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【自社株買いは買いか?】タカラスタンダード(7981)

キッチン

直近で自己株式の取得を発表した銘柄に関して、この発表のタイミングで株を買った場合、利益を得ることができるのか?

足元の経営状況や客観的な指標、株価モメンタム等を踏まえ、総合的に分析しました。

今回は、東証プライムからその他製品業種のタカラスタンダードです。

最後までお付き合いいただけるとうれしいです!

「自社株買い」とは?

上場企業が自らの資金を使って、株式市場から自社の株式を買い戻すことをいう。

日本証券業協会HP 金融・証券用語集

自社の株を買った後は、

  1. 買い戻した株式を消却する。(無効とする。)
  2. 金庫株としてそのままにしておき、いずれ資金調達などの目的で売却する。

の2通りあります。

【自社株買いのメリットデメリット

<メリット>

  1. 発行済み株式数が減るため、会社の利益総額が変わらなければ、1株当たり利益(EPS)が増えるので、企業価値が上がる=株価が上がる可能性がある。
    (配当とともに株主還元の一つ)
  2. 配当金の支払いが少なくて済む。(企業側のメリット)
  3. 敵対的買収の防衛策(株価が上がって敵対企業が株を買いにくくなることと、市場に出回る株数の割合が少なくなるため)
  4. ROE(株主資本利益率:ROE = 当期純利益 ÷ 自己資本×100(%))が上がる。
    自社株買いを行った場合、自己資金が減りますので、分母の「自己資本」が小さくなりROEが上がります。
  5. 株価は「割安」というメッセージを送ることができる。
    自社の株が安い時に買った方が、購入資金が少なくて済みます。(企業側のメリット)

<デメリット>

  1. 自己資金が減り、設備投資などの自社の成長に回せる資金が少なくなる。
  2. 自己資本比率(自己資本(総資本-他人資本)÷総資産) ×100)が下がる。

などがあります。

それでは、見ていきましょう!

自社株買いの概要

会社から発表された自己株式取得の概要は、表1のようになっています。

株数と金額の上限が設定されていますが、株価が上がれば、取得に必要な金額も大きくなりますので、予定の取得株数よりも少なくなることが多いです。

自社株買い発表日2022年8月2日(火)
取得期間2022年8月3日~ 2023年2月24日
取得株式の総数普通株式 240 万株(上限)
発行済株式総数(自己株式を除く)に対する割合:3.28%
取得金額の総額36 億円(上限)
※取得株数の上限で割ると1株あたり1,500円換算
取得方法自己株式立会外買付取引(ToSTNeT-3)を含む市場買付
表1:タカラスタンダード 自社株買い概要

【自社株買いを行う理由】

としています。

これに合わせて、現在保有している自己株式のうち79万株今回発表した市場で買い付けた自己株式を合わせた全株数を消却(予定日:2023年3月15日)することを、発表しています。

したがって、消却予定の株数は計319万株(最大)です。

自己株式の取得数量は、発行済み株式総数(自己株式を除く)の3.28%と自社株買いの数量としては多い数量(※1)です。

※1 一概に言えませんが、目安として、5%以上:かなり多い、3%以上5%未満:多い、1%以上3%未満:ほどほど、1%未満:少ないとしています。

直近の出来高(売買が成立した株式の数量)の5日平均は1,042百株、25日平均は1,376百株で、流動性は平均的な水準です(1,000百株を平均水準としています)。

どんな会社?

1912年にホーロー(琺瑯:鉄、アルミニウムなどの金属材料表面にシリカ(二酸化ケイ素)を主成分とするガラス質の釉薬を高温で焼き付けたもの)のパイオニアとしてスタートし、

その後、1962年には世界最初のホーローキッチンの開発に成功100年以上もホーローとともに歩んできた会社です。

事業内容は、住宅設備機器の総合メーカーとしてキッチン、浴室、洗面化粧台及びその他の住宅設備機器の製造販売をしています。

事業セグメントと業務内容は、

を行っています。

2022年3月期通期のセグメント別売上高構成比は、

となっており、ほとんど「住宅設備関連」の売上です。

直近の経営概況

【2023年3月期1Q(2022年4月~2022年6月)の経営成績】

(2022年8月2日発表)

決算期売上高
[億円]
(前年
同期比[%])
営業利益
[億円]
(同)
経常利益
[億円]
(同)
親会社株主
帰属する
純利益
[億円]
(同)
2022年3月期
1Q累計
498
(13.6)
37.2
(178)
39.3
(156)
27.1
(168)
2023年3月期
1Q累計
543
(9.0)
32.2
(△13.4)
34.9
(△11.1)
22.8
(△15.7)
2023年3月期
通期会社予想
2,176
(2.8)
123
(△14.8)
127
(△14.5)
82.0
(△24.8)
通期予想に対する
1Qの進捗率[%]
24.926.227.528.0
表2:タカラスタンダード 2023年3月期1Q経営成績と通期会社予想

表2の通り、前年同期比 増収減益で、売上高は1割弱の増収利益面は1割強の減益の結果でした。

2023年3月期通期の業績予想は、前期比 増収減益で、売上高は微増利益面は1~2割強の減益を見込んでおり、

その通期予想に対する進捗率は1Q終了時点で、売上高、利益面ともに1/4程度でまあまあです。

【2023年3月期1Qの状況、経営成績の要因】

当1Q連結累計期間の住宅市場は、資材価格の高騰や供給不安の影響はあるものの、住宅着工やリフォーム需要は底堅く推移しました。

このような事業環境の下、同社グループは、資材価格の高騰への対応策として、商品価格の改定や販売諸経費の抑制合理化投資による生産性向上の推進など、収益改善への取組みに注力しました。

商品面での取組みは、新型コロナウイルス感染症拡大以降、抗ウイルス・抗菌製品を求める声が多くなったことを受け、ホーロー内装材「エマウォール インテリアタイプ」に抗菌製品技術評議会(SIAA)の認証を取得した「抗菌・抗ウイルス仕様」をラインアップしました。

クリーンな環境が求められる医療現場や高齢者施設、教育施設などを対象に更なる拡販を図っていく計画です。

また、首都圏でのリフォーム売上拡大の取組みとして、東京都の「墨田ショールーム」を業界唯一のマンションリフォーム特化型ショールームとして全面リニューアルするなど、リフォーム需要の掘り起こしに努めました。

以上の諸施策の推進により、売上高は順調に推移したものの、資材価格高騰の影響が大きく

当1Q連結累計期間における業績は、売上高543億円(前年同四半期比9.0%増営業利益32.2億円(同13.4%減経常利益34.9億円(同11.1%減親会社株主に帰属する四半期純利益22.8億円(同15.7%減となりました。

【セグメント別の業績】

セグメント別の業績は、表3の結果になりました。

セグメント売上高
[億円]
(前年同期比
[%])
営業利益
[億円]
(同)
住宅設備関連542
(9.0)
31.6
(△13.6)
その他1.8
(△3.3)
0.6
(△5.0)
表3:2023年3月期1Q セグメント別業績

主力の「住宅設備関連事業」は増収減益

「その他事業」は減収減益の結果でした。

セグメント別の状況は以下です。

住宅設備関連事業

キッチン

2022年4月に資材の価格高騰による商品価格の改定を実施しましたが、新築市場、リフォーム市場ともに順調に売上が拡大し、

シリーズ別は中高級シリーズの「レミュー」・「トレーシア」を中心にホーローシステムキッチンの拡販が進んだことから、売上高は326億円(前年同四半期比10.9%増

浴室

新築市場、リフォーム市場ともに順調に売上が拡大し、特に新築市場は新築マンション向けのシステムバスの拡販が進んでいることから、売上高は129億円(同6.6%増

洗面化粧台

2022年4月に資材の価格高騰による商品価格の改定を実施したが、新築市場、リフォーム市場ともに順調に売上が拡大し、

シリーズ別は中高級シリーズのホーロー洗面化粧台「エリーナ」・「ファミーユ」並びに木製洗面化粧台の拡販が進んだことから、売上高は59.9億円(同10.7%増

【財政面の状況】

自己資本比率>(自己資本(総資本-他人資本)÷総資産)×100

2023年3月期1Q末時点で64.7%と前期末(65.5%)から0.8ポイント低下しています。

これは主に、支払手形及び買掛金が13.2億円増加電子記録債務が18.0億円増加し、流動負債が増加したことによるものです。

自己資本比率の数値としては良好なレベルです。(20%以上を安全圏内としています。)

【今期(2023年3月期通期)業績の見通し】

2022年5月12日に発表された、通期連結業績予想から変更はありません

株価指標と動向

【2022/8/3(水)終値時点の数値】

PERは、同業で時価総額が近い、サンワカンパニー(3187) 27.1倍、KVK(6484) 8.0倍、クリナップ(7955) 6.9倍と比較すると、中間的な水準です。

決算期1株当たり
年間配当金(円)
配当性向(%)
2018年3月期3126.8
2019年3月期3228.1
2020年3月期3428.8
2021年3月期3432.8
2022年3月期52
(内 記念配当6円)
34.9
表4:タカラスタンダード 年間配当金推移

年利回りは3.94%で、東証プライムの単純平均 2.33%(8/2時点) と比較すると高い水準です。

表4のように、直近5年間の配当金は、年間1株あたり31~52円で推移し、2020年3月期と2021年3月期は同額ですが、それ以外の年は増配しています。

配当性向は、26%~35%で安定して推移しています。

この会社は、

経営基盤の強化による収益力の向上を目指し、株主に対して長期にわたり安定かつ充実した配当を維持し、

業績・財政状態などに応じて増配を実施することを利益配分の基本方針としています。

内部留保資金は、業容拡大・合理化のための営業所・工場・物流基地の設備投資、ホーロー技術の研究、新商品の開発、ショールーム・研修センターの設備投資などの資金需要、加えて緊急事態における企業存続のために備えるとしています。

【直近の株価動向】

<週足チャート(直近2年間)>

出所:楽天証券サイト

週足ベースの株価は、昨年3月に高値(1,785円)をつけた後は調整して、下落基調で推移しており、今年5月に年初来安値(1,203円)をつけました。

しかしその後は、株価は回復基調にあり、現時点では26週移動平均線(赤線)の上を推移しています。

<日足チャート(直近3か月間)>

出所:楽天証券サイト

直近の株価は、5月に年初来安値をつけた後は、安値切り上げ高値切り上げの動きで、7月に高値(1,382円)をつけました。

しかしその後は調整し、今回の自社株買いと今1Q決算発表の翌営業日(8/3)は、あまり反応はなく、前日比 6円高(+0.46%)と小幅高となりました。

今後は、25日移動平均線(赤線)をキープし上昇に転じるのか、それとも下抜けて年初来安値に向かって下落していくのか要注目です。

まとめ

【業績】

【株主還元】

【流動性・自社株買い数量】

【株価モメンタム】

以上のことから、

レベル
(⭐(最低)~
⭐⭐⭐⭐⭐(最高))
業績⭐⭐⭐
株主還元
(配当、株主優待等)
⭐⭐⭐
株価モメンタム⭐⭐⭐
流動性⭐⭐⭐
自社株買い数量⭐⭐⭐⭐
総合判定⭐⭐⭐(中立)
※「総合判定」=⭐4つ以上「買い」、⭐3つ「中立」、⭐2つ以下「不参加」

と判断しました。

最後までご覧いただき、ありがとうございました。

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