性⭐⭐⭐⭐
自社株買い数量⭐⭐⭐⭐⭐
総合判定⭐⭐⭐(買い)
※「総合判定」=⭐4つ以上「買い」、⭐3つ「中立」、⭐2つ以下「見送り」

と判断しました。

最後までご覧いただき、ありがとうございました。

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